夢想勇者☆パステルドリーム   作:黒マメファナ

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第8話:蠢くは……GOLD

 夢を撃ち抜く、夢を照らすお日さまスマイル、ドリームサニー。

 日菜ちゃんは私たち夢想の勇者の三人目に覚醒していた。バアルは一瞬、驚きに目を見開いていたけど、すぐにその得物に気付き口許に笑みを浮かべた。

 

「ロッドか、いいな……オレが遊んでやる!」

「よっと。二人ともー! おねーちゃんは任せたよー!」

「えっ、う、うん? わかった! 行こうスノー」

「はい!」

 

 ランスを砕かれた鉄騎士はまた腰から剣を抜き放ち、円盾を構えながら突進してきた。だけど今度は二人いる。スノーが前衛で私がその後ろを陣取っていく。骸骨騎士はどうやら魔法力の高まりを感知してそっちを優先的に叩く性質だということをスノーに教えてもらい、それを利用することにした。

 

「サニー、ソイツは強いけど大丈夫!?」

「ヘーキヘーキ!」

 

 軽いなぁ……おねーちゃんを助けるんだからと日菜ちゃん、サニーが力強い笑みで返していく。

 ──信じるしかない。そして一刻も早くコイツを倒して紗夜ちゃんを救い出して、三人でバアルを叩くしかない。

 

「今だよスノー!」

「雪花流……」

「グアァ!」

 

 鉄剣でスノーの集中を阻害していく。けれど、それこそがこの作戦の狙い! バランスを崩したスノーの肩を踏んで、私は魔法力を高めながら突進していく。剣の防御じゃ間に合わないことを察したのか円盾を構える。それも、予想された動きだよ! 

 盾を踏んで、更に跳躍、ここのところイヴちゃんの真剣と組手をしていたから、避ける手段としてこういう機動性を持つことを練習しておいてよかった! 

 

星旋貫手(スタースパイラル)っ!」

「グッ……ガ……ッ」

 

 背後に回りこんで、貫通威力重視の捻じり貫手を心臓部に叩き込む。

 白い骸骨がひび割れ、黒いガラスのように砕け散った。その中にいた紗夜ちゃんは目を閉じて私とは反対方向に倒れたのをスノーが慌てて抱き留めた。ふう、よかった。これで奪還成功、サニーはどうなってるんだろう。そう思った瞬間に私の目の前に何かが吹き飛んできた。

 ──え、これバアルのトンファーだ。とんできた方向を見ると、スーツがボロボロになったバアルと、ロッドを縮めて器用に手元で回転させるサニーがいた。

 

「チッ、クソが! やりやがる……!」

「別に楽しくないけどさ……おねーちゃんのために早く終わらせよーよ」

 

 つ、強くない? バアルを一対一でこうも一方的にできるもんなの?

 トンファーが一本だけになったバアルは少しだけ能力を解放して、稲妻のような光を残してサニーに接近していく。

 

「ガッ!?」

「またそれ? さっきみた、よ!」

「この野郎……!」

 

 え、ええ? 今のを逸らして交叉法でロッドを鳩尾に叩き込んだの? どういうこと? そう思ったら全く同じ動きをサニーがしていく。コピーしたことに驚きだけどそれよりも魔力解放したバアルと同じ動きなの!? 

 

「よっと」

「猿真似野郎が!」

「あはは、よっと、更に~、よっと!」

 

 ロッドが伸びて、更にそれが鎖で繋がれた三つの棍に分裂した。あれは、三節棍? 間合いが伸びて、しなやかにバアルの頭を的確に狙っていく。す、すごい。トリッキーな動きでバアルを翻弄してる! 

