夢想勇者☆パステルドリーム   作:黒マメファナ

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第28話:不動のLIONHEART

 ──私の夢は、ブシとはこんなものだったのだろうか。時々、思う時がある。刀を振って、悪魔の首を斬り落とし、その命を奪う度にケンドーとは違った重みを感じてしまう。以前、サタンさんにホンモノの刀を手に持たせてもらった時に、ああ私の武器はとても軽いものなんだと思わされてしまった。

 

「ハハハハ! オラッどうしたどうした! 避けるだけで精いっぱいか!」

 

 相手は暴力的に鉄剣を振り下ろしてくる。地面が砕け、捲れあがり、でもその全てを回避する。素早い斬撃だけど、回避に余裕がないわけではない。むしろ、よく見える。私は雪花流の技のレパートリーを増やすためにしていることは、視ること。動きを真似することから始めて、それを私の太刀筋に変換することで雪花流にすることができる。

 ──イヴちゃんは魔力オーラが静、動で言うと静だからどちらかというと見に回る戦い方もしてみた方がいいよ、特に一対一の時は。

 

「俺様の剣が怖いか!」

 

 荒々しい剣の振りにも最小限の動きで、段々と最小限の動きで、紙一重に回避していく。それが、苛立ったのかクルールはより苛烈に攻勢を強めていく。

 地面に剣を突き刺して、氷を生成してくる。だけどそれが私にはすごく緩慢な動きだった。生成されて襲い掛かってくる氷を全て刀で斬り払ってくる。

 

「ああ!?」

「──雪花流、十文字」

「チッ! 闘気がねぇとはまた、ムカつくな! だがそのなんでも斬れる刀! 俺様にかかれば、この通りよ!」

「……なんですか?」

 

 氷に触れた刀身がパキパキと音を立てて表面に霜をつけていた。一体何が、と思った瞬間、またクルールが剣を振りかぶりながら突進してくる。ここで決めると万物切断の魔力を込めようとして……まるで何かに阻害されているように刀に魔力が入らないことにようやく気付いた。

 

「ハッハー! やっと気づいたかマヌケ女!」

「これは……?」

「クイーン曰く、氷とは物体の停止を意味するらしい! それを踏まえて俺様の氷結をさらに強化し、物質や現象の凍結を身に着けたのさ!」

「……凍結?」

「そうさ! お前の万象切断は凍結されちまってるんだよ!」

「くっ……!」

 

 これでは武器を奪われたも同然、私は逃げるように避け続けるけれど、さっきの見に回っていたのとは違って、今の打つ手を無くて逃げ回るのではワケが違うこともよくわかっていた。やがて、刀に触れていた手が凍結し始めて、感覚が消え始める。敵の高らかな笑い声が聞こえて、私は……私はなんて弱いんだろうと思い知らされる。

 ──そんな時には、いつも思い出すんだ。シャヘルさんとの立ち合いを。

 

「きゃ」

「まだ魔力にムラがある。もっと刀身全体を覆うようにしろ」

 

 特にお前の魔力特性はその粗さが命取りになる、とシャヘルさんが木刀を下ろしながら嘆息する。いつものスーツ姿でなく胴着姿で、訓練場で何度も何度も私の勇者としての、サムライとしての技術を叩きこんでくれていた。でも、どうして? どうしてですか? と私は問いかけた。

 

「何がだ」

「あなたは……アクマです。私は、ユーシャで、敵同士ではないのですか?」

「……そうだな。正直私にもサタン様が何を考えているのか、その全てを理解はできていない」

 

 その言葉に続いてだが、とシャヘルさんは私に手を差し伸べてくれる。無表情で、どこか高圧的な印象もある彼がしたその表情と仕草はとても穏やかで、私は思わず驚いてしまった。怪訝な顔をされ、すぐに表情を元に戻したけれど、私の中には驚きが渦巻いていた。

 

「どうして?」

「なにがだ」

「どうして、そんな優しい顔をしているのですか?」

「……どうしてだろうな」

 

 少し困惑気味に、今度は私の隣に腰を落とし、壁に背をつけながらシャヘルは左手で持っていた木刀を見ながらポツリポツリと自分たち悪魔とは何かを教えてくれた。それは、私には胸が痛くなってしまうくらい、非現実的で、そしてあまりに血と殺戮がありふれた世界だった。

 

「サタン様は……詳しくは私も知らないが、大事なものを喪った絶望で私という存在を生み出した。だからこそ、その絶望と復讐に私は……サタン様の従者としてお仕えすると決めたのだ」

「忠義、ですね」

「どうかな、それ以外に生きる理由を持たなかった。殺すことでしか、私は生きてはゆけぬ、脆い存在だった」

 

 それは奇しくもまるで、サムライのような血なまぐさくて死に近い存在だと感じた。ブシの心、それが私たちの敵だと思っていたアクマに、殺さなくてはいけない存在に感じるだなんて思いもしなかったし、きっとこうしてゴエツドウシュウにならなければ分からなかったことだった。

 

