今回からようやく始まったという感じですかねー(←遅い)
5話 カウントダウン
~数日後、夜~
晩御飯を食べ終えたスバルが自室に戻ると、机の上にあったハンターに着信が来た。ディスプレイを出すと少し不機嫌そうな様子のルナが映った。風呂上がりだろうか、いつも念入りにセットされているロールヘアが今は真っ直ぐ下ろされていた。
「あなた、早く出なさいよ。切ろうかと思ったわ」
「ごめんごめん、委員長。晩御飯食べてたから…」
「そう、なら仕方ないわね」
「で、要件は?」
するとルナは右手になにやらチラシを掲げた。詳しくは分からないが、見たところ英語で書かれているのはわかる。
「もしかしたら何の役にも立たないかもしれないけれど…明日からアメロッパで開催される歴史資料博覧会というものに私のパパとママが関わっているんだけれど、ちょうどそこに200年前の資料もでるみたい。もしかしたら手がかりになるかもしれないから…一応連絡しといてあげるわ」
「ありがとう、委員長」
「もし行くなら気をつけて行きなさいよ。場所はアメロッパ城内。確か空港から直通のバスがあるからすぐにわかるわ。期間はこれから一ヶ月、と言っても一ヶ月後には新学期が始まっちゃうから早めに行くことをお勧めするわ。でも、まずは宿題を終わらせてからね!」
「うげ……忘れてたぁー…」
スバルはやってしまったと言わんばかりに額に手を当てた。すぐさま画面越しにルナの怒号が飛んでくる。
「アナタ、まだ手をつけていなかったの!?もう休み始まって一週間よ!?」
「仕方ないじゃないか……一応WAXAで検診受けたり、200年前からのことについて調べてたり……宿題くらいならアメロッパでも……」
「海外に行ってまで勉強するほどあなたは真面目だったかしら?それにまた敵が現れるっておいのもゼロじゃないのよ?」
「ごもっともです…」
スバルの完全な負けだ。スバルは下を向いてため息を吐いた。彼女の前ではどんな言い分でも意味を成さない。それほど彼女の発言が的を射てるのだ。そんな様子を見てウォーロックがスバルのハンターから飛び出してきた。
「ったっく…情けねえなー…」
「ウォーロックまで…」
「まあ、確かに委員長の言うとおりだよな。しかも電波変換すりゃウェーブロードを使って一瞬で帰ってこれるが、滞在期間はまだわからねえ。でだ、委員長よ」
ウォーロックはスバルに向けていた視線を画面内のルナへと移した。ニヤリと笑みを浮かべた。こういう時は誰だって大抵悪いことを企んでいる時に出す表情だ。
ルナは少し気まずそうに目を泳がせた。
「……何よ?」
「スバルの宿題手伝ってくれねーか?」
「はあ!!??なんで私があなたのオペレーターの宿題の面倒見なくちゃいけないのよ!?私は習い事もあるから忙しいのよ!!スバルくんになんて構っている暇はないわ!それに宿題ってのは自分でやるからこそ力になるのよ!」
突然の提案にルナは早口で声を荒らげ、模範的生徒らしい返答を返した。スバルは少し怯えたように画面から身を引いたが、対照的にウォーロックは画面に一歩(正確には足はないが)近づいた。再び意地悪そうな笑みを浮かべる。スバルには聞こえないような声で話しかける。
「お前にとっても悪くない提案だと思うが…?」
「……どういう意味よ?」
「さっきも言った通り、もし海外へ行ったら俺たちはいつ帰って来れるかわからないんだぜ…?さみしいだろ?もしかしたら愛しのロックマン様にしばらくは会えないんだぜ…?」
「ぅ……。ロックマン様には出会わないほうがいいわ。彼が現れるってことはなにかまた危険が……」
ルナは言葉を詰まらし苦し紛れにそう言うと、ウォーロックはわざとらしく納得したように腕を組んだ。
「ほう……。まあ、確かにそれは間違いねえな……が、スバルとなればそうも言ってられねーだろ?もしかして一緒に遊びに行けるかもしれなかった春休みが潰れるんだぜ…?一緒にいられる…」
「っ……黙りなさーい!!!私は…私はそんなの別に気にしないわよ!!」
ルナの大声はウォーロックの後ろで遠巻きに様子を伺っていたスバルにまで容易に届いた。ウォーロックの横からそっと画面を覗き込む。顔を真っ赤にしたルナが大声を出しすぎたせいか息を切らしている。ウォーロックはやれやれと言わんばかりに首を横に振った。
「女ってやつはどうもこう強情なんだろな…」
「うるさいわね……フン…」