 

「このオレさまが……? バカな!」

「よっと、じゃあ終わりにしよっか。丁度スターの技も見たし……」

「え、私?」

「うん!」

 

 またロッドを縮めて今度はまっすぐに突っ込んでいく。躍起になっているバアルはそれを迎撃しようとトンファーを振り上げ、真っ直線に振り下ろす最速の技を繰り出していく。

 ──それを、私なんかより鮮やかに、バアルの肩に足を掛けて後ろを取っていく。ロッドを伸ばし、振り向いたバアルの死角まで三節棍を伸ばして、それを引いていく。

 

「なっ……」

「終わり……っ!?」

「──獅子王」

 

 光の衝撃波がロッドを弾き、サニーはそれを驚いた顔で長いロッドの状態に戻しながら、そこに現れた白き姿の悪魔を睨みつけた。

 ──シャヘル。私たちを襲う六体の完全体のうちの一体。だけど前のような闘気はなく、青い瞳で私たちを警戒しながら退くぞとバアルに声を掛けた。

 

「今日は分が悪い」

「──そうだな! ムカつくがその通りだ」

「待っ……っきゃ!?」

 

 追いかけようとしたら地面に転がっていたトンファーの片方が私の頭をめがけてとんできた。咄嗟に椀甲で防御してなんとかなったけど、そのせいで距離を取られてしまう。

 ──て、手を離れても動くなんてズルだよ! 

 

「悪いな、オレのアイムールは行儀がよくねぇんだ。もちろん、こっちのヤグルシもな」

 

 バアルの手元に戻っていく左のトンファー……アイムールという銘の武器を私たちに見せるようにしながら、突如として立ち込めた煙……これは霧? その中に消えていく悪魔たち。霧が晴れるころにはすっかり夜の静寂を取り戻したライブハウス前に戻っていた。

 

「そうだ、おねーちゃんは!?」

「外傷なし、大丈夫だよ」

「キゼツしてるだけです!」

「よかった……おねーちゃん」

 

 ほっと安堵の息を吐きながら、サニーは変身を解除する。その表情は今まで見たことがないくらい優しい顔をしていて……私はもしかして日菜ちゃんのことを勘違いしてたんじゃないかって思ってしまった。

 日菜ちゃんは無邪気で、だからこそ平気で人を傷つけられる、そんな心のない空っぽだと思っていて、でも紗夜ちゃんを見る、気遣う表情には確かに血が通っている。姉を守るために、必死に考えて、夢を見つけて変身してみせた。そんな優しさを持った子なんじゃないかって、今は考えることができる。

 

「んー、よくわかんないけど、あたしは面白いことが好き。るんってすることを見つけるのが好き。あとね、おねーちゃんが好き」

「その気持ちがあれば、きっといつか紗夜ちゃんも、日菜ちゃんがただただヒドいことをしたくて真似してるんじゃないって気づいてもらえるよ」

「……そっか。あたし、だからおねーちゃんに避けられてたんだ」

「気づいてなかったんだね」

 

 でもやっぱり他人の感情にちょっとだけ無頓着なところがあるけど、それもちょっとずつ、ちょっとずつだけど気付こうとする意欲がある。だからきっと大丈夫だと私はイヴちゃんと一緒に紗夜ちゃんを抱えて、家に帰すことにした。

 

「……ねぇ、ポップ」

「はい」

「夢を失った人、奪われた人って……どうなるの?」

「それは、悪魔を倒したあとということですか?」

「うん」

 

 最初に倒した悪魔に憑かれていた子……あの子の意識もすぐに戻ったんだけど、どこか虚ろだった。もしかして、という私の最悪の予想を、ポップはすみませんと敢えて隠していたことを認めつつ謝罪の言葉を述べた。

 

「悪魔憑きになることはありませんが……自然と夢が回復することは」

「やっぱり、ないんだ」

「はい」

 

