第一部 一話(第五話) IS学園にて
うわ、凄え居辛い・・・
俺は思わずそう呟きたくなるのを抑える。
それもそうだ。ここ、IS学園の99,9%は女子。用務員や整備員には何人か男性が居るらしいけど生徒は俺一人。
中学の奴らは「どんなハーレムだよ!? 俺と変われ!」とか言ってたけど、変われるならぜひ変わって欲しい。この状態はキツイ。
幸いなのは千冬、束、真耶が同じクラスだったこと。それだけで大分楽になる。もし居なかったらと考えると…。止めよう、嫌なものしか思い付かん。
「はーい、SHR始めるぞ。私は大塚由紀。この1年1組の担任だ。ISは正直君らと理解度はそこまで変わらん。つーか、分からんところは篠ノ之に聞け。私の自己紹介はこの辺にして、次はお前らの紹介に行くぞ。テンポよく行けよ」
先生の指示で席順で自己紹介が行われていく。つーか、なんでここは出席番号順ではないんだ?
「そんじゃ、次、織斑(男)。皆期待してるから、良いのを一発頼むぞ」
「良いのって、何っすか…。えー、織斑一冬です。漢数字の一に季節の冬でかずとって読む変わった読み方だけど、まあ、その辺は気にしないでください。一応、世界最初のIS乗りですけど、知識面では皆さんとそこまで変わりません。よろしくお願いします」
俺の自己紹介が終わると、
「「「「「きゃあぁぁぁ!!」」」」」
クラスの女子が黄色い声を上げる。耳が痛い…。
「背高っ! 本当に同い年?」
「細身だけど、がっしりしてる! 男らしい!」
「ワイルド系でカッコイイ!」
口々に言われるけど、俺はさっきの耳の痛さの方が大きくてそっちの方に気がいかない。
「はいはい、騒ぐのも分かるがほどほどにな。後で、アイツや世界的に有名な奴らには個人の質問タイムを取るからな。具体的には織斑ツインズ、篠ノ之、山田の4人だ。分かったな」
「「「「「はい!」」」」」
世界各国の女子の意見が統一された。先生凄えな。しかし、俺達に決定権は無いんですか。
「はあ…」
「諦めろ、織斑。有名税って奴だ」
そして、全員の自己紹介が終わった所でさっき言われた質問タイムが始まる。俺達4人が前に立つ。…吊るし上げか? これ。
「そんじゃー、どんどん質問行くぞ」
そんな先生の手には質問BOXと書かれた箱がある。ついさっき、クラス全員から一つずつ質問を集めた。先生曰く「区切らないときりがない」との事だ。
「なにがでるかなっと、『特技は?』無難な所だな」
「私は剣道だな。白騎士がブレードのみなのもこれが理由だ」
「私は発明かな~。IS以外にも色々作ってるし」
「私は…特技と呼べる物はないです。強いて言うなら料理でしょうか?」
「俺は家事全般だな」
と、こんな感じで、どんどん答えていく。
間に「千冬様、お姉さまと呼ばせてください!」とか「篠ノ之さんに弟子入り希望!」とか「真耶ちゃん私の妹に!」とか欲望垂れ流しなのも入っていたが。
「さて、最後のだが」
「あれ? 数少なく無いっすか」
「簡単だ、何人かのがかぶっている。その質問は、『織斑君、好きな女の子のタイプは? 彼女は居ますか?』だ」
やっぱ、そこですか。…まあ、束と真耶に心配を掛けないためにもちゃんと言うか。
「彼女は居ます。つーか、束と真耶がそうです」
「…二人ともか?」
「そうですよ」
「「「「「ええ~っ!!!」」」」」
教室が驚きの声を上げる。まあそれもそうか。他人から見たら二股宣言だし。
「そりゃ、イケメンだし」
「スタイルもモデルみたいだし」
「しかも家庭的だからモテるのは分かるけど!」
「「「「「二股はどうなの!?」」」」」
クラスのツッコミは完璧に同じだ。ホントに初対面ばっかなのか? 息合いすぎだろ。
「私達は気にしてないよ~」
「そうですねー。ちゃんと私達二人を愛してくれてますし」
おー、嬉しい事言ってくれるね。俺にとってはどっちが上とかは無い。そんなんが有ったらこの状態は無いし。
今の所、問題は無い。
一応二人の両親にその旨を話に行った。
真耶の両親、真さんと美耶さんも、束の両親、柳韻先生と月子さんも認めてくれた。真さんと柳韻先生には一発ずつ殴られたけど。まあ、そりゃそうだろ。娘が連れてきた彼氏が堂々二股掛けてるんだからな。一発だけで済んで認めて貰えたのは、俺自身が認められたと自惚れていいのだろう。その後も普通に俺と話してくれるし。
金銭面もIS乗りとして日本政府から支給されている。結構な額を。ぶっちゃけ、二人と高校生らしからぬ額の所行ってもまったく問題無いくらいに。
