夢想勇者☆パステルドリーム   作:黒マメファナ

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最終話です!


第40話:届かせるSTARBREAK

 ──胴着の帯を締める。心まできゅっと締まる感じがして、自然と集中力が高まっていく。目の前の相手に礼をして、構える。相手も柔法気味ではあるけれどちゃんと空手のスタイルに合わせてくれて、防御の型、前羽構えを取っていた。

 

「いつでもこい」

「はい、行きます!」

 

 色々あった、色々ありすぎた一年の締めくくりに私はサタンに向かって拳を突き出していた。すっかり先生になってしまった悪魔王は本気で来いと言った。勇者としてではなくて丸山彩としての全力を出せと。

 どうしてこうなったのか、それは少し前のことに遡っていた。

 

「お疲れさま──っわ!」

 

 いつものように道場にやってくるとまるで魔力が暴風のように吹いていた。そこでは悪魔化したバアルとサタンが激しい戦闘を繰り広げていた。

 漆黒の角を生やしただけのまだヒト型だけど、黒い雷を纏わせて素早くトンファーを振り回す。

 

「オラァアアアア!」

「手数は随分増えた、が……その分一撃が甘くなっている」

「ぐはっ!」

 

 腹部に掌底を当てられ、バアルは呻く。あの武器に立ち向かってもサタンは冷静にそれを特殊な柔法で逸らしている。ものすごく精密で冷静で、でも攻撃に移る時は荒々しい炎のような魔力を滾らせて……氷炎が熱エネルギーの操作って意味だけじゃないんじゃないかって感じる。

 ところでなんでバアルがサタンと戦ってるの? 鍛錬、のようではあるけどそれにしては殺気が籠りすぎてるというか。

 

「黙ってろ丸山ァ! 次だ……次ハ、コッチでイクぜェ!」

「……来い」

 

 完全悪魔化したバアルに、サタンはそれでも無形、手を下ろしてまっすぐ立つという一見して隙だらけの構えをする。そういえば、バアルはこの世界じゃ完全悪魔化をうまく操作できないんだっけ。だからいつも中途半端にしか成れなくて苦労してたもんね。

 

「クラい、やがれ……!」

「行動が直線的すぎる」

「ガ、アグァッ!?」

 

 雷を纏った最速の一撃だったけれど、拳の内側に手を添えてほんの僅かに軌道を逸らしながら、そのスピードのまま足払いをかけられた上で、倒れたバアルのこめかみに中指をつけて、それを思い切り折るようにして拳を当てた。全身運動による中国拳法とかの発頸の応用なのかな? 密着状態でもまるで思い切り拳を振ったような衝撃を無駄なく当てることができてる。たぶん今のバアルは脳震盪を起こしてるだろうな。動けるはずがない。動けてもすごい眩暈と吐き気に苛まれてロクに立つこともできない。

 

「すまない、呼び出しておいて」

「ううん。でもどうしてバアルと?」

「今回の戦いで、活躍したのはいつもお前たち勇者だった。それを、悔いているのさ」

 

 そっか、ベンヌにもやられてるしあんまりいいとこなかったもんね。ペオルだって最後の最後に封印してた力を解放して活躍したし、シャヘルはサタンの傍を離れないから目立たないけど強さはピカイチだし、なによりイヴちゃんに絶技を教えたんだもんね。

 

「彼は彼なりに負い目を感じているんだよ。なにもなければ平和に歌って踊っていたキミやキミたちが、傷つきながらも我々の残してしまった禍根に向かっていったということを」

「……別に、そんな恩着せがましいもんじゃねぇ。俺は俺の力不足が許せねぇ、それだけだ」

 

 早っ、もう復活したの? サタンは手加減したような素振りもないのに。まぁバアルはそういうの言葉じゃなくて身体動かして解決しようとするタイプだよね。でも、そんなバアルだってバッチリ役立たずだったわけじゃなくて、日菜ちゃんといっつも戦ってたから、日菜ちゃんは纏雷をうまくイメージできたって言ってたし。

 ──と言ったところでバアルは認めないだろうからそっとしておくとして胴着に着替えることになった。もうすぐ一年が終わろうというところで総復習を兼ねて本気で戦いたいと言われて。

 

「はぁあああ!」

「ふっ、シッ!」

 

 そうして冒頭に戻る、というところで私はサタンに渾身の一撃を向ける。だけどサタンはあっさりと私の放った拳を受け流してからの交叉法を放って、それを紙一重で避けていく。散々稽古を受けてるからだいぶ避けれるようになってきた。そのまま回し蹴りを放って、サタンは防御しながら後方に素早く下がっていくけど私はそれに距離を取らずに畳みかけていく。柔法が取れないように連続攻撃、裏拳と正拳、前蹴りなどを織り交ぜて中にフェイクを混ぜて攻撃に転換させないようにする。ここまではいい、でもサタンはまだ私のスタイルに合わせてくれてるだけ、私の力を見ようとしてるだけの余裕の表情だ。

