和風ファンタジーな鬱エロゲーの名無し戦闘員に転生したんだが周囲の女がヤベー奴ばかりで嫌な予感しかしない件   作:鉄鋼怪人

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 貫咲賢希より、本作キャラのスポーツイラストを頂けましたのでご紹介致します
https://www.pixiv.net/artworks/92661721

 此方は別の方より、爆弾を投下する卑しい稚児君です。
https://www.pixiv.net/artworks/92657869


第六七話●

 扶桑国の国内外に広く商いを行っている橘商会の鹿住邦湖波郡店は郡の中央市場より少し外れた場所に設けられていた。煉瓦と木材による二階建ての和洋折衷様式の建物は目新しい。駐在員は末端の雑用も含めて二三名。尤も、現在は一時的に人員が四倍以上になっているが。

 

「建物が古いので、この前少々修繕したそうです。今回この街を訪問したのはその視察も理由の一つなんですよ」

 

 店の廊下を歩きながら、商会のご令嬢様はにこりと笑って説明する。話によれば営業やら視察やらで先月から部下の商人に護衛や雑用を引き連れて北土南部の支店や営業所を回っているらしい。この店は十六店舗目なのだとか。

 

「はぁ………それは実に多忙な事ですね?」

「はい。本当に大変です。白奥の支店は兎も角、こんな地方ですと私が子供だからって軽く見る人も多いんですよ?」

 

 口を尖らせて子供らしくむすっと怒る佳世。普段彼女が敏腕を揮っている白奥は支店とは言え橘商会の北土における最大の商館である。支社とでも言うべきであろう。同じ地方の店でも店員の質が違う。言わば地方の派出所に社長一族の支社幹部が顔を見せに来ている訳である。しかも十代半ばの御嬢様と来ている。適当にその場を誤魔化してさっさと次の店に行って欲しいと思うのが人情なのだろう。

 

「取り敢えず帳簿の不備ですとか経費の無駄を指摘しておきました。次の財務会計の際に改善しなければ減俸とも御伝えしたので、皆さんの頑張りに期待したい所ですね」

 

 再びにこり、と可愛らしく佳世は笑った。しかしそれは先程の笑みに比べると若干圧があった。明らかに脅しであった。パワハラであった。何なら減俸程度で済むのか怪しかった。何処となくブラック企業精神を感じた。

 

「む、言っておきますけど、其処まで無茶な目標は命じていませんよ?田舎の店員の質くらいは理解しています。そこも含めて無理のない目標を御伝えしました。ちゃんと地元や現場の事情を汲んだ上で改善案も提示しているんですよ?それを行った上で駄目ならそれは私の責任ですので文句は言いません」

 

 少し引いている俺の反応を見て、佳世は補足説明する。目標の提示と脅迫だけでなく、ちゃんと具体的な問題点と改善案を伝えているようであった。その上で自身の上司としての責任も自覚しているようであった。何なら視察前から秘密裏に方々の情報を集めていたようにも思える。幾ら彼女でも現地について一日二日で問題点の炙り出しや改善案を提示出来まい。油断ならない御嬢様である。

 

「私如きが差し出がましい事を言うべきではないでしょうが、お気をつけ下さい。怨み辛みは何処で買っているか分からないものですよ?」

 

 例え悪意なく、善意故の行動だとしても受け取る人間の感性は千差万別である。何なら逆上する者もいるし、逆恨みする者もいるだろう。商人ともなれば金銭が関わるので尚更である。

 

「ふふ、承知しております。あんな事があったんです。ちゃんと身辺の安全には注意を払っていますよ。……都での事のような案件は特に」

 

 俺の指摘に佳世は微笑みながら答えた。思い出すようにして答えた。髪に飾った櫛と手首の手珠を、あの日に都で買った強力な御守りを見せびらかして。

 

 そうだ、態態言う必要もなかった。実際彼女は人の悪意を、敵意をその身をもって理解していた。俺はその上で指摘していたし、彼女もまたその事を分かった上の発言であろう。ん?待て………?

 

「………もしやこの御誘い、私達を護衛代わりにする狙いが?」

 

 佳世の狙いを俺は指摘する。目の前の少女はにこりと微笑むと「御部屋に着きましたよ?」と嘯いた。先程までのとは違い、貼り付けたような営業スマイルであった。

 

 彼女が扉を開いた先では、料理の揃えられた円卓が鎮座していた。少なくとも、お茶会のような短い時間で終わる席では無さそうであった………。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

「余り堅苦しいのは嫌ですので、以前のように砕けた口調で構いませんよ?」

 

 元々は大口顧客の歓待と商談用の席なのだろう、部屋には防音処理の施されている事を佳世は伝え、俺に椅子に座るように促す。しかし俺はそれに答えず、無言で円卓の上に揃えられたものを一瞥する。

