夢想勇者☆パステルドリーム   作:黒マメファナ

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諦めないのが、私の魔法だ!(某ジャンプマンガ並感)
まぁどっちも物理攻撃だし……


第25話:諦めないというMIND

 本番まであと数日、スタッフに呼び出しを受けた私たちだったけれどバンドの雰囲気は最高だった。聞くところによるとアエーシュマは最近事務所の方には現れてはいないようで、私たちは警戒しつつもアイドルとしての日々を過ごしてきた。

 そんな中、本番が近くなってきたことで当日のライブについての話があるとスタッフは私たちをぐるりと見渡して、千聖ちゃんが僅かに険しい顔をする。どうしたの? と問いかける前にスタッフさんはまずはとばかりに賛美の言葉を並べていく。

 

「レッスンや自主練習を意欲的にされている効果か演奏技術が順調にレベルアップしていますし、加えてチケットの手売りなどでお客さんの期待値も格段にあがっています」

 

 ありがとうございます、と礼を述べるものの、なんだか……うん。このスタッフさんのこと嫌いなんだなぁってのはよくわかった。千聖ちゃんが早く本題を話しなさいよとばかりの顔で頭を下げるんだもん。

 

「そこで、お客さんの期待にも応えるべくライブは生演奏で立っていただくということで……みなさん、できますか?」

「やりたいです!」

「練習した甲斐がありましたね」

「そりゃ、このために練習してきたんだし」

「こんなこと言うためにわざわざ呼んだのかしらこの無能は」

「わわ、せ、精いっぱい頑張りますねっ!」

 

 なんか千聖ちゃんからとんでもない毒を吐かれましたけど本当になにしたんですかスタッフさんは。ちゃんと私が声を大きくして掻き消したからなんとか聞こえなかったと思うけど。後地味に日菜ちゃんも棘があるよね? みんなちゃんとスタッフさんのこと多少は労わろうよ? 私たちのために一応頑張ってるんだから。

 

「ただ、彩さん。すみませんがボーカルは以前録音したものを使わせてください」

 

 ──え? どういうこと? いやそもそもなんでフォローしたのにここで後ろから刺してくるの? さては悪魔なの? ペオルとかだったら間違いなくグーですよグー。ちゃんと理由は話してくれますよね? ね? 

 

「彩さんは他のメンバーのみなさんに比べて極端に本番に弱いですし、万が一ヤジを受けてまた歌えなくなってしまっては危険です」

「……そもそも、私たちが練習を重ねてきたのは以前のような事態に対処するためだったはずですが? もし、また同じことが起こったらどうするつもりですか?」

 

 千聖ちゃんがすぐに反撃してくれた、ありがとう千聖ちゃん。だけどスタッフさんはまるでテープレコーダーに録音してきたかのようにそういう様々な事態を想定しての決定だと繰り返してくる。その上、更に私にわざわざプレッシャーをかけるようなことまで言われてしまった。

 ──少し、時間がほしい。私にはそれしか言えなかった。どうしよう、せっかくここまで来たのに、私はまだ、そこに立っているだけしかできないのかな? どうしよう、私は……私のわがままで、これを決めていいのかな? 

 

「彩ちゃんを動揺させる方法を熟知していらっしゃるようで……何かの冗談でしょうか?」

「す、すみません……ですが、これは()()()()()()()でして」

「社長……って」

 

 そうだった。忘れそうになってしまうけれど私たちの事務所は半ば、あのアエーシュマという悪魔に乗っ取られている状態なんだった。でも確かに、私はきっとヤジが飛んで来たら歌えなくなってしまうと思う。トーク中に変なことを言われたら、きっとまた言葉がでなくなってしまうと思う。

 ──みんなが解散した後、私は一人レッスン室にやってきた。何があってもここには毎日来ていたから。鏡を見て、自問自答を繰り返しているとその鏡に千聖ちゃんが映った。

 

「やっぱりここにいたのね、努力と練習の好きなあなたならきっと、いてくれると思ったわ」

「千聖ちゃん……努力、かぁ」

 

 私はそう、努力をすれば夢が叶うと思っていた。研究生をやっていて結果が出なかった時も、そう信じて毎日毎日、努力を重ねてきた。だからパスパレに選ばれた時はすっごく嬉しかった。夢が叶ったんだ! って喜んだ。努力した分が、カタチになって返ってきたんだって。勇者としての私は、それが原動力だった。才能がないことはわかってる。でも才能がないからこそ、努力で補って積み重ねていくことでしか前に進めない。一度抱いたあの夢をどうしても諦めたくなくてただ、がむしゃらに。

