父上から指南を受ける事になって、はや二日。
「ぎにゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
「逃げてばかりでは意味がないぞ」
父上から次々に放たれるギラを避け続ける。父上は右手を俺の方に翳し、ギラを連続で放ち続ける。指先から放たれる閃光は俺を的確に追い詰める。反撃したいけど絶え間なく放たれるギラを避けるので精一杯で反撃の糸口が見付からない。
「この二日で避ける事は上手くなったが、そろそろ反撃してみせよ」
「くそっ……ならば、ベギラ、マァァァァァァッ!?」
反撃しようとベギラマを放ったら父上のギラに俺のベギラマが貫かれ、俺の肩を撃ち抜かれる。超痛い、肩が焼ける様な痛みが走る。俺のベギラマは父上のギラに勝てなかった。
「痛たた……ってヤバっ!」
「ほれ、敵は休む時間はくれんぞ」
痛みに俺の動きが鈍ったのを見逃さず、ギラからヒャドに切り替えてきた。足下が凍り始めたので跳び退いて避ける。
「お前は過去にキルバーンに連れられてグリズリーと戦った時に力を解放した。ミストバーンとの特訓でも命の危機を感じ、さらなる力を見出だした。ならばと、その力を引き出せる様にギリギリまで追い詰めてやっているのだ。自身の思いで力を引き出せなければ死ぬだけだ」
「いだっ!?ちっ、この……なうっ!?」
飛び退いた先にイオを叩き込まれる。体勢を整え着地しようとしたがヒャドで凍らされた地面で足を滑らせて頭を打つ。痛みに転げ回りそうになったが、間髪いれずに放たれたバギで宙を舞わされる。視界が……と言うか体勢を反転させられ、目が回っていると火の粉が飛んできた。ヤバい、この火の粉は父上のメラだ!
「メラゾー……うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」
メラゾーマで父上のメラに対抗しようとしたが、先に着弾したメラが炎の渦となり俺の身を焼いた。
「ぐうっ……うりゃあっ!」
「ほう、闘気で炎をかき消したか。だが、それで次はどうする?」
魔法力じゃ対抗できないから、闘気を両手に纏わせて炎の渦を振り払う。ヤバい、キツい……父上からの指摘通り息が上がってるし、反撃の糸口が見付からない。このままじゃ……すると、目の前が明るくなった。思わず顔を上げたら、火の鳥と目があった。
「これが余のメラゾーマ……カイザーフェニックスだ」
「ちょ、待っ……」
父上の右手から炎が溢れ、鳥の形を象った炎が羽ばたいている。即座にそれが何なのか察した俺は、冷や汗が止まらなかった。一撃一撃が必殺技の領域の大魔王バーンが、自ら必殺技と呼んだ呪文の一つが目の前で展開されているのだ。感動よりも恐怖が勝った。
「防いでみせよ」
そう言って放たれたカイザーフェニックス。どうする……避けるか?いや、逃げ切れない。防ぐか?いや、魔法を弾くヒュンケルの鎧ですら防げなかったカイザーフェニックスを防ぐ事は不可能だ。切り裂くか?何発か食らってコツを掴んだポップと違って一発目のカイザーフェニックスを指先で引き裂くとか無理過ぎる。
魔法で打ち返すのは実質不可能だ。ラグナ・スレイブは時間が掛かりすぎる。マホカンタ、フバーハはまだ使えない。
「だったら……これだ!」
俺は咄嗟に闘気を高める。高めた闘気を右手に集中させる。右手に集中させた闘気を掌から放つ。
「ほう……光の闘気か。ミストバーンから聞いてはいたが、魔の力を持つ者が光の闘気を操るとは興味深い」
「ぐぎぎ……」
放った闘気波はカイザーフェニックスと僅かに拮抗するが、徐々に追い詰められそうになっていく。俺は必死だってのに父上は呑気に解説してるのが腹立たしい。
「余のカイザーフェニックスに僅かにでも拮抗したのは見事だが、それまでだ」
「舐めん……なぁっ!」
カイザーフェニックスが俺の目の前まで迫ってきた。俺は父上に対して……いや、今までの怒りを込めて左手に闘気を集中してカイザーフェニックスを殴り飛ばした……のだが、直後に頭に衝撃が走り、俺の意識は落ちた。
◆◇sideバーン◆◇
「まったく……予想がつかんな、我が娘は」
目の前で気絶して、地に伏しているイーリスに溜め息を吐く。余がイーリスの鍛練をするようになってから二日。避けてばかりだったイーリスを今回は避けきれない様に追い詰めた。すると、イーリスは魔法よりも闘気を選択し、余の放ったカイザーフェニックスを受け止めた。イーリスの放った闘気は魔族が扱う事が出来ない光の闘気だった。
イーリスが光の闘気を扱ったのにも驚いたが、その後も驚かされた。なんとイーリスは、左手で暗黒闘気を使用したのだ。光の闘気と暗黒闘気は相反する闘気で、同時に扱えた者は長い歴史の中で皆無だ。それを未熟な余の娘が無意識とは言えど、両方を同時に扱ったのだ。
右手で光の闘気、左手で暗黒闘気を展開させるなど、当代の竜の騎士バランは勿論、余ですら不可能だ。
イーリスは追い詰められ、強敵と戦う事で爆発的に強さを増していくタイプだ。故に、手加減をしたとは言ってもカイザーフェニックスを放った。そしてイーリスは、余の期待通りにカイザーフェニックスを弾くまでの実力にはなった。
もしも、イーリスが自分の意思で完璧に光の闘気と暗黒闘気を操れる様になれば……いや、まだ先の話になるだろう。
暗黒闘気を纏わせた拳でカイザーフェニックスを殴り飛ばしたイーリスだったが、弾いたカイザーフェニックスが壁を破壊し、降ってきた瓦礫で頭を打って気絶し、余の目の前で倒れ眠る未熟な娘に、期待と一抹の不安を抱くのだった。
気絶したイーリスを寝室に運ぼうとしたら、ハドラーが手傷を負わされた次代の勇者ダイを、クロコダインに始末させる手筈だと報告が上がった。