 

 緑茶、紅茶、大陸茶、珈琲等の各種の茶器の取り揃えは御茶会なので理解出来る。和菓子、点心、洋菓子の皿も、日持ちしなそうな生菓子が多いのを無視すれば歓待用に常備されているのだと考えれば可笑しくはなかろう。

 

 問題は明らかにその場での思いつきでは用意出来ないだろう料理が多数あった事だ。

 

 扶桑料理に南蛮料理に大陸料理……つまり元ネタ的には和洋中の各種料理がめじろ押しであった。卓上に所狭しとこれでもかっという程に置かれているのは所謂大陸様式なのだろう。大陸では客人を持て成すのに食べられない程の量の料理を用意するという。少なくとも、これが唯の御茶会ではない事は明らかであった。

 

「実に準備が良い事ですね?」

「商人たるもの、歓待の準備は常に万全にするものですので!」

 

 俺の疑念に対してにこり、と一切後ろめたい所も無さそうに笑みを浮かべる少女。何処までも屈託が無さそうであった。実に商人らしい面の皮の厚さである。俺は感動の余り涙が出そうだよ。

 

「御不快だったでしょうか?」

「………護衛でしたら正式に依頼を頂けましたら良いでしょうに。商会からすれば大した額ではないでしょう?」

 

 貼り付けたような笑みを浮かべる少女に対して俺は指摘する。あのデブ相手に契約外の出費を経費で落とさせるのは結構面倒なんだぞ?

 

「近頃御忙しいとの事でしたので。今回、道中が途中同じだとお聞きしたので急遽………あ、経費の方はちゃんと後日御支払いしますよ?ご迷惑をおかけしているので相場の倍は用意します!契約書も書きましょうか?」

 

 満面の笑みを浮かべて佳世は語る。貼り付けた笑みで、語る。俺は無言でそれを見つめる。暫し、部屋の中を静寂が支配する。沈黙に、満たされる。

 

「えっと………、その………御免なさい」

「何故謝るのですか?」

「だって…………」

 

 先に耐えられなくなったのか一転して気まずそうにする少女に、俺は小さく溜め息を吐くとそのまま厚かましく椅子を引く。座りこむ。面を外して卓上に置く。そんな俺の突然の行動にぽかんとした表情を浮かべた佳世。

 

「先ずは食べましょう。私もここ数日野宿ばかりで辛かったので。飲み物は………給仕がいないのは、そういう事でしょうか?」

「あ……は、はい!今淹れます!!」

 

 円卓に置かれていた茶器の中から適当な湯呑みを手にして尋ねれば慌てて佳世が駆け寄った。

 

「えっと、緑茶で良いんですよね?」

「湯呑みに珈琲を淹れる程には下品ではないと自覚していますよ」

 

 俺から確認を取ると、商会のご令嬢様はせっせと急須からお茶を湯呑みに注いでいく。因みに普段の俺は唯の湯や水ばかり飲んでいる。茶葉だって高いからね、仕方無いね。

 

「佳世様は何をお飲みに?」

「えっと、紅茶を………あっ!?」

 

 その言葉を確認するとともに陶器のティーポットからティーカップに紅玉色の液体をなみなみと注いでいく。品も作法もない、実に無遠慮な淹れ方であった。

 

「これで騙した分はチャラにしましょう。構いませんね?我ながら実にお得な取引と思いますが………」

 

 ふざけたように俺は提案する。佳世はそんな俺を見ると、手元のティーカップを見つめて、そして怪訝そうに再度俺を見る。

 

「それだけ、ですか?」

「何か他にお望みで?」

「いえそういう意味ではなくて……試すような、利用するような事をしたので…………」

 

 どんどんと声を小さくしながら縮こまる少女。そんな彼女の姿に俺は思わず苦笑する。

 

「そこまで怯えなくても良いでしょうに。別に怒っている訳ではありません」

 

 そもそも、怒れる程に偉くもないしな。

 

「此方も、ちょっと面会していた郡司殿と因縁が出来ましてね。念のために警戒しておかねばと思っていた所です。その意味では佳世様の御誘いは僥倖でした」

 

 まぁ、鬼月家の手の者に後先考えず喧嘩を売る可能性は限り無く零に近いが、ちょっとした嫌がらせくらいはあったかも知れない。その意味では佳世の悪戯は幸いであった。流石に妖魔本一つのためだけに鬼月家だけでなく、橘商会にまで喧嘩を売る可能性は天文学的だろう。幾ら前世程に教育制度が整っていないとしてもそんな愚行をおかすような人間が郡司になっているなぞ非現実的過ぎる。

 

 そうでなくても、橘商会には馬や今回の妖魔本に関する情報収集に対する協力等、度々の恩がある。この程度の悪戯で目くじらを立てるようなものではない。

 

「それに此度のこの企て、佳世様一人で企んだ訳ではないでしょう?」

 

 妖魔本の案件の発生時期と彼女の視察の開始時期、タイムラグ等を考えれば佳世一人で考えた悪戯とも考えにくい。ともなれば容疑者は絞られる。

 

(あの気分屋のゴリラ様がまた深く考えずに適当な事言ってくれたな?)

