IS~織斑三兄弟の物語~   作:ピーナ

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IS世界の最初のターニングポイントに入っていきます。


第二話 白き騎士と黒き武者

実サイド

 

僕達が束さん(篠ノ之さんと呼んでいたけど、束と呼んで欲しいと言われたので、変えた)にISを見せてもらってから結構経った。

最近、親友の一冬や千冬さん、束さん、同じくクラス委員をしているヒカルノさん、後輩の真耶さんと一緒に居る事も増えた。たとえ乗れなくてもISは凄く気になるからだ。

正直、試作機に乗って空を自由に飛んでいた一冬と千冬さんが凄く羨ましかった。

それと同時に、帰るのも一緒になる事が増えた。

理由は僕の下の妹、本音とウチが代々仕えている更識家のお嬢様である刀奈ちゃんと簪ちゃんが、一冬と千冬の弟である一夏君と束さんの妹である箒ちゃんが同じ幼稚園、小学校で友達同士だったから。去年母さんに頼まれて三人を迎えに行った時にばったり会って、驚いた。それ以来、その事を母さんに言って僕も一緒に迎えに行って帰るようになった。

最近は放課後、皆で帰って、束さんの家で受験勉強したりしている。子供たちは一緒に遊んでいるらしい。一夏君はウチの学校でもトップのモテ男ながら鈍感な一冬の実弟だから、本音や刀奈ちゃん、簪ちゃんが魔の手に掛からない事を兄として祈る。

まあ、そんな事をしている内に一学期も終わって夏休みに入った。夏休みに入ってすぐ、束さんは一段落したISの発表をしに行ったらしいけど、ほぼ門前払いだったらしい。束さんはそれを悔しがっていたけど、「あのオヤジたちをぎゃふんと言わせるような結果を見せてやる!」と逆にやる気になった。

夏休みの僕の生活は基本、家に居て、受験生だから勉強もしつつ、妹たちの面倒を見ている。

今日もそのつもりだったのだが、なんだか、家が騒がしい。

家と言ってもウチは住み込みで更識の家に仕えているので、更識家が騒がしいのだが。

更識の家は対暗部用暗部。代々国を裏側から護って来た家である。僕の父さん、布仏真一は現当主の楯無さんに仕える使用人。…でありながら色々な事をしている。っていうか出来る。専属の秘書兼ボディーガードみたいな物だ。

何が出来るかというと、銃器の扱いから、ちょっとしたおばあちゃんの知恵袋的な事まで出来る。我が父ながら凄い人である。

僕が気になって廊下にでると、丁度父さんが居た。

 

「父さん、何の騒ぎ?」

「実か。実はな…」

 

父さんの説明に僕は絶句した。

日本に向け発射された各国のミサイル。その数、2341発。自衛隊の戦闘機やらイージス艦を緊急出動させたものの、迎撃に間に合うか分からない。日本の危機に表も裏も関係無く、更識の家も情報収集などで動いていた。

 

「お前は、虚や本音、刀奈ちゃんや簪ちゃんを頼む」

 

そう言って父さんは動き出す。

…僕はまだ、どうする事も出来ない。更識に使える者としてそれなりに勉強して来たけど、そんなものはこの状況は役に立たない。

その時、僕には一つの案が思い浮かんだ。でも、これは友達の夢を壊してしまうかもしれない。でも…国を護る更識の家に仕える者として、やろう。それで、アイツらに恨まれても良い。

 

「父さん! 僕に一つ方法があるんだけど…」

 

 

 

その日、俺は篠ノ之道場で千冬と稽古をしていた。

 

「暑っち~とりあえず、いったん休憩としようぜ」

「そうだな。これで、251勝251敗。また五分に追いついたぞ」

「言ってろ、すぐ離してやるからな」

 

俺と千冬はいつからかこうやって稽古で真剣勝負をしている。そして、勝敗を競っているのだ。

千冬も部活では本気で当たれる人が居なく、もっぱら教え役に回っているらしく、ここでの本気の打ち合いは楽しそうだ。

戦闘狂かよとツッコみたいが、俺自身がその気が有るので何とも言えない。

 

「かずくん、ちーちゃん! みのるんが私達に用があって来てるよー」

「実が? 分かった今から行く」

「いや、僕の方から行くよ。急ぎの用だからね。それで、三人にはちゃんと僕の話を聞いてほしい」

 

実が入ってきて、そう言った。その目はいつも以上に真剣だ。

 

「…分かった、このまま聞く。話してくれ」

「今、日本は2341発のミサイルに狙われている」

「「「なっ!?」」」

 

