夢想勇者☆パステルドリーム   作:黒マメファナ

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第30話:夢に降り立つEMPEROR

 私は、努力を諦めない。諦めないからこそ、ティアマトを打倒した。そうやって全てを終えて、控室で私は、私たちパスパレは各々緊張の面持ちで出番を待っていた。緊張していないのは千聖ちゃんと日菜ちゃんだけ。この二人は本当に、強いなぁ。

 

「あはは、彩ちゃん顔強張ってる~」

「だ、だって~」

「まったく、そんな顔でステージに上がっちゃだめよ?」

 

 わかってるよ、と言いながらふと私は千聖ちゃんの右手を見る。うんよかった、治ってる。どうやらあんまりにもキレイに砕かれたのかポップの治癒がうまくいったみたいだ。その視線に気づいた千聖ちゃんは大丈夫よと私の肩を叩いた。

 

「さぁ、もうすぐ出番よ」

「は、はい!」

「いざ、シュツジンです!」

 

 私たちはステージに上がっていく。割れんばかりの拍手、今度こそという期待に応えたい。そういう気持ちで私たちは頷き合った。緊張は、まだしてる。でもここから始まるんだ。私の夢が、私たちの新しいステージが! 

 

「みなさん! こんにちは!」

 

 ──うん、会場の雰囲気はいい。他のアイドルのファンもいるはずなんだけど、まるでホームのように暖かく私たちのことを見守っていてくれるみたい。そんな中でみんなで目線を合わせて自己紹介のタイミングを取っていく。

 

「私たち」

『──Pastel*Palettesです!』

「まずは一曲、聴いてください!」

 

 ──演奏が始まり、私は息を吸い込み、最初の音を出した。お客さんの前でほら私、歌えてる、歌えてるよ! お客さんみんなの笑顔が見えて、横を見ると千聖ちゃんや日菜ちゃんも笑顔で、私は夢を叶えたんだって泣きたくなる。でも泣くのは最後、みんなとありがとうございました! って舞台からいなくなってから、そう決めたんだ。

 

「改めまして、こんにちは! Pastel*Palettesボーカル担当の丸山彩です! 今日は来てくれてありがとう!」

 

 拍手を送られる。うう、実はもう泣きそうだ。でもなんとか堪えて私は次の曲に移る前に謝ることがある、と前回のお披露目ライブのアテフリについての謝罪をした。でも、今度はちゃんと本当の演奏だってこと、それとまたステージに立てた喜びをきちんと伝えていく。それに対するリアクションは、またとっても、泣きそうなくらいに暖かいものだった。完璧なMC、ちゃんと私はできてるんだ! 

 

「それじゃあ、次の曲は──」

 

 最初から曲紹介までのMCまで完璧に繋いで、新曲のお披露目までちゃんとできてる! キラキラのステージ、私はここでアイドルになるんだ! そう、夢に一歩近づいたんだと私は幸せを感じていたところで、バン、とステージが暗転する。え、また!? 

 また機材がおかしくなったのか、音が止まった。でもみんなはそれでもと演奏を続ける。最後まで音を出そうと、届けようと。それなら私も、そう思ったのに、私の声は……出ていない。

 

「え、あれ……?」

「──歌えている? 冗談だろう?」

 

 私は、私は最初から歌ってなかった。歌ってる気になっただけ。そうだった。他のみんなは技術を上げて演奏していたのに、私が、私だけがアテフリだったんだ。どうしようでもちゃんと、ちゃんと歌わないと、こういう時のために練習したんだから、そう努力してきたんだから。

 ──でもいくら頑張ろうとしても声は出なくて、お客さんからやっぱり、だとか口パクかよと非難の声が上がってくる。やっぱり……やっぱりかぁ。私は、()()()()って言われるんだ。努力したのに、努力し続けて諦めないってここまで頑張ってきたのに。そんな私の前にスポットライトを浴びた金髪の甘ったるい声をしたスーツの男が立っていた。

 

