Cルート   作:油性

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俺とうちの文化祭④

 

 中庭に来たうちらはとりあえず息を整えた。何も考えずにあの場を脱出した、というわけではない。正直気まずかったという部分はかなりある。うちとパンジーっちとの間に築いた友情は崩壊の音を立てているかもしれない。けれどうちは後悔しないって決めたから、このまま行くことにするよ。

 後ろを見るつもりは、ない。

 

「それで……、話ってなんですか?」

「…………ふぅ」

 

 息をこぼす。そして深呼吸をして心を整える。仲直り、というわけではない。うちとホースっちの間を隔てた壁はうちが告白したからこそだ。いわば心理的な側面。

 だけど思い返せば、もううちにはそれを作る理由はもうないんだ。

 だってうちにはもう、好きな人と呼べる人物ができてしまったのだから。

 

「話があるってのはその、二つあって」

「二つ?」

「一つは、夏祭りのあの後からできちゃった心の壁。あれをもう無くそう。今まで通り普通に行きたいな〜って……どう?」

 

 ホースっちから目をそらしながら言ってしまう。まだ怖がってる証拠だ。

 

「……そうですね。僕も、距離をとっちゃった感じで、ごめんなさい」

「こ、こちらこそ……」

 

 なんだこの謎の会話は。

 ……まぁ、こうなることは鼻からわかってきたこと。本題はこのあとにある。

 

「さて、二つ目なんだけど、ホースっち、今好きな人いるよね?」

「……それはいますし、というか知っているのでは?」

「違う違う。ホースっちが好きな人って、パンジーっちじゃ、ないよね?」

「……! なぜそれを?」

 

 さぁ、ここで語ろうではないか。

 うちとつきみっちとホースっちの好きな人は誰かについて会議をして、うちが導き出した結論を───! 

 

 

「残りの二ページを進めていこう」

 

 つきみっちはそう言って部誌をめくって、そのページを凝視している。

 

「ちょっと飲み物入れてくる。飲みたいのある?」

「烏龍茶」

「了解っしょ!」

 

 そう言ってうちは立ち上がって、コップを二つ持ってドリンクバーまで歩いていく。

 

『否であり、この結論は空虚に等しい』

 

 部誌に記されている言葉が頭の中でぐるぐると回っている。ホースっちの心情を読み取ることに意味なんてものは、うちにはない。

 単なる興味であるが、つきみっちの相談に乗るために来ている間がひしひしと出てきている。

 答えをさっさと導きたい。好きな人を知る権利は、断られたうちにもあるよね。面倒な女かよ。

 

『「好きです」の言葉に、自分はなんと答えただろうか。「私には好きな女の人がいる」でもなければ、「今は部活が忙しい」という言葉を投げかけたこともない』

 

 思い返せば見たことがなかった。

 ホースっちが告白されるシーンは何度も見たことがある。あの頃は告白する場所の陰に隠れてこっそりつきみっちとのぞいていたものだ。

 ありがとう、ただ一言言い、ごめんなさいと言ってその場を去っていく姿が思い浮かぶ。発言はコロコロ変えていたため、定型文で告白を断っていたことは一度もなかった。一人一人、ホースっちにとって大切な人物であるため、真面目に、真摯に受け止めて、告白を断っていた。

 

『そんな告白を幾たびも行われれば答える側にもマンネリが生じてしまった。失礼ではあるけれど、信条としては正しく、その人間は今になって後悔を感じていた』

 

 だから後悔を感じ始めていたのだ。

 初めから、好きな人がいると公言していればこのような連鎖が生じることがなかった。可能性としては浮かんでくるとはいえ、本人が言っていなければそれは本物にはならない。

 だからホースっちは自分が貫いていたやり方に後悔を感じ始めた。その理由は、やはりジョーロっちか。

 マンネリが生じるなんて極まりないことだが、そもそもこの作品がホースっちの心情を表しているかどうかは不明なのでそこに関しては特に断言することはない。まぁ十中ハ九そうだと思うけど、思わなきゃこの場にいない。

