「胴体真っ二つ……じゃないだけマシなんだろうな……」
ロモス城での戦いから数日。鬼岩城に戻り、蘇生液のポッドに浸かっているクロコダインは腹の辺りから凄まじい傷痕が残っていた。ミザルさんや他の科学者魔族から「蘇生できるかは確率半々と言った所です」等と言われている。
「おや、魔軍司令補佐殿はお早い……いや、お部屋が鬼岩城にあるのでしたな。キーッヒッヒッ」
蘇生液のポッドの前で胡座をかきながら座っていた俺の背後に耳障りな声が聞こえた。
「イーリス様はクロコダインがご心配の様ですな」
「こんな怪我してりゃ心配にもならぁな」
振り返ると予想通り居たのはザボエラだった。クロコダインが敗れた事でハドラーから緊急召集が掛かったのだ。
「なんだ、来てたのかよジジィ」
「フレイザードか。もう来たのか。流石は魔王軍の切り込み隊長じゃ」
「よぅ、フレイザード」
ザボエラと簡単な挨拶を交わしていたらフレイザードが来ていた。担当してる地域から鬼岩城まで距離があるのに早いな、おい。フレイザードはルーラは使えないのに到着が早いってのは凄いわ。
「クロコダインがここまでやられるとはな……クロコダインの肉体は生半可な刃は通さない。それを打ち抜くとは相手は常識を超えた力の持ち主って事か……」
「見ただけで、ここまで解析できるとは流石じゃのフレイザード。炎の荒ぶりと氷の冷静を待ち合わせるだけの事はあるわい」
そうなんだよなぁ。フレイザードは強いのに慢心とか栄光への執着でダイに負けるから勿体ない。ダイと戦う時も冷静さを失わなければ勝てるだろう。その辺りは俺がフォローするしかないな。
「お揃いの様だな」
「バランさん」
「バラン殿……いらしていたのですか」
「竜騎将バランか。アンタも不運だったな。リンガイアまで行ったのに、Uターンとはよ」
クロコダインの蘇生液の前で俺達が話をしていると背後から話しかけられる。振り返ると其処にはバランさんが立っていた。
「心配には及ばん。リンガイアならもう潰してきた。行くぞ、イーリス。魔軍司令殿がお待ちだ」
「あ、はい」
「強固な軍隊と猛者揃いのリンガイアをもう滅ぼしたってのかよ……」
バランさんは俺の肩をポンと叩くと俺達を会議室へと誘う。あ、フレイザードが悔しそうにしてる。もしかして、フレイザードが功を焦ったのってこれも原因の一つか?そんな事を思いながら俺はバランさんを追って会議室へと急いだ。
会議室に行くとハドラーが会議室の大きい椅子に座っていた。パワーアップして自信があるのだろう。ドヤ顔で出迎えて来たのが印象的だった。
ここから先は基本的には原作通りだった。父上からの指示で勇者一行の殲滅は、この場に居ないヒュンケルが担当となった。フレイザードがその事に怒りを露わにしてる。バン!っとテーブルに手を着いたフレイザード。ジュゥゥゥッとテーブルが焦げていく。おいおい、熱いっての。
「落ち着け、フレイザード。暑くて敵わん」
「これが落ち着いていられるか!そもそも俺はあの若造が俺達と同格の幹部ってのが気に食わなかったんだ!」
バランさんの言葉に更に半身を燃え上がらせるフレイザード。それを言ったら俺もお前も誕生してからの期間はヒュンケルよりも短いんだけどな。
「お前の怒りも尤もだフレイザード。だが、これは我等が大魔王バーン様の決めた事だ」
「それもどうせ、ヒュンケルの野郎が申し出たに決まってますぜ!」
「クククッ……フッフッフッ」
ハドラーやフレイザードの言葉を遮る様にミストバーンの笑い声が会議室に響き渡る。この頃のミストバーンは数十年に一度しか喋らない男と言う設定だったから皆は喋った事に驚いている。俺はもう結構会話してるから、そんな意識は薄れていたが。
「大魔王様のお言葉は全てに優先する」
「その通りだ。我等はそれに従う以外の選択肢はない」
ミストバーンの発言にハドラーが同意する。父上の決めた事に異を唱えるなんて魔王軍の魔族なら出来ないわな。そんなこんなで勇者一行の討伐はヒュンケルに決まった。フレイザードはまだブツブツと文句を言っていたし、ザボエラも気に食わないって顔をしていた。バランさんは「ヒュンケルならば問題はあるまい」とさっさと鬼岩城から出て行ってしまった。ミストバーンはいつもの様にフッと姿を消す。
「やれやれ……俺はどうするかな」
「イーリス、これから地底魔城に行くから同伴しろ」
俺は今回、どうしようかと悩んでいるとハドラーから地底魔城行きのお誘いを受けた。そのポジションってザボエラじゃなかったっけ?俺が行ってもどうにもならん気がするのだが……