和風ファンタジーな鬱エロゲーの名無し戦闘員に転生したんだが周囲の女がヤベー奴ばかりで嫌な予感しかしない件   作:鉄鋼怪人

153 / 255
第一三七話

 月夜の空を背景に一羽の鳥が飛翔していた。

 

 いや、鳥ではない。鳥を模した精巧な模造品だ。鳥に見せ掛けた使役物だ。式神。簡易式……。

 

『……』

 

 上空遥か彼方を飛ぶそれは雲海を突き抜ける。一瞬白く染まる視界に、しかし直ぐに深い闇が戻って来る。雲を抜けた故にその身は湿っていた。無機質的な瞳孔には僅かに水気を帯びていて、却って其れが式が本当は生きているのではいかという印象を見る者に与えた。

 

 ……何処までも、見せ掛けに過ぎないが。

 

『……』

 

 目標上空に辿り着いた式が地表を睥睨する。地表の一角を見据える。

 

 戦闘が繰り広げられていた。幾多の奇怪な咆哮。唸り声。人と怪異の争い……。

 

『……』

 

 鳥は眼前の事態に介入する事はなく、ただ事の一部始終を観察し続ける。

 

『……』

 

 ひたすらに、ひたすらに。

 

 ……今は、まだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーー

妖の五感は人を超え、そして獣すらも超える。それどころか五感とは別枠の多種多様な感覚器官……第六感ともいうべきものを有する存在も珍しくはなかった。

 

 深夜、空は墨を垂らしたかのように深く黒く染まっている。禁地の深林が騒々しくざわめく。人ならざる住民共が歓声を上げる。それが一歩足を踏み入れた瞬間には、彼らはその持ちうる鋭敏な各種感覚器一杯に彼女の存在に気付く事が出来た。

 

 其ほどまでに濃厚で芳醇で強烈であったのだ。上質で膨大な霊気。子供だ。女だ。若い……幼い娘だ。下手すれば数里先の存在すらもそれを察知し得た。特上の獲物の薫りだ。御馳走の気配だ。

 

 それは正しく大移動であった。比喩ではなく雪崩であった。無数の幼妖小妖が濁流となる。それらを路傍の石の如く踏み潰して中妖大妖が全力疾走で赴く。妖獣がいて、妖鳥がいて、妖虫がいて、妖魚に妖物までがいた。我先にと押し合いへし合いの早い者勝ちの競争だ。

 

 そうして木々を押し退けて、同族を押し倒して、狂おしい程に焦燥し続けて……漸く彼らはそれを垣間見た。

 

 人の一団がいた。何十という大所帯だ。普段ならば当然のように襲いかかって食い散らかすだろう獲物共は、しかし今はどうでもよかった。怪物共の視線はただ一点に固定される。

 

 牛車の天井に立つ姫君。鮮やかで艶かしい桃髪。絢爛豪華な装束はまるで天女のようで、真白の裸足を晒して無垢な子供のように踊る光景は舞道のどの流派でもない独創の即興。以前見せつければその道の師が思わず惨めさから隠居してしまった程に美事な足運びであった。

 

 神々しいまでの、舞い踊りだ。

 

『…………ッ!!』

 

 芸術も文化も趣も理解出来ぬ低脳低俗の下等生物でも最低限の美の感性はあるらしい。妖共は僅かの瞬間確かに足を止めて見惚れた。情欲ではない。それを通り越した心酔であり、陶酔であり、崇拝であった。

 

 ……本当に一瞬の事であったが。

 

『グオォォォォォォォッ!!!!』

 

 怪物共は喜びの咆哮を轟かせる。妖は高嶺の花なぞという言葉は知らない。思い遣りの精神もない。欲しい物は力尽くで手に入れる。相手の気持ちなぞ考えるなんてありえない。どんな天上の存在とて引き摺り下ろし、簒奪し、略奪し、凌辱し、支配し、己の糧とする、それこそが妖の性質であり本分であった。

 

 だから怪物共は愛らしく踊る乙女に向けて殺到した。牙を剥く。爪を振るう。火を噴いた。毒を吐き出した。雷撃を放つ物もいて、異能で以て不可視の呪いを掛けんとする物すらいた。何百の悪意が彼女を得んとして一斉に向けられる。そして……それは怪物共諸共に塵と化した。

 

「虐殺だな。染みも残りやしねぇ」

「全くだ。まさか化物共に同情する日が来るなんざ思わなかったな」

 

 そんな事を軽口で語り合うのは団を形成する隠行衆の一班であった。隠行衆らしからぬだらけた物言いはしかし、眼前の光景を見ていたら批判出来るものではない。

 

