夢想勇者☆パステルドリーム   作:黒マメファナ

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第7話:BLUEな太陽

 なにそれ、ちょー面白そう! と能天気な声に私とイヴちゃんは呆れた顔をした。ちゃんと説明したはずなんだけど全然わかってくれてるわけじゃなさそうなのがネックだよね。

 ──悪魔のこと、夢想の勇者のこと。割とわかりやすくしたつもりなんだけどなぁ。

 

「じゃあじゃあ、あたしもなれるの?」

「ポップ」

「……なれません」

「えー」

「少なくとも今は絶対に無理です」

 

 あ、やっぱり誰でもなれるわけじゃないよね。夢想の勇者になる条件は簡単に言うと夢にまっすぐ向かっていることを自覚しているいうことが必要らしい。それこそ天にある星に手を伸ばそうとするくらい荒唐無稽で、誰もが笑ってしまいそうなくらいに純粋な……夢を追いかける力がいる。

 

「そっかぁ、確かにあたしにはそういうの自覚ないや」

「そうですね。勇者であるには強い自覚が必要……でしょうから」

「でしょう、ってどういうこと?」

 

 私にもわかってないことが一個だけあるんです、とポップは明かしてくれた。

 それは勇者のこと。元々夢想の勇者、伝説にある勇者は一人だったらしい。虹の光を放ち、その腕ですべてを包み悪魔を打ち滅ぼしたと言われている。

 

「五色の花、彩さんやイヴちゃんのバングルがそうですけど、六つの花弁の花に白含めて六色、それは伝承と同じです」

「白は色に含まれないの?」

「そこもわからないんですけど」

 

 白色は伝承に伝わってないんじゃないかってポップは解釈しているらしい。だけど問題はそこじゃなくて、六色がリングに反応して一色になってしまうことだと言っていた。

 ──勇者は一人で私とイヴちゃんの色を含めた全部を操るんだ。だからポップはそれがどういうことなのかわかってないんだ。

 

「バングルって?」

「あ、えっとね」

 

 日菜ちゃんにリングをつけて出てきたバングルを見せる。

 桃、紫、青、緑、黄、白の六色、本来はこの六色で戦うのが夢想の勇者だというなら、と考えていたら、彩ちゃんとイヴちゃんは力を二つに別けてるってことなのかなと日菜ちゃんが私と同じ考えを口にしてくれた。

 

「なるほど、日菜さんの言うことにも一理ありますね」

「ヒナさん、流石です!」

「えーっとポップ、だっけ? ポップにはさ、勇者になれるかどうか、みたいなのわかるの?」

「そうですね……その人が強く夢を自覚すれば」

 

 日菜ちゃんがのめり込んで、かつ的確に意見を出してくれる。本当に日菜ちゃんって頭がいいし勘が冴えてるんだなぁってのがわかるよね。一色ずつってことはもしかしたら後味方が四人いるってことだよね。全員が集まれば、勝てるのかもしれない。

 

「夢、かぁ……」

「日菜ちゃん?」

「ううん、なんでもない」

 

 ポップは仲間探しに尽力してくれることになった。日菜ちゃんはそれからはなんだかんだでアイドルとしてのレッスンにも来てくれて、更に修行にも付き合ってくれるようになった。日菜ちゃんは、教え方は絶望的に下手なんだけど、攻撃の隙を的確に教えてくれる。組手がすごく充実してるし、いつの間にか体術も剣術も私たちよりも習得しているくらいだった。

 

「まぁあたしかじったことあるヤツはね~、弓道でしょ、空手でしょ、柔道に、あ、太極拳もやったことあるよ!」

「そ、そんなに……ヒナさんのご家庭も、ブトウカなんでしょうか!?」

「ううん、やりたいことなんでもやらせてくれたけどね~、たいていおねーちゃんがやってたの真似してただけだよ」

 

 弓道みたいにじっと集中するのだけは無理だったけどね~、と明るく笑う日菜ちゃん。彼女がなんでもできちゃう天才だということを思い知らされる。そしてそんな風になんでもできちゃうけど、すぐに飽きちゃうのも事実だと言っていた。

 

