夢想勇者☆パステルドリーム   作:黒マメファナ

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第9話:悪魔が語るNIGHT

 日菜ちゃんが仲間になって数日後、自主トレの成果が出てきた私たちに千聖ちゃんはステージに立つチャンスがきたことを教えてくれた。その瞬間は努力が実ったんだ! 夢を見続けたら、とイヴちゃんたちと喜びを分かちあった。

 だけど千聖ちゃんからは……同時に厳しい現実も、突き付けられた。

 

「──努力は結構。夢を見るのも結構。だけど……努力が必ず夢を叶えてくれるわけじゃないのよ」

 

 それは、頭を殴られたような衝撃だった。日菜ちゃんによるとどうやらプロデューサーと色々話をしているところを目撃したらしい。

 ──千聖ちゃんは、そういう最短距離を見つけるのが上手な子で、私とは違う。私が暢気に努力をしていた陰で、彼女は一体どれだけ頭を下げたのだろう。ちょっとだけ、落ち込んだ。

 

「ふぅ……彩ちゃん今日動き雑じゃない?」

「う……!」

 

 自主練の後、麻弥ちゃんが帰ってからはまたこっそり勇者としての特訓をしていた。けど変身を解除しながら、日菜ちゃんはずばりと指摘してくる。うう、今日は色々考えてぐるぐるしてるせいで、注意力散漫かも。そういえばポップは最初彼女は勇者にはなれない、その適正である夢にまっすぐ向かう力が足らないって言ってたのに、どうして変身できてるんだろう。

 

「んー? ほら彩ちゃんとポップが言ったじゃん! 星に手を伸ばすくらいに大きな夢がいるって」

「うん」

「あたしね、遠くの星に行きたくてさ、その時のことを思い出したんだ」

 

 ああ、えっと……つまり日菜ちゃんはそれを比喩じゃなくて本気で思っていたことがあった。だからその時の気持ちで変身できたってこと? 規格外ですよってポップも言ってたけど、日菜ちゃんの力の秘密はまだまだわからないことが多い。

 しかも、日菜ちゃんの魔法特性は……これもまたびっくりの万物転換というもの。魔法力を自在に別のものに変えられる。これを使って日菜ちゃんはロッドを三節棍にしたり、バアルの雷をコピーしてたみたい。

 

「ムテキの能力です! すごいです!」

「あーでもね、弱点もあるよ」

「弱点?」

「ほら、イメージだからさ、雷だったら雷ってなっちゃうとこかな? あとシュバって変えられないとことか」

「二つ同時には使えないし、すぐに別のに転換はできないってこと?」

「そそ!」

 

 だから彩ちゃんとかイヴちゃんの能力に頼ることもあるかもって笑って、それがなんだか嬉しそうに見えた私は、笑みを返す。でもこれまで二人とも魔法力で魔法っぽいものが使えなかったから、日菜ちゃんがいてくれて助かるなぁ……ロッドって杖のことだけど魔法杖じゃなくて打棍だというのからは目を逸らすとして。しかも三節棍。

 

「それじゃあまた連携も考えないとだよね!」

「なんで嬉しそうなの?」

 

 そりゃあ、仲間が増えたからだもん。

 二対一でなんとかってくらい強力な悪魔がいても、三人いれば大丈夫だし! 日菜ちゃんはでもやっぱ六人? 五人? いたらいいよねと笑う。

 

「確かに、白を入れれば六人! まだまだたくさん仲間ができたら嬉しいです!」

「まぁ確かに、相手は今のところ強いのが三人……だけど」

 

 そんな相談をしながら帰り道を歩いていたときだった。

 いいや、と声がする。すっかり夜も更けた川沿いの街灯下に……悪魔が立っていた。いい加減わかるようになってきた。普通の人間みたいなのに背筋が凍るくらいに何かが違うという感じ。

 

