ゆきますくオリジナル短編集   作:ゆきますく

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彼女と別れて、僕は一人になった。
一人だけど、今度は「一人と一匹」になった。
いつかまた「二人と一匹」になることを夢見て。

*

過去に、大学の課題で「会話文のみで書く」というテーマのもと、作成した作品です。


僕だけのコンサルタント

「もしもし、いるかな」

「あ、光博! 元気にしてた?」

「ああ、こっちは暑くて死にそうだけど、まあ元気だよ」

「こっちと違って熱いもんね」

「君こそ、元気そうで何よりだ」

「うんうん、今年もこの季節だしね、元気よ」

「そうだよな、秋口と言えばおいしいお魚が入るもんな。……お父さんは?」

「今ちょうどご飯中。ご飯がおいしい季節だからゆっくり食べてるみたい。もうすぐ帰ってくると思うけど」

「そっかそっか、お父さんとも話したいね」

「うん、光博に会いたがってたよ、お父さんも」

「そっかそっか、仲良くさせてもらえるなら、それは嬉しいね」

「私もそっちに行って遊びたいなあ」

「事情が事情だから仕方ないよ。僕だってなんとかしてあげたいんだけどさ」

「……私のこと、恨んでたりする?」

「まさか。君のせいで彼女と別れたわけじゃないんだ。僕に原因があったからさ、気にしなくていいよ」

「それでも、こうして会える時間が減っちゃうのは、私としては寂しいんだけど……」

「ごめんね、僕のせいで」

「ううん……私は光博のこと恨んでたりしないし、むしろ、それでもこうして話に来てくれて、私は嬉しいのよ?」

「まあ、だいぶ無理を言ってるけどね。僕も君ぐらいしか相談相手がいないのさ」

「あら。大学では女の子の友達いないの?」

「ああ……あいつらは、なんというかそういう相談には向かないんだ」

「ふーん、恋愛に興味のない女の子なんているのね。私の周りじゃいないわよ」

「僕らにはそういうタイプもいるのさ」

「変わってるわね。で? 今度はどんな相談?」

「彼女の誕生日、そろそろだろう?」

「ええ、十月の十三日だもんね」

「プレゼント、何がいいかなって」

「振られたのに諦めないのね」

「僕はそういうタイプだよ」

「お熱いことで」

「熱いのは僕だけだけどね」

「そうね、あの子、最近は何も欲しがらない感じだよ。強いて言うなら、時間」

「忙しいのは聞いてるけど……ずっと忙しいみたいだね」

「うん、あの子いろいろできちゃうから……」

「この前連絡したら、なんか掛け持ちが多いとか言ってたっけな」

「別れても仲良くできるのは、きっとあの子の性格よね」

「ああ、僕の気持ちには深く踏み込んでこないから、それは意地悪だと思うけどね」

「あの子は天然タラシだからねぇ……」

「でも困ったよ。僕が聞き出すには難しいし、君でも知らないとなると、本当に困った」

「誕生日のプレゼントなんて、去年も一昨年も渡してたじゃない。その感覚で行けばいいんじゃない?」

「あれは付き合ってたから、だいたいどういう感じで行けばいいか分かってただけ。今はてんで分からなくて困ってる」

「経験少ないもんね、光博は」

「第一、僕がそういうことできると思ってないよ。あんなの奇跡なんだ」

「へえ、光博、結構魅力的だと思うんだけどなぁ」

「それは毎回こうやってお土産持ってきてるからでしょ」

「バレたか」

「バレバレ」

「まあ、でも、それでもあの子とこれだけ長い間上手くやれてたのは、あの子史上光博だけよ」

「うーん、努力はしたんだけどなあ」

「まあ、光博もまだまだってことね。人を見抜く力はあっても、行動に移すのはまだまだ経験が足りないってわけね」

「君に言われるなんて、僕もほんと、まだまだだなぁ」

「うーん……でも、私もわかんない。あの子の欲しいものなんて」

「これはもう少し探る必要がありそうだね」

「連絡はいつでも取れるんでしょ?」

「ああ、あの子は仲良くはしてくれるようだしね。先輩と後輩って関係で、だけど」

「もう、あの子も罪な人なんだから」

「僕の我儘でもあるからね。もう一度やり直したいのは」

「私としても、早く仲直りしてほしいなぁ。あの子が今付き合ってる彼、全然私に構ってくれないの」

