Cルート   作:油性

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俺の管轄外

 

「とはいえです。チェリーさん」

「ん?」

 

 外に出た俺たちは、適当にぶらついていた。夏の日差しが暑くて辛いったらありゃしない。もう家に帰ってエアコンで涼みたい。

 ちなみに距離感はかなり近い。肩とか寸前のところだ。時たま当たってる。これは相手の要求なので特に文句は言えなかった。

 チェリーさんに告白してきた奴との会話の内容はさっき大体把握した。確認したいことがある。

 

「その告白してきた奴にどう証拠をを見せればいいんですか? 連絡手段とかどうしてるんです?」

「あっ」

 

 ほらな。告白して証拠を見せろって慌てて逃げたのはいいが、結局そのあとはどうするんだって話だ。

 特に連絡手段も持たず、会うか会わないにせよこちらからは会いにいけないし、相手もなおさらだ。

 知っていることはチェリーさんと同じ唐菖蒲高校の人間だということ。それならさっさと唐菖蒲高校に向かえばいいのだが、夏休みなのでいる保証はない。

 

「やっば……何も聞いてないや。どうしよ」

「名前とか聞いてないんですか?」

「……聞いてない」

 

 うーん、この。やりたいことをやってそのまま逃げていく感じが気に入らない。

 男なら最後までやると言ったら最後までやりきるもんだぞ。

 

「じゃあどうするんです? このまま歩いて出てくることを期待しますか?」

「うーん……それしかないかなぁ」

「このあとやりたいこととかあります?」

「ない!」

 

 ウィンドウショッピングの始まりだぁ! うおおおおやることないぞおおおおお! はぁ。

 

「じゃあ適当に過ごしますか」

「そうだね!」

 

 もしかして女の子のデートって毎回こんな感じなの? マンネリ化しないか? 

 俺もやがて彼女持ちという個性を持ちたいところだしな。この仮デートもしや勉強になるのでは? 映画館は前にやったし、ある程度は大体ホースもしてるんだよなぁ……。

 

「どこか行きたいところは? ……ホースと言ってない場所で」

「えぇっと……、ハンズとか?」

「それも七巻でやるって言ってるでしょ!」

「いいじゃん被ったって! この作品読んでる人間なんて原作既読勢以外いないし!」

「そうだけどさ、そうだけどさぁ! ……わかりましたよ! じゃあ行きますよ! 面白グッズとか便利グッズとか見始めたら切り上げますからね!」

「はぁー!? うちがハンズガチ勢だと知っててその発言する!? ならハンズのいいところを見せてやるっしょ! 早く行くよ! ほら、手!」

「いいですよ! 付き合ってやりますよ!」

 

 ふんっ! と手をガッチリと掴んで、俺達は駅近のハンズに向かうことにした。周りの目線を気にしたりはしなかった。

 もうこのままカップルと認識されてもいいくらいだ。いやー、こんな時に知り合いに会ったら死んじゃうかもしれんなー。まぁこんな簡単にフラグを踏むような作品でもないし? 展開予想が簡単な作品でもないし? こういう時に来る人間なんて言ったらサンちゃんかひまわりか九頭龍蒼馬か長宗我部帝翔くらいだ。やたら漢字が長いこいつら三巻以来出てないけど今元気かな。

 まぁ誰だっていいや! 話がこじれる奴なんてそうそういるわけ……。

 

「あら、ジョーロ君と桜原先輩」

「……やぁ、菫子っち」

 

 ひぃぃぃぃっ!? パンジーだ! チェリーさんが笑顔を速攻で取り繕い始めた! 

 家出てからそんな時間経ってないのにめちゃくちゃ汗かいてる! 手汗もやばい! 握ってる手から汗がぼわーってなってる!

 

「げ、元気そうだなパンジー」

「えぇ。さっきまで元気だったのに、貴方達の姿を見たら急激に下がっていったわ。どうしてくれるのかしら」

「そうか! じゃあな!」

「うん! じゃあね!」

「待ちなさい。なんで手を繋いでいるのかしら? お二人はそういう関係じゃないでしょ? ジョーロ君?」

 

 チェリーさんに話しかけてくんないかな! 俺が話したらボロが出ちゃうでしょ! 話してもいいんだけどさ、チェリーさんが巻き込んだだからこういうのは……。って痛い痛い痛い! 手が痛い! めっちゃ強く握ってる! さっきと同じ笑顔で力強く握っていらっしゃる! 俺がやれと!? 