 

 脳裏で浮かぶ真犯人の加虐的な笑みを想像して、俺は嘆息する。あの姫様が変な入れ知恵した事を俺は確信していた。

 

「護衛費も相場で構いません。そも、そちらにも護衛がいるでしょうから純粋な護送というよりは同行でしょう?」

 

 橘商会の店を借りれば宿泊代を浮かせられる事を思えば値引きしても良いくらいだ。

 

「それはそうですが…………」

「商人でしたら費用が浮いた事に素直に喜んでくれれば良いでしょうに」

 

 苦笑して俺は湯呑みに口をつけた。緑茶の苦味が身体に沁みる。疲れが消えていくように思えた。

 

「まぁ、気にはしませんよ。それよりも、折角これだけの御馳走を用意してくれたんです。冷めない内に頂きましょう。食材が勿体無い」

 

 そういうが早いか小皿に取り箸で料理を入れていく。お、この豚の角煮柔らかくて旨そうだな。

 

「………良いんですか?」

「このくらいの悪戯で怒るなんて大人げないでしょう?別に此方が損している訳でもありませんからね。………正直な話、野宿続きで碌なもの食べていないんですよ。なのでこの御馳走の山を捨てるのが惜しいんです」

 

 そして俺は醤油煮した里芋と蓮根を口の中に放り込む。そして続ける。

 

「悪戯に乗った理由は聞きません。佳世様にも色々とあるでしょうから。………折角の御茶会です。この部屋、防音だそうですね?仕事の愚痴くらいなら聞きますよ?」

 

 笑って俺は提案した。大人だって仕事で精神が可笑しくなる事があるのだ。才能があっても子供な彼女に不満が一つもない筈もない。ストレスの捌け口になってやるくらいはしてやりたかった。飯の代金としてはそれでも格安であろう。

 

「………御手洗御団子、入れて下さい」

 

 暫しの沈黙の後に差し出された小皿に、俺は手を伸ばす。と、その手を掴まれた。白くて小さな目の前の少女の手に。いつの間にか手袋を外していたらしい素の白魚のような手に。俺は突然の感触に僅かに驚いた。視線を前に向ける。少女がにやりと笑った。

 

「防音ですよ?様は付けないで下さいね?」

 

 文字通り悪戯が成功した子供のように、目の前の少女はそう宣った。本当に屈託のない、可愛らしい笑い声だった。

 

 

 

 

 

 

「はい。後一月程は視察しないといけないんですよ。この後は山那郡と陽菜郡を訪問するんです」

「では我々が同行出来るのは陽菜郡までですか。因みにその後は?」

 

 御茶会の名を借りた食事会も終わりに近付いて来ていた。最初の内は世間話を、次いで佳世の愚痴やゴシップ染みた方々の噂話、そして俺の仕事やそれに付随した北土の各所の話と話題は次々と移っていき、佳世のこれからの旅程の話に向かう。

 

「春賀邦に入る事になる筈です」

 

 その邦名に俺はピクリ、と動揺した。しかしそれも一瞬の事で俺は口を開く。

 

「春賀邦ですか。直接訪れた経験はありませんが、確か北土の中でも豊かな土地が多いとか?邦都に行かれるので?」

 

 俺は探る。春賀邦とて広い。必ずしもドンピシャで出会す可能性は決して高くはない。

 

「邦都には最後の方に向かう予定です。基本的には方々の店やお得意様に顔見せに。幾つか商談の案件も予定しています。赤羽郡に眞山郡、それに穣恵郡にも」

 

 最後の郡名を聞いて、俺は息を呑んだ。いや待て。落ち着け。郡だって十分に広い。郷村が何十もあるのだ。日時のタイミングもある。そうだ、有り得ない。そんな間の悪いのは何処ぞの赤穂家の末娘だけで十分だ。

 

「そうですか。具体的な日取りは分かりますか?」

「どうでしょうか?一応来月の二十日には春賀の邦都に着きたいのですけれど、数日位は遅れても可笑しくありませんね。最近は妖が襲撃してくる案件が増えてますから」

 

 商隊の護衛費が嵩んで困ります、と宣う佳世。俺もまた誤魔化すようにして笑う。近頃、妖関連の事案が増加している原因は分かっていた。奴らが本格的に活動を開始し始めているからだ。

 

