Cルート   作:油性

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俺は模索する

 

 さて、どうしたものか。

 ベッドの上でゴロゴロしながらLINEを開いたのはいいが、どう会話を始めればいいかわからない。

 女の子友達は、強いて言うならひまわりか。

 ひまわりを例にとれるか? 無理だろ。俺が何してもひまわりは喜ぶからな。

 多分来年あたりには俺と恋仲になっているな。間違いねぇ。または俺をめぐって三角関係を築いてくれるかもしれねぇ。

 候補は生徒会に所属している二年生の秋野桜こと、コスモスだろう。特徴? おっぱいがでかい。以上。

 二学期になったら書記に立候補するつもりだ。副会長とは面識もあるし、ゴリ押しで行けば推薦してくれるだろう。

 完璧だ。なんだこのラブコメトライアングルは。来年が楽しみだ……ふっはっは! 

 

「おっと、そんなこと考えてる場合じゃねぇ」

 

 今やるべきことは今日知り合ったチェリーという女とどう会話をするべきかということだ。会話は当然『僕』口調だ。これは前提条件として当たり前のもの。

 なんだろう。ナンパした人の心境でこんな感じなのかな。なんかワクワクしてきたぞ。

 どうすっかな。

 会話の始め方候補はこんな感じだ。

 その一、『如月です。今日はありがとうございました!』

 なんかやだ。よくわからないけど、妥協策でここから始めることにすることも考えよう。その後の会話は流れでどうとでもなる。

 その二、『いつ遊びに行く?』

 今日の会話を全部吹っ飛ばして入りに行くあたり、なぜ思いついたから自分に問い詰めたいぜ。へっ。

 その三、『今度いつ会えますか?』

 これ出すならその一と組み合わせればいいな。考えてから気づいた。

 よし! ここはその一とその三を合体させて、送信するぞ。

 IDを打ち込んで、友達登録をする。トーク画面を開いて俺は合体文を送信した。

 返信が来たのはその直後だ。

 

『どういたしまして! それで、うちが暇な日なんだけど……』

『いつでも大丈夫ですよ』

 

 もう夏休みに入っているし、バイト代もまだ残ってる。本当はサンちゃん達野球部の甲子園行きに使いたかったが、負けてしまったものは仕方ない。

 よくよく考えれば、チェリーさんは相手の高校の人間だ。煽られる可能性? 俺に唯一煽っていいのはサンちゃんのストレートを臆することなく打ったエースの特正北風だけだ。

 してきたらしたらでぶん殴るがな。

 じゃねぇ。毎回別のところに思考を持っていくな。

 

『う〜ん……そうだね。今週は生徒会の仕事が入ってるから難しいかな』

『生徒会に入ってるんですか?』

 

 役職はどこだろう。入る予定しかないから今度会った時に聞いておこう。

 

『次の選挙で勝ったら生徒会長になれるんだ! そのために今頑張ってる!』

『なるほど……』

 

 返し方がダメな気がしてきた。

 会話慣れしてない人間かって。

 

『と、いうわけで今週は無理だけど、来週の水曜なら問題ないよ! そっちはどう?』

 

 つまり来週か。ふむ。問題ないな。

 やることもないっていうのが平凡な高校生感があっていい。心地いいぜ。

 

『わかりました。では、その時に』

『OK!』

 

 

「───まぁここまではいいんだよ」

「それで?」

「どう展開していいかわからないんだ」

 

 日付は変わって三日後。現在水曜日。来週にチェリーさんとのお礼を控えた中、駅前のカフェで部活帰りのサンちゃんを呼んで相談をしていた。

 スマホで連絡して了承を得たので相談に乗ってもらってる状態だ。

 

「展開も何もないだろ。お礼って言うぐらいなんだから、相手のさせたいことをさせればいいんじゃあないのか?」

「最近知り合って名前しか知らない人とどう会話していけばいいかわからないんだ……」

「お前ナンパしてたのか? 俺を待ってる時に」

「まさか。単なる偶然だよ」

 

 マジのマジの偶然だ。こんなことになるとは思っていなかったよ、本当に。

 

「なぁジョーロ。要はあれだ。野球で言うところの第一球ってところだよな」

「……どういうこと?」

「最初に投げる球っていうのは相手に印象を与えるものだ。会話だって同じだろ?」

「……そうかも」

 