「構ってたらもう僕はお払い箱だから、そうじゃなくてよかったよ」

「何言ってんの、光博はあの子と付き合ってなくてもお土産持ってきてくれるんだから、ずっと仲良しよ、私とは」

「はぁ……物で釣ってる感じあって嫌だなぁ」

「私たちはそういう生き物だからね、仕方ないわよ」

「彼女にバレないように君に連絡するのも難しいんだからね?」

「家が隣でよかったってことね」

「うーん……まあ、そういうことにしておこう」

「ちぇー……素直になれない光博は瑞樹ともっかい付き合えないよー?」

「からかうのはよしてくれ。まだあの子を諦められてないんだから」

「よくそんな恥ずかしげもなく言えるわよね」

「今更君に隠しても仕方ないよ。ていうか、そうでなきゃ何を欲しがってるかとか、君に聞かないさ」

「まあ、私が一番近いからね、あの子には」

「そういうこと。……それでも分からないと言われたから困ってるんだけどね」

「光博はもう少し自分で考えなきゃ。……欲しいものをあげる、ってのは付き合ってる時までよ」

「というと?」

「積極的にもう一度アタックしたいなら、自分の思いを具現化したものじゃないと。欲しいものをあげるってよりか、あげたいものをあげるの。私たちだって、その方が嬉しい」

「じゃあ今度からはお魚じゃない方がいい?」

「それはないんじゃない? 光博が持ってくるの、家族みんな楽しみにしてるのに」

「あはは、ごめんよ」

「まあいいけど。とりあえず、瑞樹にあげるプレゼントは、もっと自分本位に考えてみたら?」

「うん、やっぱりタマちゃんに聞いたのは正解みたいだ」

「そう言ってもらえたら嬉しいわね。……あ、お父さん帰って来たみたい」

「久しぶり、光博君」

「あ、お久しぶりです。お元気ですか?」

「ああこの通りね……最近はご飯が美味しいから、元気だよ」

「あはは、タマちゃんと同じこと言ってますよ」

「もう、お父さんったら」

「親子だから仕方ないね。あ、今日はサンマを持ってきてくれたのかい?」

「ええ、今が旬ですから、そこらのスーパーで安売りしてたので」

「これは嬉しい。最近、瑞樹さんがくれるご飯の量じゃ少ないと、息子たちがうるさくてね」

「ちょっと、私の分も残しといてよね、お父さん」

「分かってるよ。息子たちに半分、残りでいいかい?」

「むー……それならいいけど」

「あはは、なんだかまだまだタマちゃんも子供ですね」

「光博君はもう二十歳だったかな」

「はい、この前なりました」

「ほんと、いい人だからうちのタマを嫁にとってほしいくらいだよ」

「ちょっとお父さん!」

「あはは、冗談はきついですよお父さん」

「光博君がネコだったら、私は是非歓迎だよ」

「僕は人のままですから」

「もう……お父さんったら、年取るごとにほんとおっさんみたいになっていくのね」

「猫でも年を取ればおっさんだよ。この前の寄り合いに行ったら、若手に『年取りましたね』って言われてしまったしね」

「あはは。お父さんの年齢ぐらいだと、人で言うともう四十くらいですかね」

「そんな感じだろう。私には、人間が何歳ぐらいでおっさんと呼ばれるのかは分からないけどね」

「まあ、光博、また来てよ。お隣さんなんだから、ここに来れば会えるでしょ?」

「うん、まあね。でもお魚は毎回持ってこれないよ?」

「いいんだ、光博君。娘もこう言ってるんだ、うちの飼い主さんの話以外でもいいから、なんでも話しに来ておくれ」

「ありがとうございます」

「じゃあ、私たちはそろそろ昼寝の時間だから」

「ええ、また今度来ます」

「待ってるよ、光博」

「うん。じゃあ、また」

 

「タマ」

「なあに、お父さん」

「変わってる子だね、光博君は」

「ええ、私たちと話せるのは彼だけだもの」

「……好きなんだろう?」

「えっ、もう、何言ってるのお父さんったら」

「はは、照れるとすぐ髭が動くんだから、お前は嘘をつくのが下手だよ」

「もう……」

「まあ、今から昼寝でもしよう。そしていい夢でも見なさい。そうだな、タマが人間になれる夢でも」

 

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