夢想勇者☆パステルドリーム   作:黒マメファナ

6 / 40
第6話:闖入者はSUNFLOWER

 ひたすらに努力に努力を重ねてレッスンをしていく。まだ何にも進展がないけれど、それでも夢を失うことなくまっすぐにアイドルとして歌やダンスレッスンを重ねていく。

 それともう一つ、イヴちゃんと私は秘密の特訓もしていた。

 

「やぁぁ!」

「はっ!」

「──っ!」

 

 それは、変身しての修行。私も組手とかで実戦形式ですることがなくなってたし、イヴちゃんは真剣を使ったことはないから、お互いで丁度いい練習相手になっていた。ポップが言うには夢の力がプラス同士だとお互いに傷をつけられないって話も相まって、当てるつもりでやっていく。

 痛いってわけじゃんないけど、例えば私が拳を当てるとイヴちゃんがノックバックするし疲れるから、長い間はできない。でもこれはお互いにいい刺激になっていた。

 

「はぁ……やっぱりアヤさんはすごいです!」

「いやいやイヴちゃんの太刀筋は初心者のものじゃないよ」

「型も覚えてきました!」

 

 私が知ってるものや調べたものを試してみてるだけだけど。私も、普段じゃ使わない技とか調べてるし。私たちは魔法力を使った特性、みたいなのがあるからね。

 私の特性は凝縮と拡張、拳や蹴りのインパクトを拡散、もしくは集中できるというもの星拳(スターブレイク)が拡張で星旋貫手(スタースパイラル)が集中って感じ。

 イヴちゃんは光すらもまるで物のように斬り裂く。絶対斬刃の特性。魔法力を籠めれば文字通りなんでも斬っちゃうというものだ。

 

「……二人とも物理攻撃に寄っちゃってるのはポップに苦笑いされたっけ」

「確かに魔法を使う戦士ですからもっと違うカタチがありましたね……」

 

 魔法力っていうだけあってイマジネーション次第ではそれこそ魔法のステッキだとかそういうのもありでしたね、とひまりちゃんとお話しして初めて気づいた。戦うってなるとどうしてもこうなっちゃって、そんなこと考える余裕もなかったんだよねぇ。

 

「それではもう一度、お手合わせお願いします!」

「うん!」

 

 休憩が終わり、また向かい合う。基本的に魔法特性を使わないという制限でやっている以上、間合いでは私が不利だけど、イヴちゃん……スノーはまだ真剣に馴れてるという風ではなく、こっちには積み上げてきた経験値があるからそれでなんとか埋めてるって感じかな。

 

「行きます!」

「ううん、今度は私から!」

 

 私が愛用している天地の構えは正しく攻撃に特化してる型だからそれを応用して攻撃は最大の防御、みたいな戦法を取ることが多い。地面を蹴って間合いを詰めていって相手の攻撃を誘う。正眼の構えから放たれる上からの振り下ろしを、手甲の滑らかさを利用して刀の腹をなぞるように逸らしていく。そのまま逸らした力を利用して正拳突きを放った。

 

「うっ!?」

「ヤァァ!」

「っ、まだです!」

 

 そのまま連撃を叩き込もうとしたけど、スノーは摺り足の要領で流れるように私の右側に避けていって、下段から潜り込むように刀が私の胴を狙ってくる。

 咄嗟に腕をクロスして防御したけど、衝撃までは殺せなかったようで、ビリビリと腕が痺れる感覚がした。

 更に防御……と思ったんだけどスノーは振り抜いたまま固まってる。その表情は驚きに満ちていた。

 

「今の……!」

「ん? どうかした?」

「いえ、わかった気がします」

 

 絶対斬刃のチカラをまだスノーは使いこなせていない。私だって意識して応用できるようになったのついこの間だしね。そのポテンシャルを引き出すためのトレーニングなんだけど、どうやら何か見つけたみたい。

 

「なんでも斬る、というのも刀というものも、すべてが私だと思うことが大事なんじゃないでしょうか?」

「剣身一体、みたいな感じ?」

「ケンシン……?」

「あーえっとね……なんて言ったらいいんだろ」

 