 会話のキャッチボールってことだな。多分。

 ストレートで真っ向勝負。自分自身が展開していくか、変化球を投げて、臨機応変に対応をしていくかの違いだ。

 確かに野球に似ているような気がする。

 サンちゃんはいいことを言うな。なら俺の投げたいボールはなんだろう。

 

「サンちゃんだったら何投げる?」

「俺? 俺は断然、ストレートだな!」

「理由は?」

「真っ向勝負こそ一番! 相手の気持ちもわかるし、これが最も俺に向いているからな!」

 

 実際ストレートしか投げないからな、サンちゃん。来年以降は新しい球種を手に入れていると思いたい。まぁそのストレートは素晴らしいものなのだが。

 こいついつもサンちゃんのこと褒めてるな。

 

「ジョーロ。お前は何を投げるんだ。その場面にお前が立った時に」

「僕? う〜ん……」

 

 自分だったら何を投げるか。

 俺はサンちゃんほど真っ直ぐに決めれるほどの決定的な力を持ってはいない。

 となると、消去法で変化球を投げるべきか? フォーク? チェンジアップ? 

 

「変化球……かな。でもそれならそれで有りかも」

「へぇ。一応理由を聞いておくぜ。なんでだ?」

「こちらのペースに持っていて、相手と楽しく対話をしたいからかな」

 

 自分が最も納得した理由を述べる。

 こちらはお礼する立場なので、相手を楽しませつつ、それで持って会話のペースをこちらに寄せていく。

 そこからは流れで持っていく。

 

「まぁジョーロらしいよな」

「そう? ありがと」

「いいってこんくらい。で、どう会話をしていくんだ?」

「そこなんだよね……、最初はお礼から始まるけど、その後からなんだ」

「ほう? その言い方。一応はあるんだな」

「うん……僕が思い浮かんだのは」

 

 俺は昨日から用意していたプランをサンちゃんに説明をしてみる。自信たっぷり、パーフェクトプランだ。相手は楽しくなる。

 

「自分語りをす「それはダメだろ」る……」

 

 会話を遮ってまで言うことかよ。

 だってジョーロ、これしか浮かばなかったし? 自分の現状を愚痴みたいな感じにこぼして共感を誘っていくスタイルしか浮かばなかった。というかこれが一番だと思ってそれ以降考えなかった。

 だってこれが一番純情鈍感感出てるんだもん。俺は悪くねぇ。

 

「でも趣味とか聞いたらなおさらナンパっぽく見えない?」

「見えるな……」

 

 八方塞がりだ。どう見てもデートだもんなこれ。そういった気持ちはないのにそう見え始めたらもうそれにしか見えんぞ。

 もうそれでいいのか? いいんですか!? 

 

「もうそれで割り切っていくしかないよね……」

「まぁ、そうだな。会話の内容次第では誤魔化せるが、同級生に見られた時どう話したって付き合ってると見なされる可能性もある」

「あ〜。確かに」

 

 俺はまだいいけれど、チェリーさん側からしたら甚だ迷惑極まりないものだ。

 お礼をしたいだけなのにここまで発展させられてしまうことある? ないだろ。

 しかしサンちゃんの意見はもっともだ。可能性の一つとして念頭に入れないとな。

 ならなおさら割り切って歩いていくしかない。別に手をつなぐわけでも腕を組むわけでもないし。

 ま、まぁ? あっちがその動作を求めてくるのなら? 俺は別に? 構わないけど? 

 

「……ちょっとトイレ行ってくる」

「うん」

 

 サンちゃんがトイレに直行したところで俺はさらに思考を凝らす。

 どうしたものかな。基本的にはチェリーさんのしたいことに任せなければいけないのに。

 話は自分のペースで待っていけばいいが、チェリーさんの要求には必ず応えなければならない。それで行こう。

 やると言ったらやる。それが俺のモットーだからな。

 一息ついて、俺は窓の外を見た。

 

「…………えっ」

 

 そこにいたのは練習着を着て、テニスラケットを背負っているひまわりだった。

 当然のことだが、ばっちり目と目があった。

 この後の行動はもうわかってる。幼馴染だから、わかってるんだ。

 ほんの少し間をおいて、ひまわりが視界から消えると誰かが入店する音が聞こえた。

 そしてまっすぐこちら側に向かってくる向日葵の髪留めをした少女が、俺と対面せずに、俺の隣に座って背中を強く叩いた。

 

「ジョーロ!」

「いっっっ……!」

 

 馬鹿野郎お前この野郎お前! 

