人妖ハイスクール   作:九戸政景

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政実「どうも、初めましての方は初めまして、他作品を読んで頂いている方はいつもありがとうございます。作者の片倉政実です。今回からこちらの作品の投稿をさせて頂きます。色々拙い点などもあるかと思いますが、温かい目で見て頂けるとありがたいです。よろしくお願いします」
曜「どうも、今作品の主人公の人吉曜です。ところで、どうして今回はこの作品を書こうと思ったんだ?」
政実「妖物は色々書いてきたけど、この作品みたいなのはまだ書いて無かったから、書きたいと思ったのが理由かな」
曜「なるほどな。さて……それじゃあそろそろ始めていくか」
政実「うん」
政実・曜「それでは、プロローグをどうぞ」


プロローグ

 妖、それは人間とは違った姿や特徴を持ったモノ達の内の一種で、日本のみならず中国などでもその姿は古くから目撃されている。そして、それらは文明の発達と共に姿を次々と消していった。

 

 けれど、これだけは断言できる。妖は()()()()、と。何故なら──。

 

「……ほう、人間の小童(こわっぱ )か。記憶を無くして困っていたところだったが、これは渡りに船といったところか?」

 

 桜の花びらが舞う中、お気に入りの神社での参拝を終わらせ、帰ろうとした僕の目の前に、人の言葉を話す白い狐がいるからだ。

 

「き、狐が……喋った……!?」

「む……小童、妖狐を見るのは初めてか?」

「よ、妖狐……?」

「左様。私のようにおよそ300は歳を重ねた狐の事だ。ほれ、尾も一本では無いだろう?」

「……あ、本当だ」

 

 よく見ると、狐が言うように尻尾は多く、明らかにこの狐が普通じゃないのは子供の僕でもわかった。

 

「でも……どうして妖狐さんはここにいるの? もしかして、人を食べるためとか……!?」

「いいや、そんな事はせん。まあ、中には人間を化かしてはその命を頂く者もおるが、私そんな事はせん……はずだ」

「はず、っていうのは?」

「うむ……実は、私は今自分についての記憶という物を失っておるのだ……」

所謂(いわゆる)、記憶喪失って奴だね?」

「そうなるな……」

 

 妖狐さんは小さく溜息をつくと、困り顔のままで周囲を見回した。

 

「ところで……ここはどこだ? 見たところ……神社のようだが……?」

「あ、うん。ここは僕の家の近所にある『近江神社(このえじんじゃ)』だよ」

「そうか……道理で少し居心地が悪いと思った」

「居心地が悪いって……ここの神様から嫌われてるからとか?」

「嫌われているとまではいかないだろうが、いきなり現れた私の事を(いぶか)しんではいるだろうな。神社とは簡単に言えば、神社の祭神の縄張り。そこに見知らぬモノが来れば、あまり良い顔はせんだろうからな」

「そっか……」

 

 でも、それじゃあ妖狐さんが可哀想な気がする。僕でも何か出来る事は無いかな……。

 

 困り顔で俯きだした妖狐さんを見ながら何か方法は無いかと考えていたその時、僕は一つの方法を思いついた。

 

「よし、それなら……」

「うん?」

「僕、ここの神様にお願いしてみる。妖狐さんがここに来ても嫌な顔をしないで下さいって」

「小童……?」

「だって、記憶を無くして困ってるのに神様にすら頼れないのはやっぱり可哀想だよ。だから、お願いしてみる」

「そうは言うが……」

「大丈夫。たぶん、大丈夫だから」

 

 僕のその言葉を聞いて、妖狐さんは少しの間僕の顔を見つめた後、「わかった」と優しい顔で頷き、僕はそれに頷き返してからもう一度拝殿へと近づき、一度会釈をした。そして、お賽銭箱に五円玉を静かに入れてからお賽銭箱の上から鈴緒(すずお)で吊られた本坪鈴(ほんつぼすず)を軽く鳴らし、僕は二礼二拍手一礼をした。

 

 神様、どうか妖狐さんの事を受け入れてあげて下さい。妖狐さんは自分でも何が何だかわからなくて困っているだけなんです……!

