転生したら大魔王の娘だった   作:残月

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新しい呪文を披露しました

 

 

 

 

 

「メラミ……からのバギマ!」

「ぬおおおっ!?」

「………」

 

 

はい、父上の前で絶賛技の披露中のイーリスです。いつもの定期チェスをしながら呪文の完成度を話したら、チェスの後に「では、見せて貰おうか」と言われてマキシマムを呼び出し、今に至る。今放ったのはメラ+バギの炎の渦を産み出す呪文。他にもヒャド+バギやメラ+イオ等の合成呪文を幾つか披露した。

 

それらを披露したのだが、父上の表情は固い。

 

 

「呪文の融合とは考えた物だが、まだまだ小手先の技と言った所だな。そのメラミとバギマの融合呪文でも余のメラにすら敵うまい」

 

 

そりゃ父上の呪文と比べたらそうだろうよ、と言いそうになったのを堪えた。このタイミングで口答えとか出来ねーわ。

 

 

「融合呪文以外にしている事はあるか?」

「え、えーと……あるにはあるんですが……」

 

 

父上の質問に答えづらくなった…なんせ、融合呪文以外に練習中の闘気と呪文はぶっちゃけ未完成もいいところだ。

 

 

「構わん、見せてみろ」

「………はい」

 

 

有無を言わさず、やる事を強要された。やっぱり機嫌悪いよな、今日の父上。マキシマムもかなり怯えた雰囲気だし。仕方ない、腹を括るか。俺はそう思いながら、りゅうおうの杖を構えた。

 

 

「ふ……ああぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

「………ほう」

 

 

りゅうおうの杖に俺の全魔力を注ぎ込む。りゅうおうの杖の素材は分からないが、この杖は魔力を際限無く吸収する。それを普通は放つ事で威力を増した呪文にする事が出来るのだが、あえて放たずに溜め込み、杖に集中し続ける。俺の魔力がドンドン吸い上げられていく。

 

 

「ぐ、ぎぎぎ……」

「待て、イーリス。その呪文を中断しろ」

 

 

俺の魔力を吸収しきった、りゅうおうの杖の先から魔力の刃を発生させる。杖の頭の竜の形を象った部分を魔力の刃が覆う。杖の部分が刀の柄の様になり、刃の部分が刀身の様に変化する。刀身と言うには真っ黒な魔力の刃は、俺の実力不足なのかフラフラと揺れていた。

 

 

「お、お待ち下さいイーリス様……その呪文は、何か嫌な予感がしますぞ……我輩……」

「ぐ……あ、が……」

「止めよ、イーリス。その呪文は禁呪法に近い」

 

 

マキシマムや父上が何か、話しているが何処か遠く聞こえる。魔力を吸われ過ぎて意識が飛びそうになってきた……そう思っていたら首筋に痛みが走り……俺の意識は闇に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

◆◇sideバーン◆◇

 

 

 

 

「やれやれ……大したものだ、我が娘は」

「正直、肝が冷えましたぞ……」

 

 

禁呪法クラスの呪文を行使しようとしたイーリスの首筋に手刀を落とし、気絶させた。グラリと崩れ落ちそうになったイーリスを余は受け止める。

 

先程、イーリスがりゅうおうの杖を媒介に使おうとした呪文は、莫大な魔力を消費する代わりに、あり得ない程の威力を生み出す呪文だ。あれは余ですら手に余る呪文となろう。余が扱えなかったりゅうおうの杖はイーリスに最適の武器となった。いや、適合率が高過ぎたと言うべきか。故にあの凶悪とも言える呪文を編み出した。

マキシマムが本能的に危ういと感じたのも無理はない。あの呪文が完成されていたら、マキシマムのオリハルコンですら打ち砕く程の呪文となっていた可能性が高い。

 

さらにミストバーンからの報告では、イーリスは光の闘気と暗黒闘気の使い分けが出来るようになってきていると聞く。つまり、イーリスは光と闇の闘気を自在に操り、際限無く威力を高めた呪文を放てる存在になりつつある。噂に伝え聞く竜魔人の様な高みに登りつつあるのだ。

 

 

これは余の予想通り、イーリスは通常の竜の騎士とは違った存在に成長している。今のイーリスは通常の竜の騎士と竜魔人の間の存在。このまま成長すればバランすら上回る竜の騎士となれるだろう。

 

 

「バ、バーン様……イーリス様でしたら我輩が運びましょうか?バーン様のお手を煩わせる事も無いでしょう」

「いや、構わぬ。イーリスを禁呪法で生み出してから交流はあったが、こうやって抱いてやった事はなかったからな」

 

 

マキシマムが余の腕の中で眠るイーリスを受け取ろうとするが、たまにはこうして労ってやるのも良いだろう。予想外の成長を見せるイーリスに余は、手料理を最初に余に振る舞わなかった事の苛立ちを忘れていた。

 

このままバーンパレスに以前用意したイーリスの部屋に運んでやろうかと思ったら、悪魔の目玉から報告が来た。

 

 

『報告、報告。ハドラー様が勇者アバンを倒しました。しかし、ハドラー様も重傷です』

 

 

イーリスの策でアバンの所在を判明させたハドラーは、過去に因縁もある勇者アバンを倒しに行った。イーリスもその事を気に掛けていた様だが、パワーアップしたハドラーでもアバンを倒すのは容易ではなかったと見える。

 

 

「だが、これで余に仇無す要因を持つ可能性のある者は潰えた」

 

 

イーリスの成長といい、勇者アバンの打倒といい、良い報告が聞けるものだ。余の腕の中で眠り続けるイーリスに余は「これが父親の喜び」と言うものかと感じていた。

 

 

さて、ハドラーから改めて報告を聞かねばな。


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