 店の中でやることじゃねぇだろそれ……! 

 クッソいてぇ〜〜〜っ! 

 外ならまだ声を出してリアクションできるけどここ店内だから! 店員もお客さんもこっち見てるから!

 

「? ……ジョーロなんか元気ない? ひまわりちゃんパワーじゅ〜でんしちゃう?」

「あはは……大丈夫だよ、ひまわり。うん、ありがと」

 

 社会的に殺す気かよこの女。

 ほらもう周りの視線が痛いじゃん! なんてことをしてくれるんだ。店内じゃなかったらやらせたのに。

 

「それで、ジョーロはなんでここにいるの?」

「それはね……」

「おっ、ひまわり。お前も来てたのか。呼んでたのか?」

「いや偶然」

 

 しかしひまわりの介入は予想できなかった。部活帰りか。サンちゃんの後に終わったってことだから、もうそんなに時間が経ってたのか。

 サンちゃんが座って、俺の隣にひまわりがいる状態だ。

 

「で、今まで何してたの?」

「あぁ、今度女の子と遊びに行くから、その相談をしてたんだ」

「お、女の子!?」

 

 内容的にはあってるな。

 サンちゃんがそう言ったあと、ひまわりは顔を赤らめて俺の方を見た。はい完璧。これは俺に惚れてますわ。

 さすが幼馴染よ。惚れてる女じゃないとこんな顔はしねぇんだわ。

 キョロキョロと、俺のサンちゃんの顔を見つつ、ひまわりを下を向いて恥じらう動作をしている。エクセレント。

 

「で、それでどこに行くべきかで話し合いをしているんだ」

「はいはーい! わたしバッティングセンター行きたい!」

 

 お前の行きたい場所を言うのかよ。意見じゃねぇのかよそこは。

 バッティングセンターか……。俺が? 

 そんな身体に見える?

 

「バッティングセンターか! 悪くないかもな!」

 

 そりゃそうでしょ。

 

「他なんかあるか? ひまわり」

「えっとねぇ……」

 

 ひまわりの意見を聞く流れに完全になってきているので、俺はこのままひまわりの言葉を待つことにしよう。

 俺とサンちゃんで意見がなかなか出てこなかったし、ひまわりなら一石投じる神がかかった意見を言ってくれるかもしれん。

 だって女の子だし。

 

「あとね、服! かわいい服を着たいなぁ! それでね! 手を繋いで街を歩いておしゃれなカフェに行くの!」

 

 ガチのデートのやつじゃねぇか!

 ひまわりにそんな願望が……? 今度連れてって行くか。

 

「なるほど……」

 

 とりあえずそれっぽいこと言っとこ。意見を真面目に聞きました感出しとこ。

 参考になるかどうかといえば、まぁなるとは思う。チェリーさんがそれをしたいと言うなら俺はするつもりだ。

 

「ありと言えばありだよな」

「うん! まだあるんだ!」

 

 そう言ってひまわりはさらに続ける。

 一緒に運動したい一緒にご飯食べたいエトセトラエトセトラ。これ俺とやりたいってことでしょ? 

 しょうがねぇなぁ。夏休み中に一日ひまわりと遊ぶ約束でも入れるか。

 かわいい幼馴染だぜ。

 

「ジョーロ、どうだ? お前の意見も聞こう」

 

 挟み撃ちの形を提案すればいいのかこれ。

 

「ありかも……。女の子がしたいことをさせて、それに僕たち男の子が支える……みたいな感じで」

「おぉ! ジョーロわかってるね!」

「そうかな?」

「そうそう!」

「だな! そんな感じに行こうぜ!」

 

 まぁ用はあれだ。

 会話のペースはこちらに持って行き、チェリーさんがやりたいことをこちらは受け入れる。そんでもってなるべく要望を叶えれるようにしなければならない。

 今月も来月も節約生活だな……。頑張ろう。

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