「よっ、こんな夜更けに勇者様が警戒せずに歩いてるとまずいんじゃあねぇの?」

「……そーいうおじさんは悪魔?」

「おじさんっていうなよ。見た目的にまだお兄さんで通るだろ?」

 

 ぼさぼさでちょっと硬質な黒髪を掻きながら、そのおじさん……じゃなくてお兄さん。確かにお兄さんで通る見た目の二十代中盤くらいの見た目の男はつかまだ変身前って当たり前かとぼやく。

 その言葉に私たちが同時に臨戦態勢に入ったけど、男は手を挙げて降参のポーズを取った。

 

「ああちょいまち。おれ自身はほとんど戦闘できねぇからな」

「……ならどうしてですか?」

「ハナシを聞いてくれりゃあそれでいい。いちおー見つけたらシャヘルかバアルに連絡しなきゃならんが、それもやめてるしな」

「それなら……」

「えー、やっちゃおうよーだってこの人名乗らないし」

 

 ひ、日菜ちゃんそれはさすがに……相手もめちゃくちゃびっくりしてるし。

 けれど日菜ちゃんの言うことも一理あって、相手は一切名乗りもしないもんね、こっちのことを倒すための機を伺っているって見方もできるもんね。

 

「あーあー、わかった! おれの名はペオル。碧角(へきかく)のペオルで魔力特性は風、これで十分だろ」

「ふーん。じゃあいっちょ戦ってもいい?」

「なぁこの青髪ちゃんお前のお友達だよな!? なにこの話聞かない系?」

 

 うーん。まぁ日菜ちゃんだし。イヴちゃんも納得したように頷いていた。ごめん、たぶん日菜ちゃんとしても何か考えがあってそうなってるんだと思う。けどドリームサニーに変身しちゃった日菜ちゃんは左手を前に差し出してクイクイ、と挑発していく。

 

「だーもうメンドクセー! やってやらぁ!」

「いいね!」

「後悔すんなよ!」

 

 そう言ってペオルはねじれた山羊の角のような鉾を出現させた。それを上段に構え、薙ぎ払われ、あっさり鳩尾にロッドを受けて……悶絶した。

 さしものサニーも固まってて、嘘ホントに弱いと呟いた。かわいそうになってきた。

 

「ぐはっ、くそ、クソ……! だから言ったじゃねぇか! ちくしょうだからやっぱ女なんて信用できねぇんだよ!」

「あ、あはは……大丈夫?」

「見てわかんねぇのかお前は!」

 

 ──それからペオルが復活するまで数分待って、公園のベンチに座った彼はぶつぶつと呟きながら私に名刺を差し出してくる。

 中国人の名前が書いてあることにも驚いたけれど、その肩書は更に驚きだった。

 

「……機材担当と、バックミュージシャン?」

「そ、おれはお前らの芸能事務所で働いてるモンだ」

 

 そんな人が悪魔……しかも完全体の一人という事実に驚きが隠せないけど、おれは別に絶望とか、悪魔の世界がどうのとかキョーミねぇからと情報をくれる。

 信用していいものか、一瞬悩んだけど今はどこからどう敵が出てくるかわからない以上この男の言葉を聞いたほうがよさそうだった。

 

「精霊界からお前らの世界に来た悪魔は六体。だけどオレが把握してんのはあと四人だ」

「……そうなんだ」

「奴さん……ああサタンのことな。アイツは全員を把握してるようだが」

 

 どうにもアイツの勤勉さにはついてけねぇのよとシニカルに笑うペオルだったが、後同僚に心配なやつがいてな、とも言う。同僚、心配……その言葉に私は一人のことが頭をよぎったけど、今はそんなことより残りの悪魔だなとまるで手品のネタバラシをするように一人一人指折り数えていく。

 

「まずサタン。蒼炎のサタン」

「……そいつには会いました。悪魔化したバアルを、一撃で」

「アイツは桁外れだからな。あとベンヌか、月鳴(げつめい)のベンヌ。コイツはまぁ昼行燈だからいいとして、残りの一人……オレも正体を把握してねぇ金弦(きんげん)アエーシュマには気をつけろ」