 

『気持ちを慮らず、自分のことしか考えていないものに付いていく人間なんて存在しない。それでも付いてきてくれる彼らは』

 

 図書館で読んだ部分はここまで、ページはまだまだ続いている。その後の展開はこうだ。

 なんやかんや後悔しているのがこの物語の人間であり、イコールでホースっちだ。

 その人間は、こう言った。

 

『私は決心しなければならない。自分の心に赴き、信じきり、最後に一緒にいたいと感じた人物と共に歩みたいという決心を作らなければならない』

 

 果たして、この人物は一体誰なのか。考察の肝であり、ほんのりとうちの中で答えが出始めていた。

 コップに飲み物を入れて、席に戻っていく。

『後悔』を読み終えたつきみっちが、前を向いてこう言った。

 

「ホースの好きな人がわかった」

「えっ本当?」

 

 口角を上げてこちらを見るつきみっち。人差し指を立てて、最後の一文に指を伸ばした。

 そこにはこう書かれている。

 

『告白をするのなら誰がいいか、なんて無粋なことを聞くべきものではない。最後まで側にいたものが、思い続けてきたものこそが、私にとって一緒にいたい人間なのだろう』

 

 本文の肝心な部分であり最も心情が出ている部分だ。というかよくホースっちこれ書いたな。どんなアドバイスされたらこれで行けるって思ったんだろ。つきみっちだっけ? 誘ったの。

 ……いやー、そうだよなぁ、普通そう思うべきだよなぁ。つきみっちも“理解”っちゃったかな。至っちゃったな。“解答”が。

 ずずっと、飲み物を飲んで、安心したうちに対して、つきみっちはこう言い放った。

 

「やはり、菫子……!」

 

 うちは盛大にむせた。

 

 

 ジョーロっちが読んでいる本にライトノベルというものがあるらしい。簡単にいえば小説なのだが、美少女キャラクターの表紙と、一人称目線で書かれる視点。そして想像していた世界を挿絵で表現していく世界。それがライトノベルだ。メディアミックス化すると漫画にもなったり映画にもなるとか。

 その中のジャンルとしてラブコメというものがある。恋愛ものなのだが、主人公が最終的に結ばれる相手は、幼馴染とか、幼少の頃からの知り合いじゃなくて、物語の始まり(例えば高校生活の開始)で出会った女の子だったりする。

 基本的にそのタイプの作品は幼馴染は恋愛に敗北して、主人公の元から去っていく、なんてジョーロっちは語っていた。

 なんだっけ。最近では幼馴染の勝利が確定する作品もあるらしいよ。今人気らしいね。

 

「ホースっちの好きな人は、パンジーっちじゃない、そうだよね?」

 

 改めて再確認をする。

 ホースっちはコクリと頷いて、うちからの次の言葉を待つ。

 ホースっちは作品内で「最後まで側にいた人物が〜一緒にいたい」と書いていた。もうこの時点で答えは判明している。

 中学生の頃になるが、ホースっち含めたうちらは常にパンジーっちの近くにいた。ホースっちがそうしたいから、当時好きだったうちらはそこについていった。

 だけど高校からはパンジーっちはいない。そして夏祭りまでは平常運転で、言葉に出さないもののホースっちはパンジーっちのことを好きでいた。

 だけど二学期からは違う。何か思い詰めるように窓の外の景色を見て、そしてこれを書いた。側にいたうちなら好きな人なんてすぐにわかるし、場合によっては他の人、ふぅちゃんとかも知ってるんじゃないかな。

 回りくどいことはこれくらいにして、結論を言おう。

 

「ホースっちが“今”好きな人は、つきみっちだよね」

 

 人差し指を指してそういった。

 面食らったホースっちは笑顔を浮かべて答える。

 

「よくわかったね、チェリーさん。なんでわかったの?」

「この作品を書いた時点でそうなんじゃないかなって思ったよ。心に浮かべたことを書けばいいとか言われなかった? つきみっちに」

「……もしかして、出しすぎた?」

「それはもう」

 

 あちゃーっと手を頭においてホースっちはうなだれる。

 

「いやさ、これでいいのかなって思ってた時に、つきみちゃんに『これでいい。ワタシはこの文章が好き』って言われちゃって……」

 

 つきみっちは逆になんでこれで気づかないんだ。鈍感主人公なの? 演じてるの? 