ルナは画面から顔を逸らして腕を胸の前で組んだ。しかし直ぐにまた画面の方、正確にはスバルの方をちらっと見た。少し頬は朱く染まっている。
「でも……宿題未提出の生徒が私の友達っていうのは不本意だから……あなたがどうしても、っていうなら明日でも宿題手伝ってあげるわ……」
「…え…?じゃあ……お願いします……?」
「なんであなたが疑問系なのよ!?私の厚意が受け入れられないってわけ!?」
「ご…ごめん!!」
スバルが即座に謝るとルナは彼を真っ直ぐ指さした。
「と・に・か・く、明日一日で全部終わらせるわよ!10時にあなたの家に行くからちゃんと起きて準備しておきなさいよ!!」
「ちょ…ちょっと……委員長……!」
スバルはルナを呼び止めようとしたが彼女は逃げるかのように通話モードを終えてしまった。もう一度かけ直してもいいのだが、何を言われるかわからないのでスバルはもう諦めることにした。それを見てウォーロックはククク、と笑った。
「ああいうのをツンデレって言うんだろ?スバル、お前も大変だな。罪な男だ」
「それは知らないけれど……。母さん、許可くれるかなぁ……?」
困るスバルだったがそんな心配をよそに、後に茜はルナの訪問を聞き、大歓迎するのであった。
翌朝、スバルは8時30分に起きた。この時間に起きれば20分で朝食を済まし、10分で歯磨きや洗顔を済まし、残り時間で部屋を片付ければいいだろうと考えていた。
朝から茜はご機嫌でいつもよりも手の込んだ朝食だった。それをいつもどおり眠そうな顔で口へ運び、父の出勤を見送り、洗面台へ行きするべきことをして掃除に取り掛かった。
そこまでは完璧だった。しかし、彼の認識は甘かった。思ったよりも片付けがはかどらない。また、彼女がそんなにスバルに甘いはずがなかったのだ。戦闘では冴え渡る彼の勘も日常では鳴りを潜める。もしくはスバルは知らないが、彼女も密かに楽しみにして、珍しく浮き足立っていたのかもしれない。
そして、スバルが部屋の掃除の真っ只中、玄関のチャイムが鳴った。予定の10時よりも30分も早い。
スバルは予定よりも早い来客にあたふためき急ピッチで掃除を進めたが、そんな息子の焦りも知らない母は快く彼女を家の中、息子の部屋へと通すのであった。
「――随分とのんびりしているのね…」
「――!?」
冷たい声がスバル少年の背後に響いた。声自体に怒った様子はないが、その冷たさが逆に不気味だった。声の主は見なくてもわかる。
「いやあ…早いんだね。まだ9時32分41秒だよ」
少年は散らかった洋服をタンスにしまいながら答えた。勿論、背後からの威圧感により振り向けないままでいる。
「あなたがきちんと準備しているか確認しに早く来たら…案の定だったわ。この散らかり様、約30分で片付くわけないわ」
相変わらず冷たい声を聞き、少年は女の子を家に招くというものはもっと心躍るものではなかったのかと、自分に問いかけた。
ウォーロックに助けを求めようとしたが、空気を読んだのかそれとも逆か、彼はハンター内にいなかった。そうなると彼にはもう成す術はなく、弱々しく返事をするしかなかった。
「ごもっともです……」
ようやくルナの方を向き、スバルは力なく答えた。ああ、なんということだろう。これが世界を救った英雄の有様なのだ。地球を襲う電波体には対抗できても、クラスメートの女の子には完膚なきまでに言い負かされてしまうのだ。
「……べ、別に注意するために来たんじゃないわ……ほら、さっさと片付けて宿題終わらすわよ…!」
ルナもスバルが予想以上に落ち込んだためか、逆に彼女が少し落ち込んだ。ルナは少し動揺しながらも床に落ちている本を拾い上げた。この不器用さが彼女らしく、また可愛らしいところでもあるのだ。
偶然にも拾い上げた本の表紙には彼らがよく知る元気そうな少女が載っていた。
「あ……これ……ミソラちゃんのライブドキュメント写真集じゃない…!」
「あ……この間会った時にもらったんだ!全国ツアーの特別版なんだって!」
「……会った?…いつ?」
その表紙の少女、響ミソラは今や日本を代表するシンガーソングライター、アイドルである(本人はアイドルという肩書きを嫌っているようだ)。13歳にして大人気シンガーになれたのは、万人受けする彼女のキャラクターと等身大の歌詞が国民の心を捉えたのだろう。最近では世界からも注目が集まり始めている。また、彼女は元FM星人のウィザード、ハープと電波変換してハープ・ノートとなる。ロックマンばかり注目されるが、彼の活躍の影には彼女の力があった。最近ではロックマンほどではないが巷でも有名になっており、ファンもいるのだとか。