「努力、結構なことだ。だけどキミは忘れている……努力ではどうにもならない絶望を」

「……あ、アエー、シュマ……」

「そしてこれが夢だ。キミたちの原動力、儚いものだ。こうしてボクの指先一つで──」

「──やめて!」

「消滅する」

 

 パチン、と指を鳴らす。そうするとまるで最初からそこにいなかったように千聖ちゃんたちが、みんながいなくなる。私だけになる。なんで、なんでティアマトは倒した、あなたはもう私たちによって追い詰められているはずなのに。どうして。

 

「追い詰められている? このボクが? 駒を数個失くしたくらいで?」

「……こ、ま?」

「そう、最終的に世界を破壊できればそれでいい。そのために誰が消滅しようが死のうが、知ったことではないよ」

 

 彼にとっては全てが手のひらの、糸で操った人形劇、勇者たちの力をつけさせて、悪魔を宿した私と千聖ちゃんがいずれティアマトすら打倒することすらも、イヴちゃんや日菜ちゃん、麻弥ちゃんたちが他の悪魔を打倒することも、全部、彼の手の中にあるシナリオに過ぎない。

 

「じゃあ、ここは……私たちが立っていた、ステージは?」

「ここはキミの夢だ。キミの精神に内在する、夢の世界」

「……っ! じゃあみんなは!」

「そう、戦って()()。既にキミはボクによって鹵獲され、ドリームサンダー、スノー、サニーは重症、ファイアはとても動ける状態ではない。今すぐこの四人全員をボクは殺せる」

「──!」

 

 そんなこと、させないと私は拳を振り被る。そしてアエーシュマの頬に打撃を……? 打撃を与えたのに、アエーシュマは微動だにすることがない。違う、力が、勇者の力が出ない。どうして? その疑問に悪魔は髪を靡かせながら力を使い果たしたキミはただの小娘だよと近づいてくる。

 

「いや! 来ないで!」

「フフ、無駄だよ、キミに逃げ場はない。ココまでボクに侵入を許したキミに……勝ち目はない。あるとするなら……()()()()()()、くらいだろうねぇ」

「勇者でない、力……ウガルルムの……!」

「でも暴走が怖いだろう? さ、負けを認めてボクのモノになるんだ。一緒にこの世界を壊そう……彩」

 

 負けを認める? 諦める? 私が諦めないってまだわからないのなら、見せてあげる。私は諦めない! 夢を、アイドルを、みんなとパスパレのみんなと一緒にステージ立つ未来を、私は諦めない! 

 

「──それこそその男の思うつぼよ、彩ちゃん」

「……っ!?」

「ほう……どういうカラクリか、教えてほしいね……千聖(ビショップ)

「お生憎様、もうあなたの駒になる気はサラサラないわよ」

 

 迫ってきたアエーシュマを吹き飛ばしたのは、雷槌を構える千聖ちゃん、ドリームサンダーだった。で、でもどうしてここに? ここは私の精神の世界だって……まさかそれもアエーシュマの嘘!? 

 

「いいえ、それは本当だけれど、私はサタンから彼の緑の能力をバングルに託されていたのよ。あなたの狙いが彩ちゃんだって、彼はちゃんと予測していたわよ」

「緑の……それって」

万能鍵(マスターキー)か、それで自分の意識をドリームスターの中に封じたのか」

 

 ええ、と頷く千聖ちゃん。万能鍵(マスターキー)は色んなものや能力、イメージしたものを自在に開け閉めすることができるサタンの緑の能力。六魔を生み出した際に勇者じゃなくなっちゃったからもう使えないけれど、魔力だけは持ってるんだよね。それを千聖ちゃんのバングルに。

 

「変身しなさい、彩ちゃん」

「……でも」

「変身できないなんてことはあり得ませんよ、彩さん」

「ポップ!?」

 

 ポップまで! と驚くけれどどうやらポップは精霊だから夢を渡ることができるんだった。そうやって夢に溢れてる人材を探していたのだからそりゃそうだよね。でもピンチの時に来てくれるなんて。

 