そんだけ貰っているので、いくらか更識家に入れると言ったのだが、楯無さんに『子供がお金の事を気にしなくて良い。自分の為に使いなさい』とやんわり断られた。
自分の為に使おうと思うけど、全寮制のIS学園(俺と千冬の学費は日本政府が全額負担)なので、使う機会が無い。たとえ使う機会が有ったとしても、十五年間の金銭感覚(しかも、若干主婦より)だとこんなに要らない。贅沢な悩みだけど、困った。
「…まあ、本人たちが良いのなら良いか。よし、早速だが授業を始めるぞ」
先生の合図で授業が始まった。
IS関係の授業は束が教えてくれたので着いていけた。一般科目もこの分だと大丈夫だろう。
「さて、見世物みたいだけど、やりますか」
「ああ。本気で行くぞ」
「俺もだ。つーか、千冬との戦いで手加減とか、無粋な真似はできねえよ」
俺と千冬はISを纏い、訓練用のアリーナに来ている。全校生徒+教師陣が全員観に来ているし。
今の所、まだどの国も量産されたISの開発が出来ていないので、このアリーナは当分使えない。しかし、各国とも開発に力を入れているので半年ほどで訓練機が来るだろうと束は言っている。
まあ、今日の俺と千冬の戦いは、教材兼このアリーナのこけら落としって所だ。
『ちーちゃんもかずくんも準備はいいよね? 長くなるといけないから30分一本勝負だよ』
「「ああ」」
『それじゃ…試合開始!』
開始の合図と共に俺達は相手に向かって突っ込む。突撃しながら武器を呼び出す。
千冬のは千冬の剣技を最大限に生かすために束が作った近接刀『雪片』。特徴は極限まで軽くした事。それでもってかなり丈夫。どれくらい軽いかというと、俺や千冬が生身で素振りを出来る位。この刀とISの相乗効果で、千冬の剣戟は俺でも見切るのがしんどい。
対する俺のは世界で恐らく俺しか扱えない近接大刀『無骨』。特徴はデカく重くだ。大きさはIS装備の俺の2倍ちょっと。重さは以前使っていた近接ブレードの約5倍。ISの補助をもってしても女子には持ち上げる事すら出来ない。千冬ですら持ち上げるのがやっとだ。大刀って言ってるけど、持ち手を付けた金属の塊だ。これで重い一撃を叩き込む。これが俺のスタイルだ。
さて、戦いに戻ろう。武器の特徴上、俺の方がリーチが長い。突撃からの一撃は小細工なし、全力の横薙ぎ。しかし、千冬はあっさり避ける。
「簡単に避けるなよ。…マジで泣くぞ!」
「そんなの当たってられるか! 当たったら体勢崩して、そのまま試合終了だ!」
「それが俺の戦い方だ!」
「なら!」
千冬は加速して一気に俺の懐に潜り込む。
性能的に白騎士と黒武者はほとんど同じだ。しかし、お互いの戦い方に特化させるために、かなりピーキーになっている。黒武者の場合、とんでもなく重い『無骨』を装備しているので、どうしても機動性や運動性が落ちてしまう。なので俺はトップスピード特化にしている。防御は…気合いで何とかしてる。つーか、先に踏み込んで当てれば良いだけだし。
まあ、そう言ったら、束と真耶と実に「「「いや、それはお前(かずくん)(一冬さん)だけだから」」」と言われた。ちなみに千冬は完全同意だったので前の言葉が俺達に変わった。
白騎士の場合は機動力、運動性重視になっている。トップスピードは特化の黒武者に軍配が上がるけど、それ以外の機動系統の能力は白騎士が上だ。
簡単に纏めると白騎士は『格闘型』黒武者は『強襲型』って感じ。
だから、千冬の戦い方は正しい。超接近戦に持ち込めば黒武者の長所であるスピードを殺し、白騎士の運動性を活かす。ただ、この戦法を取れるのは千冬だけだろうけどな。直感と反射神経、それと今までの経験、ISの性能をフルに活かす事で初めてできる事だ。
「千冬、ホント一発だけでも良いから当たれよ!」
「それは、こっちのセリフだ! 手数は私の方が上だぞ! それをことごとく防いで!」
お互い攻撃をしながら悪態をつく。だって、一発も直撃が無いんだぜ? そりゃ、悪態の一つや二つ、つきたくなるさ。ま、お互い様だけど。
お互いの今持てる技術を出し尽くした戦いは結局決着が付かずに引き分けで終わった。…あー、疲れたけど、納得いかねえ。今度はちゃんと決着付けれるように、今よりもっと努力をするか。
まあ、今日は部屋に戻って彼女たちに癒してもらうかな。
いよいよ一部の本編が始まりました。一部はここから、一夏の入学までです。結構時間は飛び飛びで行くと思います。
今少し考えているのはもう少し進んだら、二部の原作の所と同時進行にしようかなと思っています。その辺がどうなのかご意見がありましたら是非。