俺は部屋の姿見で自分の姿を確認すると、本来の自分とは違った姿の女の子。今の俺が写っていた。
背中に掛かるまで長くちょっとウェーブの掛かった金髪の髪。つり目がちな赤い瞳。出る所は出て引っ込む所は引っ込んでいるボディ。頭からチョコンと伸びた二本の角に尻の辺りから伸びている尻尾。これが今の俺だった。
大魔王様から『娘』宣言されてから既に三日。混乱していた頭も漸く冷静になり、現状を確認できた。
まず、此所はやはり『ダイの大冒険』の世界である事。まあ、大魔王バーンやミストバーンが居た段階で確定していたが。次に現在は原作開始前って事だ。
先日、科学者風の魔族のミザルさんから聞いたのだが勇者アバンに敗れたハドラーは力を蓄える為に十五年の眠りに付く。そして現在は十二年経過らしい……原作開始の三年前やんけ……しかもハドラーはただ眠るだけではなく、この間に肉体改造処置を施しているらしい。暗黒闘気とか超ド級爆弾の黒のコアをハドラーに無断で仕込んでる時期。今の内に対処すればどうにかなるかな?と一瞬思ったけど大魔王バーンには見透かされてそうで怖くてやめた。
次に俺の立場なのだが、どうやら俺は……と言うか俺が憑依した体は大魔王バーンの実子ではなく禁呪法で生み出された人工魔族だったらしい。魔族が作った体なのに『人工』とはコレ如何に。
ミザルさんから聞いた話だと、大魔王バーンは自分に唯一対抗できる『竜の騎士』であるバランを仲間に引き入れた際に少量だが血を採取したらしく、大魔王バーンはその血をコアとして使用し、禁呪法で俺を作り上げたとか。
禁呪法で生み出された生命体は禁呪法を使った者が生みの親に当たる。俺の体を禁呪法で作り上げたのは大魔王バーンだから俺は立場的には大魔王バーンの娘……となるらしい。
大魔王バーンは人工的に『人造竜の騎士』を作り上げようとした。しかし俺を生み出したまでは良かったがそこに魂が無く生ける屍同然だったらしい。何故目覚めないのか謎だったが失敗作とは言えど擬似的な竜の騎士の素体を破棄するのは勿体無いという事で保存する事が決定され、俺が目覚めた時に入っていた培養液に満たされた容器に保管され、ミザルさんは大魔王バーンから俺を目覚めさせる方法を探せと命じられていたらしい。
当然の事ながらミザルさんは原作には存在しなかったキャラだ。俺の想像だが、もしかしたら俺の存在は原作にもあったのかもしれない。しかし、俺と言う人格が憑依しなかった為に『人造竜の騎士』が目覚めなかった為にミザルさんは出番が無かった……と思われる。
今は俺が目覚めてしまったのでミザルさんは俺の魔法の先生となった。監視役と教師を両方兼ねている様だ。魔法の道具や生物の研究ってザボエラのイメージだったけど、考えてみればザボエラ一人に任せてる訳無いか。他にも居たんだろうけど漫画じゃ描かれなかったんだな。
「では、イーリス様。本日の授業を始めましょうか。バーン様からも貴女の事を頼まれてますので」
「父上からの命令には逆らえないですもんね」
そんな事を思っているとミザルさんが数冊の本を持ってきたので本日の授業魔法の授業が始まる。
どうも禁呪法で生み出された生命体は生みの親には逆らえない様に出来るらしく大魔王バーンからの命令の一つに自分を『父上』と呼ぶように厳命された。言いたくなくてもコアに命令を刻まれたから拒めないんだけどさ。
あ、『イーリス』ってのは今の俺の名前です。
『イーリス』
ダイの大冒険に転移した男が人造竜の騎士である女魔族に憑依した姿。
見た目は十六才程で身長は160cm。
背中に掛かるまで長くちょっとウェーブの掛かった金髪の髪。つり目がちな赤い瞳。頭からは小さな角が二本生えていて、尻の辺りから伸びている尻尾がある。
原作に存在しなかったキャラに憑依してしまったので混乱しつつ今後どうするか悩む日々。バーンがイーリスを作った際にこの世界の知識や女としての常識を埋め込んだので日々の生活には困っていない。
一人称は『俺』
基本的な服装はノースリーブの服にスパッツを履き、腰にパレオの様な物を巻いている。靴はブーツ。指出しタイプの籠手を装備。
『ミザル』
イーリスの監視役件責任者となっている魔族。褐色の肌に銀髪をオールバックにしている。中年男性の様な容姿で身長は180cm。
典型的な魔法使いタイプで魔法の扱いには長けるが体力が無い。マッドサイエンティスト。
原作には登場しなかったキャラだが魔王軍での立場はバーン直属の科学者。バーンの命令でイーリスの魔法部門の家庭教師役にもなっている。
一人称は『私』
基本的な服装は白衣。