告白   作:hekusokazura

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第五章 其の二

 

「…冷めてしまったわ」

 

 何口目かのスープを口にした後、彼女は彼の左手の中にあるマグカップに視線を落としてそう呟いた。

 彼の手に渡ってから時間が経過し、湯気が消えてしまったカップ。彼は一度もそのカップに口を付けていない。

「ああ、…ごめん」

 彼女に促され、慌ててカップを口に付けようとする。顔の間近にカップを近づけて、その中身が目に入り、ずっと焦燥と悲嘆と諦念に支配されていた彼の表情が、少しだけ綻んだ。

「……ネギだ…」

 カップの中身は具だくさんスープ、と言えば聞こえは良いが、斜め切りにされたネギだけが大量に入ったスープだった。

 

 彼が、カップの中身を見たまま、目もとは悲嘆に暮れたままで、でも口もとは少しだけ笑っていて、そんな器用な表情を浮かべて動かなくなってしまった。

 カップの中に変なものでも入っていたのだろうか。虫とか、ごみとか。

 

 やや怪訝そうに見つめてくる彼女の視線に気づき、彼は一度瞬きをする。すると、綻んだ口もとはそのままに、目もとからは悲嘆が消え、柔らかな表情だけが彼の顔に残った。

「いや…、ネギがたくさん…だね」

 たくさん「過ぎる」と言いたかったが、それは喉の奥に留めておいた。

 彼の言葉の意を測りかね、戸惑った彼女は視線を自分のカップに落とす。

「高梨さんが…、ネギは健康にいい…、言ってた…から」

「(だから高梨さんって誰?)うん。そうだね。ネギはカラダに良いよね」

 でも限度があるよ、と言いたかったが、それは喉の奥に留めておいた。

 彼は一度口もとまで近づけていたカップを、結局一度も口を付けずに膝の上まで戻した。それを横目で見ていた彼女の真っ新な眉間に、少しだけ皺が寄ったことを、彼は知らない。

 

「食事の準備はいつも君が?って、当たり前だよね。父さんにはできないよね」

 頷く彼女。

「毎日大変でしょ。僕も毎日ミサトさんやアスカの食事作ってたから分かるよ」

 頷く彼女。

 

 彼の「分かるよ」という言葉に、頷く彼女。

 お互い共感できる部分が見つかって、お互い、少しだけこそばゆい。 

 

「作るのは大して面倒でもないんだけどさ。何が大変って、毎日献立を考えなきゃならないことなんだよね」

 彼のその言葉については、彼女は頷くことも頭を横に振ることもしなかった。

「大変じゃない?」

 同意を求めてくる彼に対して、きょとんとしてる彼女。そこは共感できないらしい。

 彼女のこの反応の理由についてちょっと考えてみて、何かに思い当たった彼は、おそるおそる訊いてみた。

「…これは今日の晩御飯?」

 頷く彼女。

「…昨日のご飯は?」

 彼女は、彼の質問の意図が分からないとばかりに首を傾げながら、彼女が手に持つカップを指差す。

 彼は、予想通りの答えが返ってきてしまったことに、頭がくらくらするような錯覚を覚えながら続けた。

「…一昨日の晩御飯は?」

 カップを指差し続ける彼女。

「…その前の日の晩御飯は?」

 カップを指差し続ける彼女。

「…ずっとこれ?」

 頷く彼女。

「365日?」

 頷く彼女。

 

 自分は、何かとんでもない過ちでもしているのだろうか。問い詰めてきたと思ったら、唖然とした顔でこちらを見つめてくる彼に、彼女の少な目な瞬きが一気にその回数を増す。

 

 少し経って、彼女は何かに思い当たったようだ。

「…あの人には、もう一品つけてる。お肉が好きみたいだから、鶏のムネ肉を、ほかのお野菜と蒸したもの」

 彼女にしては珍しい言い訳めいた発言。

 彼は問う。

「毎日?」

 頷く彼女。

 

