転生したら大魔王の娘だった   作:残月

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大魔王様とチェスしました

 

 

 

どうしてこうなったんだろう……謁見の間に入ってから脳内リフレインしている言葉だ。

 

 

「ほぅ……そうくるか」

 

 

俺の動かした駒に思案顔な大魔王バーン。現在、大魔王様と向かい合ってチェスをしております。将棋は知ってたけどチェスは知らないから出来るかな、と不安だったけど知識として埋め込まれてたみたいで何とか指せてる。

 

 

「あ、あの……」

「ミザルから聞いたが魔法が上手く発動しないそうだな」

 

 

俺が何が理由でチェスに誘われたのか問おうとするとバーンが口を開く。なるほどミザルさんから俺の状態を聞いていたのか。

 

 

「はい……魔法の契約はしているんですが、上手く発動しないみたいで」

「人造竜の騎士だから不具合が出たのか、素質はあれど才が欠けたか……ままならぬ物だな。だが、だからこそ面白いがな」

 

 

バーンは俺の言葉を聞いてから駒を持ち上げニヤリと笑い、俺のナイトを倒す。あ、ヤバイなナイト取られた。

 

 

「面白い……ですか?」

「そなたは余の魔力を受け継いでるにも関わらず魔法の才能が無い。だが、それはそなたが鍛えられる素養があると言う事だ。励むがよい」

 

 

バーンから予想外の言葉を聞かされる。戯れとか余興とも聞こえたが俺を励ましているかのようにも聞こえた。

 

 

「チェックメイト。どれ……見ているがよい」

「え?」

 

 

バーンが駒を指して俺はチェックメイトされる。敗けが確定したと同時にバーンは手を翳す。

 

 

「これがギラだ」

「おお……」

 

 

バーンの手から光の魔力が溢れ、光の光球が作り出される。ギラって『閃光魔法』だから光球にはならない筈だがバーンの魔力で形を作ってんのか……そういやポップも魔法力を調整してベギラマをメドローアと誤認させた魔法使ってたっけ。

 

 

「そしてコレを発展させたのがベギラマとなる」

「スゲェ……魔法を粘土みたいに」

 

 

作り上げた光球型のギラに再度発生させたギラと混ぜ合わせてベギラマを作り上げる。遊び感覚で魔法を粘土みたいに練り上げて精製していく。魔法が不得手の俺でも凄い技術だと分かる。そしてバーンの魔力的にこれはベギラマでも威力的にはベギラゴンなんだろう。

 

 

「せめてこれくらいは出来るようになるんだな」

 

 

そう言ってバーンは指を弾く。それと同時に精製されたベギラマは空に向かって昇って行き、最後は花火みたいに弾けた。

 

 

「う……精進します」

「それでよい……勝負も付いたし退室せよ」

 

 

バーンに促されて退室する事に……なんかどっと疲れた気がする。

 

 

 

「はい、失礼します。父上」

「ああ、それとだが……来週も来るがよい。また指そうではないか」

 

 

頭を下げて退室しようとしたらバーンに呼び止められる。何事かと思えばバーンはチェスの駒を指で遊びながら俺に語りかけた。マジですか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇side大魔王バーン◆◇

 

 

「バーン様……」

「ミストバーンか」

 

 

イーリスとのチェスを終え、イーリスが退室した後にミストバーンが姿を現す。ミストバーンはチェスが終わるまで待たせていたが……

 

 

「ミストバーン、奴をどう思った?」

「禁呪法で生み出した生命体は生みの親に影響を受けますが……イーリスはバーン様に似ても似つきません。また、バランとも似つきません」

 

 

ミストバーンの考察に余も同意する。ミザルからの報告でイーリスの事は聞いていたが直接見てみたいと思った。余の魔力を受け継いでる割には魔法の才能がまるでなく、チェスを指してみれば慣れない手付きで指す割にはそれなりの指し方をしていた。面白い指し筋をしていたものだ。

 

 

「余が禁呪法で生み出した生命体だが……最初は目覚めず、目覚めれば余の手から離れた存在……戯れには丁度良いではないか」

「戯れ……ですか?」

 

 

チェス盤に駒を並べ、先程のイーリスの指し筋を思い出す。

 

 

「ハドラーが目覚めるまで、あと数年ある。その間に余の娘がどのように成長するか……楽しみではないか。ミストバーン、そなたも奴を見てやれ。アイナの報告ではイーリスは魔法よりも闘気を用いた戦法が得意になりそうだ。それにそなたと接触し、どのような影響を及ぼすか楽しみだ」

「………バーン様の仰せのままに」

 

 

ミストバーンにイーリスの事を任せるとミストバーンは頭を下げ、姿を消す。ふふ……ミストバーンもなんだかんだ言って気にしている様だな


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