 

「なるほどな、物量か……だが!」

「やっ……わわ!?」

 

 ガラリとバトルスタイルが変わる。少ない力で持ち上げられ、浮かされてしまう。出た! サタン独自の柔法、まるで流体になったかのように受け流されて交叉法を叩きこまれる攻防一体の戦闘スタイル。私がまだ一度も破れていないサタンの技を前に、迫りくる嘴のようにした拳を放たれてしまう。

 

「終わり、だ!」

「まだ! だよ!」

「な……にっ!?」

 

 散々見てきた、散々その身で味わったんだから見様見真似、くらいできるよ! 見様見真似陽炎の構え! サタンの手を見切り、自分の手を流体のイメージにして下からや上から、弾くというよりは受け流して、逸らして、威力を殺すことなく自分の身体に当たらないようにルートを強制的に変更させていく。

 ──ま、まぁ見様見真似じゃ完全には防げないし空中だしで何発かは掠ったり当たったりしてるけど、そこは気合と根性で耐える! 空中に足が着けば反転して逸らしながら正拳突きを出していく。

 

「やぁあ──!」

「やる、がまだ、甘い!」

「そんな……っ!?」

 

 絶対当たったと思ったのに、その攻撃はまるで陽炎を叩いたようにするりと半身で避けられて死角側に回られてしまう。ヤバい、どうしよう! と悪いクセが出てパニックになってしまう。ダメだ、いっつもアイドルとしても戦闘としてもこういう想定外の事態になるとパニクってなんにもできなくなっちゃう。

 ──そういう時は考えるんじゃない。集中する、視野が狭くなるなら広げて、息が整わないんだったら大きく吸って吐く。集中すればそのくらいの時間はある。

 

「む?」

「よ、っとと……っはぁ!」

「今のを……やるな、彩!」

 

 カウンターの中段回し蹴りを咄嗟に左手を上から添えて逸らしながらその勢いを使って跳んで空中で一回転して着地した。キレイにとはいかなかったけど反転しながら裏拳を放つ余裕ができた。その一撃を逸らせずに受け止めながらサタンは素直に褒めてくれる。

 

「思った以上に私の柔法がキミの空手に馴染んでいるな」

「み、見様見真似で咄嗟にやっちゃって……」

「いやそれでいい。戦いの中では型などに拘っていられん。重要なのは勝つこと。少なくとも私はそれをキミに伝えたかった」

「……うん」

 

 しかも私たちがしてきた戦いは殺し合いだった。負ければ死ぬような世界においてもっとも重要なのは勝つこと。相手を殺す、殺さないという選択ができるのも勝っているからだもんね。私の想いを体現するために必要なのは、いかに相手に負けたと思わせるかということ。それがサタンの教えだった。

 

「ならば最後は、やはりこれだろうな」

「……うん」

 

 悪魔化、私も勇者に変身して悪魔化する。悪魔化はさっきよりもめちゃくちゃな動きができるけどその分集中も必要だ。一手ミスったら負けるというこの悪魔王を相手にあっても、私は先手を取っていく。

 

「ヴァリアントスタースパイラル!」

「迷わず旋貫手を使ってくるか……成長が誇らしいな!」

 

 星旋貫手(スタースパイラル)は私の技の中では数少ない、ヒトを簡単に殺せてしまう技でもある。そもそもインパクトの収縮が悪魔化してしまうと以前までは使えなかったのは、操り切れてないからだと思ってたけど、どうやら私の中の悪魔、ウガルルムの意思に反しているからみたい。ウガルルムの技はあくまで魔力だけを破壊する力、それを暴力に転換するのは、彼女の意思じゃないってことだった。今は、この技もちゃんと違うってことがわかってくれるようになったみたいだけど。

 

「だが、突進技は私の前ではカウンターの起点にしかならんよ、どうするドリームスター?」

「私の意思は変わらない! 私は諦めが悪くて、がむしゃらに前に進むことしかできないから! だから、こうするんだ!」

「──っ!」

 

 スター()()()スパイラル! 両手での旋貫手を同時に放っていく。回避しようとしても逸らそうとしてもどちらかの攻撃は受けてもらうよ! がむしゃらに前に進むという意思が籠った私の、サタンに対する答えがここに詰まっていた。

 

「ならば私はお前のその意思を受け止めるまでだ!」

 

 左が甘いことを見抜かれて予め避けられた上で右を両手と羽根で受け止められてしまった。まだ、不完全な技だったからこれじゃあ……ダメだった! サタンの氷炎の力で握られた腕が凍り始めていく。一旦退かないと、と思ったところでまるで背中を叩かれたような気がした。

