転生したら大魔王の娘だった   作:残月

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獣王と会いました

 

 

 

バラバラにしたキラーマシンを鬼岩城に持ち帰った俺は、ミザルさんに解析を頼んだ。やっぱ、その手の専門家に頼むのが一番だからだ。すると、ミザルさんが呼んだのか、他の科学者風の魔族も集まってきていた。ザボエラは居ないな……まあ、アイツはどちらかと言えば生物学とかだから、キラーマシンには関わらないか。

 

 

「ふむ……旧魔王軍時代にこれほどの物を……」

「ベースはこのままに素材を変えて……」

「サイズも調整しますか。型に嵌める様にすれば量産も……」

 

 

などと、俺が口を挟む余地など無いように、科学者さん達は持ってきた俺を放置して、キラーマシンに御執心だった。挙げ句の果てに「では、イーリス様はキラーマシンの新たなデザインを考えてきて頂けますか?それを参考にしますから」と、研究室から追い出された。頭にきたので研究室にイオラでも叩き込んでやろうかと思ったが、専門家と素人じゃ意見が合わないし、仕方ないよね……

取り敢えず、キラーマシン2のイラストでも描いてから後日提出しよう。

 

 

そんな訳で、次の俺の仕事は六大団長の視察だ。ハドラーがアバンの所在を探すように部下に命じているが、アバンは旅の家庭教師をしているから簡単には見つからないだろう。それに、そもそも今の所在地は俺も知らないし。デルムリン島で張り込みしてる方が早く見つかるけど、黙っていよう。

その俺が、現在視察に来てるのはクロコダインの所だ。ハッキリ言おう。俺にとってはパラダイスであると!

 

 

「アハハっ!くすぐったいって!」

「うにゃん、ゴロゴロ……」

「ピイピイ」

「くるる……」

 

 

俺は今、クロコダインの拠点である魔の森に来ているのだが、動物系のモンスターに囲まれていた。物凄い懐かれてる。動物好きとしては嬉しい限りだ。超癒される。

 

 

「……随分と懐かれてますな。特に、このキラーパンサーは俺にも従わぬ気難しい性格なのですが」

「え、そうなの?めっちゃ人懐っこいんだけど」

 

 

先ほどから俺に甘えてくるキラーパンサーは、クロコダインの部下の中でも気難しいらしい。俺の顔を舐めて甘えてくるキラーパンサーを見ていると、とてもそうには見えないけど。

 

 

「そのキラーパンサーを連れていきますかな?魔軍司令補佐殿に懐いているなら、そいつも望んでついていくでしょう」

「んー……来るか?キラーパンサー」

「ガオッ!」

 

 

クロコダインの提案に、俺はキラーパンサーについてくるかと聞くと「行くっ!」とばかりに吠えた。

 

 

「よし、今日からお前の名はゲレゲレだ」

「クゥンッ!」

「変わった名を付けるのですな。まあ、ゲレゲレも喜んでいる様ですが」

 

 

キラーパンサーに名付けるならゲレゲレしかないでしょう!いや、他の候補も名付けしてみたいけど、なんかゲレゲレがしっくりくる感じがしたから。

 

 

この後、クロコダインと話をしている間に夕方前になってしまった。クロコダインから武人としてのあり方や、父上に対する忠誠の話をしていたらすっかり遅くなってしまった。そろそろ帰らないとなぁ……なんて思って空を見上げたら、一匹のキメラが高速で飛んでるのが見えた。さらにその背に乗っていたのは……マジかよ……

 

 

「魔軍司令補佐殿、どうかなされましたかな?」

「いんやなにも。俺は帰るよ。ゲレゲレ、道案内するから乗せてくれ」

「ガオッ!」

 

 

見送りに来たクロコダインの問い掛けを誤魔化すと、俺はゲレゲレにまたがった。そのまま鬼岩城まで……って訳もなく、俺はゲレゲレをロモス城へ走らせた。

 

 

 

 

 

 

◆◇sideクロコダイン◆◇

 

 

 

不思議な少女だ。魔軍司令ハドラー殿の代わりに魔の森の視察に来たと言う魔軍司令補佐イーリス。彼女は大魔王バーン様のご息女であり、前線には来ないだろうと思っていた少女は、真面目に視察に赴いていた。さらに驚いた事に、俺の配下のモンスター達がイーリスに甘え始めたのだ。体をすり寄せたり顔を舐めたりと、人に恐怖を与えるモンスターとは思えない光景になっていた。

 

特に、親を人間に殺され、気性が荒いはずのキラーパンサーが懐いたのが意外だった。奴は俺の命令ですらろくに聞かないと言うのに、イーリスには心を許している様にも見えた。動物が心を開くのは、絶対的な服従かその人物が心を許せる者だと本能的に察した時だ。イーリスは間違いなく後者だろう。

 

ふむ、大魔王バーン様のご息女だけあって、人望にも優れているのだろう。名付けのセンスはともかくだが……

 

 

「魔軍司令補佐の立場も伊達では無いと言う事か」

 

 

人柄の良さも評価できる方のようだ。バーン様の話では、あの竜騎将バランやミストバーンから師事を受けたと言う。ならば、その実力も高いのだろう。

ゲレゲレと名付けたキラーパンサーに乗って去っていった彼女を見送りながら、俺はそんな事を思っていた。

 

 


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