 どこか得意げな様子の彼女。もしかしたら毎日2品も作っている自分を自分で褒めているのかもしれない。そんな彼女に、彼は「そーゆーことじゃあないんだよ」と言いたかったが、それは喉の奥に留めておいた。毎日同じ献立でよくあの人が文句言わなかったな、と思ったが、ああそうか、あの人はすぐに忘れちゃうんだっけ、と一人納得した。

 

 自分は何も間違っていない、ということを確認して安心しているのだろうか。

 彼女は両手で持ったマグカップを口に付け、中身をごくごくと喉を鳴らして飲んでいる。実に美味しそうに。ボサボサに逆立った髪に、ダルダルに伸びた袖のカーディガンと相まって、その姿はどこか幼く彼の目に映る。そして人が1人殺され、1人が自死しようとし、2人で乱闘までしたこの殺伐とした現場で、どこか浮世離れした、と言うかトンチンカンな振る舞いをしている彼女の姿が急に可笑しくなり、思わず吹き出してしまいそうになった彼は慌てて右手で口を覆った。

 

 急に口を塞いだ彼を、訝し気にみる彼女。

「…いや、なんでもない」

 そう言いつつも、口もとのニヤケはそう簡単には取れそうになく、しばらく彼は自分の口もとを手で隠し続けなければならなかった。

 

 ―――まったく…、綾波には敵わないな…。

 

 手で口を塞ぎ続ける彼を見つめる彼女の眉根に、再び皺が寄ったのを、彼は知らない。

 

 

 ささくれだっていた彼の心が、少しだけ余裕を取り戻す。

 少しだけ余裕を取り戻した心は、周囲の様子を落ち着いて見つめることができる。

 

 木目がきれいに浮かび上がるテーブル。こんもりとした小山になっている白いシーツ。整然と食器や小物が並べられた戸棚。

 バラバラになった木製の椅子と、床に転がる丸められた脱脂綿にガーゼ、白いシーツの赤くなった一部を除けば、掃除と整理整頓が行き届いている室内。床に置かれた洗濯カゴの中は、いかにも太陽の光をしっかり浴びましたとでも主張するような、ふんわりとした衣類が、丁寧に畳まれて積まれている。

 

 2回だけ、訪れた彼女の部屋を思い出す。

 打ちっぱなしのコンクリート壁。埃が溜まった床。くしゃくしゃのベッドのシーツ。分別されずに適当にゴミが詰められ、溢れてしまっているゴミ袋。無造作に干された下着や靴下。

 

 一方で、この部屋は注意してみれば、窓際には小さな小瓶があり、一輪の野花まで飾られている。

 だめだ。

 ニヤケ顔が収まりそうにない。

 

 口もとを覆っている彼の手を横目で忌々しく見ていた彼女は、その手の向こうに見え隠れする彼の口が、締まりのない曲線を描いていることに気づいた。

 ついさっきまで奈落の底にでも突き落とされたかのような表情をしていた彼が、だらしなく笑っている。心労に耐えきれなくなり、ついにおかしくなってしまったのだろうか。

 

 少しだけ心配そうに顔を覗き込んでくる彼女に、彼はこんな場所で一人ニヤついている自分は、外から見たら何て気持ち悪いんだろうと客観的に分析し、「心配ないよ」と口もとから離した手をひらひらさせた。

「いや…その…」

 自分がニヤついていた理由を説明しようとして、言葉を慎重に選ぼうとして、言い淀んでしまう。

 

「君は…その…、「前の記憶」は、あるんだよね?」

 慎重に選んだつもりだったが、結局口から出てきた言葉は配慮を欠いた、無遠慮なものになってしまった。

 しかし、彼女が特に気にした様子もなく、素直に頷いてくれた。

「だったらさ。覚えていないかな?僕が言ったこと」

 