 

「そ、そうだな……痴情のもつれってやつだよ」

「意味が違うわよジョーロ君。貴方の状況はどっちかと言えば『俺達イチャイチャしてるぜヒャッハー! 見せびらかしちゃうぜオッラーン!』よ」

「どうしたらそうなるんだよ!」

 

 あー! にわか晒したー! 生きてられねぇー! 感想で指摘される! 

 

「とりあえず事情を言ってもらえないかしら? このまま帰ったら今日のこの出来事が気になって夜しか眠れなくなりそうだわ」

「ならいいじゃねぇか! このまま通らせてもらうぞ」

「ここを通るなら私を倒してからにしなさい!」

「なんでだよ!? 倒す必要性皆無なんだが!」

「そ、そうだよ! うちらはちょっと急いでるから、今は通らせてもらい」

「私は今ジョーロ君に話しかけてるんです。少し静かにしていてください」

「はい……」

 

 弱っ! この先輩頼れねぇ! 

 縺れてるよぉ……関係が縺れて行ってるよぉ……。

 

「脅されたのかしら?」

「……脅されてない。どちらかと言えば頼まれた、だ」

「あら、桜原先輩がジョーロ君に頼ることって何かしら? 恋愛沙汰?」

「まぁそんなところだ。色々とあってな」

「具体的には?」

「チェリーさんが告……あっ」

「……へぇ」

 

 やっべ、誘導された!? これが誘導尋問ってやつ!? 痛いって! チェリーさん強く握りすぎ! というか離せばいいじゃん! 手を離して事情を話すで解決じゃないの!? 

 

「告白、したんですね。桜原先輩」

「う、うん……振られちゃったけど」

「振られた次の日にはジョーロ君ですか。あだ名の通りの行動をしますね」

「ひぃ!?」

「はぁ……。何か面倒なことに巻き込まれたんじゃないですか? 例えば……」

 

 パンジーが呆れて言う。

 

「葉月君以外の、別の誰かに告白されて、それで断ったら話が二転三転して、結果証拠提示のためにジョーロ君と恋人のふりをする、みたいな」

 

 的中ゥゥゥ! 全部正解! 

 

「どうかしら? ジョーロ君」

 

 チラリとチェリーさんを見る。諦めた顔をして、パンジーを見る。

 

「あってるよ……。まんま正解したよお前は」

「ふふっ。流石は私ね」

「うん……すごいね菫子っち。全部あってるよ」

 

 メガネがキラリと光ってる。よく言い当てられるな……。

 

「桜原先輩には後で詫びを入れてもらわないと困るわね。そうですよね?」

「……はい」

 

 なんだよ詫びって! 怖いわ! この人達俺のみてないところでなにしてんの!? 

 

「で、ジョーロ君」

「はい……」

「大変そうね」

 

 他人事のように言うなぁ! その通りなんだけどさ! 労いの言葉じゃないのこういう時に言う言葉ってのは! 

 

「助けが必要なら、私も手伝うわ」

「……は? なんで?」

「貴方にお礼があるからよ。桜原先輩と仲直りさせてくれたじゃない」

 

 あれ仲直りできてたんだ。本当はちゃんとできてるか不安だったんだぞ。

 

「いいのか?」

「えぇ。と言っても、私ができるのは一緒に物事を考えるくらいだけれど」

「いや、助かるよ! ありがとな、パンジー!」

「……え、えぇ。こちらこそ」

 

 なんだ? パンジーの奴、急に目線を外して下を向いて。

 

「ジョーロっちってやっぱりホースっちに似てるよね」

「えっ、なんで!?」

「似てるものは似てるの! ……ありがとね、菫子っち」

「いいですよ、これくらい。このあと予定があるのですよね。ごめんなさい。無駄に時間を取らせて」

「い、いや、うちがちゃんと説明しておけばよかっただけだから! そんな謝らないで!」

「そうだぞパンジー。じゃあ俺達は行かせてもらうぞ」

「えぇ……。じゃあ、二学期に」

「そうだな。二学期に、またな」

 

 パンジーと別れてハンズに改めて向かうとする。パンジーが離れて行った後、俺たちは二人してため息をこぼした。

 

「うちらって意外と運がないのかな」

「それはありますね」

 

 店内に入った俺たちに待ち受けていたのは面白グッズの数々。新商品とかピックアップされており、引き寄せられるようにチェリーさんはそこに向かった。なんか全部持ってそうだよな、この人。

 収集趣味があるかどうかは知らないが、集めてたら集めてたでロクでもないことで使ってそうだ。というか失敗してそう。使用したら返って本人に向かってきそうだ。

 

