アエーシュマが生み出した円形の弾丸を二人で弾き続ける。私は
「ウガルルムの能力を上手に使えているようだ……支配してあげた後が楽しみだよ」
「余裕だね!」
「私とドリームスターの二対一を前にして余裕とは、何かの冗談かしら?」
「ッ!」
サンダーは繋がれた糸を雷槌で叩きそこに魔力を通電させていく。だがそれを素早く剣で斬り裂き、自分に通電させないようにして反転して直接攻撃を仕掛けてくる。あの剣で、というかアエーシュマの武器全部が糸でできてるから触れられないというところが厳しいけど、それでもなんとか戦えている。
「迂闊に触れられないのは私もよ!」
「くっ、本当に厄介な能力を持っているな、ドリームサンダー」
「そこだよ!
「……エンペラーハートグラール」
雷槌で受け止められた通電に呻いた隙に飛び上がり、攻撃を仕掛けるけど盾を創り出して防御されてしまう。
──でもそれは悪手だよ、だってこれはサンダーの魔力まで籠ってるんだよ!
「──しまった!
「終わりよ、
「
「なぁんて、ね」
身体が、動かない。見ると千聖ちゃんも空中でその動きがピタリと止まっている。何も見えない、ウルフセンスでも、たぶん千聖ちゃんの知覚能力でも、見えていなかった。見えないようになっていた。たぶん、魔力知覚を奪われてる。アエーシュマに関しての魔力の流れがいつの間にか、見えなくなっていた。でも、どうして!? 私たちはずっと警戒していた、それをされたら勝てなくなるからってずっと!
「フフフ、企業ヒミツさ……ともかくこれでキミたちからまた三つ、感覚を操作できるというわけだ、どうしようか?」
「くっ、今すぐ感電させて──うあああっ!?」
「痛覚の増幅、そして魔力操作感覚の喪失……それとお互いの痛覚の共有、かな?」
「──あぐぅ……っ!」
金色の弾丸に腹部を貫かれ、千聖ちゃんがあまりの苦痛に呻く。それと同時に私のお腹にもまるで弾丸が通過したような痛みに頭が焼ききれそうなくらいになった。共有、そんなことまでできるなんて……私と千聖ちゃんの痛覚が共有されてるのはまずい。このままじゃ私たち二人とも……!
「ああ、いい……いい表情だよ、彩っ!」
「あっ、ぐぅうう……!」
「アンプルールクラブ、鋭利でない分、痛みはそれほどではないが、気絶してもらったら困るのでね」
手甲を砕かれ、腕に金色のロッドが体重をかけてくる。ミシミシと音がしそうな痛みに堪らず声が出てしまう。痛い、こんなの、だけど……耐えられる、耐えてみせる。一人ならそう思えるけど、でも千聖ちゃんが……!
「あ、や……ちゃんっ! っあ! やめて、やめなさいアエーシュマ!」
「千聖、破壊衝動を抑えてしまったキミには正直もう、興味がなくなってしまってね。飽きた、というのかな?」
「──っぐ、あああああ!」
金色の弾丸が千聖ちゃんの大腿部を貫通する。いくら精神世界と言っても私も千聖ちゃんも自分の身体というイマジネーションがある以上、痛みはあるし、特に千聖ちゃんはこのまま血を流し過ぎたら死んじゃう。だけれど、千聖ちゃんは不敵な笑みを浮かべる。
「あ、きた……ですって? 最初から、あなたは、彩ちゃんにしか、興味がなかったのね……?」
「ああそうさ。他の全ては駒でしかない。ボクは最初から、丸山彩を手に入れることだけが目的だった、後は──いらないよ」
「そう……なら、せいぜい
「なにを言って……?」
「──そう、だったのですね」
ステージの観客入り口の方からしたその声に、その冷たい声にさしものアエーシュマもビクリとカラダをこわばらせた。私にはもうわからないけれど、いやわからないはずなのにその表情からは恐ろしいほどの魔力オーラに溢れている気がした。
「て、ぃあまと……?」
「て、ティア……」
「今、
「ど、どうして……?」
「そう、彼女も連れてきたのよ……鳰原令王那ちゃん。ティアマトの宿主、というところね」