 つきみっちとホースっちの関係は幼馴染だ。手にとって読まれる物語なら結ばれることのない二人かもしれないが、この世界は物語ではない。うちらはうちらで生きている。だからこんなことが起きても不思議なことではない。

 

「好きになった理由、聞いてもいい?」

 

 うちは好奇心のままにそう訊く。

 大事なことだ。ここが分からなければ好きと言うことはできない。

 ホースっちは近くのベンチに座って、淡々と語り始めようとする。そのためうちも隣に座って話を聞くことにした。

 

「きっかけは夏祭りかな。そこで気づいたんだ。いや、気付かされたの方が合ってるかな」

 

 うちがホースっちに振られ、ジョーロっちが動きまくったあの日、何があったのかがついに判明する。

 何が起こっていたのか気になっていたから知れて嬉しいよ。

 

「あの日、僕がチェリーさんを振った日……」

 

 さらっと心を抉ってくるな、と思っていたけど心にきたダメージは少なかった。うちの事情は、まぁそういうことなんだろう。

 

「ジョーロがやってきてこう言ったんだ。人の気持ちに気づかないとねって。そこから僕の誤ちは僕の中で露呈していったんだ」

 

 うちはホースっちの話を淡々と聞いていった。

 

「思い返せば僕の周りには女の子たちがいた」

 

 モテ男〜〜〜っ。ジョーロっちが聞いたら手が出そうだ。男の夢の体現者だもんね。知らんけど。

 

「僕はさ、チェリーさん。みんなに好かれる人、だとか、平凡な主人公になるつもりなんてなかったんだよ、少なくとも自分が鈍感主人公になった気は微塵もなかった」

「…………」

「だけど僕はなっていたんだね。周りの女の子たちのことを考えずに、ずっと、僕は菫子のところに行っていたしね」

 

 中学校の時は本当にそうで、パンジーっちに告白させようと試行錯誤していた人間もいたほどだ。パンジーっちにとっては傍迷惑であり、それに気づかなかったうちらは糾弾されたっておかしくはない。

 だけれどそれを帳消しにするホースっちの能力は全てを霞ませた。悪い部分は心の中だけに残っている。うちなんかがその例だ。悪い部分が見えなくなるほどに輝いているホースっちが好きだった。

 

「僕は最初から、菫子に恋心を抱く権利なんてなかった。自分の行ってきたことを客観視して、本当に好きな人が誰なのかを考えてたんだ、ずっと。それが……」

「つきみっち、なんだよね」

「うん。どんな時にでも、ずっと僕のそばにいてくれた、大切な幼馴染だから」

 

 胸に手を置いて言うその姿からは真意が垣間見えた。パンジーっちが好きなホースっちはもういないようだ。

 

「告白しよう、とは思うけど。こんな僕を好きでいてくれるだろうか。コロコロ好きな人を変えて、軽薄な人物と思われないかな?」

 

 めっちゃわかる。

 

「……うちもわかるよ、その気持ち」

「やっぱりチェリーさんも新しい相手が見つかったんだ。相手は大方ジョーロでしょ?」

「うぇ……やっぱりバレてる?」

「僕が知る中で、チェリーさんと交友関係がある男ってジョーロしかいないからね……、というかそれ以外の男だったら、僕が話を聞きに行くくらいはするつもりだったよ」

「ホースっち……」

 

 責任を感じているのだろう。告白を断った人間としてやらなければならないことがそれかもしれない。

 ホースっちに告白をした人間は、実は指で数えるほどしかいない。なんなら片手で済む。理由は明確で好きでもチャンスが作れず、去って行く人が多いからだ。

 

「こう言うのも変だけど、お互いに頑張ろう、チェリーさん」

「うん……そうだね」

 