「我々退魔業の者の努力不足ですね。私のようなしたっぱでは不足でしょうが謝罪致します」

「ふふ、良いですよ。文句なら陰陽寮に言っています。他の商人達も困って来ているみたいですね。御父様が御手紙で書いてました。主だった商人らで連盟で朝廷に奏上する予定だそうです」

「それはまた………では近々私達も動員されそうですね」

 

 村が一つ二つ消えようと朝廷は気にもしないだろうが、豪商らが騒ぎ始めたら話は別だ。何時の時代も良くも悪くも商人と国家権力は強く結び付くものだ。

 

「前年も確か動員がありましたね。河童の騒動には驚きました。郡が二つも………伴部さんもお怪我をしたとか?」

「………大変でしたが、後遺症が残るようなものではありませんよ。それに今回は其処まで大事にはならないでしょう。村は兎も角、田舎の街だってまだ無事な事は佳世も知っているでしょう?」

 

 その道の仕事をしている俺であるが、鬼月は退魔の名門とは言え活動の範囲は限られ俺はその下人に過ぎない。その点では北土の全域で活動する商会の支店幹部たる佳世の方が余程に耳敏い筈だ。そしてこの時期の救妖衆は朝廷の関心を削ぐためにも村は食い潰しても街は襲っていない。物語の中盤以降は街もちらほら滅びるが作中の人物達は特に気にしない。事態は急速に悪化して街の一つ二つ滅びるなぞ可愛い話になってしまうのだから………。

 

「…………」

 

 そこまで思い出して俺は憂慮する。これから先の事を。何度も、何度も考えてきた悩みを、苦悩を。俺は果たしてこれから先を生き残る事が出来るのかを。これまでだって大概だったが、ここから先はそんな経験鼻で笑えるような地獄なのだ。主人公だって実力はあろうとも、油断したら直ぐに死んでしまう。そんな心許ない主人公がこの国を救うための鍵であるのだ。彼を死なせる訳にはいかない。しかし………。

 

(逆説的に考えれば呆れるよな。主人公だって死ぬのに、俺が主人公をサポート出来るのかよ?)

 

 分かっていた事ではあるが、その時が近付くにつれて不安ばかりが胸の内に広がる。五体満足は贅沢で、何なら俺自身が生き残れるかも怪しい。怪しいが……逃げられない。逃げる訳にはいかない。どうせバッドエンドしたら遅かれ早かれ俺は死ぬし、そも下人では鬼月家からは逃げられない。そして、俺が諦めたら今生の家族は………だから逃げられない。逃げる訳にはいかない。だから、だから…………!!って?

 

「えっ……?」

 

 思考の海に沈んでいた俺はその感触に現実に引き戻された。同時に今の状況に思考が一瞬停止する。当然であろう、考え込んでいる内にいつの間にか卓上で組んでいた両手、それに白魚のような白い両手が包み込むように触れていた。鼻腔を甘い香りがくすぐった。目の前に蜂蜜色の髪の少女がいた。

 

「佳、世………?」

「あ、少し待って下さいね?お話の前にこれを………」

 

 と、彼女は自身の手首に巻いていた手珠を外して、俺の手首に巻き始める。

 

「な、何を………!?」

「御守りを元の持ち主に御返ししただけですよ?」

 

 動揺して口走る俺に対して、あっけらかんとした笑顔で佳世は嘯く。そして、心配そうな表情で此方を見つめる。

 

「私は大丈夫です。今回は護衛も沢山いますし、昔みたいに子供じゃありませんから。それよりも伴部さんが心配で………結構怖い顔でしたよ?」

「それは………いえ、すみません。少し考え事を………」

「お悩みなら聞きますよ?」

「いえ、それは………」

「言えませんか?」

「……………」

 

 どういうべきか、悩んだ末に口ごもる俺を見て、佳世は口元を隠して笑う。クスクスと小鳥のように笑う。

 

「ふふふ、構いませんよ?誰だって人に言えない秘密はありますから」

「申し訳ありません。そちらのお話は沢山して頂きながら…………」

「何を話すかは自由意志ですから、私だって言いたい事しか言ってません。沢山伴部さんに言って無い事はあります。伴部さんは、私が隠しているお話を言うように要求しますか?」

「いえ、そんな事は………」

「では同じ事です。余り気にしないで下さい。ただ………」

 

 そっと、俺の手首に巻き付けた手珠に触れる佳世。優しげに手珠を、俺の手首を撫でる。

 

「ちょっとした手向けです。伴部さんにも、伴部さんから譲られたこの手珠にも助けられました。ですから、これからは伴部さんにこれを使って欲しいんです。大事な人が怪我したら心配ですから」

 

 満面の笑みを浮かべて佳世は俺を見る。眩しいまでの純情な笑顔であった。それでいて、真っ直ぐな信念を持った視線であった。その意志の強さに、思わず惚れ惚れしそうになる。