 其ほどまでに圧倒的な殺戮の光景であったのだ。禁地の深林に足を踏み入れて早一刻。足を踏み入れた瞬間からそれは始まり、今も暫しの小休止を挟みつつも断続的に続いている。禁地に深く深く進む鬼月の隊は次から次へと襲いかかる妖の大群に接触しては踊るように振るわれる姫君の扇子の前に遥か向こうで一矢報いる所か指一本触れるすら叶わない。ただただ肉片に成り果てる。

 

 それは余りにも一方的であっただろう。絶対的であっただろう。最初の内は襲撃される度に怯えていた人足共すら、今では気を抜いていて駄弁る始末……。

 

 姫君の所業は正に理不尽な力による蹂躙と言い表せた。人足連中ですら一見して分かるそれは隠行衆からすれば朧気ながらもより深く理解出来る。そして理解しかねる。拒絶する卒倒物ですらあった。それは見たままの膨大過ぎる霊力を湯水の如く使った力押しであったから。

 

 何が酷いかと言えば概念系の異能すら、そのようなものは知らぬとばかりに正面から叩きつけた霊気の塊で中和して無力化している点であろう。理外の理すら粉砕するなぞ最早意味が分からなかった、完全にもうアイツ一人でいいじゃんである。実際一人でもよかった。

 

「流石は彼の赤穂一族の姫君の血を引いてるだけあるな」

「あの家の連中も大概らしいな。全く恐ろしい恐ろしい……」

 

 西土の古き名門退魔士家赤穂家は忠君や正統を掲げているが界隈ではそんなものよりも理不尽と非常識でこそ語られる一族である。眼前の姫君はその意味で確かに赤穂の姫君の血を引いていた。無論、敵ならば兎も角味方ならば頼もしい限りなのも事実であるが……。

 

「お陰様で雑人連中が物見見物気分な訳だな」

 

 若干の嫌味も込めて隠行衆班の片割れが吐き捨てる。牛車を囲む雑人共の態度と来たら……無警戒の上に雑談、余所見、こっそり飲食までしている始末。到底自分達が危険な場所にいると自覚しているとは思えなかった。あれではいざと言う時に主君を避難させる事はおろか、自衛すら出来るのか怪しい。

 

「いい気なものだな。羨ましい限りだ」

「部署異動でも申し出るか?二の姫様の雑人なら絶対楽に過ごせるぜ?老後まで実戦無し確実だ」

「馬鹿いえ。出来るかよ、そんなの」

 

 危険且つ多彩な技能を必要とする隠行衆から身の回りの世話中心の雑人衆への転属なぞ申し出が受理されるなぞ到底有り得ない事態であった。いや、可能性が零という訳ではないがあり得るとすれば隠行衆を雑人に見せ掛けて護衛にしたい……等という訳ありで油断出来ない仕事のためであろう。申し出があっても欠片も嬉しくない。

 

「はっ、堕ちるのは簡単だけどな」

 

 ふと駄弁る隠行衆の片割れは思い出したようにぼやいた。脳裏に過るのは衆頭の傍仕えする新人隠行衆であり、あるいは今朝方に挽き肉汁をぶっかけられて一団から離脱した下人であった。どちらも上から下に転げ落ちた良い例だ。反面教師ともいう。ああはなりたくないものだ。

 

「余所を貶すのご苦労。……雑談し過ぎだぞ。場を弁えろ」

「げっ」

「あー、あははは……了解、です」

 

 雑談を中断したのは三人目の隠行衆であった。気配もなく傍に来た年長の同僚に向けて誤魔化すように応じる二人。

 

 此度の派遣隊に同行する隠行衆は二個班四名である。一班は比較的若手の二人で構成されていて、もう一班は腕のある年長組二人で構成されている。当然ながら注意されたのは前者の二人で注意したのは後者の内の一人である。

 

「笑う暇があるなら警戒を怠るなよ。何かあってからでは遅い。代償は自分の命で払って貰うぞ」

「り、了解です……」

 

 鋭い剣幕で向けられた警告に若手組は思わずたじろいで応じる。年長の隠行衆は鼻を鳴らすと首をクイッと動かした。仕事に戻れという事だ。隠行衆若手二人はそそくさとその場から立ち去る。

 

「先輩殿、随分と苛立ってんな」

「神経質なんだろ。そりゃあ夜中に禁地に向かうなんざ確かに頭イカれてるけどさ」

 

 若手二人は叱られたばかりだというのに尚もそんな事を囁き合っていた。年長の隠行衆はその姿に舌打ちすると視線を牛車の方へと移す。

 

「はぁ、流石に喉が渇いたわねぇ。……誰か、茶でも寄越しなさいな。うーんと冷たいの。『金更紗』がいいわね」

 

 千を超える化物を虐殺した姫君が結界を結ぶための式共を四方に散らし終えれば牛車を可憐に降り立って茶を所望する。

 

「さぁさぁ隊列を停めなさいな。暫し休憩と行くわよ」

 

