ハドラーが目覚めてから数日。ハドラーは今の自分の体に馴染む為のトレーニングに励んでいた。今の肉体は父上から授かったモノで暗黒闘気によって強さを増す代物だ。しかも、ハドラーは年老いた状態から若返ったから体の感覚的にもズレが生じているとの事なので、魔軍司令としての仕事を終えた後はトレーニングが必須となっている。
「流石は大魔王バーン様のご息女であり、竜の騎士だ……強いな」
「そっちも実戦経験豊富なだけある……」
俺とハドラーは実戦形式の組手をしていた。
ハドラーの拳を避けながら此方も蹴りを見舞う。体勢の崩れたハドラーにメラミを放つがイオラで相殺されてしまう。怯んだ俺に対し、間合いを詰めてヘルズクローで攻撃してきたので、りゅうおうの杖で防いだ。
「ぬ、ぬぅ……この世に貫けぬ物など無いヘルズクローを受け止めるとは……」
「この至近距離で避けられるかな?ヒャダルコッ!」
俺は至近距離でハドラーに浴びせる。ハドラーは「あがががっ!?」と妙な悲鳴を上げながら氷付けになって氷の中に閉じ込められた。大口を開けて鼻水を垂らし、目玉が飛び出ん程に見開かれた瞳。やっておいてなんだが、酷いな、コレ。
「へっ……汚ねぇオブジェだ」
「いっそ砕いてしまいますか?」
「やめんかっ!」
氷付けになったハドラーに何処かのエリートさんみたいな台詞を溢したら、何故か魔神の金槌を肩に担いだアイナさんが俺の後ろに立っていた。
氷の中でもそれが見えたのか、聞こえたのか分からないがハドラーは慌てた様子で氷の呪縛から自力で脱出してみせた。
「恐ろしい事をしおって……」
「やですわ、魔軍司令様ったら。ご冗談でしたのに」
ぜぇぜぇと息を荒立てながらアイナさんを睨むハドラー。アイナさんは冗談だとクスクス笑ってはいるが、笑顔で魔神の金槌を担いで言われても冗談には聞こえず、寧ろ怖さ倍増だった。
「しかし……バーン様より頂いた肉体は素晴らしい。嘗ての俺の肉体よりも鍛えれば鍛える程に強くなっていく……最早、過去の俺と比べても強さの比較にならん程にな」
そう、ハドラーはここ数日のトレーニングでかなりの強さになっている。結構長い間、バランさんに鍛えて貰っていた俺でも今のハドラーを強く感じるから、肉体的にも魔力的にもかなり強化されているのだろう。
「これだけ強くなれば、アバンですら問題ではあるまい。感謝するぞイーリス。俺のトレーニングはもう充分だ」
「そうかい?なら、あとは魔軍司令としての仕事に本腰を入れて貰う感じかな?」
ハドラーはこの強さならアバンに負けないと強気になってる。なる程、原作でも誰かを相手に鍛えた後にアバンの所へ行ったのだろう。となれば、これ以上ハドラーが強くなるのは止めた方が良さそうだ。俺は然り気無くハドラーに魔軍司令としての仕事を促した。
「フッ……既に獣王クロコダイン、妖魔司教ザボエラ、魔影参謀ミストバーンに魔軍司令としての挨拶を済ませたのだ。後はバーン様の肝いりのヒュンケルと……バランだけだな」
ハドラーは指揮官として既にクロコダインやザボエラと会っていたらしい。らしいと言うのは俺はクロコダインにもザボエラにも会っていないからだ。ハドラーがクロコダインやザボエラに会っていた頃、父上から呼び出され、バーンパレスに行っていたからだ。そこで会ったのは豪魔軍師ガルヴァスという劇場版に出てきたキャラクターだった。ガルヴァスはハドラーの影武者であり、ハドラーの代わりに戦闘、制圧をこなす代用としての存在との事だった。
なんで俺に会わせたのだろうと疑問に思っていると、ハドラーとは既に顔合わせを済ませており、俺の事も紹介しておくべきだろうと父上が俺を呼び出したってのが事の顛末。
「ヨロシクお願いいたします、イーリス殿」
「うん、ヨロシク。ガルヴァス」
にこやかに握手を交わす俺とガルヴァスだが、ガルヴァスの目は笑っていない。なんで俺が小娘の下なんだと言わんばかりの目だ。
『イーリスよ。ガルヴァスはハドラーの代わりに魔界や人の手が及ばぬ地の制圧を任せるつもりだ。そなたはハドラーの代わりに表の六軍団と裏の六軍団の橋渡しをせよ』
「なる程、魔軍司令補佐だから両方に顔を利かせろと」
そういや、劇場版でも表と裏で仲が悪いなんて設定だった気がする。そこを円滑にしろって事ね……でも、現段階でガルヴァスってハドラーに反旗を翻す気満々に見えるんだけど。
「このガルヴァス……粉骨砕身でバーン様とハドラー殿の為に働かせていただきます」
「全ては父上の為に……お互いに頑張ろうか」
『なんとも頼もしい事よ。ガルヴァスよ、貴様は魔界の猛者を集め裏の六団長を編成せよ』
とても信用ならないけど、そう言うしかないよね。父上はそれですら楽しんでいる節がある。って言うか裏の六団長まだ揃えてなかったのかよ!
『豪魔軍師ガルヴァス』
劇場版『ぶちやぶれ!!新生6大将軍』に登場するキャラ。
ハドラーの影武者で逆立った赤い長髪に屈強な肉体の魔族。実力的にはハドラーと同等とされ、ハドラー曰く「俺と違い卑怯なことを平気でやる男」と評されている。