チート性能の武器『りゅうおうの杖』を貰ってから数週間。連日魔法の修行と実地調査をして判明したのは、りゅうおうの杖は使い手を選ぶって事だった。
物は試しと言う事でバランさん、ミザル、アイナさんで使い回して魔法を使ったのだが、俺が使った時程、威力が増さなかったのだ。その事を父上にも聞いたのだが、父上曰く「真の使い手に武器は応えるものだ」と言われた。なんか、はぐらかされた気もしないでもない。
だけど、バランさん達で試したようにもしも父上が使ったとして威力が増さなかったのだとしたら納得は出来る。威力が増さない意味のない杖よりも光魔の杖を持つわな、そりゃ。
「しかし、まあ……どうすっかな」
俺は鬼岩城の自室の窓から外を見ながら呟いた。ハドラーが目覚めるまで、あと半年ほど。そうなったら人間と魔族の間で戦争になるが……俺は迷っていた。俺と言う存在が原作のストーリーを変えてしまいかねないからだ。
正直、ダイの大冒険のストーリーはかなりのバランスで成り立っている。もしも、俺が介入して余計な事をしてしまった場合、大筋のストーリーから外れてしまう。下手をすればバッドエンドに成りかねない。
それに、もしも侵略に参加したとして、俺は人間相手に力を振るえるのだろうか……正直、難しいだろう。かといって前戦に出ないとダイ一行と出会う確率がかなり下がる。
その辺りも父上に聞かなきゃならないんだろうな。ハドラーが目覚めた後、俺の立ち位置が分からないんじゃ対策の立てようもない。俺としては魔王軍側に居ながらダイを影で助けていくのがベストだとは思うんだけど……バランさんの事もあるんだよな。最近、ずっと修行の相手をして貰ってたから親しくなったし。
ああ、それと竜騎衆にも会った。俺の稽古相手として呼んでくれて、ラーハルト、ボラホーン、ガルダンディーの三人纏めてではなく一人ずつだったけど。ラーハルトは原作通り、堅物。敵として会わなければボラホーンは意外と気さくだった。ガルダンディーの友達のスカイドラゴンのルードとは仲良くなった。その事でガルダンディーとは少しもめたけど普通に話すくらいの間柄にはなった。
そんな訳でバランさんとは親しいし、竜騎衆とも知り合いになった。そんな中でダイの仲間になり、彼等と敵対するかと言われれば非常に悩む。それにミザルさんやアイナさんとも戦いたくはない。
そんな思いを抱えながらも、俺は父上と定期的なチェスの為にバーンパレスに来ていた。りゅうおうの杖に魔力を介してルーラを唱えてみた所、今まで使えなかったルーラがマトモに使えた。これは嬉しい発見だった。その事をお迎え係となっているミストバーンに話したら嬉しそうにはしていたものの何故か寂しそうにも見えた。なんでだろう?
その事と今後の俺の立ち位置の話を父上にしたら笑われた。なんでやねん。
「奴は奴なりに、そなたを気に掛けている……とだけ言っておこうか。たまには奴に迎えをさせてやれ」
「は、はあ……父上がそう言うなら、そうします」
父上はクックッと笑うと駒を動かす。
「それはそうと、そなたの立ち位置の話だったな。六団長は既に決まっておるし、バーンパレスに引きこもらせる気もない。鬼岩城を拠点にハドラーの指揮下に入らせるか」
「やはり、その辺りが妥当ですよね。そう言えばミストバーンとバランさん以外の六団長に会ってませんね、俺」
考えてみればハドラーは寝てるし、フレイザードに至っては生まれてすらいない。ヒュンケル、クロコダインには会ってみたいけどザボエラはノーセンキュー。
「ふむ、ハドラーが目覚めた暁には、そなたの事も教えねばなるまい。ハドラーが目覚めた後に六団長を集結させる。その時にそなたのお披露目とするか」
「とんだお披露目になりそうですね」
会話をしながらも互いに駒を進める。本日も俺の負けだった。勝てる気しねーわ。
「ハドラーの指揮下に入らせるなら役職も必要か……ふむ、イーリスよ。そなたには魔軍指令補佐を任命する」
それって物語後半にザボエラが就いていたポストですよね?