転生したら大魔王の娘だった   作:残月

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魔法の才能が無いようです

 

 

 

 

俺がイーリスになってから一週間が経過した。

 

竜の騎士って言っても角や尻尾は無かったよなぁ……と思いながら自分の尻尾を揺らしながら思いに耽る。自分の意思で動く尻尾ってなんか凄い違和感だ。頭には小さいながらも角が生えている。触ると触られている感触があるので自分の一部なのだと再認識してしまう。

 

 

 

竜の騎士でも見た目は基本的には人間だったし、竜魔人にでもならないと……いや、待て。バランは竜魔人になっても角や尻尾は無かったよな。人工竜の騎士だから通常とは違う感じになったのか?

 

竜魔人は上半身に竜の鱗が鎧みたいになって竜の羽が生えていた。逆に俺は頭に角が生えて尻尾がある。なんか本来の竜の騎士に出ないところに異常が出たみたいになってる。本来の生まれ方をしなかったから反転したみたいな感じだ。

 

 

「イーリス様、休憩時間は終わりです」

「………はーい」

 

 

俺が目覚めた時に身支度を整えてくれた眼鏡を掛けたメイドさんが俺を呼びに来てくれる。この女性魔族は『アイナ』なんでも大魔王バーンに仕えたメイドの中では古株らしく、戦闘力も相当に高いらしい。その割には年老いた感じは全くしないのだ。20代にしか見えねーよ。自己紹介の時にそんな事を思っていたら無言と威圧のダブルコンボで大変だった。うん、どんな種族でも女性に年齢の話をしちゃダメだね。

 

因みにこのアイナさん、めっちゃ強い。午前中に戦闘訓練をしていたのだが、俺の攻撃は一切当たらずボコボコにされたばかりだ。午前中は近接戦闘の訓練で午後は魔法座学と実戦が主である。そんな訳で午後の魔法授業なのだが……

 

 

「メラッ!」

「…………相変わらずですね。どうして、此所まで魔法の才能が無いのか不思議です」

 

 

俺の唱えた呪文に反応して俺の掌から火が出る。火が出たのだが……その火はライターやマッチで灯したかの様な小さな火だった。初日からこの様子なので、ミザルさんも驚いていた。そしてそこから進歩したかと言われれば、この通りな訳で。

 

 

「バーン様の魔力を受け継いでるのに、どうしてこうなるんでしょう」

「それは俺が聞きたいです」

 

 

手の中で風に負けて消えそうな魔法を見詰めながらミザルさんの言葉に泣きそうになる。俺の体は大魔王バーンが禁呪法で生み出した肉体で大魔王バーンの力を引き継いで体の魔力量は凄まじいのだが、それが全然扱えていない。宝の持ち腐れが見事にマッチしていた。

ダイの大冒険の世界に来たのに魔法の才能が無いとは泣ける。

 

メラを使えば手元に小さな火が点り、ヒャドを使えば氷が一粒落ちた。バギを使えば、そよ風が発生。ギラを使えば手元が光って終わり。イオを使えば爆竹が破裂した程度の爆発が起きた。ホイミを使えば、擦り傷が消える程度の効果しか起きなかった。一通りの魔法の契約をしたので使用可能だが効果が低すぎた。

 

  

「突然目覚めたかと思えば素質があるのに才能が開花しないとは……貴女はどちらかと言えば武道家タイプなのかもしれませんね。アイナとの訓練も順調な様ですし」

「さっきボコボコにされたばかりなんですが」

 

 

ミザルさんの発言に、俺は手元のメラを消しながらげんなりとしていた。ため息を吐きたいのはこっちだってのに。正直、魔王軍に協力する気はないが最低限覚えなきゃならない事は多いし、弱いままじゃ何も出来ないから色々と学ぶ予定だけど出だしから躓いている気分だ。

 

 

「本日の魔法の座学は此所までにしましょう」

「あれ、今日は早いんですね」 

 

 

ミザルさんの発言に驚く。なんせ、いつもよりもかなり早く授業が終わったのだから。

 

 

「………本日、此所までにしたのは理由があります。貴女がバーン様に呼ばれているからです」

「へー……俺が父上に……え?」

 

 

ミザルさんの発言に固まる俺。目覚めてから一週間が経過したけど最初の挨拶の時以外は一切接触の無かったバーン様がなんのご用なのでしょうか!?そんな風に驚いているとミザルさんから早く行く様にと言われて謁見の間に行く事に。

 

 

「ああ……不安だ」

 

 

謁見の間に行く道中でため息が溢れる。何を言われるんだろう。憂鬱な気分を抱えたまま謁見の間に到着する。扉の前で声を掛けた。

 

 

「父上、イーリスです」

「うむ、入れ」

 

 

その言葉を皮切りに扉がギギッと自動で開き始める。既に少し、胃が痛いです。

 

 

 

 





『アイナ』

イーリスのお付きのメイドの魔族。メガネを掛け、長い黒髪を後ろで三編みにしている。バーンに長年使えているメイドだったが現在はイーリスのメイドとして働いている。魔法は使えないが武芸百般で肉体労働派。バーンの命令での武道部門の家庭教師となっている他、マナーをイーリスに叩き込むべく活動中。イーリスの教育係件護衛。

基本的には穏やかで優しい性格だが怒った時は怖く、相手が大魔王バーンであろうと圧倒する程のオーラを放つ時がある。原作には存在しなかったキャラ。

一人称は『私』
基本的な服装はメイド服。

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