ついに文化祭がやってきた。
久しぶりに俺視点から始まるぜ? 久しぶりだなぁ読者諸君。元気してたか?
「あなたの出番なんて誰が望んでいるのかしらね。オリジナル主人公の方がマシよ」
「うるせぇな。この作品の主人公は俺なんだよ。オリ主とかいうヒロインと結ばれることが確定した奴よりマシに決まってんだろ」
「解釈違いね。オリ主なら普通ハーレを形成するに決まってるじゃない。いっそのことあなたもオリ主化してみれば?」
「……ありだな。いっそのこと日記で書いてみるか」
「やめときなさい。貴方の駄文なんて誰が読むのかしら」
「誰にも見せねぇよ……っと、着いたぞ」
冬服を着てやってきたのは唐菖蒲高校。
休日の午前中にも関わらず、中は喧騒としており、俺たち以外にも一般人が中に入って行っている。今日は唐菖蒲高校で文化祭が行われる。
ちなみにだがうちの高校はすでに終わっている。特にラブコメイベントもなかったためカットだ。だらだらと過ごして終わっちまったぜ。
校門まで近づいたところで、パンジーが裾を掴んできた。
「本当に来てよかったのか?」
パンジーを慮ればここに連れてくるのは間違いだと思っている。あいつの事情を今更語る必要ないと思うが一応振り返っておく。
唐菖蒲高校にはパンジーを好きな奴がいる。その名も葉月保雄。あだ名はホース。典型的なラブコメ主人公であるとここでは紹介しておく。人の気持ちを思うことができない欠陥品とだけ考えてくれ。それでも好きな人はいるんだ。
「……大丈夫よ。せっかく友達が誘ってくれたのですもの。断る理由はないわ」
チェリーさんのことか。夏の図書室で絡んで以降ずっと会話をしていたらしいな。
俺も会話をしていたことが多かった。というか西木蔦の友達よりも話していたような気がする。
……っと、スマホのバイブが鳴る。待ち合わせの時間にそろそろなりそうだった。
「そうか。なら行くぞ。中であいつが待ってるぞ」
「……えぇ」
唐菖蒲高校の中に入っていく。夏休み以来入る高校の姿は賑わいを見せていた。外では部活動生がフランクフルトや焼き鳥、じゃがバターといった商品を売り出している。
少し中を歩いて花壇のあたりに行くと、そこに彼女はいた。ビオラだ。ビオラは三つ編みに丸メガネと、彼女のいつも通りを貫いている。ちなみに俺の隣にいるパンジーは丸メガネだけつけており、三つ編みは解いている。
イラストになることなんてないから配慮をしなくていいのに……。
ビオラはこちらの姿を見つけてすぐにパンジーと対局する位置、つまるところ俺の隣に位置取りしてきた。
「来たわねジョーロ君、それとパンジー。今日はめいいっぱい楽しみましょう?」
「そうね、今日は楽しんでいきましょう。ジョーロ君も気分がいいでしょう? こんな綺麗な女の子と歩けるなんて」
「内面は綺麗じゃないがな」
「「どこがよ」」
俺はその言葉を無視して、とりあえず先行して敷地内を歩いていくのだった。
※
パンフレットを受けとって学内を歩いていく。文化祭でやっていることはどこの高校も変わらねぇもんだな。ストラックアウトなりお化け屋敷なんなりだ。正直見飽きた感ある。
その点うちの高校はすごいぞ? なんと文化祭の前には繚乱祭という祭が開催されて、めちゃくちゃでけぇイルミネーションが使わられるんだ。すげー綺麗だぞ。無理やり出した感すごいけどな!