 まだちょっとだけ日本語が達者ではないイヴちゃんに言葉を聞かれながら、二人だけで何日かどっちの特訓もして、何日かが過ぎた。

 そんなある日私たちのところにまだやってたんだぁ、と明るい声が聞こえた。その声は、さっきまで一緒にレッスンをしてた子のものだった。

 

「ひ、日菜ちゃん?」

「ヒナさん!」

「こんな遅くまで二人でなにやってるの~? 個人レッスン?」

 

 氷川日菜ちゃん。パスパレのメンバーの一人であり、私たちの中で最初から楽器ができる二人のうちの一人だった。

 そのうえ気ままにしか練習に来ない子でもあったから警戒してなかった。なにしに来たんだろう? 

 

「千聖ちゃんがね、なんか最近イヴちゃんと彩ちゃんがやってるよって聞いたから」

 

 私は少しだけ、日菜ちゃんが苦手なところがある。

 彼女はすぐになんでもできてしまう。三年間努力に努力を重ねた結果だけど、日菜ちゃんはそれをあっさり飛び越えられてしまった。

 

「麻弥ちゃんにはナイショの特訓……? へぇ……二人、やっぱなにか隠してるんだ」

「う……!?」

「あ、アヤさん……」

 

 特にこの勘の鋭さが苦手だった。確かに麻弥ちゃん、もう一人いつも一緒に自主練をしてる子がいるけど、イヴちゃんとなら勇者としての話をしながらできるのが都合がよくて、こうして隠れるようにして自主練をしてる。その違和感、いわば少しのうしろめたさを日菜ちゃんは見逃さなかった。

 

「あやしーなぁ。二人は何を隠してるの?」

「え……えっと」

「しかもすごく面白そうなこと……隠してない?」

 

 面白くはないんだけど、私はとっさに誤魔化せなくて目線を右往左往させてしまう。日菜ちゃんがその私の誤魔化しの下手さを見逃すはずもなく、今度はイヴちゃんに視線を向けた。イヴちゃんも私と同じくらい嘘を吐くのが下手だから、それを利用して推理しようと思ってるんだろう。

 

「二人はさ、ここでなにしてるの?」

「む、武者修行……です!」

「武者修行……?」

「ハイ!」

 

 ナイスだよイヴちゃん! 確かに嘘は言ってない。イヴちゃんの言うブシドー風に表現するなら武者修行だもんね。レッスンも武器を出しての修行も同じ表現だもんね! 

 ──だけど、日菜ちゃんはふうんと私に目線を合わせる。

 

「イヴちゃんは嘘ついてないっぽいけど……じゃあさ……()()()()()()()()()()()()?」

 

 日菜ちゃんの構えたスマホから流れたのは、間違いなく私たちが勇者として変身して修行をしている最中の会話だった。

 ──彼女はあはは、と笑いながらここはホントに面白いよねと言う。

 

「なんかみーんなこそこそなにかやってるんだもん。あたしも混ぜてよ。千聖ちゃんにはいっつも逃げられちゃうから、こーゆーの用意しておいて正解だった~!」

 

 無邪気な顔で、まるで悪魔みたいなことを言う。まさか……まさかとは思うけど日菜ちゃんが、悪魔に……? そう思ってイヴちゃんと目配せして戦闘態勢を取る。悪魔が出てきてる風じゃないから変身はしないけど。

 

「お……やっぱり戦うんだ? へぇ……! 面白いね!」

「ひ、ヒナさんは……悪魔なんですかっ!?」

「あくま? 悪魔って……あはは、イヴちゃん面白いことゆーね」

 

 悪魔じゃない……? けど日菜ちゃんはえっと、こう? と私と同じ天地の構えを取る。

 ──私と同じスタイル? ううん、この子はマネしたんだ……私の構えを。でも、そこから繰り出される技はわからないでしょ! 