 ──ああ、そうだ。そうだった。あの時も、アエーシュマと戦った時もそうだった。私は私だけじゃない。私は独りで戦ってるんじゃない。頑張ってと言われた人の数だけ、私の背中にはそのヒトの想いを乗せてるんだ。

 

「チェンジ! ドリームブレイバー!」

 

 自然と口からその言葉が出た。また私の姿が変わっていく。どういう理屈かわからないけれど、これによってすごい力が私の中からあふれてくるような気がしていた。その私の姿を見てサタンは私の手を受け止めたままふっと微笑んだ。

 

「……これが、キミの答えか。だがこれをどうする?」

「それも決まってる! 私は、前に、前に、前に進み続ける! だって私は、夢を撃ち抜く、勇者で、夢に向かって突き進む、アイドルだから──!」

 

 そこで私がイメージしていたのは麻弥ちゃんの魔力をもらったタイタンアーム。ゼロ距離から出せるあの力がなんとかして再現できれば! と思ったところで私が咄嗟に思い浮かべたのは、我ながらむちゃくちゃだなぁと思うような行動だった。でも、進退窮まったこの状態でできることは進むことだけ! 

 

「やぁあああああ! スター、キックブレイク!」

「な……っに!?」

 

 無理やり身体を折って、止まった貫手を膝蹴りで押し上げていく。勢いが再点火した貫手はサタンの防御を無理やり貫いてサタンの肩に当たる、というところで避けられそうになるけど、その寸前に指が折れるかというくらいの勢いと全身運動のインパクトを全て魔力で指先に集めて、拳を握りこんだ。膝蹴りの時に反対方向にインパクトを伝えてバネみたいに脚を元の位置に戻してたから、ベストな形で全身のパワーが伝わっていく。

 

「スターブレイク・ノヴァ!」

 

 まさしくスーパーノヴァのような魔力の爆発が私の拳で起こった。たぶんその衝撃のせいで拳がイカれちゃってるだろうけど、初めて、初めて独力でサタンに拳を当てることができた。いや、向こうはほとんど魔力すら使ってないし、本気には程遠いんだろうけど、とにかく私は自分の成長を実感できる一撃だった。

 

「っく……なるほどな。バアルに見舞った一撃を咄嗟に真似たか」

「はぁ……はぁ……」

「ふっ、タイムジャックは咄嗟には使えん。最初の時点で出し惜しんだ私の負けだな」

「……まだまだ、先は遠いけどね」

「充分だ」

 

 嬉しくなってしまうところがもう、短い間にすっかりサタンが師範になってしまったんだろう。最初は敵のラスボスで、同盟先のリーダーで、それから先生のようで師範で、私の生活の中で大切なヒト、たぶん尊敬する人物を挙げるならあゆみさんかサタンだよ。そんな師範に一撃を当てられたということで、勇者としては免許皆伝をもらえることになった。素の姿だとまだまだだなと言われてしまうけれど、私の答えはいつだって変わらないよ。

 

「もっと、もっともっと頑張ります! まだまだがまだまだにならなくなるまで、ひたすらに!」

「ああ……期待しているぞ、彩」

 

 最後に礼をしながら家路に向かう。私の夢は、まだまだ先にある。もしかしたら、あの青白い月のように手の届かないところにあるのかもしれない。実は上ばかり見ているとわからない、足許にあるのかもしれない。

 でも、そうだったとしても私は前に進み続ける。前に前に、前に進んでふと後ろを振り返って、そこに私を応援してくれるたくさんの笑顔があれば、私はきっと誰よりも輝いたアイドルだって胸を張れるから。

 ──私は夢を撃ち抜く、夢に向かう一筋の綺羅星(ドリームスター)だから。

 

 




 最初はネタ小説でした。パスパレの魔法少女もの、プリキュア的なものってわりに誰でも思い付くものでしょう。そこで武器を考えてみたりした際に声優ネタやら中のヒトネタを入れて、設定を練って遊んでいただけでした。
 ――なんでそれが以前の毎週投稿換算で三クール超になるんでしょうね、理解できません。というか作者が色んな他作品からインスピレーションを受けすぎた結果でしょうね、ところで関係ありませんけれど是非、史上最強の弟子ケンイチのジュナザード対本郷晶の戦いを読んでみてくれ、アツいよ。
 そして、まだ伏線回収しきれてません。六人目の勇者とか、精霊王たちってなんぞやとか、アエーシュマの言ったヤツらは生きてるとか。でも終わりです。この後の展開を読者に想像させる余地を奪いたくなかったんです(KBTIT並感)
 とりあえず今回の口惜しいところは初期の各週投稿を守れなかったところです。途中で消したのでどうでもよくなって毎日投稿しました。20話から40話までだったので週一連載だったら終わったのはいつでしょうね。想像したくもねぇ。まぁとにかく完走したのでこれで一安心ということで、また別の作品でお会いしましょう。
by本醸醤油味の黒豆@声豚

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