 

「………分かりました。この手珠、御返し頂きます。代わりに、今日から数日の旅の同行は責任持って護送させて頂きます」

「はい、宜しく御願いしますね!!」

 

 俺の宣言に佳世は元気良く答えた。暫く互いに見つめあう。そして何が面白いのか互いに笑う………。

 

 次の瞬間、部屋の振り子時計から時刻を告げる鐘が鳴る。俺は時計の針に視線を向ける。この部屋に来て、既に一刻は過ぎていた。流石に長居し過ぎたな。明日もあるし、部下の監督のためにも俺は退席を申し出る。名残惜しそうにしつつも、佳世はそれを承諾した。

 

「あ、そうだ。伴部さん、どうせですから………」

 

 ふと、卓上を一瞥してから思い付いたように佳世が提案する。そして、その提案を聞いた俺は両手を上げて承諾した。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 俺が佳世と御茶会という名の食事会に興じている間、部下達は橘商会の郡支店の一角に詰めていた。正確にはそこは商隊等が宿泊する事を想定した商会の宿場であり、俺は戻るまで休憩するように宿場に留まる彼らに命じていた。尤も、今日はこのままここに泊まる事になりそうだった。

 

「だからな?佑月、角葉、その水筒の中身を何時までも誤魔化さなくても良いぞ?」

 

 二班十名が泊まる大部屋に入った俺は壁際で荷物を整理していた下人二人に向けて嘯く。ほんの三ヶ月前に訓練を終えて任務に就くようになった新人二人は俺の指摘に動揺する。ここ数日の行動から、俺はこいつらがあの村の酒蔵でこっそり水筒の中身を水から清酒に替えていた事には気付いていた。お前らちょくちょく休憩中に水筒じゃなくて河原の水飲んでただろ?

 

「っ………!?お前達、何を勝手な事を!!」

 

 彼らの上司である班長御影が彼らの瓢箪水筒を奪うと確認するように中身の匂いを嗅いで、そして怒鳴る。びくり、と怯える佑月と角葉。契約では基本的に村の資産には一切手を出してはいけない筈であった。それを犯したのだ。下手をすれば連帯責任である。御影の怒りはある意味当然であった。

 

「御影、落ち着け。軽率だぞ」

 

 思わず刀を鞘から引き抜き部下達を斬り捨てようとした御影を俺は宥める。気持ちは分かるが、流石に斬り捨てるのは駄目だ。人手だって不足しているのだ。そも、こんな場所で斬り殺したら迷惑以外の何物でもない。

 

「ですが………!!」

「分かっている。このままお咎め無しとはいくまいよ。だが………」

 

 俺はちらりと二人を見る。面で顔を隠しているがその態度だけで青ざめているのが分かった。何なら俺はその面の下の顔がまだまだ子供らしさを残している事も知っていた。十代半ばを漸く過ぎたばかりの二人だった。恐らくは出来心………仕方無いか、部下の尻を拭くのも上司の仕事だ。

 

「起こってしまったものは仕方あるまい。お前らには罰則だな。今日から三日間、交替で夜の見張りをしていろ」

「り、了解です………」

「承知しました………」

「後、その清酒は他の奴らにも分けてやれ。二人だけで楽しもうとするな」

「「げっ!?」」

 

 俺の言葉に新人二人は同時に呻いた。瓢箪もそんなに多くの容量がある訳でもない。一人数口飲んでしまえば直ぐに無くなってしまうだろう。明日までに酔いが残る事もあるまい。そして、恐らくは村に調査に来るであろう郡司の部下達もその程度の清酒を掠めても気付く事は無かろう。

 

「………さて。それはそうとお前達、飯は食べたか?」

「いえ、まだです。まさかここに泊まる事になるとは想定していなかったものですので………」

 

 ガックリと落ち込む新米二人を無視して俺が問えば矢萩が答える。それは好都合。

 

「そうか。ならばこいつを持ち帰って正解だったな」

 

 そしてここに来て、漸く俺は片手で釣り下げるように持っていたそれを、折詰弁当の箱を見せつける。

 

「それは………」

「土産だよ」

 

 俺の言葉に部下達はぞろぞろと興味を持ったように集まってくる。俺は面越しに分かるどや顔を浮かべる。

 

「くくく、泣いて喜べ。御馳走だぞ?」

 

 そして俺は勿体振りながら中身を皆の前で開帳してやった。三段の弁当箱は其々が和洋中の料理で満たされていた。一段目は典型的な扶桑料理たる里芋やがんもどきの煮物、蛤と昆布の佃煮、高野豆腐にだし巻き玉子、珍しいものでは醤油蒟蒻があった。二段目は南蛮料理で塩ハムにカツレツ、鴨のロース、甘味にカステラや南瓜のタルトが詰められていた。三段目には大陸料理を詰めた。肉団子に豚の角煮、茅巻きに月餅もあった。茶会という名の食事会で余った料理を持ち帰ったものだった。