 誰に相談するでもなく一方的に判断した姫君は心底ダルそうに命じた。本人は言うや早くクイッと扇子で以て式とした敷物を呼びつけてその上に座り込み、肘掛けに瓜坊の簡易式を放って当然のように頬杖をした。ピィ!と背に体重を容赦なく乗せられた瓜坊の鳴き声が漏れるが、当の主人は少しも気にはしなかった。式神の労働環境は全く以て劣悪である。

 

「ははぁっ、姫様!今すぐに!!」

「此方、菓子請けで御座います。どうぞ御召し上がり下さいませ」

 

 禁地のど真ん中での休憩等という無謀、姫君の安穏として不遜な命令にしかし、腰巾着の雑人共は諫言する事もない。ただただ矜持の欠片もない卑屈な笑みと共に応じて、そしておもねった。『迷い家』と化した牛車の中に詰め込んでいた氷で冷やした緑茶が恭しく差し出されていて、オマケとばかりに菓子請けまでもが差し出されていた。それはまるで屋敷の茶室にでもいるかのような振舞いであった。

 

「宜しい」

 

 夏夜の蒸し暑さに踊り疲れが重なって汗をかいたのだろう。扇子を扇ぐ姫君は詰まらなそうに湯呑を受け取り冷たい茶で喉を潤す。甘菓子を摘まめば詰まらなそうにポイと口の中に放り込み、再び茶を飲む。……そして扇子で菓子請けを差し出した雑人の頬を勢いよく叩いた。

 

「ぐおっ!!?ひ、姫様!?」

「気配りの心が足りないわねぇ?折角冷たい茶を飲んでいるのよ?差し出す菓子は配慮しなさいな」

 

 姫君の叱責は菓子の中身についてであった。甘い焼き菓子。高級な品だ。しかしそれは喉を渇かす。冷たい茶を望む彼女に合わせるならば水気の多い菓子を用意するべきであった。それが出来なかった雑人への罰を、葵は当然の権利として行使したのだ。

 

「も、申し訳ありません……うぐ!!?」

 

 恐縮する雑人の頭を幼姫は素足で踏みつけた。何処までも尊大に手下を見下す。

 

「謝罪は誰にでも出来るのよ、お馬鹿さん?良かったわねぇ、失敗したのが今回でね?」

 

 家の面子、父の面子、己の面子から此度の任務で葵は手下共に死者を出すつもりはなかった。そうでなければこの愚かで気の回らない手下を手打ちにしていたであろう。これは寛大なる姫君の慈愛に満ちた警告であり、躾であった。

 

 少なくとも彼女はそれを自認していた。

 

「は、ははぁ……!!」

 

 失敗した雑人は頭を踏みつけられたままで深々と土下座する。全面的に葵に屈服を誓う。若い男が幼子の小娘に踏みつけられて頭を垂れるその姿は何処までも滑稽で惨めに見えた。

 

「努々、気を付ける事ねぇ?次は無いと思いなさいな」

 

 グイグイと頭を踏みつけて小馬鹿にして……漸く折檻は終わった。再度瓜坊に勢いよく肘掛ける。ピィ!と再び瓜坊の悲痛な鳴き声が鳴り響く。  

 

「ほら、さっさと水菓子を持って来なさいな」

「ははぁ!!喜んで!!」

 

 顔を土で盛大に汚した雑人は、それでも歪んだ笑みで応じればそそくさと車の内へと向かった。その姿を一瞥して、葵は何処までも蔑んだ冷笑を浮かべて湯呑を呷る。周囲に控える雑人共はやはり一言の注意もしなければひたすらに媚びへつらうように笑みを浮かべ続ける……。

 

「ねぇ。御代わり。次は『翆蓮梅』がいいわねぇ?」

 

 湯呑を差し出して、姫君は命じた。茶葉の種類まで指定して。実に呑気で気楽な振舞いであった。

 

 ……到底、禁地の内で取るような態度ではなかった。

 

「……全く、呑気な小娘な事だ」

 

 姫君の暴虐な振舞いを観察し続けて紡がれた隠行の者の呟きは、暗い暗い深林に木霊して、そして溶けるように消え入るのみであった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……暫しの小休止を挟んで一団は再度行軍を開始した。

 

 屠り、屠り、屠り行く……結界を解除した途端に襲いかかってきた魑魅魍魎共を瞬殺し、その後も絶え間なく迫り来る怪物共を片手間に刈り取り続ける事更に三刻余り掛けた。そうして漸く其処に辿り着く。

 

 三等禁地『禁呪深林』の、深くて浅い外縁部の奥地に辿り着く。

 

「見ろ、結界の荒縄だ」

「ではここか……不自然な点は?」

「見る限りは」

 

 先遣として差し向けられた下人が安全を確認し終えると後続の本隊に報告を行う。最中に襲いかかってきた十数の妖が風に薙ぎ払われてから、一団は行軍を再開した。

 