 

「ん~、こんな感じ?」

「きゃ……!」

「あ、彩さん!?」

 

 半ばボクシングスタイル気味の素早いジャブが飛んでくる。速い、ものすごく速いしすごく基本がしっかりしているパンチだった。こんなの……こんな強かっただなんて。

 でもやっぱり空手はやったことないみたいで、窮屈だなぁって言いながらボクシングスタイルに変わっていく。

 

「でさ~、なんで戦ってるのあたしたち?」

「ひ、日菜ちゃんからふっかけてきたんじゃん」

「だって、なんで二人が戦う相談してるのか気になるじゃん。戦ってみたらわかるかなぁって」

 

 でもわかんなかったみたいで、日菜ちゃんは構えを解いた。

 戦うこと自体が目的じゃなくてよかった。そう思った時だった。また新しい人が入ってきた。──あれは、事務所の受付のヒト? なんでこんなところに、と思っていると表情が妖しく、暗く輝いていた。あれは……! 

 

「あ……あ……ガ……!」

「えっ、なになに? 彩ちゃんの知り合い?」

「違うよ! 日菜ちゃん逃げて!」

「え?」

 

 受付のヒトの腕が盛り上がっていく。体躯が数倍に膨れ上がって……四足の蛇、トカゲのような姿の悪魔が姿を現した。

 流石の日菜ちゃんもその異形に言葉を失ったように目を見開いていた。う……日菜ちゃんに見られちゃうけど、ここは躊躇ってる場合じゃないよね? 

 

「ポップ!」

「はい、彩さんイヴさん!」

「ポップさん! 感謝です!」

 

 リングを持ってたポップが口で綺麗に私とイヴちゃんに投げてくれる。それを指にはめると、バングルが出現する。そして、そのまま二人で躊躇わずに変身していく。

 夢を撃ち抜く、夢に向かう煌めく星、ドリームスター! 

 

「わ……あや、ちゃん? なにそれ?」

「誠と真を貫く雪の花! ドリームスノー! 参上仕りました!」

「えっ、イヴちゃんも?」

 

 驚く日菜ちゃんは後で説明するとして、私とスノーは並んで立って作戦を立てていく。

 こんな巨大な悪魔を相手にするのは初めてだけど、独りじゃないから! 

 それに成りかけの悪魔を相手にするんだから、練習の成果を発揮するチャンスだよね! 

 

「先陣、行かせてもらいます! やぁぁ!」

「ググッ!?」

 

 先陣、という言葉通りにスノーは飛び出し、刀を横に構えて払い抜けていく。

 ──堅そうな鱗をもあっさりと斬り裂いていく。右前脚に傷を与えてひるんだところに私は左側頭部をスターブレイクで衝撃を与えていく。構造が爬虫類みたいだからやっぱり頭に衝撃を受けるとふらふらと頭を揺らしていく。

 

「グガァァアァァァァアアァ!」

「スノー! もういっかい同じところ!」

「はいっ! 雪花流……刃重ね!」

 

 今度は反対側から、右前脚にダメージを与える。同じところを二度斬り付けることでより強い痛みと堅いものを斬り裂く技、あれがスノーと一緒に開発した我流技の一つだった。

 ──バランスを崩したトカゲ悪魔は倒れこみ、弱点である喉を晒した。

 

「スター! 私が行きます!」

「うん!」

「雪花流……紅散華」

 

 一旦刀を納刀してから相手の喉元に潜り込んで、相手の頭と胴体を一刀両断、紅の花びらを散らせながら命を奪った。

 ──やっぱり、真剣って怖いね。私のスタースパイラルよりもえげつない……いや教えたの私だけど。

 

「二人は……そんなことしてたんだね!?」

「あ……うん」

 

 さて、日菜ちゃんに対してどういう説明しようかな。

 ──私は消滅していくトカゲ悪魔を後ろに置きながら、変身を解いたイヴちゃんと顔を合わせたのだった。

 




☆丸山彩の悪魔メモ
・爬虫類型の悪魔:アガレス
 トカゲ、というよりワニに近いかもしれなかった。四足歩行でしっぽが長い。巨大で、全長はしっぽ合わせると十メートルいってたかも。全身が骸骨っぽいのに前脚は鱗質だったから堅かった。なんでも斬れるスノーのおかげでなんとかなったけど。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。