転生したら大魔王の娘だった   作:残月

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ロモス城での戦い

 

 

 

ルーラで魔の森に到着。ゲレゲレも久し振りの生まれ故郷が嬉しいのか興奮気味だ。

 

 

「しかし……妙だな」

 

 

森が静かすぎる気がする。前に来た時はそこら中から魔物の気配がしたのに、今は不気味なくらいに静かだ。

 

 

「まさか、もうダイと一度目の戦いは終わったのか?だとすれば……ゲレゲレ!」

「ギャウ!」

 

 

嫌な予感がした俺はゲレゲレに跨がると走らせた。目指すのはクロコダインの塒だ。もしも、クロコダインが居なければ既にロモス城へ行っている可能性が高い。

 

 

「……思い過ごしであって欲しかった……」

 

 

以前、訪問したクロコダインの居城はもぬけの殻だった。部屋の一部が殴ったような跡があったので相当荒れているのが分かる。これは間違いないな……クロコダインはダイと戦って片目を失っている。そして怒りに駆られたクロコダインはロモス城を攻めている筈だ。

 

 

「まいったなぁ……」

 

 

俺は天を仰いで自分の考えの浅はかさを呪った。父上との修行で日数の感覚が麻痺してたのもあるが、確認を怠った結果、原作スルーをしてしまった。今の現状を見るにクロコダインとダイの一戦目が終わって数日が経過している。

俺は報告が上がったら様子を見に行こうと考えていたが、そもそもクロコダインは武人の恥を晒したくないとダイとの一戦目をハドラーにすら報告していなかった。そこをザボエラに唆された。出来る事ならそれは防ぎたかったが状況を見るに明らかに手遅れだ。

 

 

「仕方ない……ロモス城に行くか」

 

 

俺は過ぎてしまった事は仕方がないと割りきってロモス城に行く事にした。まあ、そもそも原作知識があったとしても自分の思いどおりに出来るなんて思い上がりでしかないよな。

 

俺は急いでロモス城へと行く事にした。父上との約束もあるので黒のマントを身に纏い、フードで顔を隠す。取り敢えずはこれで充分だろう。

俺はルーラでロモス城の近くまで飛ぶ。城下町の様子を見ながら城を目指した。

 

城下町では城の兵士達が魔物相手に奮闘していた。良い勝負をしている者も居れば、敗北する者、武器を捨て逃げ出す者もいた。

 

 

「父上やハドラーが人間を下に見るのも分かるよなぁ……」

 

 

民衆と共に逃げ出す兵士達に呆れながらも俺は城を目指す。そんな中、少しだけ見知った顔を見つけた。

 

 

「お、おい……早く逃げようぜ!」

「で、でもよぉ……」

「我が身が一番可愛いわよ!」

 

 

偽勇者のでろりん、へろへろ、ずるぼんの三人が揃っていた。手にした袋には盗んだと思われる金品などが入っているのだろう。明らかに重そうな物を持ってるし、奴等はそんな金を持っていない筈だ。非常時の盗みは重罪だってのに……

 

 

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「お、女の子がモンスターに襲われてる……」

「ど、どうしよう!?」

「ど、どうするも何も……」

 

 

そんな時だった。モンスターに襲われ始めた女の子が悲鳴を上げたのだ。へろへろ、ずるぼん、でろりんの順にコメントを溢し、最後にでろりんは覚悟を決めた様な表情になった。お、助けに入る決意をしたのか?