 古い古い荒縄で結ばれた結界の下を潜り抜けて、鬼月家の一団は目的の物が実るその場所に足を踏み入れる。

 

「風景が、変わった?」

 

 誰かが呟いた。周囲の風景は一変していた。

 

 先程までの陰気臭い暗闇の深林から、仄かな温もりの光に包まれる開けた空間が広がっている。小さな泉に花畑、そしてその奥にはお目当ての物が……。

 

「これが話に聞く……」

「流石に酔うな。凄い霊気だ」

 

 下人と隠行衆の幾人かが囁きあっていた。人足や雑人連中はもっと酷い。まるで酒に酔ったように足元がふらつく者すらいた。

 

「情けない連中だこと」

 

 そんな同行者共をチラリと見て扇子を扇ぐ姫君は蔑みと嘲りを含んだ口調で以てぼやく。これでは付き添いの意味がないと思ったのだ。

 

 実際問題、一人でならばもっと早くに辿り着けていただろう。同行人共なぞ彼女にとってはただの足手纏いでしかない。

 

「誰か、風呂敷を持って来なさいな」

 

 鬼月葵は尊大に命じれば、一人牛車から飛び降りて向かっていく。

 

『禁呪深林』が禁地として存在するのは、いや存続している理由の一つが『それ』であった。

 

 かつて朝廷はこの地に溜まる妖の気を祓い霊脈を平定せんとして退魔士を送り込んだ。送り込まれた彼ら彼女らは朝廷の命に忠実に従って深林に分け入りこれを完全に掃討する手前にまで辿り着いた。そして……他ならぬ朝廷からの命令に従いそれを中断した。

 

 中断の理由、それは断じて人理の外の存在に恐れ戦いた訳ではない。もっと即物的であり経済的な理由であった。

 

 朝廷は『禁呪深林』を有益な国家資源として利用する事を決断した。その生態系から禁地の内にて伸びる木々の多くが低級であるものの確かに霊木で、自生する植物の多くが霊草であり、採掘出来る鉱物もまた同様であったのだ。何なら生息する妖共の骸すら価値があるものが少なくなかった。

 

 朝廷が大量生産する専売霊薬・呪具生産の要……この深林を焼き払えば確かに実り豊かな農地が手に入るだろう。だがそれだけである。専売霊薬・呪具は税収面でも軍事面でも重要な国策だ。その原料の安定供給のためには深林の存続は不可欠であった。

 

 ……低級の原材料だけでなく、もっともっと高級な素材の存在もまた、確認されている。それが今まさに葵の見据える物体だ。

 

「見ぃつけた」

 

 幼女の意地悪げな声音が響く。

 

 視線の先の大樹。そして其処に実る果実が一つ。

 

 見掛けは小ぶりの、しかし変哲もない桃の実に近い外観だった。しかし実態は芳醇な霊気を染み込ませた物質化した奇蹟に他ならない。

 

『禁呪深林』にて確認された幾つかの特級霊草神木の自生地。それらはかつて派遣された退魔士が結んだ結界によって原生妖怪共からも守られていて、ここもまたその一つ。

 

「ふぅん。確かに良質な霊気ね。少し甘ったるいけれど」

 

 大樹の直ぐ傍らにまで来た葵は何ともないかのように嘯く。『意富加牟豆』……任務前にその自生地の特徴、対象の姿形については教えられていた。この禁地の特徴や危険性まで含めて、己が慕う父に善く善く教え込まれていた。全て記録通りである。彼女は懇切丁寧に教えてくれた己の父に感謝を捧げる。

 

 此度この地に足を運んだ目的こそがこの木。この木の実。奇蹟の実である。霊脈から垂れ流される莫大な霊気を吸い取り成長した大樹の、それでも過剰となった霊気を果実という形で排出したのがこの桃だ。万病にも呪いにも強力な効果があるという話は言い伝えではなく実績であった。

 

 朝廷より何としても回収するように命じられた理由である。

 

「浅ましい事よねぇ。まだ収穫時期ではないでしょうに。そんなに必死になるなんて何処の何方の御所望なのかしらね?」

 

 二の姫が腕を伸ばす。桃の実を撫でる。嘲る。さもありなん。目安としては十年に一度、精々一、二個程しか収穫出来ぬ実だ。しかも果実故に一度もいでしまえば足は早い。加工すればもう暫く持つそうであるが効能はずっと低下するらしい。それをまだ熟していないというのに……。

 

「よいしょっと」

 

 撫でていた手で優しく果実を掴み取る。軽く捻る。桃の実を模した霊果はいとも容易く大樹から引き離される。手元の奇跡をじっと見る。

 

