転生したら大魔王の娘だった   作:残月

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魔軍司令と出会いました

 

 

 

なんやかんやでハドラー目覚めの日になった。ハドラーは鬼岩城の一室で眠りについており、それを父上の声で目覚めさせるらしい。その時に俺とミストバーンの紹介をするそうだ。

 

ハドラーが眠っている部屋に辿り着き、ミストバーンと共に棺桶の前で待機する。この段階でハドラーの中に黒のコアが埋め込まれてるんだよなぁ……この場でハドラーを呪文で倒せば、ミストバーンも巻き添えに出来るから父上も元の姿に戻れずにストーリーも楽になるのでは?と一瞬過ったがデメリットの方が多そうだ。

 

 

『目覚めよ、ハドラー……目覚めよ、ハドラー……』

 

 

父上の呼び掛けに反応し、棺桶がズズッと重い音を鳴らしながら開き始める。遂にご対面か。

 

 

「おお……我が年老いた筈の体が軽い……」

 

 

棺桶から上体を起こしたハドラーが自身の手を開いたり握ったりして自身の体の感覚を確かめている。

 

 

「感謝いたします……バーン様」

『うむ、お前の目覚めは喜ばしい事だ。これから余の為に励むが良い。して、ハドラーよ……貴様に余の部下達を任せよう』

 

 

ハドラーが父上から授かった新たな体に感動している最中、父上は俺達の話題を振る。父上の言葉に合わせて一歩前に出る。

 

 

『その者達は魔王軍幹部に名を連ねる者達。魔王軍魔影軍団長ミストバーンと魔軍司令補佐イーリスだ』

「…………」

「どうも」

「おお……この者達が……」

 

 

ハドラーは俺とミストバーンを値踏みする様な視線を送ってくる。ジロジロ見るなっての。

 

 

「ミストバーンは寡黙なんで俺から説明させて貰うよ。俺の名はイーリス。魔軍司令補佐とは言われたものの実戦経験なんて無いから補佐と言うよりは手伝いかな」

「なんだと?」

『イーリスは余の娘だ……実戦を学ばせる為にもハドラーよ。貴様の下に就かせる』

 

 

父上の言葉にハドラーは青い顔になる。鼻水垂らしながら口を開けるって器用だな。

 

 

「バ、バーン様のご息女でしたか。しかし、バーン様のご息女を戦場に送り出されるのですか?私では荷が重く……」

『深く考えるなハドラーよ。イーリスを魔軍司令補佐に就かせたのも今後の為だ。そこで敗北するなら其処までの存在だと言う事だ。それにイーリスは余が禁呪法で生み出した竜の騎士……人間なんぞには負けぬ』

 

 

ハドラーは自分の責任の重さに狼狽えているが父上は構わないと言い放つ。信頼されてんだか、実力を測られてるんだか……

 

 

「竜の騎士が実在したのですか!?」

『貴様の配下にさせる魔王軍超竜軍団団長、竜騎将バランは当代の竜の騎士だ。そして、その血を媒介に生み出したのがイーリス』

 

 

竜の騎士が伝説の存在だと考えていたハドラーは先程同様に鼻水を垂らしながら動揺していた。そういえば、初期はギャグ顔よくしてたっけ。

 

 

「な、なんと……バーン様は竜の騎士を禁呪法で生み出せるのですか……」

「ま、そう言う事なんでヨロシク」

 

 

ハドラーは俺を見ながら信じられないと言った表情になっていた。おいおい、魔軍司令としての威厳ゼロだよ、アンタ。

 

 

『仔細はイーリスに付かせているミザルかアイナに聞くが良い。ハドラーよ……六団長を纏めあげ、夢と散った世界征服を成し遂げるが良い』

「ハハーッ!」

 

 

父上の最後の言葉にハドラーは棺桶から飛び出すと頭を下げた。壁に設置された父上の言葉を伝える石顔の瞳から光が消えたのを確認した後にハドラーは立ち上がり、俺達と向かい合う。

 

 

「ん、んんっ……では、改めて俺が魔軍司令のハドラーだ。バーン様のご息女を部下として迎え入れられるのを光栄に思うぞ。そっちのミストバーンとやらは喋らんのか?」

「俺が相手でも、喋る所を見た事無いんですよ。寡黙だけど、父上に対する忠誠心は誰よりもありますよ」

「………」

 

 

咳払いをした後に俺達に自己紹介をするハドラー。漫画とかアニメで描かれなかった部分だから起き抜けのハドラーってこんな感じだったのかと思ってしまう。

そう思いながら俺はミストバーンのフォローをした。そりゃそうだよね、喋らないんだもの。不審に思うのも無理無いわ。

 

 

「そうか……だが、俺の部下となったのならば二人とも働いて貰うぞ」

「はいよ。父上の命令でもあるんでね」

「………大魔王様のお言葉は全てに優先する」

 

 

鼻を鳴らし、偉そうにふんぞり返るハドラーに俺とミストバーンは答えた。それと同時に驚いた。喋ったよ、ミストバーンが喋ったよ。

 

 

「………喋ったではないか」

「いや、俺も驚いてる。俺、生み出されてから数年だけど初めて声聞いたし」

「……………」

 

 

寡黙で喋らないと言われて直ぐに口を開いたミストバーンに驚くと同時に呆れたハドラー。だが、それ以上に驚いたのは俺だ。原作だと、初めて喋ったのはヒュンケルの話の時だったし。

 

 

「ま、まあ構わん。ヨロシク頼むぞ」

「…………」

 

 

ハドラーの言葉にミストバーンは今度は黙ったままだったが、目の辺りが光った後にフッと姿を消した。前から思っていたけど、どうやってるんだろう?ルーラとは違う感じだったけど。

 

 

「ククッ……魔界の強者達が俺の配下に……勝てる。今度こそ、アバンにも勝てるぞ!」

「取り敢えず、その体に慣れる事と部下の把握が最優先だと思うよ、魔軍司令殿?」

 

 

拳を握り、勇者アバンへの恨みを全開にしてるハドラー。そっちも重要なんだろうけど、魔軍司令の仕事をしようぜ?

 

 


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