 

 そして、もう一度一礼をしようとしたその時、「……まったく、そこまで願われたら叶えなければならぬではないか」という声が拝殿の上から聞こえ、僕は上を見上げた。すると、そこには白い着物を着た一人の男の人が座りながら僕達の事を見下ろしていた。

 

「もしかして……神様、ですか……?」

「いかにも。我はここの祭神だ。しかし……可哀想という理由で見知らぬ妖狐の肩を持つとは、お前も中々変わっているな」

「変わっている……でしょうか?」

「ああ、変わっている。だが……いつも参拝をしてくれているお前の頼みだ。ほれ、そこの妖狐。こちらに寄れ」

「…………」

「ふ……警戒せずとも良い。少し痛みを伴うとは思うが、お前をここへ来るに相応しいモノへとするだけだ」

「相応しいモノ……ですか?」

「そうだ。さて……こちらに寄れ、妖狐」

「……わかった」

 

 妖狐さんが警戒しながら祭神様の近くに寄ると、祭神様はニヤッと笑いながら自分の右手を妖狐さんへと翳した。すると、突然妖狐さんはとても苦しそうな顔になった。

 

「がっ……ぐ、あぐっ……!」

「妖狐さん! 祭神様、これは一体!」

「くく……少し痛みを伴うと言ったろう? まあ、此奴からすれば少しどころでは無いのだろうがな」

「そ、そんな……!」

「なに、しばし待っていろ。じきに苦しみも痛みも消える」

 

 ニヤニヤ笑いながら祭神様が言う中、僕は妖狐さんの苦しみが少しでも消えるように両前足を静かに持った。そして、そうし続ける事数分、「う……?」という声が聞こえ、僕は妖狐さんの顔を見た。すると、顔にはまるで化粧をしたかのような赤い紋様が浮かび上がっていた。

 

「妖狐さん……もう、平気?」

「あ、ああ……しかし、これはどういう事だ?」

「どういう事って?」

「私の中に……今までに無かった力が宿っているのだ……」

「今までに無かった力……」

 

 僕と妖狐さんが話をしていた時、「それは神力だ」といつの間にか降りてきていた祭神様が説明をしてくれると、妖狐さんは眉を潜めた。

 

「神力……だと?」

「そうだ。妖狐をただここに通わせるのもつまらぬと思ってな。せっかくだから、ここの神使となってもらう事にした」

「神使……?」

「うむ。神使とは書いて字の如く、神道における神の使いだ。よって、此奴の身体の中には、現在『妖力』と『霊力』と『神力』という三つの力が備わっている事になるな」

「神使、だと……? 何故、そのような事をする必要がある。この神社にも神使は──」

「おらぬさ」

「何?」

「この神社には遙か昔から神使はいらぬとされ、その頃から我のみでこの神社に住むようになったのだ。よって、そこに狛犬は置かれているが、ここにはもう誰もいない。まあ、去る時には彼奴らも悲しんではくれたが、我よりも高位の神々が決めた事だからな。そのまま泣く泣く去っていったさ」

「そんな……」

「まあ、そんなこんなでこの『近江神社』には我しかいなくなり、それから数百年も経った今日、ちょうどよく神使にピッタリな奴を見つけたので、神使にしようと思い立ったわけだ。本音を言えば、いつも参拝をしてくれている小僧の方が神使にしたかったが……それではせっかくの参拝客が減ってしまうからな。その考えは見送る事にした」

 

 本当に残念そうに言う祭神様に対して、僕は少し驚きながら話しかけた。

 

「祭神様、僕を神使にする事なんて出来るんですか?」

「出来るぞ? もっとも、先程妖狐の奴が経験したのと同じ目に遭うが……どうだ?」

「……遠慮しておきます」

「はっはっは、そうだろうな! まあ、我としても今のお前にそこまでの事を強いる気は無い。だが、力を手に入れるにはそれなりの代償を伴うのは当然の事なのだ」

「それなりの代償……」

「そうだ。時には我ら神に何らかの落ち度があり、その対価として力を授ける事もあるが、中にはそういった事もなしにただ力を授けるだけの神もいる。まったく……そんな事でまともな人間が出来上がると思っているのかと思うと、同じ神として恥ずかしい限りだ」