 

「でも、パスパレに選ばれたのもさ、今回のことも……全部アエーシュマの手のひらの上なんだって。努力してれば夢は叶うと信じてやってきたけど、私は……間違ってるのかな?」

 

 ふと、考える時がある。もしもアエーシュマなんていなくて、悪魔も勇者もなくて、ただの日常のままだったら私、どうなってたのかなって。もしかしたらこのまま研究生を卒業して、夢を叶える道なんてなんにもなくなって、ただの女の子になっちゃうのかなって。ううん、今だってそう思う時がある。もしアエーシュマを倒したら、私はアイドルではいられないんじゃないかって。

 

「そう考えちゃうと、今までやってきたことが全部崩れちゃう気がして正直、すごく辛いよ」

「彩ちゃん……」

「そういう時、千聖ちゃんならどうする? もしさ、これで全部終わって平和になったら夢を叶えられないって言われたら、アエーシュマを倒せる?」

「努力だけじゃどうにもならないことがある。だから私は、成功するための最も確かな道を選ぶわ。それはずっと、変わらない……それで潰えてしまうのなら、私はまたきっと裏切るでしょうね」

 

 そうだよね。最初、千聖ちゃんは私たちが自分にとっての成功の道じゃないと断じてアエーシュマの駒として私たちの前に立ちはだかった。今はアイツが夢を叶えるつもりなんてまるっきりなくて、リスクが大きいから味方をしてくれているだけなんだ。

 

「でもそれは私の場合だわ……あなたは言ったわよね、私のやり方で夢を叶えてみせるって」

 

 その言葉は、千聖ちゃんと一度目に戦った時だったっけ。千聖ちゃんがアエーシュマに従えば最短距離で夢が叶うと言ったことに対して、私は決意を固めたんだ。私は私のやり方で夢を叶えてみせるんだって。その決意の炎は変わらないけど、でもそれは、アイドルと悪魔と勇者がそこまで密接だなんて思ってなかったから。

 

「私の知ってるあなたは、努力を信じて諦めない、愚直に夢を追いかけることができる人間、それこそが丸山彩らしさ、でしょう?」

「私らしさ、うん……そうだよね」

「なら丸山彩(じぶん)を裏切ってはダメよ。最後まで自分らしくあり続けなさい。少なくとも、アエーシュマはあなたに勇者になれるほどの夢を追い続ける力を持っていると思ったから集められたのよ?」

「……っ!」

 

 私の表情を見た千聖ちゃんは、優しく微笑みながら私から言えるのはそれだけよとレッスン室から去っていった。

 ──どんなことがあっても、私でいること。私は……うん、私は決めたよ、千聖ちゃん。

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 千聖ちゃんが彩ちゃんを探して、きっと声を掛けてくれてるんだろうなぁと思いながらあたしたちは会議室で二人の帰りを待ちながら雑談していた。千聖ちゃん、スタッフがいなくなった後、めちゃくちゃ毒吐いてたから面白かったなぁ。

 

「アヤさん、大丈夫でしょうか?」

 

 どうだろうね。でも、あたし的に彩ちゃんは何がなんでも諦めるようなヒトじゃないと思うんだ。というかそもそも諦めないのが彩ちゃん、みたいな。そういうところが面白いなぁと思うところなんだけど。

 

「そうですね、それが彩さんの目指すアイドル、じゃないでしょうか?」

「どういうことですか?」

「ジブン、彩さんに会うまでアイドルって漠然としていたんです。キラキラでかわいくて、ってそんなイメージばっかりで、でもいざジブンが衣装を着てもキラキラできるわけじゃなくて」

 

 うんうん、確かにそうだった。衣装を着た時はなんだかわぁって感じで嬉しかったんだけどアイドルだ! って感じはあんまりしなかった。あたしもアイドルってなんだろうと思ったら真っ先に浮かぶのは彩ちゃんだなぁ。

 