 確か前回の収穫は八年程前であったか……収穫の適正期ではない。見掛けが小さいだけではない。実も硬い。死人すらも蘇らせる等という言い伝えは誇張ではあっても虚構ではない。極めて厳しいが特定の条件下であれば確かに死人すらも蘇らせる事も出来よう。

 

「あら。これは……」

 

 ふと、視線を移して姫君はその存在に気が付いた。一瞬の気の迷い、手を伸ばしてそれを撫でる。そして……諦める。

 

「まだ青いわね」

「は?」

「さっさと寄越しなさい」

 

 詰まらなそうな独り言に、丁度傍に参上した雑人が首を傾げた。冷たい声音で葵はその雑人から布地をふんだくる。 

 

 そう布地、風呂敷であった。鮮やかさや華美とは何処までも無縁な暗色の風呂敷。葵は桃の果実をそんな風呂敷で包む。二度三度と巻くようにして包み込んでしまえば先程までの濃厚な霊気は失せていた。

 

 唯の風呂敷ではない。強力な認識阻害の呪いが仕掛けられている風呂敷は中に包んだ物を外部から気取られるのを防ぐ。仮に桃の実をそのまま結界の外へと持ち出していれば瞬く間に妖共が群がって来るだろう。それを避けるための処置である。

 

「念のために……」

 

 そして姫君は風呂敷に合言葉を設定した。風呂敷に仕込まれた機能の一つである。制限は七日間、変更出来ぬ合言葉がなければ布は広げられぬ。これで余所者が風呂敷を開く事も出来なくなった。

 

 此れで終わりだ。この桃の実を無事関所の外まで運び出す。さすれば後は後続の出迎えがこれを朝廷に献上する手筈となっていた。本当に、これだけの事で……。

 

「詰まらないわね」

「は?」

 

 姫君の何処までも退屈げな呟きに控えていた雑人は思わず間抜けな声を上げていた。

 

「隠行衆、此方へ」

「はっ」

 

 そんな雑人を無視して呼びつけるは隠行衆の代表。呼び掛ければ一瞬後には背後で膝を突いて恭しく一礼をしている。抑揚の乏しい端的な返答……。

 

「ねぇ。貴方達の腕前でここから南関まで単独で伝令は可能?」

「本来ならば不可能で御座います。ですが今回に限っては可能かと」

 

 葵の質問に対して隠行衆の代表が嘘偽りも、誇張も虚構もなく応じる。禁地を甘く見てはならない。しかしながら葵自身がここに辿り着くまでの道中で何れだけの妖共を始末したかを思えば話は変わって来る。

 

 今の深林の外縁部は無人ならぬ無妖に近い惨状だ。より奥地の妖共が押し出されるようにして外縁部に移動して来るにまだ時間が掛かろう。またここに来るまでに豪快に飛び散った妖共の『染み』が隠行衆にとって標となる筈だ。その跡を辿れば関に辿り着くまでに必要とされる時間は最小限で済む筈だった。

 

「そう。それは結構」

 

 葵の応答。そして手元の桃の実が隠行衆に向けて差し出される。

 

「は?」

「一班、これを関に。宜しくて?」

「姫様、何を……!!?」

 

 葵の言に、隠行衆の代表は半ば声を荒げた。発言の意味を理解しているのかという糾弾に近かった。

 

「無責任ではないわ。寧ろ賢明よ。貴方が言った事でしょう?奥地の妖が押し出される迄時間があるとね」

「それが一体……まさか!!?」

 

 その意図を理解した隠行衆の代表。愕然とする彼を横目に幼い姫君は伝令用の鳥形簡易式を関所の方角に向けて放つ。放ってから漸く隠行衆の代表に向けて振り向く。

 

「私達は奥地に向かうわ。陽動としてね。……支援してやるのだから、御使いくらい出来るわよねぇ?」

 

 桃よりも甘く、妖よりも厭らしい笑みを以て、幼い姫君は何処までも恩着せがましい態度で隠行衆の代表に命じた。そして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

『キッキッキッキッキッキッキッ!!!!』

「しゃらくせぇ!!」

 

 夜の闇から複眼が浮かび上がる。両の鎌を広げて威嚇する妖蟷螂向けて、俺は容赦なく槍を振るった。背後からである。腹を裂かれて慌てて振り返る緑色の怪物。

 

「先輩!!」

「今だ、やれ!!」

 

 囮役を買って出た氷雨に向けて叫ぶ。間髪容れずに放たれた矢は連射で三本。此方を向いた大男並みの蟷螂の右の、次に左の鎌が、そして最後に頭部が宙に舞う。それはこの場において最大の脅威の無力化を意味して……。

 

「というにはまだ早いなっ!!?」

 

 腕無し首無しで躍り狂う蟷螂の裂けた腸から飛び出して来たのは超特大の針金虫だった。新たな宿主のお眼鏡に叶ったらしく一直線に俺に向かって来る。正確には多分俺の尻の穴を狙ってきた。うお、キモっ!!?