 

「うおおぉぉぉ!!?」

 

 恐らくは生まれてから嗅いだ事がほぼない香ばしい匂いに部下達は瞠目する。前世が飽食の時代に生きていた俺だって久し振りの御馳走に夢中だったのだ。ましてや普段が玄米や雑穀に野菜を入れた粥ばかりな彼ら彼女らにとって、目の前の料理の数々は衝撃的なのは当然だった。

 

「これは……!?」

「まさか、これ……食えるんですか!?」

「当然だろうが。態態食わせる訳でもねぇのに御馳走を見せびらかす程、俺は性格悪くないぞ?」

 

 期待に満ちた部下の言葉に鷹揚に俺は嘯く。そして、続ける。

 

「少ししたら粥飯が鍋ごと来る筈だ。こいつは惣菜でも肴にでもしろ。………平等に分けろよ?」

 

 最後の部分を念押ししておく。食べ物の恨みは怖いと言うが、そうでなくても詰まらない事で衆内の関係をギクシャクさせたくなかった。まぁ、仲良く分けあえや。

 

「允職は?」

「俺はさっきまで飽きる程食ったよ。気にするな………お、丁度飯も来たな」

 

 タイミング良く入室してきた女中から鍋と櫃を受け取る。鍋の中には白米と山菜を混ぜた粥が、櫃の中には山程の各種の漬物が入っていた。これだけでも御馳走だな。

 

「ほれ、各自で椀の中に入れろ。……冷ましながら良く噛めよ、明日体調不良になられたら堪らん」

 

 我先にと飯に集ろうとする部下達にそう命じた。実際、そうしないと舌を火傷したり飯を喉に詰まらせそうだった。

 

「允職………」

「ん?どうした、お前らも食わないのか?量はあるがあの分だとあっという間になくなるぞ?」

 

 此方に近寄る班長の矢萩と御影に俺は警告する。実際それ程までに下っぱ共の食いっぷりは良過ぎた。人手不足なので十代の育ち盛りが多い。ましてや鬼月の屋敷では滅多に食えない白米に漬物の山となれば残当である。

 

「いえ、申し訳ございません。班長としての監督不足でこのような………」

 

 班長二人は相当落ち込んだような態度で謝罪する。部下達の統制が出来ずに不祥事を起こした事への責任を感じているのだろう。

 

「いや、それは此方も同じだ。帰ってから訓練内容を練り直さんとな」

 

 指揮が出来なくても盲目的に戦うのではなく、ある程度独自に考えて判断出来るように指導していたのだが、今回はそれが裏目に出たようだ。内容自体は軽いものなので有耶無耶に出来るだろうが………不祥事は小さい内に対策するに限る。

 

「人手不足なせいでお前達に班長をやらせる事になっていて済まない。昔はもう少し経験のある上司がいたんだがな」

 

 俺と同時期以前から下人衆に所属していた者は今や両の手で事足りてしまう数しかいない。お陰様でこの二人のようにまだまだ班長にするのは荷が重い人材を上に置くしかないのが痛い所であった。

 

「ほれ、さっさと食いにいけ。腹を満たすのも仕事の内だぞ?」

「………はっ!」

 

 俺が再度促せば不承不承ながらも彼らも食事に向かう。さて、では後は………。

 

「奴にも飯、だな」

 

 障子を引いて部屋を出て、暗い縁側へと俺は出る。秋に差し掛かった冷たさを含んだ風が吹いた。俺はそのまま座り込む。そして、懐のそれを取り出す。

 

 大量の封符で包まれた虫籠を開く。月光に照らされながら虫籠から現れるのは白い蜘蛛だった。忌々しい、神蜘蛛………人差し指を差し出せばはしゃいだように指に抱きつく。そして走るのは鈍い痛み。噛みつかれた痛みであった。吸血行為。捕食行為……。

 

「ちっ、前よりでかくなってやがる」

 

 チューチューと牙を立てて血を吸いたてる白蜘蛛を一瞥して、俺は苦虫を噛む。そんな俺に反応して蜘蛛は見上げると惚けたように首を傾げ、再び食事に戻る。その体躯はもうそろそろタランチュラ位にはなりそうだ。

 

 正直な所、出来れば食わせたくないが、食わせないと二重の意味で俺が死ぬ。かといって食わせても破滅が先伸ばしになるだけで………何ともまぁ、忌々しい。

 

「…………」

 

 無言で俺は血を吸われ続ける。障子の向こう側は賑やかだ。皆久方ぶりの温かい御馳走に夢中なのだろう。上司の俺が入るべきではあるまい。皆が気を使う事になるだけだ。俺はあの輪には入れない………。

