転生したら大魔王の娘だった   作:残月

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マグマ海水浴を見物

 

 

 

◆◇sideダイ◆◇

 

 

ヒュンケルに捕まったマァムを助け出す為に俺とポップは打倒ヒュンケルの特訓を積み、地底魔城へと来ていた。嘗てのハドラーの居城だった場所にはガイコツやマミーみたいなアンデット系モンスターが徘徊していて、俺達は地底魔城の闘技場に誘導されてヒュンケルと対峙する。

 

ポップと打ち合わせた通り、ポップが雨雲を呼び、俺がライデインでヒュンケルに雷を落とす。作戦は上手くいったけどヒュンケルはそれでも倒せなかった。ライデイン一発ではヒュンケルはダメージは負ったものの倒すまでには至らなかった。

その後の事はよく覚えていない。俺はヒュンケルに剣で戦いを挑んだけど負けてしまった。意識が朦朧とする中で「剣でも呪文でも勝てない。ならばどうすれば……」

 

 

「俺の……負けだ」

 

ハッとした時にはヒュンケルが敗北宣言をしていた。纏っていた魔鎧も粉々に砕けていて、何が起きたのかわからないままだった。マァムは倒れているヒュンケルに膝枕をしながらアバン先生の卒業の印を手渡していた。

 

「ヒャハッハッハッ!負けた挙句、女の膝枕たぁ、良い御身分だなヒュンケル!」

「うーん、柔らかそうだし羨ましいけどな。フレイザードを膝枕したら火傷か霜焼けが確定だからしてやれないぞ」

 

 

勝利の余韻に浸る間もなく、闘技場の座席から声がかかる。

そこにいたのは体の半分が氷で、もう半分が炎となっているモンスターと金髪の髪が綺麗な女の子だった。二人の姿を見たヒュンケルは半死半生の体を無理やり起こす。

 

 

「くっ…何の用だ!氷炎将軍フレイザード!魔軍司令補佐イーリス!」

「え、あの子は魔王軍で、そんなに偉い立場の魔族だったの!?」

 

ヒュンケルがモンスターと女の子の名前を叫び、マァムも女の子の事を知っていたのか凄く驚いていた。

 

 

「何の用って……様子を見に来たに決まってんだろ。勇者一行の討伐を果たしたヒュンケルへの祝辞なんて思ってたんだけど」

「デカい口を叩いた割にはお涙頂戴の状況に笑わせて貰ったぜ」

 

 

イーリスは溜息混じりに、フレイザードはニヤニヤと楽しそうに言う。

 

 

「なあ、ヒュンケル。昨日、俺が聞いた事を答えられるかい?これからも魔王軍の為に戦える?」

「くっ……」

「ふざけないで!もうヒュンケルは魔王軍には……」

「やめときな、イーリス。あの野郎にゃもう戦う気なんざないだろうよ。勇者に負けた不名誉は俺が無かった事にしてやらぁ!」

 

 

イーリスの問いにヒュンケルは苦々しく顔を背けた。マァムはイーリスの問い掛けを拒もうとしたがフレイザードがそれを遮る様に叫ぶと半身の炎が燃え盛る。そしてフレイザードは片腕を振り被ると闘技場に炎を打ち込んだ。

 

 

「な、何をしたフレイザード!」

「ここらの死火山に活を入れてやったのよ!これからここらはマグマの海になるだろうよ!ハドラー様には勇者と相打ちって報告してやるよ!」

「どちらにせよ、魔王軍に戻れば今までの不敬で処罰される可能性の方が高いだろうよ。今のアバンの弟子達のやりとりを見れば尚更な」

「くそ、可愛い顔してフレイザードと同じ考えかよ、あの子!」

 

 

叫ぶヒュンケルに笑い飛ばすフレイザードと何処か達観したかの様な物言いのイーリス。ポップの言い分は少しズレてる気もするけど。

 

 

「おのれ、フレイザード!」

「おっと、歓迎されてないみてぇだな。それじゃ精々、マグマの海水浴を楽しんでくれや」

「……」

 