 うちもホースっちも決心している。

 人に嫌われる可能性のある告白をしようとしている。ホースっちにとってはそれは今日。うちは……、うちはいつこの胸の内を明かすべきなのだろう。便乗してクリスマスイブ? 刺されてもおかしくないよね……。

 告白はする。それは決定事項。……年内かなぁ。早ければいいのかもしれないし、ずるずる持って行くってのはもう懲り懲りだ。

 やると決めたら、やる、なんて。どこかの誰かさんが言ってそうなモットーだもんね。

 

 

 さてさて。文化祭は終わりを迎えようとしている。一般客は帰路につきはじめ、今は生徒たちがキャンプファイアーの準備を行っている。

 うちはそんな中、一人で屋上から外の景色を眺めていた。仕事は終わり、自由時間を貰って、ただゆったりと過ごしている。うちもうちとで考えなければいけないことが多い。

 この後のことももちろんそうだけど、うちの事情について考えないといけない。さっきまで聞こえていた軽音部の歌はもう聞こえてこない。

 

「…………」

 

 とりあえず、ジョーロっちとの予定を組んでおきたい。そう思ったうちはスマホを取り出してジョーロっちとのトーク画面を開いて、そそくさとメッセージを打ち込む。

 

『十二月、予定ある?』

 

 急に送られて変なこと思われないだろうか。やばい、不安になってきた。けどうちの指を止めるつもりはない。

 

『今年最後にはジョーロっちと遊びたいからさ、予定空けてくれるといいなーって』

 

 気持ちは軽く、思いは重く。そんな文章を淡々と送った。……すごい緊張感を感じる。

 断られたらどうしよう、なんて考えがぐるぐる回っている。

 ピロん、と、返事が送られてくる。内容は了承の旨だった。なんとか安心できた。

 さて、うちはこれから何をしようか。

 キャンプファイアーに火が点灯する。ゆらゆら揺れる炎を見ながら、キャンプファイアーの前で踊る生徒たちを眺め見る。

 見たことある影がいた。つきみっちとホースっちだ。

 

「うまくいってほしいなぁ」

 

 そう一人呟く。

 ……相談相手が欲しくなってくるなぁ。誰かうちの事情を知らなくても話を聞き入れてくれる人はいないだろうか。

 

「あっ、いる」

 

 しかし、今暇だろうか。今は土曜日、学校によっては学校はあるし、彼女の事情を考えれば仕事を行なっているかもしれない。

 でもここで止まったところで話が進まないから、うちは電話した。そしてすぐにその相手との電話はつながった。

 

『もしもしチェリーさん? 久しぶりっ! 何かあったの?』

「いやぁ……、ちょっと相談したいことがあって。今大丈夫、ライラックっち?」

 

 ライラックっちに電話をすることにした。

 彼女とは夏休みに知り合ったジョーロっちの友達だ。連絡を取ることは少なかったけど、この期に連絡を取るべきだと判断した。

 

『……うん大丈夫だよっ! 何か嫌なことでもあった?』

「うーん、違うかな。ちょっとした……恋愛相談を───」

『えぇ!? 私に!? ちょ、ちょっと待って! こういうの初めだから深呼吸させて!?』

「えっ」

 

 ライラックっちって普通にそういう経験あると思ってた。ど偏見にもほどがあるか。

 

『……ヨシ! 好きな人はどんな人かな!?』

「えっと、どこにでもいる平凡な主人公な見た目で」

『ジョー君ね。理解したっ』

 

 流石としか言えない。

 ジョーロっちのことを初めて好きになった人だもんね、なんかわかるのかな、シンパシーとか。

 

『そっかぁ……。ん? チェリーさんの好きな人ってジョーロっちじゃない別の人じゃなかった?』

「振られた後に色々あって恋心に気づいちゃって……」

『あぁ〜〜〜わかる〜〜〜!! いなくなって初めてわかるやつだよねっ!』

「……だから、その、どうアプローチしたらいいか、聞きたいなぁって」

『うんうん……なるほどね、簡単だよっ!』

「簡単って?」

『抱けば───』

「いや、それは流石に……」

『なんてね、冗談冗談っ! ……そうだね、ジョー君の攻略法かぁ……』

 

