遂に千聖ちゃんが私たちの仲間になってくれた。だけど彼女は私とは真反対、努力がダメになっていたとしてもその努力に努力を重ねたら! って私とは違って、努力で通じないなら策を練るタイプ。戦闘でもそれ以外でも、その違いは私と千聖ちゃんの意見が衝突する原因でもあった。
「……わかった。じゃあ明日から全体練習を中心にする」
「ええ、ありがとう」
──でも毎回、言いくるめられちゃうんだよね。千聖ちゃんはトーク力もすごい。そこは本当に私も見習わなきゃってところだもん。イヴちゃんには一騎打ちみたいだと言われたけれど、実際に一騎打ちをした手前、私と千聖ちゃんは苦笑いをしてしまうけど。でも、私は思うんだ。千聖ちゃんと私が目指しているものは一緒だなって。それは、ステージに立つことやステージを成功させること。夢を諦めたくないということ。
「……ようやく気づいてくれたのね。もしかしたらずっと気づかないのかと思ったわ」
「え、ええ……?」
「私とあなたは何もかも真逆だけれど、目指したものは同じ、そうよね?」
「うん!」
今度こそ、今度こそだよ! 私は、私たちはライブを絶対に成功させてみせる! そのために必要なことは全部やってみせるから。だから
「はっ、やぁあ!」
「よっと、はい!」
「まだよ!」
そうして練習が終わった後は、サタンの用意してくれた訓練所に向かって勇者としての鍛錬も欠かさない。特に私たちはみんな魔法少女! みたいなものとはかけ離れた戦闘方法ばっかりだから日々の鍛錬がより強いイマジネーションを生み出すだろうと悪魔王であり初代の勇者である彼は語っていた。今は変身した千聖ちゃんと日菜ちゃんが組手をしているのをカメラで撮りながらコンビネーションの研究をしていた。
「五人で戦うことを意識、かぁ」
「どうかしましたか?」
「ううん、なんか練習の時みたいだなぁって」
「千聖さんは参謀って感じですからね」
こうしてビデオカメラまで用意して組み手をすることで二人のクセや戦い方を研究する。そうすることでより密な連携ができると言われる。確かに、私なんか空手はずっと一対一しか経験したことなかったし、これからみんなで戦うんだから何かあった時に二人や三人の魔力を組み合わせて使うことは求められるよね。
「それだけではない」
「サタン」
「勇者は六つの能力を使えるが、やはり同時に扱うのは難しい。組み合わせるのはその分簡単だが、キミたちは五人でその能力を分け合い、助け合うことができる」
「六つ……六つの能力」
そうだ、私たちにはもう一つの課題がある。おそらくアエーシュマもまだ探せていない、まだ見ぬ
「……よし、ドリームサンダー」
「なにかしら?」
「チームの連携はまとまったかな?」
「ええ、それなりだけれど」
そんなことを思考しているとサタンが千聖ちゃんと何かを話していた。チーム連携、確かにここのところでだいぶとれるようになってきた。少なくとも前の成りかけの悪魔戦のようなお粗末な感じではなくなってきたような気がする。ならばとサタンはその額から蒼い炎のような悪魔の角を出現させ、白い髪にラピスラズリが混ざっていく。そのオーラは燃える炎のようでありながら氷のように冷たく静か。
──完全悪魔化! 以前日菜ちゃんと二対一で挑んだ時にも一瞬しか見せなかった、サタンの本気の姿!
「今代の勇者の連携、みせてもらおうか」
「……これが、悪魔王の……本当のキングのオーラというわけね」
「リベンジだよ、彩ちゃん!」
「や、やるしかないっスね!」
「ブシに恥じぬ戦いをするまでです!」
「うん、行こう!」
ガン、と手甲同士をぶつける。まずはスノーとサニーが近距離戦闘での攻撃を仕掛けていく。風の魔力を纏わせてロッドを嵐のような速度で振り回していくサニーとスノーの連続攻撃に、だがサタンは得意の柔法で対応していく。刀であっても風を纏ったロッドであっても、全てを翼や腕で防いでいく。
「つ、翼も柔法が使えるのか~、まいったね」
「私の万象切断を滑らかに防いできます! タツジンとお見受けしました! 一合、お願いします!」
「よかろう」
「はぁぁぁあ──雪花流・冬桜乱舞」
目にも止まらぬ乱れ切り、千聖ちゃんは言ってた。イヴちゃんはサムライを強くイメージしているからこそ、雪花流として見た技を体得できるのだと。そこに続けて、彼女の刀はあくまで万象切断のイメージを固めるためのツールでしかない。あの子のなんでも斬れる本当の能力は、彼女が想像した場所に斬撃を置くもの、らしい。つまり刀を振りかぶらなくても、刀が通ったというイマジネーションさえあれば、スノーは対象を切断できる。
「ふっ、面白い。だが!」
「な、全部逸らしている!?」
「私は熱の変化を感知できる。刀が通る場所など、私には容易く知ることができる」
「蛇でいうところのピット器官みたいなものね、けれど、ここで見てくれるのは連携なのでしょう?」
「む?」
「あはは、いっくよ~!」
そう言ってサニーがサタンの逸らした斬撃を三節棍になったロッドで受け止めていく。受け止めて……違う、そうじゃなくて吸収してる。これが成長したサニーの新しい技、とっておきのブレイクスルー。
「
「二度来ても同じことだ。そして!」
「──はぁ!」
「やぁあ!」
「お前たちの攻撃も見えている!」
拳が受け止められてしまう。だけど受け止めてもらえた。ここまではサンダーの読み通りだ。でも、ファイアがサンダーの能力で私につけた
「ぶ、武器構築!
