Cルート   作:油性

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俺とうちの文化祭③

 

 仕事が終わらない。前日の文化祭でも感じたけど、思ってたより多い……! 

 うちもやるべきことがあるのに! 果たすべき目的があるのに! 

 開会式が終わってからというもの仕事が思ってたよりあった。まず第一にうちのクラスの出し物である演劇があった。これは午前中以降は公演がないため、ジョーロっちが見に来ることはないんだけど……。

 自分がしくじってしまったことの顛末は片付けなければならないよねって。

 

「…………」

 

 無言でクラスメイトたちと掃除を行なっていく。うちのドジがもたらしたものはこうだ。演劇内で使われていた道具がうちが動いた瞬間、その弾みで観客側に飛んでいき、その観客の持っていた開きかけのペットボトルに直撃、観客にけがはなかったものの、衝突したペットボトルがこちらに飛んでいき、開き、飲み物がステージに溢れてしまったのだ。それだけなら良かったんだけど、うちが演技を終えて帰るときに間違ってそこを踏んでしまって転び、履いていた上履きが外れ、ステージの背景に衝突。その結果背景は崩れ落ち、結果的に演劇はそこで終了を迎えた。

 文字起こししたところでうちにも理解できないや。なんだこりゃ。

 むしろこの姿を見て満場一致で喜んでいた観客の方がすごかったよ。うちは知らない間にとんでもない失態を犯しているのかもしれない。

 

「あっ桜原さんは校舎側の方に行って大丈夫ですよ」

 

 クラスメイトの一人が話しかけてくる。うちにそれが通ると思わないでほしいね。自分の行った責任は果たさないといけないのは当然なんだ。

 

「流石にそういうわけには……」

「ここだけの話桜原さんがいると掃除が進んでないっていうか、むしろ後退してますね」

「えっ」

「気づかないうちにドジって汚れを増やしてますね。ぶっちゃけやばいです」

「うぇぇ……?」

「やばいですね☆」

「そんなとってつけたように星を付けなくても……」

「とにかく行ってください、お願いします!」

「……わかった」

 

 仕事終わっちゃった……。

 ぶっちゃけ落ち込みが激しい。自分ってそんなドジだったんだ……。最近出番多かったから極端なドジ描写減らしたのに……。

 いつも出てくるキャラクターの個性がドジキャラだからといっていつもドジると思うなよ……。天海春香の一日三回転んでるところとか見たことないでしょ……、あっても二回くらいじゃん……。ともかく心に傷を負ったのは間違いない。

 とはいえ切り替えなくてはならない。うちは校舎の方へ向かっていった。

 今頃はビオラっちがジョーロっちとパンジーっちを案内している頃だろう。正直混ざりたい気もするが、流石に今の位置を特定するのは難しい。会いたいといえば会いたいが、どうやって会うべきかわからない。ケータイを使うのは今じゃない気がする。

 中を歩いてみるけどそれらしい人物は見当たらない。いったいどこにいるだろうか。

 屋上とかにいたら探しようもないし、そもそもここから遠いから行く気にもならない。

 はて、これから何しようか。

 

「いたいた」

「ん?」

 

 振り返るとそこにはつきみっちがいた。

 地縛霊のコスチュームだろうか、それを着こなしており、普通に似合っていた。

 ……胸の主張すごいな。わざとかな? 

 

「つきみっち、その格好、その……すごいね」

「似合ってる?」

「それはもう」

「ありがとう」

 

 周りの目も奪われている。コスプレしている人は他にもいるけれどその人たちですら見ている。

 

「ここで何を?」

「ちょっとやることがなくなったから、暇を潰しに散策を……」

「ならちょうどいい。行くよチェリーさん」

「どこに?」

「ワタシのクラス」

 

 

 というわけでやってきた。

 教室は大盛況で人も多く並んでいた。

 

「ジョーロたち、今図書館にいて、屋上に向かおうとしてる」

「……? なんでそうなったの?」

「ビオラが図書室に案内して、そこでホースに会った。そしてホースが屋上に連れていったって流れ」

 

 ホースっちがそうしなければいけない理由でもあるのだろうか。

 ……うちとつきみっち以外との女の子に絡まれていたのかな。大いにあり得る可能性だ。友達が来たことでその会話に区切りをつけて場所を移動したのだろう。

 じゃあ何を会話しているんだろ。脳によぎったのはつきみっちと話し合ったホースの書いた文章だった。

 誰かしらに告白をするという告白を今しているのか……? 