 

「…………糞」

 

 目先の課題と、これから降りかかるだろう苦難と、そして自身の避けがたい絶望的な運命、少しずつ追い詰められていく感触、八方塞がりの現状を思って、俺は小さくそう吐き捨てていた………。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 宿舎の縁側で下人が苦悩していた頃、歓待の席に一人の人影が残っていた。小さな、低い冷笑が響く。

 

「…………ふふふ、残念。中々此方の都合通りには事を運ばせてはくれませんね?」

 

 大事な大事な客人が立ち去った後、その残香を惜しみながら商家の娘は嘯く。当然のように飲み残しの湯呑みを手元に引き寄せて、蠱惑的に囀ずる。

 

「想定内ではありますが、欲を言えばもう一押し欲しかったですね。まぁ、言っても詮なき事ですが。………分は弁えませんとね?」

 

 そうだ、分を弁えなければなるまい。既に順位は厳然と決められていて、それを覆すのは困難を極める。佳世は決して無欲ではないが、同時に伊達と酔狂で生きている訳でもない。勝算なき無謀な蛮勇なぞ論外。今の立場だけは絶対に死守しなければならず、そのためならば如何なる犠牲も厭わない。そしてそんな佳世だからこそ、この貴重な機会をあの女がくれてやったのだという事を熟知していた。

 

 ………鬼月の二の姫から式神によってその手紙を寄越されて以来、佳世はこの御茶会を何日も前から予定していた。短い時間で出来る事は限られていれど、金に糸目はつけず、かつ内密に、周囲に疑念を抱かせず、時間内で可能な限りの準備はしたと自負している。

 

 事実この御茶会のために用意した食器や食材、部屋の調度品も全てそれなりに値の張る代物であったし、この歓待室や彼が泊まる部屋だって、急いで建て替えさせていた。表向きは宿泊する佳世とその一団のためとしているが。怪しまれぬように、佳世は彼と共に泊まる店もそれ以外も、全て同じように処置していた。掛けた費用は何千両になるだろうか?万に迫るかも知れない。店の者達が佳世を見て良い顔をしないのは道理である。

 

 どうでも良かった。そんな周囲の悪意敵意妬み僻みなぞ佳世は等しく価値を認めなかった。彼女の得た利益と比べれば果てしなく取るに足りない必要経費に過ぎなかった。差し引きで大きな黒字であると確信していた。そも、佳世は商会の後継者となるために商いの世界に足を踏み入れて以来何千何万両もの利益を商会にもたらしてきた事を自覚していた。彼のためだ。彼のために、彼に尽くすため、彼に貢ぐために稼いだ金だ。故に、佳世はこの散財に対して一切の良心の呵責を感じなかった。

 

「ふふふ。姫様には感謝しなければなりませんね」

 

 手紙の内容を思い出して佳世は笑った。低い声で嗤った。鬼月の二の姫は予見していた。妖魔本の回収に際して郡司が渋るであろう事を。その結果何が起こり得るかも。そして二の姫はこれまでの経験から念のために佳世に依頼した。この逢い引きを認める代わりに彼の保護を。そしてそれに従い佳世は偶然を装い接触して、佳世はそれを最大限に利用した。それが二の姫の掌の上で踊る道化の戯曲に過ぎないとしても………。

 

「ふぅ、美味しい」

 

 商家の娘は手元の湯呑みを何事もないように呷る。苦味に甘味を感じた。彼の味がした。背徳の味だった。事前に茶の中に異物を、『佳世自身』を混ぜ混んでいたのをあの人は気付いただろうか?彼が湯呑みに口をつける度にそれを情念に満ち満ちた視線で凝視していた事に気付いていたであろうか?

 

 多分気付いていないだろう。気付いていない方が良かった。その方が後が楽しみだった。葡萄酒は寝かせて醸造する程に味に深みが出るものだ。彼が鬼月の二の姫の野望の通りになって、彼が佳世の前に対等の立場で相対する時までの辛抱だ。

 

 ………媚薬の香が充満する室内で、彼にした自身のおぞましい行為の数々を暴露する。全てを知って絶句した彼がそれでも情欲に抗えずに、怒りと欲望をない交ぜにして自身を押し倒すのを、自身の蜂蜜色の髪を掴んで暴力的に組み伏せるのを、その時の蔑みと肉欲を混ぜ混んだ眼光で見下ろされる瞬間を想像する。猛獣が食べやすくするために獲物の毛皮を毟るように衣服を乱暴に剥がされる光景を空想する。その先を妄想する。身体が打ち震える。肚が疼く。

 

「んっ、はぁ…………」

 