 

「冗談じゃねぇ!!」

 

 槍で以て突貫してきた針金虫を殴打して軌道変更。更に穂先を縦に振るって一刀両断してやる。

 

『キキッ!!』

「猿かっ!!」

 

 横合いから迫ってきた猿に槍で以て針金虫の後ろ半分を投げつける。哀れにも針金虫は猿の爪で引き千切られてしまう。相も変わらず、こいつらは仲間意識が薄いなって……!!

 

「危なっ!!?」

 

 俊敏な動きで一気に肉薄してきた猿妖怪の襲撃を槍を構えて受け止める。爪と槍の穂先が激突して金切音が鳴り響く。こいつ、剛力だな……!!?

 

「ぐおっ……!!?」

『キキィッ!!!!』

 

 拮抗していた鍔迫り合いは、しかしじわりじわりと押されていく。目と鼻の先で顎を開いて威嚇する化猿。

 

「なめんじゃねぇ……!!?」

 

 咄嗟に足を蹴りあげて猿の姿勢を崩す。背後に離脱して距離を取る。

 

「はぁ、はぁ……氷雨、撃てぇ!!」

「は、はいっ!!」

 

 俺が退くと共に矢は放たれた。俺の直ぐ傍らを高速で掠めた鏃は追撃せんと立ち上がった小妖の頭蓋を即座に射抜いた。後頭部まで貫通し仰向けに倒れ行く猿妖怪。

 

「っ!!?横っ三体だ!!」

「……!!?」

 

 俺の叫びよりも先に氷雨は動いていた。真横の草藪から飛び出して来る小妖が二体、幼妖が一体。直後に弾幕のように先程と同じく三本纏めて放たれた矢玉。寸分違わずに一体の小妖の喉元を貫き、一体の幼妖の頭を欠損させる。

 

『キキキキキッ!!!!』

 

 獣妖怪二体は仕留めた。問題は虫妖怪だった。頭部を三分の一程粉砕されても平然と顎を鳴らした大型犬級の大蝗。一瞬の動揺の後に慌てて新たな矢を構えんとする氷雨であったがその僅かな隙が致命的だった。放たれた矢は跳躍で以て避けられる。それどころか蝗はその大顎を開いて氷雨の喉笛向けて飛びかかっていて……。

 

「そうは問屋が卸さんだろうが!!?」

『ッ!!?』

 

 槍では間に合わぬと判断し、俺が投石器で以て放った礫が蝗の命を今度こそ刈り取った。丁度氷雨の矢が裂いた頭部の断面に叩き込まれた拳半個分サイズの石は、蝗の頭を首ごと持っていく。首なしになって軌道が逸れた蝗は氷雨を飛び越してそのまま背後の木の幹に突っ込んだ。勢い良すぎたのだろう、手足が千切れて回転しながら身体は地面に叩きつけられる。首なしの胴体が残った手足でじたばたと壊れたカラクリ染みてのた打つ。

 

「先っ、輩!!」

「氷雨!!」

 

 氷雨の叫びに俺は槍で以て突っ込む事で応じた。同時に彼女も此方に向けて弓を射る。弩並みの速度で放たれた矢が俺の元へと吸い込まれ……紙一重で頬を掠めて背後から躍り出た土竜妖怪を撃ち抜く。

 

『ブオッ!!?』

「そしてぇ!!」

 

 同時に俺の槍の刺突は彼女に背後から襲いかかる狼妖怪の顎を抉った。

 

『ギャイッ……!!?』

「っ……!!」

 

 更に一歩進んで狼妖怪を押し倒す。突き刺さった槍を一層深く沈めて頭蓋を押し潰した。骨肉の潰れる嫌な音が響いた。傍らでは止めとばかりに氷雨が土竜妖怪にもう一撃矢を放つ。二体の小妖は断末魔の叫びを上げて痙攣、そして息絶える。周囲を警戒……最早敵意を向ける気配はない。

 

 いや、待て。まだだ。

 

「お前が残っていたな!!」

 

 首と両腕を失ってひたすら踊り回っていた蟷螂に向けて俺は霊力強化した上で槍を振るった。胴体が切り落とされて蟷螂はその場で崩れ落ちる。

 

「あの先輩……此方もやった方がいいですか?」

「……俺がやるから手は出すな」

 

 身体の半分を失い地面で痙攣し続けていた針金虫を指差す氷雨に俺は命じる。触手系に止めを刺しに行く展開はフラグであった。残念ながらサービスシーンの出番はない。

 

『ッ……!!!!』

「知ってたよ!!」

 

 俺が近寄った途端に気配に感づいて飛びかかった針金虫。その先端を槍で殴打してから踏みつける。何度も何度も槍を突き刺してぶつ切りにする。プラナリアでなければこれで流石に死ぬ筈だ。というか死ね。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……これで、終わったか?」