 

「そろそろ来そう」

「それもそうだね。……うちはどうすればいいの?」

 

 うちはうちの気持ちを確かめるべくジョーロっちと一緒に行動をする必要があるが、その機会は少ない。行動するためには条件がある。

 まずはパンジーっちとビオラっちからジョーロを離さなければならない。ぶっちゃけうちには無理である。それほどの権利を行使する力をうちは持ってない。

 おまけにホースっちも付いている。正直気まずいなんて話はごまんとしたので今更繰り返すつもりはないが、ともかく一緒にいるってのが問題だ。……仲直りをすべきとは思うけど、口実程度にしかこの言葉を使用することができない。

 上述した条件に加えてその三人にうちの意図を気づかれてはならない。たった数秒、または数分間だけいればうちは自分の気持ちを判別できる自信がある。一度恋愛した身だ。経験則から判断することはできる。

 

「簡単」

 

 つきみっちは人差し指を指して得意げに言う。

 

「うちのクラスの出し物は覚えてる?」

「お化け屋敷だよね」

「じゃあ、中身は?」

「中身……?」

 

 溜め込んだ仕事についての記憶から該当する記憶を引っ張り出す。

 

「あれだ。距離を開けて中を散策するやつ。道が何個か別れてるっていう……」

「そう。そのルールをまずは破る」

「えぇ?」

「ジョーロが入った後にチェリーさんがついていく。昨日数えたけど九割の人間が奥の方に行く」

「欠陥では?」

「……一応成立してるから大丈夫」

「そう……」

 

 本人がそう言うならいいか。複雑な内容がその内容通りに理解されるとは思わない。

 説明不足かもしれないけどまぁ、出し物の名前が運命の道って書いてあるからそこから察してくださいと言いたいのだろう。

 

「作戦はこう。ジョーロの後ろからチェリーさんが入る。偶然の遭遇を装う。アトラクションを楽しみながら本心を知る。終わり。ワタシ、天才」

「あはは……」

 

 つきみっちがここまでやってくれている。うちのためにここまで配慮してくれている。その気持ちに応えずして何が友達か。

 うちはやり切るぞ。もう公開は残さない。

 

「……あっ、ホースたち来そう。チェリーさん隠れてて」

「隠れるって言ってもどこ───わっぷ!?」

 

 顔を誰かしらの胸元に押し付けられる。恐る恐る上を見ると見知った顔がいた。

 リリスっちだ。顔を赤らめながらリリスっちは片腕でシーっと、人差し指を口元において静かにしてという動作をする。

 

「チェリーさん」

 

 静かな声はゆっくりとうちの耳の中を通っていく。顔に伝わってくる温度が暖かい。

 

「大好きですよ」

「なっ……!? えっ!?」

「声抑えてください! 来ますよ!」

 

 リリスっちはうちの後ろに何かしらのものを覆いかぶせている。パンフレットが復路のあたりだろう。

 うちの特徴である桃色の髪の毛を隠すためだろう……。これ悪目立ちしてない? 

 大半の生徒は自分のことに集中しててこちらに見向きをしないという状況を作り出せるのが文化祭だ。信じるしかない。

 

「……行きましたよ。つきみさんも接客してます」

「えっあ、あぁ、うん」

 

 落ち着いて顔を見ることができない。これは友人としてのライクなのか、それとも一人の女の子としてみるラブなのか。

 

「ふふふ。伝えられてよかったです。……これで私の後悔はないですっ」

「うち、思わなかった。リリスっちに告白されるなんて」

「思いに嘘はつけませんから」

 

 心に刺さる言葉だ。その通り、自分の気持ちに嘘をつくことはできない。前だけを向いたからといって後ろにある後悔とか、思い出は見なくても理解させられる。

 そうだ、その通りだ。一度は否定した気持ちだからもう嘘はつかない。確証のない想いに決着をつける時がきた。

 

「行ってきてください、チェリーさん」

「うん!」

 

 ジョーロっちが教室内に入っていくのが見えた。そしてその後ろの列には誰も並んでいない。絶好のチャンスである。

 つきみっちが手招きをしてくる。準備は整った。うちは覚悟を決めて、教室内に入っていった。

 

「……見えなくはない、かな?」

 