 うーん、という声が聞こえてくる。真摯に受け止めて、取り組んでくれる証拠だ。

 

『そのままでいいと思うよ?』

「えっ、そうなものなの?」

『うん、ジョー君と知り合って、今日まで一緒にいた中で、小細工がないと恋愛できないと思うことなんてあった? 多分なかったでしょ?』

「……それは」

 

 うちには確証なんてものはない。ジョーロっちがうちと付き合う未来の可能性がなきにしもあらずというところだ。

 

『とは言っても不安にはなるよね……、なんかものあげれば? 思い出に残りそうなもの。そろそろクリスマスだしねっ!』

「あー……、何かいいのあるかなぁ。うちができるのって編み物くらいだし……」

『いいじゃん! しようしよう! マフラーとか縫って!』

 

 提案されて、うちは思考する。

 ありだな、と思った。うちの唯一ドジを引き起こさずにできる特技は編み物くらいだ。

 

「マフラーとかあげたら重いかな?」

『いいと思う! 私だったら喜んじゃうな〜』

 

 方針が決定した。

 告白して成功したらマフラーを渡そう。

 …………………………………………。

 

「告白が終わった後渡す感じでいいかな?」

『渡すタイミングが他になければいいと思うよ。告白が成功したらアドバンテージ取れるけど、失敗したらディスアドバンテージだけどね』

 

 告白に有利不利があるものなのか。頭脳戦をするつもりで行けということかな。

 

『ならいい感じだね! 頑張ってねチェリーさん! 私の分も、ね?』

「うっ……、うん……」

『私はさ、一応振られた立場の人間だからね。よく相談しようと思ったよね、チェリーさん、いいんだけども』

 

 ライラックっちはジョーロっちに振られた人間だ。正直聞くこと自体が失礼に値する。けれどうちはもう後悔したくないんだ。

 

『でも、うん、いいかな。ジョー君がチェリーさんといた時、楽しそうだったしね。私思ってたんだよ? ジョー君の好きな人ってチェリーさんなのかなって、好きでもない人と北海道まで来るかなぁなんて思ってたもん』

「それはまぁ……うちも、思うかな」

『だから私は応援するよっ! ジョー君には幸せになってほしいしね!』

「……本当にありがとう、ライラックっち」

『いいって、私がそうするべきだと思ったからそうしてるのっ。進展があったら教えてねっ! それでは!』

 

 そう言ってライラックっちの電話は切れた。

 ここまで言ってもらえたんだ。もう後には引けない。ジョーロっちが心を傷つけた相手にも電話をする時点でうちはもう腐っているかもしれない。

 けれどそれでいい。悪魔に魂を売る覚悟で、うちはこの先も歩んでいく。

 まずは……家に帰ってマフラーでも縫い始めようかな。

 

 

 特に何事もなく閉会式が終わり、帰り道。つきみっちが校門で立っていた。

 

「やっほー、つきみっち」

「あっ、チェリーさん」

 

 いつも通りの無表情。だけどどこかほんのり頬を染めている。

 

「告白された?」

「!? 気づいてたの?」

「ホースっちの好きな人はつきみっちぐらいかなって、ファミレスの時に気づいて」

「……なんで言ってくれなかったの?」

「そういう顔が見たいからかな」

「いい趣味してるね、チェリーさん」

 

 と、後ろからそんな声が聞こえてくる。

 

「あっ、ホースっち」

「まぁ、言わなくてもわかるかな、そういうことです」

「うん。おめでとう!」

 

 素直に賞賛する。かつての好きな人が今幸せの中にいるということは、まぁめでたいことだよね。

 

「チェリーさんも、頑張ってね」

「ワタシも、応援する」

「あはは……、ありがとう」

 

 頰を欠いてうちは正面を見る。

 やることは決まった。さぁ、最終決戦だ。後悔はもうしない。

 

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