「なんだ……!?」
連撃がダメなことなんて重々承知してる! 私はなんとかして逸らせないほど近くに拳を届けたかったんだよ! この一撃を、たった一撃をサタンに叩き込むために! ファイアの武器構築によってみんなの武器が分解されてサタンが受け止めている私の右腕に集まってくる。装甲を肉厚に、肘の部分には鉄杭を仕込んだ、タイタンアーム!
「決めなさい、ドリームスター!」
「
本来なら拡散してしまうインパクトを全部、拳の一点に集中させての一撃、鉄杭がバチンと大きな音を立てて衝撃を強制的に止まった拳に伝え、サタンに届ける! これは絶対の破壊、どんな堅い装甲をもぶっ壊しちゃうくらいの究極破壊の一撃!
──だった。なのに、インパクトを当てる瞬間にサタンの姿がパっと消えて、私の腹部に平手を添えていた。
「な……んでっ!」
「シッ!」
「きゃ──あっ!」
「くっ! この……っ」
「逃げてファイア!」
「遅い」
「あぐっ!」
な、なにこれ。そうだ、前もそうだった。あの時完璧に捉えたと思った二人の回避防御不可能な一撃を、彼は躱した上で二人同時に打撃を……同時に打撃を受けた? まって、おかしい。そうだ、二対一で、私とサニーの距離が離れているにもかかわらず同時に打撃を受けるのはおかしい。
「うわっ、ちょ……っあ!」
「サニー!」
「千聖ちゃん! 稲妻を!」
「──わかったわ! イヴちゃん!」
「合点です!」
イチかバチか、これでサタンの真の能力がわかる。なんで隠しているのかはわからないけれど、あの連携ならきっと能力の正体を看破できる! 悪魔化し、シトリンの角が生えたサンダーがスノーに魔力を譲渡したうえで雷槌を地面に叩きつけた。
「無駄だ」
「それは、どうかしら! 準備完了よスノー!」
「ハイ、雪花流・秘伝──稲妻!」
稲妻は私と千聖ちゃんで考えた回避不可能の斬撃。一度目を躱されても一度目か前もってサンダーが
「……サタンは、
「と、時を?」
「なるほど、それで、彩ちゃんの技もイヴちゃんの技も回避してみせたのね」
「……ああ、私はこの技を、
そんな強力な技をどうして黙っていたの? それがあれば暴走した私から一撃をもらうこともなかったのに。その疑問にはある種当たり前の回答が一つだけ、言われなくてもある気がする。それは、乱発できない。何かしらのリスクがあるんだよね。
「ああそうだ」
「ならどうしてここで手札を明かす必要があるのかしら?」
「
つまりは、ティアマトの青の力、私たちで言うところの日菜ちゃんの万物転換に当たる能力をかつてもっていた。でも、ティアマトはその能力のほぼ全てを、白以外の全てをアエーシュマに奪われていたんだよね?
「そのはずだったんだが……ペオル」
「おう、戦闘記録の際にアエーシュマは勇者の力を内在の電池にすることはできても扱えねぇってことがわかったんだ」
「……つまり?」
「ティアマトのことだ。こうなった以上、アエーシュマに打診しているだろうな」
──全ての力を返してほしい、か。そうなるとティアマトは私たち五人と元々幹部各だった六魔の力。それに加えて自分の七色の力を扱えるってことになるのか。だけど日菜ちゃんたちが見つけた弱点の件もあるんだよね。
「弱点? あの姫サンに弱点があんのか」
「弱点って言えるかどうかわかんないけど、あの子の能力には制約があるんだよ」
日菜ちゃんが見つけた制約、それは二つまでしか能力が使えないこと。そして
「だからバリアと影を同時に発動させてる時には、あたしたちの能力は使えない」
「使おうとしたらどっちかを消さなきゃなんないってことか」
それでもバリエーションはすごく豊富で、強敵なのは事実なんだけど。その中でも特に強力なもの、
──次の敵はアエーシュマじゃなくてティアマト。私が彼女のプライドを傷つけたことで彼女はおそらく、怒りに燃えているに違いないとサタンは語った。