「そう考えると彩ちゃんってキラキラしてるよねぇ」

「そうです、それはすっごく思いました!」

「キラキラ……そうですね」

「彩さんのどんな時も絶対にめげなくて夢に向かって突き進んで、自分を貫き通そうとする姿が、キラキラ輝いて見えるんですよね……それこそが、アイドルなんだなって」

 

 麻弥ちゃんはそれを生き方、みたいな感じだと形容した。生き方かぁ。そうやってまっすぐ進むって生き方そのものが彩ちゃんにとってのアイドルであり夢の叶え方、なんだよね。あたしの夢は、すぐそこにあって、でも遠くて。目を覚まさないおねーちゃんを前に挫けそうになるけど、彩ちゃんならきっと諦めないんだろうなぁって思うんだ。

 

「そしてなにより、彩さんはその輝きで周囲に影響を与える力がある。だからこそ、イヴさんも、ジブンや日菜さん、千聖さんがこうして勇者として立っていられるんだと、ジブンは考えてるんです」

 

 彩ちゃんはアイドルとしてもきっと、そういう人なんだろうなぁ。影響を与えるくらい強い夢への渇望を持っていた。だからこそ彩ちゃんが最初に悪魔に襲われたし、ポップも見つけることができて、勇者になることができた。そんな彩ちゃんを見たからこそ、あたしや麻弥ちゃん、千聖ちゃんは勇者になった。確かにその通りだね! 

 

「マヤさんのお話は、難しいですけど、アヤさんがキラキラしていたからこそ、ユーシャとして頑張れるのは、わかります」

「そうですよね。だからきっと彩さんならどんなことになっても絶望なんてしない。大丈夫、そう思うんです」

 

 暴走したけどね~とあたしが茶化すと、それもまた夢を諦めなかったからッスよと麻弥ちゃんが笑った。うん、そうだよね。悪魔化しても夢を捨てられなかった彩ちゃんならきっと大丈夫。なにがなんでも前を向いてくれるよ。そして、キラキラした一番の答えを、あたしがるんっとくるような答えを出してくれるよ! 

 ──そんな会話をしていたところでドアをノックされる。二人かなぁと思って、はいはーいとドアを開けるとそこには黒と白のマーブル模様のツートンカラーになったツインテールの少女がにこやかに、こんにちはと私たちに笑いかけてきた。

 

「──お迎えに上がりました、勇者さまがた」

「うわっ、ちょ、いきなり……!?」

「きゃ、か、影が……!」

「まさかの奇襲、ッスか……でも、気配もなにも……!」

 

 油断してた! 確かに気配は感じなかった。だけどこの悪魔のことだから、何かしらの方法で気配を消してくるだろうと思ってたのに!

 後悔はやっぱり先には立っていてくれなくて、あたしたちはティアマトの影に呑まれてしまう。物量あるものも格納できるのはずるくない!? そう思いつつも、その別空間に引きずりこまれてしまった。

 

「やぁやぁお嬢さんがた、美女の素敵な空間にいらっしゃい」

「おじさんもロリコンだったんだ」

「もうその手には乗らないよ」

 

 そこにいたのは、三人の悪魔だった。一人は見慣れた男、ベンヌ。もう一人はこの間あたしがボコってやったクルール、そしてもう一人はというところであたしは驚愕に目を見開くことしかできなかった。同時に、やっぱりあたしのせいで絶望してしまったんだという悔しさも感じた。

 ──これがアエーシュマのやり方だってのはわかってる。わかってるのに、こんなことって。

 

「あなたがこのカラダの妹ですね……わたしはアナザーナイト。蒼星のムシュフシュと申します……押しつぶしてあげるわ、()()

「おねー、ちゃん……っ!」

 

 あたしの大好きなおねーちゃん、氷川紗夜は、エリゴスのものよりも少し小さな、彼女のサイズに丁度いいような片刃剣を持ち、髪をポニーテールにして……その額からはラピスラズリのような角が生えていた。瞳の色もまた燃えるような蒼色をしていた。

 ベンヌは麻弥ちゃんの前に、そしてクルールはイヴちゃんの前に立ちはだかる。ここからは生きるか死ぬかの瀬戸際ってわけね。あたしはその状況のヤバさに額から汗を一筋零した。

 

 




お、おねーちゃん、どうしてここに! 自力で目覚めたの!?
――彼女はキミの姉ではない。

あー段々アエーシュマのやり方がゲスになっていく~ぅ
四将(四人揃うことが少ない)
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