 

 安全を確信すると同時に緊張の糸が切れ、俺はその場にどさりと座り込む。荒く激しく深呼吸を繰り返す……。

 

 小妖幼妖ばかりとは言え二人でこの数を相手となれば洒落にならなかった。生きているのが奇跡に思えた。ここ暫くどういう訳か身体の調子が良いお陰であった。

 

「まさかこんな街道に妖の群れなんて……」

 

 同じくびっしょりと流した汗で折角の水浴びが無駄になった新人下人も矢玉を回収しつつ困惑の言葉を呟く。扶桑国の街や村々を繋ぐ街道は官軍が定期的に巡回している。単独ないし二三体の妖が出てくる事があっても十近い妖が飛び出して来るのは中々珍しい。

 

「姫様の通った跡の残り香にでも引き寄せられたか?それとも単に此処等の軍団の怠慢か……」

 

 あるいは……まさかな?あのファザーだと何か仕込みしてたとしても信じられるのが嫌な話だな。

 

「骸は……どうしますか?」

「焼いて埋める、のが鉄則だからなぁ。合流が遅れるにしてもやるしかないだろ」

 

 妖の骸を食った動物は妖化しやすく、同じ妖が食えばそれこそより上位の格への成長を促しかねない。焼いて埋めるのはその場から即時離脱を必要としなければならぬ場合を除いてマナーであった。古き伝統は守らねばならぬと赤子に負けた闇の魔法使いも言ってた。

 

「穴堀りと死骸集め、どっちがいい?」

「……穴堀りです」

 

 俺の提案に暫し迷って前者を選択した氷雨。だろうな。

 

「んじゃあ、後片付けといきますかね?」

 

 皮の手袋を装着した俺はその掛け声と共に地面に散らばる肉片集めを始めた。夏場である。夕暮れ時とはいえさっさと集めなければ酷い臭いとなるのは必須であった。

 

 氷雨が浅く掘った穴に俺は次々と骸を放り捨てる。一緒に燃えるように小枝の類いも穴に入れて着火する。ある程度燃え尽きたら消毒ならぬ消妖気用の霊薬をぶち撒けてから埋める流れである。半刻程は必要だろうか?

 

「すっかり深夜だな。氷雨、少し寝ていろ。……この分だと最悪到着は日の出になる」

 

 そして下手すれば仕置きが待っていて、そのまま禁地旅行に御同行となりかねない。追加の襲撃が怖いがそれでも寝ていられる内に寝ておくべきだ。寝不足疲労困憊で禁地入りなぞ自殺行為に等しい。

 

「あの、先輩は……?」

「なめるな。お前より修羅場の経験はある。此くらいのデスマーチは慣れてるわ」

 

 具体的には碌に寝る事も出来ぬ地獄の逃避行を三度は経験済みだ。

 

「で、ですまーち?」

「あー、気にするな。……それよりも、いざって時に足手纏いになられたら困るからな。さっさと適当な場所で寝てろ。寝れなくても目は閉じてろ。敷物はしてもいいが寝袋は使うなよ?」

 

 咄嗟に出てきた片仮名語について誤魔化して、俺は自身の受けた指導と実体験から来る指示を言い放つ。

 

「り、了解です!!」

 

 言われるや早く、跳ねるようにして氷雨は言に従った。慌ただしく襤褸の敷物を敷いてその上で身体を丸めて横になる。腹の中の胎児の姿勢と言えば分かるだろう、目をきゅっと閉じる。硬直するようにぷるぷると身体が震えている。

 

「いや、力み過ぎだろ」

 

 ぼそっと呆れるように呟いて、しかしそれ以上は突っ込まない。妖の焚き火を一瞥してから適当な場所に座り込む。手元に槍を持ち、沈黙の内に周囲を見渡して警戒を続ける。

 

 静かだった。目の前の焚き火の音の他には時折鈴虫の鳴き声がする程度の静けさ……。

 

(さてと。どう立ち回るべきか……)

 

 原作での事の推移は概要で分かっている。幾つかの注意点も把握している。備えはしてきたつもりだ。しかし……俺という部外者が関わっている時点でそれが何処まで信用出来るかは保証出来ない。

 

 所詮下人の一人が誰だろうと大した影響力がないといえばそうであるのだが……あのサイコなファザーの原作の所業を思えば嫌な意味で信頼出来てしまうのが酷い話だった。

 

「最優先は自分の命大事に……目先の事だけ考えても仕方ねぇんだけどさ」

 

 ロリゴリラ様が事後されてしまった後なら兎も角、目の前で逃げたら後で制裁対象だろうなぁ。多分天才だから絶対白濁まみれになっても帰って来るだろうし、止め刺そうにもズタボロ状態で抹殺しに来た連中皆殺ししてるし。何よりも貴重なチート戦力である。過去イベント乗り越えても原作スタートで詰みかねない。それは不味い。非常に不味い。

 

(だったらいっそ大々的に介入してゴリラ様の被害軽減した方がマシなのか?出来るのか?分からねぇ)

 

 己の選ぶべき最善手は何か?命が掛かっている以上それは深刻な問題であった。妖肉の焼ける焚き火を見つめる俺の思考はその一点にのみ集中する。

 

(何処まで切り捨てられる?何処まで犠牲を許容出来る?何処まで見捨てられる?何処まで……捨て置けばいい?)