「見て見てジョーロっち! このクラッカー、相手の鼓膜を消失させるんだって! 使っていい?」

「殺す気ですか!? そんなものあるわけないじゃないですか!」

 

 過激にもほどがあるぞ……流石に。

 この辺りにあるグッズは大体お祝い事に使うものばっかだ。サプライズでパァンって鳴らしたり、ドッキリで鳴らしたりだ。

 

「ジョーロっちこれ買おうよ。バラエティ番組でよくあるロケットバズーカ」

「なんでそんなものがハンズに……?」

 

 中に詰めるものは付属の煙玉のみ……? 花火でもすんの? うわっ、ご丁寧に隣に煙玉が陳列されてる。しかも割と売れてやがる。

 

「じゃあうち買ってくるね〜! うちこういうの集めてるからさ!」

「えっ、買うんです? いる?」

「今度学校に持ってこうかなって! つきみっちの驚く顔とか見たくない?」

「そりゃ見て見たいですけど……」

 

 ふとここで思ったのだが、これって一応デートなんだよな。告白マンはホースから俺までの一部始終を見ているってことは、もしやいまも見られてる可能性があるのでは? 

 キョロキョロと周りもいる。周りには親子とか同じく男女ペアで歩く人ばかりだ。高校生と思しき人間はいるけど、顔だけでは誰が誰だかわからない。視線を外してるしな。

 

「じゃあこれ奢りますよ。一応デートですし、これ」

「いいの?」

「はい。これくらい安いもんで……は? 三千五百円!? たっけぇ……これこんなするんだ……」

「やっぱりゴールデンバスーカに変えていい?」

「値段が三千円も上がってるんですが?」

「ごめん冗談。さっきのが欲しいな」

 

 言った手前俺は買うしかない。まだ一万円手元にあるからこんぐらい問題ないだろ。

 

「他に欲しいのありますか? 買える分だけ買いますよ?」

「い、いやこれ以上はジョーロっちに悪いっしょ! あとは自分で買うから!」

「そうですか? わかりました」

 

 バズーカを手に持ってレジに向かう。平凡な男子高校生がバズーカを持つ現状ってなかなかないよな。

 ……なんでだろ、俺も欲しくなってきた。今度買うか? チェリーさんに向かってぶっ放すか。ありだな。

 レジにて金を払い、チェリーさんのいる場所に戻る。

 

「はい、どうぞ」

「ありがとう! ジョーロっちの太っ腹〜! やっぱり他にも何か奢ってもらおうかなぁ。パンジャンドラムとか置いてないかな」

「ハンズに置いていいものではないのでは? 関連して紅茶でも買います? イギリスですし」

「あっいいね! 生徒会でも使うから味とか嗜んでおこうかな!」

「ならあっちですね」

 

 普通にデートをしている光景に見えるがこれは振りである。お互いに恋愛感情はない。ホースの紹介を何度もしたように、この紹介も何度も言うぞ。付いて来いよな! 

 

「おっ。アールグレイですね」

「出た。うちあれあんま好きじゃないんだけど、ジョーロっちは?」

「飲んだことないのでわかりませんね。美味しんです?」

「へぇー、飲んだことないんだ。ふーん」

 

 含みのある言い方するなぁ。割とマジに紅茶とか飲んだことない。午後の紅茶で言い張れないかな。

 

「じゃあジョーロっちに奢ってあげるよ! これを飲むと英国子女になってお嬢様になったような気分になるっしょ!」

「急に胡散臭くなりましたね。そのお言葉に甘えて飲ませていただきます」

「うしし! じゃあうちはダージリン買おうかな!」

 

 これでまずいとかいうオチは弱すぎるからないでしょ。ないよな? 

 飲むとお嬢様になれるんだってな。ここからは言葉遣いを変えていく方がよろしくてよ? 

 

「……あっ、あそこにアールグレイ試飲ができるみたい! 飲んだら、ジョーロっち?」

「なら、いただきましてよ?」

「何その口調」

 

 今の俺、いや私はお嬢様でしてよ? 紳士淑女として純情可憐GIRLで、礼儀正しく無作法のない誰の見本になるお嬢様ですわよ。

 コップを掴んで飲む。……うん、うん。

 

「まずくはないですわよ」

「……あれー?」

「もしやチェリーさん。アールグレイが苦手でして?」

「苦手ではないけどとりあえずその口調やめない? 悪寒が走る」

「素で言われると心にくるのでやめます。……チェリーさんも飲んでみては? 美味しいですよ」

「えぇ……、じゃあ貰おうかな……」

 