急ぎの用があまりにも桁外れな事だったので俺達は驚きを隠せない。

 

「自衛隊は防衛の為に動いているけど、圧倒的に手が足りない。そこでISの力を貸して欲しい」

「実! それがどういう事になるか分かって言ってんのか!」

 

感情的になった俺は実の胸倉を掴む。

 

「分かってる! この目で見てきたISだったら、多分全弾叩き落として日本の無事は守れる! でも、そのせいで束さんの夢を壊してしまう! そんなことしたらISは兵器としてしか見られなくなる! 束さんは世界中から狙われる! でも、僕の家は代々日本を裏から護って来た! 護る手段が有るのならそれを使う!」

「お、落ち着け、二人とも」

「千冬は黙ってろ! 実! 日本を護る? 大層な事言いやがって! 正直な、俺はこの国よりも、束の夢の方が大事なんだよ! そんなもんの為に束の夢を壊させるかよ!」

「僕だって、嫌さ! 僕だって、日本なんてデカい事は言ってるだけで、本当は虚や本音、刀奈や簪を護りたいだけだ! でも、僕にはこれしか思い浮かばなかったんだ! それなら、嫌われ役をやってでも守ってやる! そう決めたんだ!」

「二人とも、もうやめて!」

 

止めに入ってのは束だった。

 

「二人の気持ちは分かったよ。みのるん、ISをミサイル迎撃に使うよ。これは事情を知った私が決めた事だから、みのるんが自分を責める事無いよ。かずくん、ちーちゃん、お願いできるかな?」

「束、本当に良いのか?」

 

千冬がそう聞く。

 

「本当は嫌だよ。でも、私もみのるんと同じでおとーさんやおかーさん、箒ちゃんにいっくん、まやまやにヒカルン、大事な人を護りたいんだ。その為なら私の夢を投げ出す事位できるよ。さ、早く準備しよ」

「束さん、ゴメン…」

「みのるん、そう言う時はありがとうの方が良いよ」

「…ありがとう」

「うん。じゃあ、ちーちゃんとかずくんは3分後に来てね」

 

そう言って、一足先に束は出て行った。

 

「…一冬」

「分かってる。ちょっと行ってくるよ」

 

俺は束の後を付いて行った。

 

「束」

「どったの? かずくん」

「お前無理してるだろ」

「…そんなことないよ」

「嘘付け。いくら隠しても俺と千冬にはバレバレだっつーの。どんだけ長い付き合いだと思ってんだ」

「…そんなこと…」

 

どんどん涙声になっていく束。あー、見てられねえ。俺は頭を掻いた後、束を抱き寄せた。

 

「…ふえ!?」

「今は、俺しかいないから思いっ切り泣いちまえ。それまで、こうしててやるから」

 

俺の言葉でついに束は泣き出した。マジ泣き。多分、ガキの頃、千冬と大喧嘩した以来の泣きっぷりだ。

束は一通り泣いた後、

 

「なんか、かずくん慣れてたね」

 

と聞いてきた。顔は結構赤い。夏だから暑いのだろうか?

 

「まあ、二度目だからな」

「へえー、誰にこんな事やらしたの?」

「…千冬だよ」

「ちーちゃん?」

「ああ、親父とお袋の葬式の後にな。あの日、貸したのは背中だけどな。…それより、すっきりしたか?」

「うん。まだ、吹っ切れてはいないけど。じゃあ、準備をしてくるよ」

 

そう言って、束はISの置いてあるいつもの所に向かった。その足取りは気持ち軽くなった気がする。さて、俺も準備をしますか。

 

 

「じゃあ、行くよ。コアナンバー001、機体名『白騎士』とコアナンバー002、機体名『黒武者』作戦目標は日本に飛来しているミサイル群。二人ともOKかな?」

「「おう(ああ)」」

「自衛隊には父さん経由で伝えてある。伝わってるかどうか怪しいけどね」

「人殺しになりたくないから無視する」

「だな。俺達に危害を加えない限りはそうしよう」

「出撃準備、完了! ちーちゃん、かずくん、頑張って!」

「ああ、任せておけ。織斑千冬、白騎士、出るぞ!」

「おう。束の護りたい人全部、お前ごと護ってやるよ。織斑一冬、黒武者、行って来るぜ!」

 

そう言って、俺達は出撃した。

 

「…束さん、顔真っ赤だよ?」

「ううー、カッコよすぎるよかずくん」

「まあ、あんな事サラって言っちゃうからね」

 

 

 