そんな彼女は毎日分刻みのスケジュールをこなさなければならず、本来ならこんな時期にブラザーであるといえどスバルに会いに来るなんてことはしない。だが彼女はスバルに会いに来た。それが恋心なのか絶大な信頼なのかは分からないが、彼女がスバルにほかの人とは違う感情を抱いていることくらいはルナにもわかる。
「え、三日前かなー」
「そう……何したの?」
つくづく嫌らしい奴、とルナは自分に少し嫌気が差してしまった。別にスバルがミソラにあって何をしようが勝手ではないか。何故プライベートにまで踏み込んでしまうのか。下手すれば傷つくのはこちらなのに。けれども少し気になってしまう。気になる異性がいる乙女の心には葛藤は生じ、天秤は揺れるのだ。
「普通に少し話してそれを手渡されただけだよ。今週から世界ツアーが始まって、しばらく日本にいないからって言ってくれたんだ。たしか今週はアメロッパでライブだとか…」
「ああ、ニュースになっていたわね…」
「すごいよね…自分と同い年には全く思えないよ」
「そうね。けど、私はあなただってすごいと思うわよ」
ルナがひと呼吸おいた。スバルの方をしっかり見る。
「いいまで何度も危機を退けてきたじゃない…普通ならできないわよ…」
「そ、そうかな…」
「そうよ………というわけで今回も訪れる危機を退けるためにまずは部屋をきちんと片付けて宿題をさっさと終わらせるわよ!!」
「結局そうなるの!?」
「当たり前よ!!」
一時の和やかな雰囲気は何処へやら、その後スバルは大量の宿題をルナの監視下のもと、一日で仕上げたのであった。ちなみに、いつもよりも豪華な茜の昼食・、夕食、おやつの全面サポート付き。翌朝、スバルは疲労からか、軽い風邪をひいてしまったという。
~同じ頃、アメロッパ~
アメロッパ城付近の国立公園、いつもは穏やかな場所だがその日はいつもよりも人が多く、賑やかな場所があった。一箇所だけ隔離された建物、その入口には’’Misora Hibiki’s World tour@Ameroppa’’ と書かれていた。そう、今日はニホンを代表するシンガーソングライター、響ミソラの初のアメロッパ公演なのだ。それにもかかわらず、多くの人が詰めかけたため大きな特設ステージが用意されたのだ。もちろん観客の中にはニホンからの追っかけもいる。
「うおー、やっとこの日が来たか!今日は楽しむぞー!」
ひとりの少年が会場の前の広場で叫んだ。周りの人はその少年の方を冷たい眼差しで見つめたが当の本人はそんなことは気にしない。代わりにウィザードがハンターの中から注意する。
「煌輔様、人目を気にしてください。それにまだお仕事が終わっていません。本日中に終わらさなければ明日以降の業務に支障が…」
「うるさいなあ……リフレッシュだよリフレッシュ!それにライブなんて3時間もあれば終わるし」
「その3時間がビジネスでは命取りに…」
「もー!うるせえ!俺がやっとのことで手に入れたミソラちゃんのチケットを無駄にしろと!?そっちのがビジネス的に不利益だよ!」
「……失礼いたしました――――ん?」
ウィザードは何かに感づいたかのような声を出した。
この感じ…。まさか、な。ただ、嫌な予感がする。
「なんだよ?また不満か?」
「いえ、何か違和感のようなものを感じましたが……気のせいのようです」
「そっか、ならいい。ライブ中はおとなしくしてくれよな。台無しになるから」
「私は彼女のファンでも何でもないので大丈夫です。煌輔様が後ほどお仕事に戻って下されば不満は何もありません―――」
「―――さあ、地球人。我らの試練に怯え、跪くがいい……はははは!!」
宇宙空間に不気味な声が響き渡り、地球の上空に青白い彗星が姿を現した。
遂に、終焉へのカウントダウンが今、始まろうとしていた―
前半のルナとスバルのやり取り、どうだったでしょうか(笑)あまりこういうのは書くの慣れていないから…。楽しんでいただけたなら嬉しい限りです。
「おい、いいかげんミソラを!!」という皆さん、大丈夫!ようやく名前出てきたから!次はきっと出番ありますよ!
なんか新しいキャラ出てきた。ウィザードまで出てきたよー。どんな人なんだろう、そのうちわかります。
今後もよろしくお願いします。今度の投稿も少し遅くなりそうです、ごめんなさい!
よかったら感想よろしくです!