 椅子に深く座り込んだまま、だらりとした姿勢で少女は嘆息した。余りにも甘く、何処までも妖艶な吐息だった。まるで発情期の牝猫であった。到底純情な十代前半の娘のものではなかった。純粋無垢な箱入り娘が、男を知らぬ生娘がこんな艶かしい表情を、こんな潤んだ眼をしていられるものか。信じられるものか。その姿を見た男は十中八九理性を失っていたであろう。其ほどまでの強烈な色香であった。毒だ。正に傾城、魔性、魔女……。

 

「………っ!?………伴部さん」

 

 ふと、その感覚に気付いて佳世は一瞬正気に戻る。滲み出る程の色香は立ち消えて、純情な少女に戻る。そしてその白い手で湯呑みを撫でる。温かかった。茶ではない。茶はもう既に冷めてしまった。これは人肌の温もりだ。彼の熱の残りだ。彼の、温もりだ。優しい温かさだった。自分とは大違い。

 

 それは同時に己の醜さを思い知らされる。自身の立場を冷酷に突き付けられる。これ程までに欲望に堕落した自分ごときが彼と相対する事が、彼と同じ部屋で息をして、会話する事すら浅ましく、罪深く思えたから。

 

 ………しかし、だとしても止められない。諦められない。逃れられない。再度嘆息する。再度、堕落する。何処までも、堕天する。

 

「………鶴が戻って来ない内に回収しませんとね」

 

 世話役の老女中には仕事を申し付けている。歳が歳であるから余り負担を掛けたくはないがこればかりは仕方なかった。こんな醜く浅ましい姿は見せたくない。佳世は取り掛かる。回収すべきは湯呑みに箸に、口を拭いた布巾もだ。折角得られる機会を逃す訳にはいかない。他者にとっては兎も角、彼女からすれば同量の重さの砂金の大粒とでも喜んで交換したいお宝だ。自慢のコレクションだ。

 

 佳世は自身の行いが世間一般と相当に逸脱している事を自覚していた。だが頭で分かっていてもその欲望には抗えない。だからそれらのお宝を懐に隠しながら、そして自身の内の興奮を認識して心底思うのだ。あぁ、本当に浅ましい………。

 

「ふふふ、本当にはしたない事ですよね?」

 

 挙げ句に彼女はこの席に際して特別に、そして秘密裏に拵えた家族にも見せられないような下着を着込んでいたのだからみっともない事この上なかった。防音設計の室内で『万が一』を思っての事であったが………実際には彼女が妄想した六十以上の想定の中で彼が選び取り、辿ったのは最も穏当で、最も詰まらぬものだったのだから取り越し苦労な事この上ない。

 

 ………いや、自己弁護は止めるべきだろう。本当はそれを期待して彼に迫ったし、部屋の防音についても誘惑するために囁いたのだろうに。その上で佳世はあしらわれたのだ。彼に、あしらわれた。

 

「あの姫様の事、きっと其処まで想定していたのでしょうね」

 

 彼に対する絶対の信頼、故のあの手紙であり、余裕だったのだろう。あるいはあの姫君の事である、彼がどの選択肢を選んだ所でそれを許し、肯定するかも知れない。何にせよ、佳世は勝負に負けたのだ。みっともなく、浅ましく。

 

「くすくす………良いでしょう。構いませんよ?どれだけ負けても、どれだけ捧げても、構いません」

 

 佳世は笑う。無邪気に笑う。底冷えするような笑みで、笑う。そうだ、構わない。どれだけこの身を犠牲にしようとも、構わない。それは最悪、彼が怪物に成り果てようと同じ事、佳世が成すべき事は変わらない。

 

「待ってますよ、伴部さん?負債は利息も耳を揃えて返済しなければならないものですからね。それが商人というもの」

 

 佳世は再び笑った。コロリ、と彼女はお茶会の間ずっと口に含んでいたそれを小さく赤い舌で転がして嗤った。舌で『彼』を感じて、口内の『彼』に自身の唾液を粘つく程に絡めて、味わう。舐め回す。しゃぶりつく。これを口にしていればあの日の事を鮮明に思い出せるからだった。

 

 そうだ、あの日の彼から借り受けた命という債務、それをこの身全てをもって返済する時を思う。文字通り全てを貢いで、全てを捧げる時を思う。きっと………きっとそれはどんな砂糖菓子よりも甘いだろう。阿片よりも病み付きになってしまうだろう。逆らい難き魅力、逃れられない誘惑。依存。

 

「あぁ………、その時が、とっても楽しみですね。伴部さん?」

 

 少女は乙女が夢を見るように、それでいて阿片中毒者のように何処までも濁った瞳で湯呑みを見つめ続ける。それを撫で続ける。最後の温もりの一欠片すらも味わうように。

 

 防音処理を施した室内で、女の艶かしい嗤い声が何時までも鳴り響き続いていた………。

 

 

 


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