 

 

「あの女の子が襲われてる隙に逃げ出そ……へぶっ!?」

「努力しろよ、もう少し」

 

 

でろりんが覚悟を決めた顔で最低な発言をしたので回し蹴りで顔面を蹴り上げた。その衝撃でへろへろとずるぼんを纏めてぶっ飛ばした。ったく、ギャグ漫画なら許されるがシリアスなら絶対に許されないっての。

偽勇者達のオシオキを済ませた俺は素早く女の子を庇うように立ち、魔物を睨み付ける。

 

 

「………失せろ」

「………ぐるぅ」

 

 

ギロッと睨み付けると魔物は怯んだ。そしてすごすごと去っていく。

 

 

「あ、あの……ありがとう……」

「さっさと逃げな。行くぞ、ゲレゲレ」

 

 

ポンと女の子の頭を撫でた後に俺はゲレゲレに股がり、ロモス城へ走らせた。颯爽と城下町を走り抜け、城門に到着。大型の魔物に襲撃された為に城門は見事に破壊されていた。城の中の魔物の対処に追われているのか、門に兵士は居なかったので、すんなりと潜り込めた。さて、クロコダインとダイは玉座の間に居るだろうから……

 

 

「アバンストラッシュ!」

「グオァァァァァァァァァッ!?」

「え、マジか!?」

 

 

叫び声に俺は空を見上げる。そこには崩れた城壁から見えるクロコダインの姿。ああ、完全に出遅れた……これもう、終盤じゃん。

クロコダインとダイの会話は聞こえないが、クロコダインが己の精神的な弱さを嘆き、勇者ダイを認めている様が繰り広げられてるのだろう。

 

 

「然らばだ、勇者は常に強くあれ………グォォォォォォォォォォォォッ!!」

 

 

クロコダインは飛び降り、地面に叩きつけられながら叫び声を上げる。その断末魔に城と城下町を襲っていた魔物達に伝わった。その結果、魔物達は魔の森へと逃げ帰っていった。

 

 

「やれやれ……俺もクロコダインを連れて引き上げるか」

 

 

俺、今回は何も出来なかったなぁ。そんな事を思いながらクロコダインを回収しようかと思ったら城の兵士達が走ってきた。

 

 

「コイツが魔王軍の幹部か!」

「死んでるんだろ、俺達も槍を刺しちまおうぜっ!」

「勇者様が倒したんだから、もう安心だよな」

「なんなら、俺達の手柄にしちまうか!」

 

「コイツら……」

 

 

その会話を聞いた瞬間、俺の頭は沸騰した。敗れたとは言えど相手を汚すような行為を平然としようとしている人間達に憎しみの感情が沸き立つ。

 

 

「消えろっ!」

「な、なんだ貴様っ!?」

「まだ魔族が居たのかっ!?」

「ギャァァァァァァッ!?」

 

 

俺はクロコダインを囲っていた兵士達をイオラで吹き飛ばす。俺は心の中にある、黒い感情をなんとか抑えながら俺は空を見上げた。

 

 

「ガルーダ、来いっ!」

「クワァァァァァァァッ!」

 

 

上空に待機していたガルーダを呼び寄せてクロコダインを運ばせた。魔の森に運ばせて応急処置してから鬼岩城で本格治療だな。ふと、見上げれば穴の空いた城壁から俺を見下ろしている黒髪の少年ダイと目があった。

黒のマントにフードで顔は見られていないだろうけど目があった。そんな気がした。

俺はゲレゲレを連れてルーラでその場を後にした。魔の森のクロコダインの居城へ行き、ホイミや回復系の特技を持つ魔物が全力でクロコダインの回復をしていた。

 

そして何故か、ミストバーンとアイナさんが待機していた。周囲の魔物とか萎縮してるよ、なんで居るんだよ。

 

 

「ミストバーンからの要請でして。クロコダイン様の応急処置が済み次第、鬼岩城へと輸送します」

「手際が良すぎて怖いんですが」

 

まるで俺の行動を全部見てたみたいな手際なんだけど。テキパキと応急処置を済ませたアイナさんはクロコダインを担いで外へと歩いていく。巨漢のリザードマンを担ぐ、メイドさんって絵面が凄いなぁ。

 

 

「………見ただろう、イーリス。あれが人間だ」

「………っ」

 

 

アイナさんの後を追ったミストバーンがすれ違いざまに俺に告げた。

人間が綺麗な所ばかりじゃないのは理解してる。元々人間だった俺はそれを痛い程に分かっている……分かっていた筈なのに。

 

 

今回の出来事は俺の心に黒い影を落としていた。

 

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