 周りを見渡してからひとりごちる。

 入った瞬間教室の扉が勢いよく閉められてビクッてなってしまった。

 左を見れば確かに道はあるが、それは仕掛けを知っている側の人間だからこそ見える道であり、仕掛けがわからない、又は装飾品とかに気を取られた場合は目の前しか見れないという心理的側面がそこにあるのだろう。

 目の前に一人の男子生徒が薄暗く見える。キョロキョロと周りを見ながら歩いているが、その足取りはどこかふらついている。

 うちはその人物を追いかけ、偶然を装っているかのように、話しかけた。

 

「あれ、ジョーロっち?」

「えっ?」

 

 後ろを振り向いたのはやはりジョーロっちだ。うちの顔を見て面食らっている。

 

「何してるんですか?」

「いや……、見回り中につきみっちに中に入れられて……あっ」

 

 おっと、つい勢いに任せて話を進めようとしてしまった。言葉からドジを踏んでどうする。ここまで来たらドガなんて発生しないし、心の赴くままに行くとしよう。

 

「あっ……?」

「い、いや! なんでもない。なんでもないっしょ!」

 

 思ってたより慌てちゃった……。

 ともかく気を取り直していこうと思うんだけど……。顔を直視できない。暗くても一応は見えているため無個性極まりない顔(褒め言葉ね)を捉えることはできている。

 どういう感じに接してたっけ、ジョーロっちこと。

 

「とりあえず出ましょうか」

「そ、そうだね……」

 

 仕切り直されたところで、気を張ってジョーロっちの前を歩いていく。というか歩いてしまった。なんとなしに気まずい気分になってきて、そのまま直進してしまう。

 

「うおおっ!?」

 

 後ろから驚く声が聞こえる。うちも呼応するかのように緊張感が迸る。

 

「どしたのジョ……わっ!?」

 

 身体ごと振り返ったうちはジョーロっちに押し倒されてしまった。ジョーロっちが何かしらの原因で体勢を崩してしまったようだ。

 

「あっその……」

「…………っ」

 

 ……なんて解説しておいてなんだけど、今うちはすごくドキドキしている。この感覚は久しぶりに該当する。顔が近い、身体が密着している。このままうちは何をされてしまうんだろう。目を閉じたら、彼は何をしてくれるのだろうか。

 胸が触れていることを気に止めることがない。身体の大事な部分を許してもいいほどにうちは許容している。

 怖い、凄い、どうなる。そんな考えがぐるぐると回ったところでジョーロっちが離れていく、いや、離れてしまうの方が正しいか。

 

「す、すみません! すぐに離れますね!」

 

 手を離されて即座に立ち上がるジョーロっち。男性として当然の行動であり、常識的な行動としては正解だ。

 だけど、うちはどこかで寂しさを感じていた。肌の感触がまだ残っている。

 まだ緊張してるけど、これは吊り橋効果なんかで手に入れた心ではない。正真正銘の、本物の恋心に当てはまっている。

 ……はっ、落ち着け落ち着け。まずは落ち着いて、ここから出よう。そのために一旦謝っておこう。安易に振り返ったうちも悪いし、うん。まんざらでもなかったけど。

 

「うん。こっちも、その、ごめんね?」

「あっ……はい……」

 

 すっっっっっごい落ち込んでるよ。

 うちが確認できているジョーロっちの顔は赤く染まっている。平静を取り繕うとも隠せないものは隠せない。

 うちだってそうだ。どこかの部位が赤色に染まっているかもしれない。お互い様だ。

 そのまま特に話すことなく出口を出ると、目の前にはビオラっち、パンジーっち、そして、ホースッチがいた。

 

「遅かったねジョーロ……、あれ。チェリーさん?」

「あっ、ホースっち……」

 

 後ろに控えている女子達の目線がうちに刺さっていた。いにくい。凄い居心地が悪い。目的を達成したとはいえ、これはこれで心に刺さっていく。

 このままいけば彼女らがジョーロっちを独占して会話を進めていくこととなるはず、うちができることはもう成し遂げた。あとはこの場からの脱出……。口実となるもの……。

 …………………………………………。

 

「あっそうだ、うちホースと話したいことがあったんだ! ちょっと借りてくね! 行くよホースっち!」

「ぅえっ、ちょ、チェリーさん!? 腕引っ張る力が強いたたたたたたたた!」

 

 うちはホースっちの手を掴んでそのまま逃げ出した! 駆け込んだ先は中庭だ。

 お互いに息切れをして、一息をつく。

 さて、ここからどうしようか。うちなんも考えてないや。やっべぇ。

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