 

ヒュンケルが魔剣を投擲するけど座席に突き刺さっただけでフレイザードとイーリスには当たらない。フレイザードがその場を翻し帰ろうとする。イーリスは何故かチラリと俺を見てから何も言わずにフレイザードと共に立ち去って行った。何故だろう、イーリスを見てから何か俺の心がザワザワと騒ぐ様な感覚になっていた。

 

 

「おおぃ!ボウっとしてんなダイ!」

「マグマが押し寄せて来てる!」

 

 

ポップとマァムの叫びにハッとなる。気が付けばフレイザードによって引き起こされたマグマが湧き上がって闘技場の端に溜まって来ていた。

この後、俺達はヒュンケルがその身を犠牲にして助けてくれた。ヒュンケルは大岩に俺達を乗せると剛力で観客席まで投げ飛ばした。その場から動けなくなったヒュンケルは最後に俺達に笑みを残しながらマグマの渦に飲まれて行った。マァムが泣き叫びながらヒュンケルの名を呼び続けた。

 

 

 

 

◆◇sideダイend◆◇

 

 

 

フレイザードに誘われてヒュンケルとダイの戦いを見に来たけど凄まじいの一言に尽きた。俺とフレイザードが到着したと同時に見た光景はヒュンケルがダイのライデイン+アバンストラッシュの合わせ技のライデインストラッシュを浴びて敗北した所だった。

 

 

「カカカッ……ヒュンケルが負けるたぁ、都合が良いじゃねぇか。ぶっ殺す理由が出来たぜ」

「それはやり過ぎだと思うけどな」

 

 

この後の展開を知っている身としてはフレイザードを止めたい所だけど、死を望むヒュンケルを説得するのはクロコダインの役割だ。それが無いと違った展開になりそうだし。あ、マァムがヒュンケルに膝枕してる。ちょっと羨ましい。

 

この後は原作通りに話が進んでいった。後はこの後でマグマ海水浴イベントか。ヒュンケルがダイ達を助けて、ヒュンケルをクロコダインが助けると分かってるけど、もどかしいな何も出来ないってのは。そんな事を思っていたらフレイザードが炎を闘技場の地下に打ち込んでいた。

 

 

「な、何をしたフレイザード!」

「ここらの死火山に活を入れてやったのよ!これからここらはマグマの海になるだろうよ!ハドラー様には勇者と相打ちって報告してやるよ!」

「どちらにせよ、魔王軍に戻れば今までの不敬で処罰される可能性の方が高いだろうよ。今のアバンの弟子達のやりとりを見れば尚更な」

「くそ、可愛い顔してフレイザードと同じ考えかよ、あの子!」

 

 

フレイザードの行動にヒュンケルが怒鳴るが此処まで来たら俺も話に乗るしかない。まあ、普通に考えれば同僚や上司にあんな口を利いていれば処罰はされるだろ。

しかし考えてみればバルトスと同じだなヒュンケル。バルトスは任された地獄門に勇者を通し、ハドラーを裏切った。その罰は何かしらの形で下される筈だった。ヒュンケルは魔王軍を裏切る兆しを既に見せていたし、普段の態度も悪かった。まあ、罰にマグマ海水浴はやり過ぎだとは思う……って言うかマグマ海水浴ってリアルに見ると引くわー。ポップの叫びに俺は違うと言いたくなったけどフレイザードが隣に居るんじゃ下手に否定も出来んな。って、ちょっと待て。可愛い子の部分を即座に否定出来なかったぞ、俺。なんかまた毒されてた気分だ。

 

 

「……お」

「どした、イーリス?帰ってヒュンケルの相打ちを報告してやらなきゃだなぁ」

 

 

帰ろうとした矢先、視界の端に巨大な鳥を見つけた。多分、クロコダインを運んでるガルーダだな。良かった、原作通りにクロコダインが助けに来たんだな。少しの安心感を覚えながら俺は楽しそうにしているフレイザードを連れて鬼岩城に戻る事にした。

 

 


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