 僕が、あの地下のエレベーターで。

 僕たちが、2人っきりになったあのエレベーターで。

 僕はエレベーターの奥で、君はエレベーターの扉の前で。

 テストを終えて、2人で地上に向かっていたあのエレベーターで。

 僕たちが出会って、いくつかの出来事を乗り越えて、僕は、以前より人との触れ合いを恐れなくなっていて、殆ど喋らない君との会話もそれなりに自然と交わせるようになっていて。

 たまたま乗り合わせたエレベーターのあの空間がとても暖かくて、柔らくて。

 君と2人っきりであることが、とても心地よくて。

 だから、僕はあんなことを言ってしまったのだろう。

 今から考えればとても恥ずかしいことを言ってしまって。

 背中越しでよく見えなかったけれど、君はちょっと慌てていたね。

 

「君は案外、主婦とかが似合ってるんじゃないか、って」

 そこまで言って、横目で彼女の様子を覗ってみた。

 あの時のように慌てふためいてはいないけれど、彼女の頬がぽっと赤くなったような気がしたのは、光の加減の所為ではないのだろう。

 

 彼のニヤけた口から予想外な言葉が飛び出してきたので、彼女は暫く豆鉄砲でも食らったかのような顔をして、そして咄嗟に俯いてしまった。

 おずおずと頷く。

「…ええ、…覚えているわ」

 掠れるような声とは裏腹に、身体の中では全身を流れる血液が一瞬で沸き立ったような感覚が駆け巡り、カップを包む両手にぎゅっと力が入った。

 「覚えている」という表現は正確ではなかった。「覚えている」ではなく「知っている」の方が正しいのだが、訂正はしなかった。

 

 実は俯いて髪で隠れてしまった彼女の目が泳ぎまくっていることを知らない彼は、彼女が「覚えている」ということだけで満足し、彼女から視線を離し、再び部屋を見渡した。

 掃除が行き届いた部屋。丁寧に畳まれた洗濯もの。手もとにあるネギのスープ。

 

「…僕の予想、当たったね」

 

 当時の周囲の人々の中で、彼女が主婦業を真っ当(?)にこなす姿を予想できた人が、いったい何人居るだろう。

 断言してもいい。

 それは僕だけだ。

 

 まずい。

 またニヤけ顔が出てくる。

 

 5年前の自分の予言。

 それが立証されたことだけでも、自分の5年間、いや20年間が報われたような気がした。

 不思議だ。

 たったこれだけのことで、「あの時」以前と以後とで。

 あの瞬間を前後にして断絶してしまっていはずの時の流れに、たったこれだけのことで、一本の線が通ったような気がした。

 

 安っぽくて軽くて、でもとても深くてとても価値のある達成感に満たされながら、彼は手に持っていたマグカップに口をつけた。

 

 

 ひと時の混乱から立ち直った彼女。

 ずっと、隣の彼の一挙手一投足に注意を払っていた。ようやく手のカップを口に近づけたと思ったら止めてしまい。そして膝の位置まで戻してしまい。そして口を覆ってしまい。なかなかカップを口につけない彼の動き。それがとてもじれったくてもどかして、忌々しかった。

 彼女は、彼女にしては珍しくとても緊張していた。自分の手料理を、彼がその口に含もうとしている。あの人以外で初めて、自分の手料理を口に入れるのが彼。

 彼が料理が得意ということは知っている。彼の手料理を食べたことはないけれど、彼が作ったお弁当を赤毛の女の子が憎まれ口を叩きつつも美味しそうに頬張っている姿が幾つかの記憶の中にある。

 そんな料理上級者の彼が、自分の手料理を、今、口に含んでいる。

 カップに口を付け、カップを傾け、中身を口の中に注ぎ込み、こくこくと喉を鳴らしている。

 

