原作開始を直前にして俺は悩んでいた。
ぶっちゃけ原作に沿って話を進めて良いのだろうか。俺は鬼岩城のてっぺんの頭の上で胡座で空を見上げていた。
正直、魔物・魔族と人間の間の溝が深い。
バランさんの過去もそうだし、竜の大群から人を助けたダイですら畏怖の目で見られていた。ダイみたいな子供ですら、強く異端な力は拒絶されてしまう。
他のドラクエ漫画でも似たような事が描かれてたっけ『魔王が倒されたと言う事は魔王よりも〈力〉を持つ者が現れた証』その為、勇者は国を飛び出し逃げ出したって話だ。
それを考えると、人間の側って正直ろくなもんじゃない。しかも、俺は見た目的に魔族だから、受け入れられる可能性低いわ。クロコダインはパプニカの人達には受け入れられていたけど、時間が掛かってたし、それはあくまで一部の人間に限った話だ。
だったら、魔王軍側を説得できるかと言われれば否だ。ぶっちゃけ、父上を説き伏せるなんて天地がひっくり返っても無理だ。
魔王軍に所属する魔族・魔物の大半が人間を見下してる。俺は元人間だから人間寄りな考えをしているが、魔族側の考えも理解できる。
人間は自分以外の者を疑い、拒絶する。そしてその猜疑心を正義感に変えて相手を糾弾する。魔族・魔物はそれをぶつけやすい相手って訳だ。
ダイの大冒険の世界ならバランさんの話が顕著だし、汚い人間って意味なら偽勇者のでろりん達が良い例だろう。
それにアバン達の例もある。アバンは世界中を旅していたから大丈夫だったけど、マトリフは王の相談役になったが、大臣や側近がマトリフを疎んで追放した。マァムの両親のロカとレイラは森の奥で暮らしていたからこれまた問題ないが、世界を救った英雄の後にしては質素なもんだ。更にブロキーナ老師も山奥で世捨て人みたいな暮らしをしていた。
困った時は平頼み。平和になれば厄介者。
その部分を汚いと、ヒュンケルは人間を恨んだ……と言うか大半の魔族はそう考えるだろう。他のドラクエの漫画でも、魔物は本来純粋な存在とされている。そこに人の悪意が混ざり合って人を襲う魔物になる。人を襲う魔物が生まれる、と。
ぶっちゃけ、人間の自業自得が招いたケースが多いのがドラクエ世界だ。
それに……色々悩んだが、一番の問題点は俺自身だ。大魔王バーンの娘って時点で、もう人類側を勝利に導いても禁呪法で生み出された俺は、父上の死で俺も死ぬ。仮に生き残っても、その後の身の振り方を考えれば追放されるのがオチだ。
それに……この世界に産み落とされてから出会った人達は魔族でも優しかった。人間からしてみれば魔族は異端な存在だ。魔族から見ても人間は異端なんだって分かった。
仲間意識があるからなんだろうけど、魔族・魔物は意外と気さくで朗らかだ。仲間に対する接し方は、正直普通……って言うか、かなりフレンドリーだったりする。
『人間』が恐れた『魔族・魔物』は『魔族・魔物』側からしてみれば『敵』ではなく『別の視点での味方』って事なんだ。
俺の心は人間の頃のままだが、この三年間、魔族の側で過ごした俺は、彼等を『敵』として見れない。魔物の中には可愛いのもいるんだもん。モフモフの奴とか特に可愛いわ。
それにさ……
「イーリス様……そんな所に座るなんてはしたないですよ」
「アイナさん……いいじゃん。此処は俺のお気に入りなんだ。魔王軍発起はまだ先なんだし、今はだらけていたいの」
ここまで育ててくれた魔族の人達と離れるって選択肢は今の俺には存在しない。ゴロンと寝転んだ俺を然り気無く膝枕してくれたアイナさんに、俺はさらに申し訳ない気持ちになっていた。