その言葉にアエーシュマはなんだかほっとしたように立ち上がり、拍手で彼女を迎え入れる。一般人ならば脅威でもなんでもないと判断したのだろう。余裕の笑みを取り戻して私たちにナイフを突きつける。
──だけど、もうそこにティアマト、じゃなくてレオナちゃんはいなかった。時を止めたんだ。青色と白色の髪に変化していた彼女が千聖ちゃんを助け出していた。
「なぜ! なぜ
「意識
指を三のカタチにして出しながら、千聖ちゃんをポップに預けて治療してもらっているレオナちゃん。わ、私は後なのかな? それを怪訝な表情で見やるアエーシュマに対して、その指を一つ一つ折っていく。まるで何かを宣告しているように。
「一つ、まずもう一人の私というべき彼女の愛を裏切っていたことです。というかもう浮気ですよね」
「確かに」
「ごもっともね」
本命私ってこと? ごめんなさいってしてもいいヤツだよねこれ。それに対して遂に不機嫌そうな表情から明確な怒りを抱きながらレオナちゃんの周囲に剣を浮かべて空中から突き刺そうとしてくる。
「──二つ、彩ちゃんや千聖ちゃん、私の愛するアイドルたちを害したこと! 」
これは、ティアマトの緑の能力、キッチンガーデン。剣に植物の蔓が巻き付いて魔力を吸い取ってボロボロにしてしまっていた。その魔力は花弁に集まっていて、私や千聖ちゃんに注がれる。蔓に助けられていた私はそれによってウルフセンスを取り戻すことができた。そして、ウルフセンスを、魔力感知を取り戻したことを後悔した。
「そして三つ。アイドルにセクハラをしたことです! 愛を謳っておきながらなんて愛のない! イエスアイドルノータッチ! 許せない! 私は、愛の名においてあなたを許してはおけません!」
ぞっとするほどの魔力、ティアマトが本気で怒った時のような、対峙したくなくなるほどの圧倒的な暴力のような力。
──というかレオナちゃんってやっぱり、ティアマトみたいに愛を語っちゃう性格だったんだね。そしてそれはアイドルに向けられていたものだと。
「レオナちゃん」
「はっ、はい!」
「えっとめんどくさくなるから頑張って耐えてくれるかしら?」
「そ、そんなっ……名前を、彩ちゃんに名前を……っ!」
歓喜が、何故か魔力に変換されて私と千聖ちゃんは顔を見合わせた。これ、隣に立つのもキツいんだけど。どうしよう、そう言うと千聖ちゃんは露骨に営業スマイルをしだしてレオナちゃんの肩に手を置いた。
「ねぇあなた?」
「はい!」
「私たちは回復にもうちょっと時間がかかるから……その間にあの男を、好きなようにいじめてあげてちょうだい♡」
「任されました!」
千聖ちゃん……黒いよそれ。というか任されましたって。そう言うなりレオナちゃんは頭から角を生やす。虹色の角、虹愛のティアマトの真の力を解放する。これによって彼女は勇者の力とイロージョンシャドウを本格的に開放することができる。髪の毛が赤色になりイロージョンシャドウで作り出した大量の腕に破壊の魔力が込められていく。
「行きます! リスペクトスターレイン!」
「うっ!?」
それは圧倒的物量、圧倒的魔力量。もはや圧倒的すぎて、アエーシュマの盾すらも破壊していき、押しつぶしていく。それでも破壊の暴威は止まらない。止まることなくアエーシュマが、影も形もなくなってもなお、影は止まらなかった。
「さて、私たちも帰りましょうか……といってもあなたはすぐに目覚めるでしょうけれど」
「でも、千聖ちゃん腕が……!」
「平気よそんなの」
「そ、そうでした! それでしたら私の魔力をあげます! 」
「これは……?」
それは紺色の力、紺色ってなんだっけ? と問いかけると月鳴ですとレオナちゃんがニパっと擬音できるような笑顔で教えてくれた。バングルに宿ったその悪魔の力は癒し、一時的に自分の魔力が全て使えなくなる代わりに周囲全てを癒すというとんでもない力を宿した魔力をもらいながら千聖ちゃんは緑の魔力を鍵のカタチにして右に回す。
──そこで、私たちは現実に帰ってきた。最悪の状況の中に。
最近パスパレリョナってるだけになってきた気がした。