少女は両親をゾルディック家の玄関まで見送る。少女は、本当は今すぐにでも両親に抱きついて一緒に帰りたかったが、そうできないことは重々わかっていた。
少女は、両親の仕事について両親が思っているより理解していた。突然ふらっといなくなる父親や、時々怖い顔をして電話している母を見かけると、普通の家庭とは違うと言うことを思い知らされた。
少女にとって一番最初に疑問を抱いたのは保育園年長組のことだ。母や父は急いでいると普通に2回の窓から飛び降りるし、お弁当を忘れると、歩いて30分かかるはずの道を何故か5分で届いたりする。
それがふつうと思っていたのだが、どうやらそれは違うらしい。ふつうの家庭は、どれだけ急いでいてもちゃんと一回の玄関から出るし、お弁当を忘れると、車で届けない限り、ちゃんと30分後にとどく。初めてできた友達は、少女がそういうことを言うと、少女のことをうそつき呼ばわりしたので、あまり言わない方がいいと気がついたのだった。
そう言うこともあって、少女は、両親にとってどれだけ自分がお荷物であるということを感覚的に理解していた。自分がいれば、自分を狙うやからがいて、それが両親の弱みになるかもしれない。
しかし少女は、決して悲観的な考えにはなってはいなかった。それは、両親の仕事にとって自分は邪魔なだけで、愛されていることはわかっていたからだ。
少女はだからこそ、両親の決定したことに何の抵抗もしなかったし、泣いたりもしなかった。
しかし、だからといって、この状況を喜んで受け入れるほど、少女も人間が出来ていない。少女だって、相手側に受け入れてもらえるよう、愛想良くしようと思っていたのだ。
それなのに、そんな心構えは、一瞬で吹っ飛んでしまった。
待っていたのはムキムキの大男に、「暗殺」と書いた怪しい服を着用しているおじさんに、包帯ぐるぐる一つ目の女の人に、目に全く光のないお兄さん、おでぶのお菓子を食べてるお兄さんだった。唯一まともそうなのが、白い髪をした少年だったが、周りのインパクトの強さに少女は一瞬でやられてしまった。
少女はこのときほど、両親の考えが理解できなかったことはない。確かに、ここが一番両親の敵から身を守るには安心できる場所であると思った。しかし、少女は、両親の敵なんかよりもこの家族のほうが危ないんじゃないかと本当に強く思ったのだ。
だから少女は、とてつもない葛藤にさいなまれていた。両親のことを思えばここにいるべきである。しかし、どうしてもこの家族と2年間も付き合っていける気がしなかった。
少女は、いやな予感ばかりここへ来て感じていた。
そしてその勘が、正しかったことは、とんでもない早さで露見した。
それは、その日の夕食でのことだ。
少女は、なんやかんやもてなされ、そのまま夕食の時間になった。
豪華な長い机に、少女が見たこともないような料理が次々と並ぶ。お皿も、コップも、フォークやスプーンまでもが少女の予想もつかないほどの値段がするもにばかりである。
上を見上げると、とてもでかく、光り輝くシャンデリアが部屋を照らしている。
普通なら見たこともない家にテンションがあがるものかもしれない。それは、夕食に限ったことではなく、家中が高価なものであふれていた。
しかし、少女は逆に、家に入れば入るほど、少女の警戒アラームの音は強くなっていった。
そして今、一番少女の警戒アラームがマックスに鳴り響いているのがこの料理である。
美味しそうな料理のはずなのに、少女には何か異様な、毒々しい雰囲気を感じた。
周りの人たちは、挨拶をいい、ご飯を食べ始める。
少女も、食べないとと思うが、いっこうに箸が進まなかった。自分の中の本能が、この料理を食べることを全力で拒否していた。
少女が、なにも食べないでいると、大柄の男が、少女に話しかける。
「食べないのか?」
少女は、その圧にびびる。まるで、これを早く食べろと言っているように少女は感じた。しかし、その通りだろう。ご飯をよばれているのに一口も食べないのは変だ。
少女は、無理やり体を動かし、料理に手を着ける。
すると、いきなり包帯の女の人が「あらやだ!」と言い立ち上がった。
少女はそれに驚く。
「どうしたんだ?」
「マリアちゃんの分、毒を抜くのを忘れてたわ!危なかった。ついうっかり殺しちゃうところだった。」
包帯女は、そう言う。
その発言に少女は驚愕した。冷や汗が止まらなくなる。自分は危うく殺されかけていたのだ。
しかし、頭のねじの飛んでいるゾルディック家は、謝りはしない。それどころか、少女の勘の良さをほめたたえている。
流石、情報屋の娘だ。勘がいい。
うむ。全くじゃ。
そう言う会話が、少女の目の前で繰り広げられる。
少女は、自分は2年も生きてはいられないだろうと心のどこかで思った。
あっぶね~。いきなり終わるとこだったぜ(^^;)