 予想していたことだから、ショックは少なかった。でも、同時に夢を奪う悪魔のやり方が許せないって気持ちが大きくなった。

 精霊界の守り人、天使でありながら反旗を翻したサタンによって、今度は私たちの世界が夢のなくなった世界になるのだとしたら、私は許せない。

 ──そのために勇者としても、アイドルとしても、努力に努力を重ねていく。今まで以上に、熱心に、迷いを振り切るように。

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 ──賑やかな声を背に、私はレッスン室を後にする。

 褒められただけで暢気な子たち……とは思うけれど、仕方がないというところがある。皆、芸能界というものに疎いのだから、彩ちゃんを含めて。

 

「なるほど……この規模のライブなら、今の我々でも出られるかもしれません」

 

 この人もこの人で、まだそう言い逃れをしようとするのか。責任のあり方から逃げているのか、それともただ単純に上の顔色を伺うことしかできない無能なのか……どちらにせよ、このままではパスパレ……いえ、()()()()未来はない。だからこそ、これを通さないようなら社長に直談判するつもりで、ライブの募集を突き付けたのだが。

 

「こ、交渉のほうはこちらで行わせていただきますので……」

 

 この後に及んで……そう言いたくなる気持ちを抑えていた。そこに、ノックが入り、失礼するよ、と驚くような人物が私とプロデューサーの前に現れた。

 ──スラリとした背丈にどこか中性的な雰囲気を放つ男性。鼻立ちが通っていて色白で金髪碧眼という、イギリス系のハーフであることを信じるには十分、そしてなによりどこか魅惑的なオーラを放っていた。

 

「しゃ、しゃしゃしゃ、社長!?」

「交渉の必要はないよプロデューサーくん。私が先方に伝えて許可を出そうじゃないか」

「え、ええ!? よ、よろしいのでしょうか?」

「もちろんだとも。彼女らのような才能の塊を元よりこのまま腐らせておくほど、私は無能ではない、さ」

 

 助け船を出してくれたのは彼……この事務所の代表取締役だった。

 普段はなかなか顔を出すことのない彼の、神々しいまでの威圧感のせいか、プロデューサーは行き給えと言われ逃げ出すように去っていった。

 

「やぁ、千聖」

「口添え、感謝します。おかげでパスパレは一歩踏み出せました」

「──()()()だろう? 言葉は正しく使おう」

「……ええ」

 

 その瞳に射貫かれ、私も少しだけ足が竦みそうになる。若くして社長という座に就いた貫禄だろうか。年齢は以前何かでかじった程度だがまだ三十代だとか……見た目はもっと若く見えるけれど。きっとその華やかさがそう見せるのだろうと、私は結論を付けた。

 

「キミのような現実主義にこそ、僕は好感を持つんだ」

「はぁ」

「夢を持つことも決して悪いことじゃない。悪くはないけれど……」

 

 言っている意味は理解できる。それはそのまま彩ちゃんと私の差なのだから。あの子は何かにつけて努力、努力。できないことを他人のせいにしないところはいいのだけれど、自分だけが頑張っても何もならないということをわかっていないのだから。

 

「必ず、成功してみせます……それでいいのでしょう?」

「もちろん。期待しているよ……僕のために、ね?」

 

 ──悪魔は笑顔でこちらに近づいてくる。そんな風に言われるけれど、あの笑み、あの魅惑的で抗いがたいほどのカリスマこそ、悪魔の資質だとすら感じるわ。

 ばかばかしいけれど、そういうものがいるのだとしたら……きっと彼のような人物なのでしょうね。

 

 

 

 

 




☆丸山彩の悪魔メモ
・鉄騎士の悪魔:エリゴス
 日菜ちゃんのお姉さんである紗夜ちゃんが悪魔化してしまったもの。身長は大柄の男性くらいの1.8メートルと推測。今までの悪魔よりも宿主がより大きく夢を奪われているため、強く理性的な動きもできる悪魔になっている。ランスや鉄剣と円盾を使った攻防一体で鎧を身にまとってるのに俊敏で攻撃も苛烈。ただ円盾がある割には防御には疎そうという印象。特に魔法力感知が強く技を使う暇がなかったのがつらかった。イヴちゃんと二対一でなんとか撃破
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