「ジョーロ君。あそこに寄って行きましょう」
ビオラが指をさした先は図書室だった。懐かしいな。夏休み以来だ。
……そういえばビオラしか見ねぇが、チェリーさんやつきみは今何してんだ? シフト中か? それならビオラもありそうだが、どうにもこの女、忙しくなさそうだ。
「そうだな。とりあえず中に入ってみるか」
中に入っていくと真っ先に目に移ったのは女子生徒の数々だった。
隣の女性陣がうわぁなんて言って奥の方にいる男子生徒を見ている。その視線の先にいたのは真のラブコメ主人公であるあの男、ホースだ。先程から女子生徒たちはホースに向けて言葉を送っている。その言葉はこうだ。
「ホース君語彙力すごいね!」
「ホース君かっこいい!」
「ホース君……このあと予定あるかな?」
などなどだ。正直羨ましい。
あいつを囲んでいる人間を思い浮かんでくれ。……そう、女子生徒だ女子生徒。
次にハーレムもののアニメやラノベを浮かべてくれ。浮かんだな。よし。
要はそいつらが全員ホースに向けて好意を抱いている状況を俺たちは目にしているんだ。羨ましいったらありゃしない。
「そんなにハーレムしたいのかしら、あなたは」
パンジーが訊く。
「男の憧れみてーなもんよ。一度は夢見る」
「あれは夢見てないと思うけど」
「あれは別だ。日常的にされたら慣れるだろ。あいつにとってあれは当たり前なんだからよ」
ぶっちゃけ去ろうかなと思っていたところで、ホースと目と目が合う。
その瞬間、俺に助けを求めるようにこちらに向かっていった。
「や、やぁジョーロ。久しぶりだね! 元気そうだ。何かいいことでもあったかい?」
「お前の困っている姿を見るのが一番元気でるよ」
「いやな趣味してるね!?」
と言いながらも笑っている。
はっきりいってこいつとは気まずい。夏祭りが終わったあとこいつに向けて知ったかぶりぶった言葉を発しまくったからだ。端的に言えば周りの女のことを考えろと伝えた。
それでどう影響して今まで至っているかはわからないが。ある程度はチェリーさんから聞いていた。
なんでも、パンジーを好きな人と見なしていない可能性が浮上したとか。ぶっちゃけこの女の好きな要素をあげるならば真の姿と、いつも落ち着いていて時には助けてくれる、ところだろうか。
「ビオラもいるんだ。二人は知り合い?」
「う、うん……ちょっと、色々と……」
社交性仮面かぶるのはっや。音速かよ。俺だってすぐに対応するのまだできてねぇんだぞ。ひまわりに叩かれた時なんてすぐにボロが出そうになるからな。
ビオラの気弱演技に特に疑問を持たないホースは、いつの間にか俺の後ろに隠れていたパンジーの姿見を捉えた。
「後ろにいる女の子は……」
「こいつは俺の友達の……パンジーだ」
いつも呼んでいる呼び名で紹介をする。
ひょっこりと顔を出したものの、ホースにはすぐに見破られた。
「……ここだとまずいし、少し人のいないところで話そっか」
なんとホースはそんなことを言って図書室から出ていった。付いてきてと一言加えて、そのまま前を向いて歩いている。
それに面食らったか、パンジーの頰には汗が流れており、驚嘆の顔を浮かべている。
「以外だわ。まさか彼がそんなことを言うなんて」
小声で話していく。ふと後ろを見ると、怪訝そうな目をして女性陣たちがこちらを見ていた。そろそろ立ち去ったほうがよさそうだ。
「あっ、立ち去る前にこれ持ってってよ」
そう言ってビオラが渡してきたのは一つの小冊子だった。
「なんだこれ」
「部誌だよ。私も書いたしあいつも書いたよ。暇だったら呼んでね?」
意外と束のある部誌だ。中をパラパラとめくると書いた人の名前が載ってある。ホースの名前があればつきみの名前もあり、ビオラも普通にいた。なんかこいつだけページ量が多い気がする。
とりあえず、ホースについていかなければあいつを見失ってしまう。俺たちは図書室を後にして、ホースについていくのだった。
廊下内を歩くと人がかなり増えていた。いつかの夏祭りを沸騰させる。ホースの姿はこちらでもわかるくらい目に移っていた。
というかあいつ目立ちすぎなんだよなぁ。周りの女子生徒キャーキャー言ってるもん。あれが平常運転なのか?