「どうして?」

「おねーちゃんが辞めちゃうから。あたしもおねーちゃんがいないと飽きちゃうんだ」

 

 日菜ちゃんのお姉さんは私の通う花咲川で風紀委員をしている氷川紗夜ちゃん。目つきが鋭くて、怖い印象もあって……顔立ち以外は正直、日菜ちゃんとは似ても似つかないヒトだというのが私の感想だった。

 

「それでね、おねーちゃんがギターを──」

「お話し中のところ申し訳ないんですけど」

「悪魔ですか?」

「はい」

 

 最近また増えてきてるって印象だよね。ポップの口調的にはまた成りかけみたいだけど、どうやらダッシュで向かった先には結構人がいて、まずい状況だった。

 しかもよりによってライブハウスで……!? こんなのまずすぎるよ! 

 

「けど被害さえ出さなければ……基本的に悪魔を倒せば一般人の記憶からは消えますから」

「……あたしは?」

「私にもわからないことはたくさんありますよっ、だから基本的にって言ったじゃないですかっ」

 

 ポップ……もといひまりちゃんと何故かついてきた日菜ちゃんの相性はよくなさそうなのはさておき、私とイヴちゃんは変身をする。

 悪魔の姿は鉄鎧の騎士だった。ランスと盾を持って、身長は普通の成人男性より大きめの1.8メートルくらい。中身はやっぱり骸骨みたいに白く窪んだ頬と赤い目が特徴的だった。

 

「……ホラー系だね」

「ですね……」

「二人ともどうしたの?」

 

 悪魔だからいずれはあるんじゃないかと思ってたけど! 私もスノーもホラーは苦手なの! しかもリアルでそんなの見ちゃったらしばらくおトイレも一人でいけなさそうなくらい、怖いんだけど。

 

「じ、実体があるので……! まだ大丈夫です!」

「私、ゾンビも苦手」

「……私もです」

 

 ダメダメだった。日菜ちゃんは平気そうで怖い? とポップに問いかけて私も幽霊とか怖いのは苦手ですとか言いながら平気そうにしていた。

 確かに今までもホラーっぽかったかと言われたらそうだけど、ああいうちゃんとしたヒト型は初めてなんだよ。

 ──と怯んでいるところに骸骨騎士は銀のランスを私に突き込んでくる。う、動きが俊敏だよ! 

 

「グルラァ!」

「わわ! す、スノー!」

「ガッテンです!」

 

 スラリと刀を抜き放ち、鎧と鎧の間、首筋を狙うけれど素早く円盾で防がれて弾かれてしまう。コイツ……今までの悪魔より知性的な動きをしてくる。鎧付けてるから? あとは多分元となった人間の絶望、元々あった夢の力が大きかったからなんだろうなということはわかった。

 

「二人で挟んで同時攻撃!」

「はい!」

 

 けど向こうの素早さもものすごくて、ランスでスノーを、円盾で私の攻撃を防いでくる。バアルやシャヘルの時にも思ったけど、ひ、ヒト型になるだけでこうも面倒な相手だなんて!

 そんなことを考えていると、大丈夫!? と日菜ちゃんの大きな声が聞こえた。

 

「リサちー!」

「ひ、ヒナ……!? っう!」

「動いちゃダメですリサせんぱい!」

「ひまりの声……? 二人とも……逃げて」

「ポップ! ケガって」

「治せます! スター、少しだけ魔法力を」

「う、うん!」

 

 スノーに防御を任せて、ポップの背中に触れて治ってという想いを籠める。夢を魔法力に変えて救う。これが勇者としてのもう一つの力。痛みが引いてほっとしたらしい今井リサちゃんは、日菜ちゃんを見てあれは……と衝撃的な事実を突きつけた。

 

「あれは……さよ……さよを、たすけ……て」

「っ、リサちー!」

「……気絶しただけです」

 

 あの、骸骨騎士が……紗夜ちゃんから生まれた悪魔? その事実に流石の日菜ちゃんも狼狽していた。

 ──紗夜ちゃんが、絶望して生まれた悪魔。その原因を……彼女自身もちゃんとわかってるんだ。それとも、知ったのかもしれない。私たちと関わるまで日菜ちゃんは、他人というものの違いにすら気付いてなかったんだから。