 

 思考は次第に不穏な方向に向かいつつある事は自覚していて、しかし止められない。生き残るため、それに勝る免罪符は無かった。

 

(ゴリラ様を救助して恩を着せるか?しかし上手くいくか?捨て駒を囮にしていけば、あるいは?)

 

 いつの間にか俺は味方を諦める事から積極的に活用する方向で策を進めていた。一団の人員構成を思い起こして、誰を生かすべきか、誰を捨てるべきか、誰を殺しておくべきかを考える。考える。考える……。

 

(サイコファザーへの信頼を失墜させなきゃ助けても意味がない。周囲の取り巻き連中も邪魔だな。ヤンデレの素質はあるんだ、二次創作ネタ的に依存させられるか?横から口出す連中は何処で死なせる?そうだな、例えば……)

「ぐぅぅぅぅ…………」

「…………」

 

 俺の危険な思考を中断したのは鼾の鳴る音であった。あんまりにも雰囲気をぶち壊すその音に俺は視線を動かす。

 

 木陰で身体を丸めて寝込む氷雨の姿。面の隙間から見える口元は情けなく涎を垂らしていた。シリアスの、欠片もなかった。

 

「子供かよ……子供か」

 

 突っ込みを入れた途端に一人で納得する。下人に限らず庶民の年なんて正確に分からぬ者も少なくはない。新人の氷雨は年齢で言えば十代半ばをギリギリ下回るかもしれなかった。それなりに御立派だが顔立ちも背丈もロリってるからなぁ。ロリ巨乳だ。つまりは餓鬼である。

 

「子供は寝るのが仕事ってか?いや、涎は流石に拭けよ」

 

 傍に行くと俺は手拭いで渋々彼女の口元を拭いていく。放置するには余りにも流れる量が多くて、起こすのが偲びなかったからだ。全く、赤子じゃああるまいに……。

 

「白けちまったな」

 

 涎を拭き終えると同時に俺は呟いた。全く、白けてしまった。先程まで真剣に考えていたのが馬鹿馬鹿しくなる。

 

「……出たとこ勝負ってか?そんなの上手くいくかよ」

 

 涎だらけの手拭いの惨状に肩を竦めながら、俺は思い浮かんだ方針に呆れ気味に嘯いた。

 

 その語調が若干気楽げになっていた事に、俺は確かに気付いていた……。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 夜明けが迫っていた。地平線の先から僅かに日射しが差し込む刻限。

 

「夜中どころか夜が明けちまったな」

 

 街道を進む俺は苦笑いしながら呟く。視線の先では山間部を塞ぐように設けられた関所が映りこむ。遠目にも白煙が幾筋かたなびいていた。炊事の準備であろう。

 

「朝餉に預かる……のは無理かねぇ。どう思う?」

「あはは……どうなんでしょう?」

 

 ふと言って見た冗談に何とも言えぬ表情で応じる氷雨。実際、このままでは仕置きが待っている可能性の方が高かった。

 

「そう気負うな。責任なら俺に任せて……ん、お出迎えかな?」

 

 関所の門が開いたのを遠目に確認する。数騎の騎兵が門から飛び出ると真っ直ぐ此方に向かってきていた。出で立ちからして伝令ではない。目的は俺達であろう。

 

「……何か嫌な予感がしてきたな」

 

 此方に迫り来る騎兵隊の剣呑な雰囲気、其処から俺は愉快ではない事態を察する。

 

「言付けは聞いている!貴様らは鬼月家の下人で相違ないな!!?」

 

 此方を囲むようにして散開した騎兵隊。弓や槍を構えた姿勢で此方に向けて問い掛ける。あるいは尋問する。

 

「……はい。その通りです」

「宜しい。ならば来て貰おうか。大属がお待ちである!!」

 

 意識的にであろう、横柄に命じる関所詰めの騎兵共。その物言いは有無を言わせぬという圧力かあった。

 

「せ、先輩……?」

「……こりゃあ姫様を甘く見ていたかな?」

 

 怯える氷雨の呼び掛けに、しかし俺は宥める言葉を掛ける余裕はなかった。彼らの物言いから、俺は事態が自身の想定の斜め上を突き進んでいる事に気付いてしまっていたのだから……。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。