 もしかしたら、繰り返されてきた4回の「生」の中でも、今が一番緊張しているのではないだろうか。初めて地下の部屋から出された時も、初めての起動実験の時も、初めての出撃の時も、自分の肥大化した身体が崩壊して地上に崩れ去った時も、あの人に無言で睨みつけられた時も、他人の「ケンコウホケンショウ」を受け付けのお姉さんに差し出した時も。

 ここまで緊張してはいなかったのではないか。

 

 何度か喉を鳴らし、そしてカップを口から離し、彼は、ふぅ、と深めの息を吐く。

 

 その様子を横目で食い入るように見ていた彼女は、カップが彼の顔から離れていくのを見届けた後、視線をテーブルの上のランタンに戻した。

 鳶色の双眸に、ランプの朧げな光が宿る。

 頬に赤みがさすのは、光の加減の所為ではないだろう。

 緊張で固く噤まれていた彼女の口が、少しだけ柔らかく緩んだ。

 

 今、このたった数秒間の、ほんの僅かな瞬間。たったこれだけで、自分の5年間、いや19年間が報われたような気がした。

 

 

 

 ―――覚えていないかな?

 

 ええ、覚えているわ。

 

 だって。

 

 だって、私には。

 何もなくなってしまった私には、とても多くの時間だけが与えられたのだもの。

 

 日々、繰り返される実験と訓練。敵が襲ってこない日は、一日の大半を実験と訓練に充てられる。戦闘も実験も訓練もない日は、学校に行き、一日の大半を退屈な授業に充てられる。自宅に帰ったら、シャワーを浴びて、食事を摂って、あとは寝るだけ。

 何もない日もあって、何もすることがない時間もあったけれど。そんな時は、自分という存在を問う出口のない堂々巡りの思考に陥ってしまいがちなので、ひたすら本を読むことに費やした。図書館に行き、本屋に行き、さして興味もない事柄や物語が書かれた本をひらすら読み漁った。

 

 4度目の目覚め。

 全ての役割を終えた後で、何かの気まぐれで始まってしまった4度目の「生」。

 新たな使命は与えられず、もしかしたら「これが」と思った役割や目的は全て外れで、宙ぶらりんのまま進んでいく私の4度目の「生」。

 主婦業は忙しかった。毎日掃除をし、洗濯をし、買い物をし、料理をし。

 お金を得るための仕事も忙しかった。朝から晩まで拘束され、休憩時間もそこそこに働かされた。

 人のお世話も忙しかった。食事を食べさせ、薬を飲ませ、身体を拭き、下の世話をする。

 それでも分刻みで決められていたスケジュールをひたすらこなしていた組織での生活に比べれば、ぽっかりと空く時間は多かった。組織に居た頃、スケジュールにぽっかりと穴が空く時は学校に行くことで空いた時間を埋めることができたけれど、今は学校という暇潰しさえ用意されない。

 ぽっかりと空いた時間。空虚な時間。そんな時は、以前ならひたすら本を読み漁ることに費やしていたが、4度目の目覚め以降は容易に本を手に入れることもできなかった。仕事や通院以外ではあまり出歩かないようにしていたし、田舎町を生活の拠点にすることが多かったので、街には図書館も書店もないことが多かった。勝手に住み着いた空き家には中には読書家の家もあったりして、大量の本が残されていることもあったが、それも1月くらいで全て読み終えてしまった。

 何もすることがないと、いつもの出口のない堂々巡りの思考の渦に嵌ってしまう。特に自分の存在意義さえも失ってしまった4度目の目覚め以降は、その渦の下は光が一切差さず、底が見えない、一度嵌ってしまったら二度と這い上がれない深い深い奈落の底なのだ。

 だから、何もすることがなくなってしまった時間は、ひたすら「記憶」を探った。「記憶」を本代わりに、そのページをひたすら捲り、読み漁った。

 

 自分の中に蓄積された「記憶」。

 自分のもののようで、実は自分のものではなくて、でもやっぱり自分のものである「記憶」。

 5年間、ひたすら、自分の「記憶」と向き合ってきた。

 