「ホースに歓声送ってる奴らって毎回いんのか?」
「あれは二、三年生ね。まぁ、彼は一年生の廊下しか基本歩かないから見かけるのが珍しいのよ、写真越しで見るよりカッコよかったとかいう有名人に送る言葉と同じようなものよ」
「そういうもんか」
「そういうものよ」
「中学の時もそうだったわよ」
「じゃああれが平常運転なんだな」
羨ましいを通り越してかわいそうとも思ってきた。あいつはあいつなりで苦労している。
迷惑を被ってると思うが、この問題の解決にはいどまないのだろうか。
「加えて、ホースが歩くときは基本つきみがいたからってのもあるわね。今はいないから」
「……なるほどな」
仕事で忙しいのだろうか。つきみのクラスは何をするかは知らないし、ホースの事情が終わったら行ってみるとするかな。
そんなこんなで屋上にたどり着く。鍵は空いていた。ビオラの補足によると、卒業生が鍵をぶっ壊したのをずっと放置しているのだとか。
「やっと落ち着けるね」
そう言ってホースは頰を爪でかいている。
ホースは仕切り直したところで、改めて話し始めた。
「久しぶりだね、菫子」
やはりホースはパンジーの正体を見破っていた。観察眼が優れているのか、それとも主人公による補正か、ともあれ気づいていたのは事実だ。
「……えぇ、そうね。久しぶりね、葉月君」
パンジーは俺の後ろに隠れることなく、ホースと面と向かって会話を試みていた。俺とビオラに介入する部分はないため、大人しく見守ることにした。
「こんなところに移動させた理由は?」
「……言いたいことがあるんだ。それを言うには、誰もいない場所の方がいい」
パンジーの顔がこわばった。俺の服の裾を掴んで、落ち着きを取り戻そうとしている。
「言いたいことって……?」
そうパンジーが言うと、ホースは距離を詰め始めた。こちらを握る手が強くなっていく。
俺も俺とで緊張してきた。
「ごめん菫子。今まで迷惑をかけて」
ホースは頭を下げて謝罪をした。
ぶっちゃけ俺はホースの謝罪に内心どちゃくそ驚きを覚えていた。
その言葉が本物なら俺はホースに対する評価が覆ることになる。何せあいつはラブコメ鈍感主人公で周りの行為に気づかない人間だから、と言う考えを持っているからだ。
だからこの場にいる誰もがその行動に驚きを隠せなかった。
「どうした謝るのか、聞かせてもらってもいいかしら?」
冷静を取り繕ったパンジーが声を出す。
「僕は今まで、菫子に酷いことをしてきた」
「……」
「君の気持ちも考えずに、自分の好意だけを押し付けて、それで迷惑をかけた。だから、謝罪をしたい」
「なぜ、今になって?」
それでもパンジーの声は震えている。精神的優位を確保できてはいるが、感情はまだ隠せていない。
「気がついたんだ。とある人物の言葉がどうにも引っかかってね」
俺はすぐさま目線を逸らした。名前を出されるとややこしくなりそうなのでその願いを込めてだ。俺の意図を受け取ってくれることを期待するよ。
「……本当に、悪いことをした。好きになる資格すらもないよね」
「そんなことは……ないわ」
「えっ?」
掴んでいたものを話して、パンジーが前に出る。震えた声も、隠せない感情もまだ出ているが、それでも話さなければという意思が見えた。
「私も私で、葉月君に助けてもらったことが、多かったから。……だから、感謝も、してるの」
「菫子……」
なんかめっちゃいい雰囲気なってる。
俺のアドバイスがどうやら有効な方に働いたらしい。夏祭り終わりに俺が話したことをどうやら自分で答えを見つけたようだ。正直ここまで成長するとは思わなかった。
はっきり言って上から目線の突然現れた男による説教じみたものだからな。友達の言葉だからってのもあるのかもな。
「ありがとう……最後に一つ、言いたいことがあるんだ」
「何かしら……ホース」
「! えっと、その……ちょっとまってね、パンジー」
パンジーは許した。だから名前で呼ぶことにした。一度生まれた隔たりを狭めるのは難しい。けれど、まだ仲良くなりたいということなんだろう。涙流れてきた。
ホースは息を吸い込んで、意を決したような表情をして、告げた。
「パンジー、僕は、君のことが好きだった」
「あら。だった、ということは今は他に好きな人がいるのかしら?」
「うん。僕が今、文化祭の日までずっと悩んで、本当に好きな人は誰かを考えた結果、彼女の顔が浮かんだんだ」
チェリーさんだったらいいな〜〜〜。逆転ホームランで優勝してくれたらいいんだが。
その時は素直におめでとうでも言っておこうかな。
「夕方にキャンプファイアーがあるんだ。……そこで、僕は告白をする」
覚悟を決めた男の言葉は硬い。
ホースは強い男だ。そんなことは散々ホースという人間に考察をした俺が知らないはずがない。
告白か。漠然としていて、それでいて身近にあるものだ。俺もいつか告白をする日が来るのだろう。その相手はいつかは見えてくるものだし、自分が気づかないうちに好きになっていた人間に対して好意を向けるかもしれない。もしかしたら俺も誰かを好きになってんのかもな! なんつって!
「僕の話は終わり。そろそろ行こうか」
「あ、あぁ……」
はてさて、ホースの好きな人は一体誰なのだろうか。俺の知らない相手か、それともチェリーさんか。どうなるかは俺にはわからないけれど、今日の夜には報告がやってくるかもしれない。チェリーさんならいいんだが、なぜかそう考えると、胸がキュッと締まるような感覚が訪れた。