 渋々アールグレイを飲むチェリーさん。

 

「うん、普通! ジョーロっちやっぱり他のにしない? うちと同じのにする?」

「アールグレイでいいです」

「じゃあAmaz○nレビューで星一のやつ買ってくるね!」

「話聞いてました?」

 

 じゃあ買ってくるねー、と買いに行ったチェリーさん。俺が言った時より人が並んでいて、戻ってくるのに時間がかかりそうだ。

 ちょっとトイレでも行って来るかな。大じゃないから先にチェリーさんが戻るという事態はないだろ。スマホで時間を確認して、よし。トイレに向かうか……。

 

「あ?」

 

 そんなトイレの前で俺を待ち受けていたように立つ人間がいた。かき上げられた髪の毛はワックスで固めてあるのだろう。鋭い目つきでこちらを見ている。季節に似つかわしくないジャンパーを着て、そこに佇んでいる。これがチェリーさんを告白した男?

 

「どいてくれませんか? 他のお客さんの邪魔になりません?」

「ならん。なぜならこの辺りのトイレは誰もこないからだ。そして俺はお前に用がある」

「え、僕に?」

 

 割と声が高かった。威厳を出すためか、なるべく低く振る舞おうとしている。声変わりしてないのか? 

 

「名前は誰だか知らないが、これだけは言わせてもらおう。桜原桃と別れろ」

「…………」

 

 別に付き合ってないんだよなぁ。

 だがここまで執拗な人間だとチェリーさんに迷惑がかかりそうだ。この手のやつは厄介だって恋愛漫画で学んだ。

 

「嫌だね。第一、君は誰だい?」

 

 言ってはみたがこいつのプロフィールなんてどうでもいい。こいつと関わる機会とか今日以来ないだろ。

 

「炭院嵐」

 

 当然知らない名前だが、ほう、とだけ言葉を漏らしておこっ。シリアスな雰囲気だけしておこう。

 

「炭院君。どうして僕に別れろって言うんだい? 僕は何かしたかな?」

「したさ。俺の恋路を挟んだから。それだけで重罪だ」

 

 被害妄想甚だしいな。死ぬほどどうでもいいわお前の恋路なんて。

 というかお前尺とりすぎじゃね。君の出番これ以来ないと思うんだけど。

 スマホのバイブレーションで震える。……もう少し時間稼ぎするか。

 

「それがなんだい? 告白なんてそんなものでしょ」

 

 煽るだけ煽っていけ。こめかみに青筋が浮かんでいる。冷静ではない状態になってきているが、取っ組み合いになったら負けないだろう。だってこいつ俺より体格小さいぞ。唯一マウントが取れそうな相手だわ。

 

「知らんなそんなことは! 俺が何をしたって言うんだ! ホースに勝ったってのに、何処の馬の骨かもわからない人間に取られるなんて!」

「取られる? チェリーさんを物扱いしているのか? 君は?」

「なわけないだろ……! お前よりも大事だと思ってるんだ! ずっと、そばで見てきたから……!」

 

 ずっとっていつ頃なんだ? 俺マウント取れるかな。……おっ、またスマホが鳴った。ならもういいかな。

 

「そうなんだ……、らしいですよ、チェリーさん」

「……え?」

「やっほー、ジョーロっち。うちのいないところで楽しそうなことしてるね。うちも混ぜて混ぜてー!」

「混ぜるとは言わず変わりません?」

「なぜここに……!?」

 

 スマホ持ってたからこっそり連絡してただけなんだよな。普段からスマホばっか使ってるとブラインドタッチぐらいできるんだよ。

 どれ、ちゃんと送れてるか見てみるか。

 

『といれちぇりーはんこくたくひたやふおっはをからはたへあからたふけて』

『日本語で。よくわからないけどトイレ行けばいいんだよね、了解っしょ!』

『来たよー』

 

 ダメダメじゃねぇか。せめて変換していてくれ、読みにくいわ。

 

「っ! スマホか……!」

「僕の動きに気づかなかったかな? 時間を稼ぐために話して、視線を誘導してスマホで連絡していたことに」

「ちぃっ……」

「……あれ、その声。もしかしてリリスっち?」

「……!」

 

 え、知り合い? マジかよ身内かよ。まだ新キャラいたんだ。まぁここで出番終わりだろ。尺取りすぎな。

 

「誰です?」

「最近よく話してる後輩だよ。女の子だよ」

「は? 女の子?」

 

 見るからに男なんだが? 