 

「ごめんスノー!」

「ご心配なく!」

 

 そういうスノーだったけど、頬や肩には切り傷があった。鉄騎士はランスを地面に突き刺し、腰に佩刀していた鉄剣を抜いていた。重量武器だと不利だということに気付いて武器を持ち換えていたんだ。

 

「なるほどなぁ、コイツはいい、なかなかの悪魔になりそうだな」

「……バアル!」

「おう! 漆雷のバアルだ。覚えてくれて嬉しいぜ! 桃色の勇者!」

 

 しかも、強力な成りかけを倒されるわけにはいかないということか、生成りのバアルまで出張ってきた。コイツの機動力は私の方が相性がいい。けど鉄騎士にすら二対一じゃないとキツそうなのに! そのうえバアルまで。

 私たちが途轍もない不利に陥って、バアルは前回の鬱憤を晴らしているようで気分がよさそうだった。余裕綽々に饒舌に語ってくる。

 

「この女、てめえらの後ろにいるヤツの姉妹らしいな。随分と絶望が深かった以上に、そいつへの執着がコイツを育てたんだ」

「しゅう……ちゃく? ぜつぼう……?」

「あん? なに呆けてんだよ。てめえがコイツの前でなんでも同じことやって、絶望させたんだろうが」

 

 ──それは、日菜ちゃんにとって、まさに青天の霹靂とも言うべきものだった。紗夜ちゃんは日菜ちゃんが同じことをする、ということに重荷に感じていた。しかも日菜ちゃんは真似をしてすぐに努力に努力を重ねた紗夜ちゃんを追い抜かしてしまう天才で……もしも私の妹がそういう存在だったら、私もああなっていたのかもしれないと思うほどに、痛いほどに紗夜ちゃんの気持ちがわかる。

 

「おねーちゃんが」

「そうだ! コイツの望みは、絶望の果てに願うのは──てめえをその手で殺すことなんだよ!」

「──っ」

 

 殺したいほど憎い。その思いが紗夜ちゃんから強力な悪魔を顕現させた。

 ──まずい、これはバアルの言葉で更に悪魔を増やす作戦だ! 私はバアルの言葉を封じるために攻めようとするが、鉄騎士の悪魔が間に入ってきて吹き飛ばされてしまう。

 

「うあ……っ!」

「スター! 大丈夫ですか!?」

「うん……でも、スノーの力でもアレは斬れなさそう?」

「申し訳ないです……使おうとはしているんですが」

 

 いいんだよ、とフォローしておく。素早いうえに状況判断が恐ろしく早いせいで溜めがいる必殺技の発動ができないんだ。バアルもそれがわかってるからああやってヒットアンドアウェイで対応してくるんだけど。

 

「ウグ、ヒ……ナ……ググ」

「おねーちゃん……あたし」

「日菜ちゃん!」

「アアアァァァァ!」

 

 日菜ちゃんに向かって鉄騎士が突進していく。途中にあったランスに持ち替え、日菜ちゃんを貫こうと速度を上げていく。

 ──まずい! 日菜ちゃん逃げて! そう叫んだ私に向かって日菜ちゃんは……大丈夫と優しく笑った。

 

「あたし、見つけたよ……キラッキラでるるるるんってする、夢!」

「──え!?」

 

 次の瞬間、私やスノーの目に飛び込んできたのは、鉄槍が砕けてよろめく悪魔の姿と、青色の衣装に身を包んだ……変身した日菜ちゃんの姿だった。

 くるりと手元で回転するのは……ステッキ? と思ったけどそれは両端に青い宝玉のついた細長い棒で、いくよ! と日菜ちゃんが叫ぶとそれが伸びて彼女の身長くらいになった。

 

「まさか……てめえもか!」

「──夢を撃ち抜く、夢を照らす日輪スマイル! ドリ~ム~サニー!」

 

 夢想の勇者、三人目の仲間は……日菜ちゃん、ドリームサニー!

 姉を悪魔から救うため、日菜ちゃん自身が夢を与える勇者となって、悪魔を戦うことを決めた瞬間だった。

 

 

 

 

 

 

 

 




なれないってゆったじゃん! ねぇポップ!
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