「ゴエツ……すまない。どういう意味だろうか?」

「あ、そうですよね!」

 

 そんな語り合いをしてからはずっと、彼の……シャヘルさんを師としてたくさんの技を身に着けた。剣でも座り込んで壁に背中をつけながら、たくさんのことを語り合った。

 ──武道に必要なものはまっすぐであること以上に、何ものに遮られても、そこに在るという気持ちだ。太陽の光のように、雲に阻まれていたとしても、天には常に太陽が在る。それが心というものであり、イヴ、お前の夢だ。

 

「──師匠! 私は、ブシドーを貫きます!」

「ハッ! なにが、できる! お前は今やただの小娘だ! その凍った指じゃ、魔力の通らねぇ細腕じゃあ! 刀を振ることもままならねぇだろうがッ!」

「いいえ、刀は腕で振るものではなく、心で振るものです。細腕でも、凍っていても……ブシのココロはフメツ!」

 

 正眼に刀を構える。私の刀は銘がなかった。きっとそういう名付けるというコトダマのことをユーシャになったばかりの私はよくわかっていなかったから。でも技の名前を付けることでイマジネーションが増幅すると知って、雪花流という頭に浮かんだ言葉の本当のチカラを知った。

 ──ならば私は、アナタのことはこれから雪花流を体現する美しくて白き刃、細雪と名付けます。細雪、私に力を! ドリームスノーが氷に負けるなんて、そんなの絶対ダメです! 

 

「な、なんだぁこりゃあ……!」

「細雪……?」

 

 凍結していたはずの刀がまるで、まるで熱を帯びたように霜がはがれていく。霜が滑り落ちていくんだ。水分すら弾くほどの美しく滑らかすぎる魔力を放つこの子が、私のココロに応えるように刀身から濃厚な魔力を漂わせていた。これが、細雪の本当の力。あらゆる敵を断つという覚悟の証明。

 

「参ります」

「わかんねぇのか! まだてめぇの腕は凍って感覚すらまともにねぇだろうがよぉ!」

「ですが、ケンシンイッタイ、細雪は、私の腕と同じ!」

 

 高速の一振り、筋力にまかせた凍えるような氷の刃を振り下ろされた私は、その中であるというのにまるで止まった時の中で動くようだった。ひたすら、ひたすらシャヘルさん、師匠の教えによって行われてきた正眼から上段に構えての振り下ろし、そしてまた正眼に構え直して、まっすぐにしてから腕を上げて振り下ろす。毎日毎日ずっと、レッスンの日もバイトの日も学校の日も欠かさずに、欠かさずに鍛錬を続けたことで、イマジネーションの最大、ルーティンとなっていた。

 

「……雪花流・絶技──獅子王妃(シシオウヒ)

「ガッ──!?」

 

 大丈夫です、殺しはしません。私は私のブシドーを貫く際に師匠にも誓いました。私は私の斬りたいものだけを斬ると。あなたの魔力だけを全て、真っ二つに斬りました。それとその鉄の剣も。獅子王妃は絶技、絶技とは絶対の技、破る破らないではなく発動したからには当たるのです。例え射程にいなくても、刀の通った場所に対象がなくとも。

 

「なに……いって、やがる……」

「ブシの奥義……その神髄、理解できるのは使用者のみ……です」

 

 勝った。完全勝利ですよ師匠。

 ──ですけれど、どうやら凍結の魔力は発動したら最後、どうあがいてもこの私の魔力を喰らい尽くし、その全てを凍らせてしまうようです。自刃すらもできなさそうで、これではヒナさんや、マヤさんを助けにはいけないようです。

 

「かっ、て……くだ、さ……い、ふた……り……と、も……」

 

 意識が遠のいていく。ドリームスノーはどうやらここまでのようです。ああ、せめて氷の華であれば私のユウシュウのビというものが、飾れるでしょうか? あれ、飾るであってますよね……? ああダメだ。思考がまともに働かなくなって。

 

「良し、よーく頑張ったなドリームスノー。後はオレに任せて眠っとけ」

「……あ」

 

 横に、ヒナさんと、サヨさんが横たえられる。二人とも傷だらけだけれど生きてはいるらしく安心した。それと同時に私の身体もなんだか暖かくなってきて、私は安心しきったように眠りについた。

 ──マヤさん。私たち、勝てます。強力な悪魔にだって立ち向かえるんです。アヤさんが言っていたように、夢を諦めなければ、必ず。

 

 




日常編書きたいなぁと思った一瞬、そういえば警備会社とかで悪魔たちとパスパレの絡みってほとんど描写してない気がする。
幕間で出せたらいいなぁ。
んで、ブレイクスルーはあるのに他に武器がないんで固定武器のない麻弥以外には銘をつけようって腹でした。

彩の手甲:ヴァリアントスター
千聖の長柄槌:雷槌
日菜のロッド:破龍(ブレイクスルー)
イヴの刀:細雪

ところで最後の男は主人公ですかね? いいえ、最弱の男です。最弱系主人公かよ

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