 

「ついに拒否られたショックで頭が……」

「違うから! リリスっちは女の子なの! ほら、どこをどう見てもそうでしょ!?」

「え、えぇ?」

 

 ジロジロと見るが……、男にしか見えないぞ? あぁでも少し華奢な体格をしているなとは思ったが、それなのか? 声も少し一般男性より高かったし。一般男性の声の高低知らないけど。

 チェリーさんはリリスと呼ばれた女? に近づいて無理矢理ジャンパーを脱がし、髪を下ろしているのだが、抵抗をしないのはなんでだ? 惚れた女だからか? 女同士の恋愛か。ありよりのありだな。

 チェリーさんがリリスから離れると、そこにいたのは先ほどの高圧的な態度とは打って変わって、おどおどしくなった女の子がそこにいた。本当に同一人物か? 

 

「……」

「ほら、女の子でしょ?」

「そうですね、女の子ですね」

『男扱いしたの謝ってくれません?』

「なぜスマホで文字を打っているんだ……?」

「リリスっちは普段こういう子なんだよね……。うちもあんまり言葉を聞いてなかったていうか、いやこれいいわけか。ごめんね? 巻き込んじゃって」

「毒くわばなんとやらです。で、どうするんですか? 告白」

 

 要点はここ。事実をこのままはぐらかしてそのまま事を終わらせるつもりは俺にはない。

 了承するか、否定するか。答えはわかってはいるけど、告白はうやむやにしてはいけない出来事なんでな。

 

「あー……、リリスっち?」

『はい』

「リリスっちはうちのこと好きなんだよね?」

『そうですよでもわたしたちおんなのこどうしてますしきもちわるいですよねすみませんやっぱりかえります』

「いや帰らないで!?」

 

 すごいぞ! 俺と違って変換しなくても誤字はしないんだな! 

 手が震えてるな。この状況が嫌なんだろうな。自分が招いたことだから、その責任は取らなければなるまい。

 

「じゃあ、リリスっち、もう一度同じこと言うから、ちゃんと聞いてね?」

 

 コクリと、リリスはうなずいた。

 

「ごめんなさい。うちはリリスっちの告白に、はいと言えないんだ」

「……」

「だから、ありがとね。うちを好きでいてくれて。これからは友達として一緒にいたいかな」

 

 酷なことをするものだ。昨日チェリーさんは一世一代の告白に振られて、その翌日に今告白を拒否してるんだぜ? 大変だよな。

 

『じゃ、じゃあ、そこの男は本当に彼氏なんですか』

「…………あー、それは……」

 

 ちらりとこちらを見る。ふむ。ここで俺が言うことは一つだ。

 

「本当のことを言ってください。リリスさんは本気でしてるんですから、こちらもそれ相応の返事をしなければなりません、そうでしょ?」

「うん……うん、そうだね!」

『何の話をしているの?』

「気にしなくていいよ! えっと、ジョーロっちは彼氏じゃないんだ。昨日言ったことは……その、少し心にダメージを受けてて、口走っちゃったことだから!」

『そう、なんですか?』

「うんうん! ジョーロっちはうちの大切な友達!」

『つまり私にはまだワンチャンチェリーさんと付き合えるってことですよね』

「えっ」

 

 ポ、ポジティブだ……。何だその精神力は。見習いたいものだな。

 

『じゃあ私はこれからワンチャン賭けて行動していけばいいんですね、わかりました』

「あっ、うん、そうじゃない?」

 

 急に投げやりになるなよ。

 

「うん、これからも頑張っていこ?」

『はい!』

 

 こら。手を交わすな。握手するな、いい感じに話を終わらせようとするな。

 これ何一つ解決してなくない? でもチェリーさんがこのままでいいみたいな態度とってるし……このまま放っておくことにするか。

 

『じゃあ私帰りますね! 二学期からもよろしくお願いします!』

 

 と、スマホに表示させてリリスは帰っていった……。これどうするんだ? 

 

「いいんですかチェリーさん、リリスさんこのままだとずっと構ってきそうですけど」

「……まぁ大丈夫じゃない? うちにとってリリスっちは後輩だから、これからも関わる機会は多いし、この機に仲良くなりたいんだよね」

「後輩ってことは一年生ですか? 三ヶ月くらいで惚れたってことは一目惚れなんですかね」

「生徒会にも入りたいって言ってたしね」

「目当てがチェリーさんじゃないですか」

「まっさかー!」

 

 ……当の本人がこう言ってるんだからこうしとくか。唐菖蒲高校での出来事は唐菖蒲で解決してくれ。平日なんかは放課後以外関われないからな。

 

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