「あはは……神様も大変なんですね」

「まあな。さて……妖狐改め神使よ。一応訊くが、お前はこの神社の神使の務めを果たす気はあるか?」

「……無い、と言ったら?」

「それならばそれで諦める。神使に変えはしたが、それを強いる気はさらさら無いからな。だが……記憶も無く、行く宛もないならば、しばらくの間でもここにいた方がお前も助かるのでは無いか?」

「それは……」

「まあ、最終的な判断はお前に任せるが……どうする?」

「私は……」

 

 神使さんは俯きながらしばらく考えた後、「これしかないか」と覚悟を決めたような顔をしながら呟いた。そして、祭神様の方へ向き直ると、静かに頭を下げた。

 

「『近江神社』の祭神よ。記憶を取り戻すまでの間、世話になる」

「うむ、わかった。まあ、我もお前の記憶については色々探ってみるとしよう」

「ああ、頼む」

「もちろん僕も手伝うよ、神使さん」

「小童……ああ、すまないな」

「どういたしまして。それと……自己紹介が遅れたけど、僕の名前は人吉曜(ひとよしよう)っていうんだ」

「人吉曜、か……私は──っと、今は名前すら思い出せぬのだったな」

「そうだったね……それじゃあ僕が神使さんに名前をつけてあげるよ」

「む、良いのか?」

「うん、このまま名前が無いよりは、名前があった方が良いでしょ?」

「……そうだな。では、頼む」

「うん」

 

 頷いた後、僕は神使さんの名前を考え始めた。そして数分後、これだという名前が浮かび、僕はそれを神使さんに伝えた。

 

「神使さん、貴方の名前は白桜(はくおう)にします」

「白桜か……由来はあるのか?」

「『白』はその白い毛並みから取って、『桜』は僕達が出会ったのがこの桜の花びらが舞う中だったから……かな」

「…………」

「やっぱり……ダメ、かな?」

「いや、良き名だと思う。祭神よ、お前はどう思う?」

「そうだな……人の子にしては中々風流な名をつけたと思うぞ?」

「そ、そっか……えへへ、何だか嬉しいな」

「私も嬉しいぞ、曜。さて……それでは、改めてこれからよろしく頼むぞ、曜」

「うん、白桜さん」

「さん、はいらんぞ。お前は私の名付け親なのだからな」

「……わかったよ、白桜」

「うむ」

 

 そして、僕と白桜が握手を交わしていると、祭神様はその上に自分の手を置き、ニヤリと笑った。

 

「何やら二人で楽しそうにしているが、我がいる事を忘れるなよ?」

「……別に忘れていたわけでは無い。ところで、お前だけ名を明かしていないぞ、祭神よ」

「おや、そうだったな。ならば、我もお前達に名を告げるとしよう。我の名は天富穣乃神(あまとみのみのりのかみ)、金運と豊穣を司る神だ」

「天富穣乃神……あれってそう読むんだ」

「うむ、その通りだ。気軽に穣さんとでも呼ぶが良い」

「呼ぶ部分はそこで良いのか……」

「うむ、良い!」

 

 天富穣乃神様改めて穣さんが腰に手を当てながら言うと、白桜は小さく溜息をつきながら頭を軽く振り、僕はそんな二人の様子がおかしくなり、思わずクスリと笑っていた。そして、穣さんは笑みを浮かべながら僕達を見回すと、僕達の肩に手をポンと置きながら静かに口を開いた。

 

「という事で、我らはこれから友人同士だ。曜、白桜、よろしく頼むぞ」

「はい、よろしくお願いします!」

「……よろしく」

 

 こうして綺麗な桜が咲き誇る中、僕には白狐の神使と神社の神様の友達が出来たのだった。

 

いつものように参拝しに来ただけだったのに、まさかこんな出会いがあるなんて……でも、白桜の記憶を取り戻す手伝いをするって決めたわけだし、精一杯頑張らないと……!

 

白桜と穣さんの顔を見ながら、僕は心の中で強くそう誓った。




政実「プロローグ、いかがでしたでしょうか」
曜「今回は白桜と穣さんとの出会い回だったわけだけど、次回からは高校生編になるんだよな?」
政実「そういう事だね」
曜「わかった。そして最後に、今作品についての感想や意見、評価などもお待ちしていますので書いて頂けると嬉しいです。よろしくお願いします」
政実「さてと、それじゃあそろそろ締めていこうか」
曜「ああ」
政実・曜「それでは、また次回」
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