 それはまるで古びた白黒の写真のよう。

 捲られるページに貼り付けられている様々な場面の写真は、やっぱりどこか他人事で、知らない出来事のようで、でもやっぱり知っていて…。

 

 

 彼らが、地上に還ってく姿を、銀髪の少年と見送ったあの時。

 

 手もとに集めたすべての魂を、地上にばら撒いたあの時。

 

 あの人を裏切り、その手から「ワタシ」の片割れを奪い去ったあの時。

 

 初めて会う銀髪の少年に同じであると告げられたあの時。

 

 部屋にあった眼鏡を手で砕き割ったあの時。

 

 部屋にあった眼鏡を手で砕き割ろうとして、砕くことができずに泣いてしまったあの時。

 

 3度目の目覚めの時。

 

 赤毛の女の子に、頬をひっぱたかれたあの時。

 

 これまでにない強大な敵に爆弾を抱えて特攻したあの時。

 

 夕暮れの屋上で4人目の適格者に選ばれた彼に声を掛けたあの時。

 

 その生存が危ぶまれる彼に、心配どころか侮蔑の言葉を吐く赤毛の女の子に迫ったあの時。

 

 半透明の液体の中で、あの人に優しい眼差しで見つめられたあの時。

 

 私の「種」の胸に、巨大な槍を刺したあの時。

 

 実験のため全裸にさせられた挙句、どこかの森の中で半日間放置されたあの時。

 

 木陰で本を読んでいたら、初対面の赤毛の女の子に声を掛けられたあの時。

 

 ケージであの人に声を掛けられ、話しが弾んでしまったあの時。

 

 入院の日々。

 

 15年ぶりの敵の来襲。この日のために何年にも及ぶ厳しい訓練に耐え、果てしない実験を繰り返してきたのに、何もできず、事態が過ぎていくのをベッド上で見守ることしか出来なかったあの時。

 

 入院の日々。

 

 搭乗機の暴走。加重と無重力を繰り返す機内。全身を襲う痛み。砕ける骨。身体から噴き出る血。朦朧とする意識。あの人のほっとした笑顔。

 

 実験と訓練の日々。時々、学校。

 

 初めての学校。初めての外の世界。私の奇怪な容貌に、騒然とする教室。

 

 2度目の目覚めの時。

 

 知らない「おばさん」、知らない「おじさん」たち。

 

 初めて服を着て、初めて部屋から出た、あの時。

 

 初めての目覚め。あまり覚えていないけれど、半透明の液体の中で目覚めた時、初めて目にしたのは容器の前に立つあの人だったような気がする。

 

 そこで私の、ワタシたちの「記憶」のページは終わっている。でも、私の思考の手は、ページを捲ることを止めようとしない。

 さらなる深い、奥底へ。

 もはや「記憶」とすら呼べない、身体の細胞一つ一つに刻まれた「情報」の奥底へと潜っていく。

 

 それは遺伝子に刻まれた記憶?

 それとも「記憶」の渦の中に陥ってしまった私が見たまぼろし?

 

 

 

 子供がいる。

 

 小さな男の子がいる。

 

 とても眩しい光に満たされた空間の中で、満面の笑みを見せる男の子がいる。

 

 どこかで見たことがあるような男の子。

 

 彼に似ているような気がする。

 

 私にもどこか似ているような気がする。

 

 男の子は両手を私に向かって差し出している。

 

 男の子の手の平にあるもの。

 

 赤く光る、実。

 

 それを、嬉しそうに私に見せてくる。

 

 私の口が自然に開く。

 

 

―――もういいの?―――

 

 

 私の声のようであって、でも違うような気がする。

 

 男の子は破顔のまま「うん」と頷いた。

 

 私であって、私でない何かが、口を開く。

 

 

―――そう、よかったわね…―――

 

 

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