 

 悪魔の中でサブリーダー的なポジションにいたらしいその名前を呟き、そしてペオルは続けてコイツはお前らの近くにいると言い放った。

 ──戦闘というよりは言葉巧みに精神を支配し、絶望を生み出すことに長けてる策謀型という言葉と近くにという言葉は、やっぱりパスパレの機材トラブルもそいつのものだと察しがつくには十分だった。

 

「ん? ああそりゃオレだな」

「……よしっ、変身していいかな?」

「待て待て! ふざけんな!」

 

 別に魔力とか関係なしに機材トラブルを意図的に起こされていたことをあっけらかんとした言葉で白状されて少し許せないという気持ちが強くなった。悪魔に利用されて、それで私たちはこんなことになっているという悔しさ、それと同時にアテフリということそのものがもうアエーシュマの術中だということを思い知らされた。

 

「んじゃ、おれは行くとする」

 

 次襲ってきたら容赦なくあの二人を呼び寄せるからなと釘を刺され、私たちは……日菜ちゃんはちょっとだけつまらなさそうに承諾した。完全に信用したわけじゃないけど、一応見返りはこっちも用意しないと、それが交渉ってものなんだろうから。

 ──でも、それ以外に私は訊きたいことがあった。

 

「……どうして、協力してくれるの?」

「アイドル」

「……へ?」

「おれはアイドルってもんが好きなんだよ。観てて楽しいからな」

「あ……」

「あとは同僚が巻き込まれてるからってのもあるな」

 

 手を上げて立ち去っていくペオルの最後の言葉に、私はそっか……とほほ笑む。ポップは少し不満げな顔でカバンから出てきたけれど、それでいいんだと思う。相手が悪魔だから殺し合いをしなくちゃいけないんじゃない。彼らにも生きているということを教えられた瞬間だった。

 

「甘くない彩ちゃん?」

「そうですよ……いつか、後悔しますよ」

「でも! ペオルさんは悪い人ではなさそうでした!」

「彼も、また悪魔の一人……しかも戦闘ではなく戦闘補助を得意としてる悪魔ですよ? 信用するんですか?」

 

 あれ、なんか……あれれ? ポップと日菜ちゃんは関係なく撃滅すべしという意見に、イヴちゃんと私はそうじゃなくてサタンとアエーシュマ、そしてそれに協力する悪魔を倒してみんなの夢を守ればいいという意見に分かれてしまっていた。

 とりあえずはその巻き込まれてるペオルの同僚……麻弥ちゃんが危なさそうということがわかった。目の前の問題を解決するのが優先だよ! 

 

 

 


 

 

 

勇者がいなくなったタイミングで、ペオルは影に動く気配を感じた。

そこには悪魔王たるサタンが立っており、ペオルに対して僅かな動作だが完璧なコントロールで缶コーヒーを投げて与えた。

 

「あれでよかったのか」

「ああ」

「……ま、確かにシャヘルはまだしも、バアルやベンヌが黙ってるわけねぇもんな」

「シャヘルには私から説明する」

 

そうかいとさしたる興味もなさそうにペオルは呟いた。悪魔が世界を破壊するという意志に縛られているわけではない。だが彼らには彼らの生きる本能が備わっており、それが奇しくも夢であるのだ。

ーーペオルはそれをアイドルを応援するということで補っていた。そして()()()()()()、ペオルとサタンは他者を絶望させ悪魔化させるほどの食事が必要ないのだった。

 

「にしても、偶然じゃないってことが確実になったな」

「そうだな……勇者たちは意図的に集められている」

「誰が……なんて質問するまでもねぇな」

 

勇者たちの預かり知らないところで、悪魔たちの目的は二つに割れつつあった。

 




敵の数は六体……かと思いきや、なにやらある様子。
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