転生したら大魔王の娘だった   作:残月

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情報収集をしました

 

 

マキシマム相手に調子にのって魔法を連発していた俺は、魔力切れに陥った。融合呪文が面白くて、限界まで張り切ってしまった。

 

魔力切れなので半日休もうかと思っていたら、ハドラーからアバン捜索を手伝えと言われてしまう。此処で「デルムリン島に居る」なんて言ってしまえば楽なのだが、そうもいかない。アイナさんと共に人の町に行き、情報収集をする事になったのだ。

 

 

「でも、俺は魔力切れだしなぁ。誰かにモシャスを掛けて貰って人間に化けないと……」

「そちらの方は手配済みです。あとはイーリス様のお着替えですよ」

 

 

人の町に行くなら、俺の角と尻尾を隠さなければならない。モシャスで角と尻尾を隠さなきゃと思っていたら、アイナさんが全部手配してくれたらしい……いや、でもさ。

 

 

「アイナさん……その服は誰が着るのかな?」

「いやですわ。勿論、イーリス様が……逃がしませんよ?」

 

 

そう、アイナさんの手には可愛らしい服が一着。アイナさんの返答を待たずに俺は一目散に逃げ出した!のだが、尻尾を捕まれ逃走失敗!

 

 

「俺はそういう服は嫌なんだって!」

「あら、今のイーリス様が私に逆らえるとでも?体力も魔力も尽きている以上、私の意のままですわ」

 

 

なんとか逃げようとしているのだが、アイナさんに捕まれた尻尾が抜けない。単純な握力だけで俺の全力と張り合うアイナさんに、さらに戦慄を感じた。

 

 

「さ、お着替えしましょーね」

「嫌だぁぁぁぁぁぁぁ………」

 

 

尻尾を引っ張られ、俺はアイナさんに衣装室に連れ込まれる。ああ、これはもう逆らうだけ無駄なんだろう。そうは思いつつも叫ばずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

「うぅ……落ち着かない……」

「もう、普段からバーン様に頂いた装備しか着ないからですよ。イーリス様は可愛らしいんですから、少しは着飾らないと」

 

 

俺は女物の服を着させられた。少し良い所のお嬢様って感じの服装で、アイナさんはいつも通りのメイド服。設定的には『大商人の娘とお付きのメイド』って事らしい。

 

 

「しかし……アバンを探せって言われてもな……」

「ヒュンケル様のお話では旅の家庭教師をなされてるとか……ならば噂になっているでしょう。聞き込み開始ですね」

 

 

俺は答えを知っていながらもアバン捜索を手伝う事に。町の噂や商店等で聞き込みをする。その最中で意外な物を見付けた。それは調味料などのスパイスを取り扱っている店だったのだが、店先にある物は俺にとっては馴染み深い物だった。

 

 

「おや、お嬢さん。この調味料に興味があるのかい?これはとある国で試験的に作られた物らしくてね。味わいが深くなるんだが……見た目のせいで誰も買ってくれないんだ。少し前に髪をカールさせた旅の家庭教師なんかが買ってくれたんだが、あとはさっぱり売れやしない」

「この調味料を買わせてくれ。あと、今の話を詳しく」

 

 

スパイス屋の店員に聞いた所、パプニカから来たと言う旅の家庭教師は一人の弟子を連れて数日前に来たのだと言う。珍しい調味料を購入した男はロモス方面へと旅だったらしい。ついでに古道具屋で安物の剣を10Gで買っていたそうだ。

ビンゴ、当たりだな。原作でもアバンはパプニカ王家から依頼を受けてデルムリン島にダイをスカウトしに行っている。つまり、今はダイをスカウトする為にデルムリン島を目指している最中と言う事だ。これだけ分かれば適当に偵察を出せばアバンは見つかるだろう。

 

情報収集の結果は上々だったと言える。さてと、あとは帰ってこの調味料を使って料理を……

 

 

「帰ったら料理しやすい格好でしましょう……ね?」

「………はい」

 

 

にこやかながら、勝手は許さないと言うプレッシャーを放つアイナさんに、俺は一生頭が上がらない気がしてきた。

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

鬼岩城に戻った俺は、アイナさんからメイド服とエプロンを着させられ、髪も長いと料理に入ってしまうからと、左右で三つ編みにされた。

 

 

「さて、と……」

 

 

この調味料は、見た目からこの国の者には受け入れられなかったと不評だったが、俺からしてみれば懐かしい故郷の味だ。鍋に銀杏切りに切った野菜を入れ、例の調味料を溶かす。さらにこの世界の出汁とスパイスを入れて味を整える。ふんわりと例の調味料の匂いが調理場を支配する。ああ、懐かしい……この匂い。本来の物とは若干違うのだろうが十分だ。懐かしい味を堪能するとしよう。そう思ってスープ皿にそれを注いで……

 

 

「おや、良い匂いがすると思えば珍しい方が料理をしていましたか」

「なんですか、ミザルさん」

 

 

いざ、食べようってタイミングで邪魔をされた。嗅いだ事のない匂いに釣られてきたらしい。ミザルさんの後ろには部下と思わしき魔族も居た。

 

 

「ふむ、我々科学者チームもイーリス様のキラーマシン案件で疲れていましてな。これはご相伴に……」

「わかった……科学者連中にも労いの意味を込めて配ってくれ」

 

 

鍋を渡した俺にミザルさんは笑みを浮かべた。そんなに食べたかったのか?

 

 

「他にも労う方々が居ますので、そちらにも届けるべきでしょう。さ、案内いたしますから此方へ」

「え、ちょっと……?」

 

 

部下に鍋をあずけたミザルさんはメイド服から着替えていない俺を調理場から連れ出した。いや、何処に行こうってんだ?

 

 

俺はこの後、迂闊に返事をした事を非常に後悔した。何故ならば、行き着いた先が鬼岩城の会議室で、そこでは六大団長とハドラーが会議をしていたのだから。

 

全員が「何事だ?」と言った表情で俺とミザルさんを見ていた。この後、部下が鍋を運び、アイナさんがトレイに皿とかを乗せて会議室に入室。

 

 

「さ、皆様。会議も結構ですが、休憩を挟んではいかがですか?イーリス様の手料理をお持ちしました」

「………いっそ殺せ」

 

 

ニヤリと笑みを浮かべたミザルさんと、いつも以上に良い微笑みを浮かべるアイナさん。ああ、この二人に嵌められたのか。羞恥に俺の顔が熱くなるのを感じた。

 

なんで『故郷の味を楽しみたくて気軽にクッキング』が『大魔王の娘が魔軍司令と六大団長に手料理を振る舞ったドキドキクッキング』になったのだろう。

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