『まあ、目安は1000発位だな』

『そうだな。自衛隊も出撃している事だし。…しかし、さっきのはカッコ付けすぎではないか?』

 

移動中、僕と千冬はプライベートチャンネルで会話をしている。気を紛らわすためだ。

ISを信じてはいるが、それでも、2000を超えるミサイルの中に突っ込むのだ。怖いに決まってる。

 

『そうか? そんな気は無かったんだけど…』

「…はあ、束も真耶も苦労するだろうな」

『なんか言ったかー?』

『いや何も。それより、アイツの後を付いて行った後、何をしたんだ? 束は妙にすっきりしていたが』

『親父とお袋の葬式の時と同じで、思うまま泣かせた』

『ああ、道理で。お前の事だから抱きしめて、気のすむまで泣かせたんだろう?』

『どうして分かんだよ!』

 

千冬って…エスパー?

 

『伊達に片割れでは無いという事だ。…さて、到着するぞ。気を引き締めろよ!』

『誰に向かって言ってやがる! …なあ、千冬』

『なんだ?』

『多分、これが終わったらISは兵器として見られるけどさ、せめて俺達だけは本当の目的を覚えていようぜ』

『…そうだな』

 

こうして俺達は作戦を開始した。

 

 

 

アナザーサイド

 

 

「…空対空ミサイルも、機関銃も切れた。基地に戻ったら、その間に街は火の海だ。ならば、玉砕してでも一発落とす!」

 

一人の戦闘機乗りがそう覚悟を決めた時、彼の愛機の背後からミサイルが迫った。

 

「! マズイ!」

 

気付いた時はもう遅かった。回避機動は間に合わない。彼は覚悟を決める。最期の脳裏によぎるのは、遺してしまう妻と子供。

 

(済まない…!)

 

しかし、一向に衝撃は来なかった。そして、彼は信じられない物を見る。

 

 

そこには宙に浮く、二つの影。

 

細身の白き姿はまるで中世の騎士の様。

 

重厚な黒き姿はさながら、戦国時代の鎧武者の様。

 

そして、二つの影が動き出す。

 

 

 

『ふう、なんとか間に合ったか…』

『気を抜いている暇は無いぞ、一冬!』

『分かってる! 一気に行くぞ、千冬!』

 

俺達は得物を手に、ミサイルに突っ込んでいく。

お互い、使い慣れた日本刀型のブレードだ。そもそも、このブレードも宇宙で出来たごみを切る為に作った物のはずだったのに。

俺達はこの数か月で創り上げたISの機動をフルに活かして次々、ミサイルを落としていく。

遠くで固まっているミサイル群には、試作荷電粒子砲をぶち込む。

斬って

斬って斬って

斬って斬って斬って

時折、荷電粒子砲を挟みつつ、俺達はとにかく、ミサイルを壊しまくった。

でも、二人ではどうしても届かない所がある。「マズイ」と思ったが、それは自衛隊のパイロットがなんとかしてくれた。今は俺達も彼らも同じ思いを持つ仲間だ。

 

長い時間の末、ミサイルはすべて落ちた。

発射された2341発のうち、地上に落ちたのは0発、民間の被害者は無し。自衛隊の人は…多分何人か亡くなっただろう。もし、俺が言い合いをしていなかったら、無かったかもしれない被害だ。

 

『…あまり自分を責めるなよ』

 

千冬には気付かれた。…やっぱ、隠し事できねーわ。

 

『こちら、航空自衛隊。白き騎士殿と黒の武者殿の多大な協力に感謝する』

 

この防空網を指揮してきたところから、そう言う連絡が入る。それだけで気が楽になった。

返事を返そうとした時、どこからか攻撃が始まる。俺達は二手に分かれてそれを避ける。

戦闘機に描かれた国旗は日本の物では無かった。

 

『どうする?』

『仕方ないから、無力化する。俺が囮をやるから、頼むぞ』

『了解』

 

決めた後俺は一気に接近する。それに気が付いた相手はまんまと俺の方に狙いを定める。

 

『今だ!』

 

隙を突いて千冬がエンジンを破壊する。そして機体からパイロットが脱出したのを確認して、残っていた荷電粒子砲で焼き払う。

 

『離脱するぞ!』

『ああ!』

 

俺達はステルスモードをONにして、空域の離脱を図った。

 

これが後に「白騎士・黒武者事件」と名付けられる、日本の危機であり世界中にISが知れ渡った瞬間だった。

 




僕なりの白騎士事件(作中内では白騎士・黒武者事件ですけど)をお送りしました。

次回は…その顛末などを。
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