「あなたは私が見てきた中で最も夢に溢れた勇者です。今は悪魔に阻害されているだけ、あなたが夢を諦めない限り、勇者の力はあなたの力です! さぁ!」

「──うん!」

 

 右手首にバングル、左の指にリング。アステリスク型になってる中央部分のボタンを押すと、五色に明滅するバングルに右手の人差し指にはめたリングを重ね、バングルの輝きがリングの宝石と同じパステルピンクに変わった。

 ピンク色の光に包まれ、アイドル衣装の装飾が少し変わっていく。なにより変わるのは腕にある手甲と足甲、私が信じる、力のイマジネーション。

 

「何故絶望しない、何故、キミはそこで立ち上がる? 何故キミは、諦めることができない?」

「しないよ、諦めない。だって私は、夢を撃ち抜く、夢に向かって輝く綺羅星! ドリームスターだから!」

「行くわよ、ドリームスター。私たちの夢を阻むあのいけすかない面に拳を叩きこんでやりましょう!」

「うん!」

「……インペラトーレスパーダ」

 

 ガシャリと音を立てて、金の糸が束ねられた大型剣を片手で振るう。戦闘が得意そうじゃないと思ってたけどそうでもないのかな? 私は身構える。というかアイツの能力の真骨頂は糸による感覚の遮断と増幅、一人につき三つまで、だっけ。

 

「あの男の性格なら間違いなく痛覚の増幅は使ってくるわね」

「……なるほどね」

 

 かすり傷すら許されないのか。だけど武器の方も危ない。サタンもベンヌもティアマトも、アエーシュマの能力の底を知らないんだから。慎重にやっていくしかないよね! なにより、今までと雰囲気が違う。怒り? そうだ、全てがうまくいくと思っていたところで最後の最後にドリームサンダーの攻撃を受けた。だからあんな余裕のない顔してるんだ。

 

「安心するといい、ボクは苦しめるつもりも殺すつもりもないよ。ただボクに二度と逆らう気が起きないように躾けてあげるだけさ……たっぷりとね」

「お断りするわ。というかいい加減そのセクハラ癖はどうにかならないのかしら?」

「ならないし、その口もいつか利けなくするまでだよ──カイザーゲルト」

 

 糸が円形の弾丸になって飛んでくる。まさか攻撃一つ一つ避けなきゃいけないのかと思うとアレだけど、そうだ、私はインパクトを拡大させて防御することもできる! 裏拳の要領で金の弾丸を吹き飛ばし、その余力を生かして、回し蹴り、星嵐脚(スターストーム)を放っていく。

 

「エンペラーハートグラール」

「盾……?」

「中々対応してくるじゃないか」

 

 アエーシュマを守ったそれはハートのカタチをした金の盾、でも要するにああやって武器の構築をするのはティアマトの能力に似ているから、そこまで難しい対応を迫られるわけじゃない。ましてやさっきも戦ったんだから! 

 

「同じ結果にならないように、気を付けることだ」

「ならない、させない! 私は、勇者だから!」

 

 私とサンダーはほぼ同時に魔力を高めて悪魔化する。千聖ちゃんと違って私はまだ折り合いをつけなきゃいけないから危ないけど、今のところは向いてるところが一緒だから、安定してる。

 ──さあ、ここからが本番だ! 私は不機嫌そうなアエーシュマに向けて一歩踏み出した。

 




・金弦のアエーシュマ
 能力は髪を糸のように伸ばすというもの、また自分の糸に接続したものから三つ、感覚と魔力を奪うまたは増幅させることができる。だから疑似的な悪魔限定の回帰も可能なんだ。
髪を纏めて武具を創り出すことも可能で、インペラトーレ・スパーダ、カイザー・ゲルト、エンペラー・ハートグラールに加えてまだ使ってないけどアンプルール・クラブという剣、弾丸、盾、ロッドが存在する。これに触れるとアエーシュマの金弦が発動するものの、制圧力で言うならティアマトやベンヌの方が上になってしまう。

自分も悪魔王だとか言うが実際のところでは悪魔王よりも上だと主張したいので武器が全て日本語にすると皇帝の○○になってる
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