転生したら大魔王の娘だった   作:残月

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元軍団長との戦い

 

 

 

 

フレイザードにダイ、ポップ、マァムを任せた俺はヒュンケル、クロコダインと向き合う。俺がりゅうおうの杖を構えているのを見てヒュンケルが呟いた。

 

 

「イーリス、俺の鎧は攻撃呪文を受け付けない。そして、お前のパワーではクロコダインには敵うまい。降参しろ」

「その穴の空いた鎧じゃ完全には防げないだろ?それにパワーならソイツがいるさ」

「ぬおっ!?」

 

 

ヒュンケルの指摘に反論したタイミングでクロコダインの背後に回ったメタルハンターが剣を振り下ろし、クロコダインは咄嗟に斧で受け止めた。

 

 

「その状態で防げるかな?ベギラマ!」

「させるかっ!」

「ぬぅん!」

 

 

その隙を狙って俺はクロコダイン目掛けてベギラマを放った。即座にヒュンケルがカバーに入り、穴が無い腕の部分でベギラマを弾き飛ばす。その間にクロコダインは力任せにメタルハンターを押し返した。押し返したメタルハンターを破壊しようとヒュンケルが斬り掛かろうとしたがゲレゲレが体当たりで邪魔をする。鎧を纏っているからダメージは無かったが一瞬の隙を作るには十分だ。

 

 

「イオラ!」

「効かないと……何っ!?」

「目眩しか!」

 

 

俺はイオラを二発放った。一発はヒュンケル目掛けて、もう一発は足下目掛けてだ。当然ヒュンケルの鎧には意味がないが、足下に放ったイオラは爆発と共に土埃を舞い上げる。視界を悪くした上で俺は距離を空けて右手でメラミ、杖を持つ手にも魔力を込めておく。

 

 

「メラミ……からのバギマッ!」

「炎の渦だとっ!?」

「うなれ、真空の斧!」

 

 

土埃が収まる前に合成呪文で編み出した炎の渦でヒュンケルとクロコダインを攻撃する。ヒュンケルは鎧を纏っていたので無事……とは言えないか。穴の部分から炎が入り込んで若干のダメージがあった模様。クロコダインは真空の斧で強風を生み出して炎の渦を防ぎきった。だが、それが俺の狙いだ。

 

 

「やれ!メタルハンター!!」

「な……ぐわぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「クロコダイン!?」

 

 

メタルハンターの剣がクロコダインの体を斬り付ける。先程と違って直撃で今度はダメージがあった。俺が狙ったのはクロコダインに大きな隙を作る事。ヒュンケルは多少の呪文なら鎧の事もあり、突っ切ってしまう。だが、クロコダインは真空の斧で防ごうとするから大きな隙が出来ると確信していた。何故ならば真空の斧は使う為に真空の斧を振りかざさなければならないからだ。しかも真空の斧で強風を巻き起こしてる時は身動きが取れない。

炎の渦と土埃で視界が悪くなった上に真空の斧を使って身動きが取れなくなった瞬間ならメタルハンターの攻撃が通用すると思ったけど上手くいって良かった。

 

 

「クロコダイン!このぉ!」

「な、ダイ!?」

「こっちに来たか!」

 

 

クロコダインがダメージを負った事でフレイザードと戦っていたダイが俺に狙いを定めてきた。剣を振るわれるが、りゅうおうの杖で防ぐ。ギリギリの所で防いだが流石にビビった。

 

 

「てりゃぁぁぁぁっ!!」

「よ、と、ふ……ヒャド!」

 

 

ダイの剣による猛撃を避けながらヒャドを放つ。放ったヒャドはダイの剣と腕を凍らせる。

 

 

「火炎大地斬!」

「危なっ!?……あ」

 

 

 

ダイは火炎大地斬で凍結を溶かすと同時に俺に斬りかかって来た。咄嗟に避けたのだがダイの狙いは俺ではなく、メタルハンターだった。火炎大地斬で縦に真っ二つにされたメタルハンターはその機能を停止した。更に俺の意識がダイに集中している間にヒュンケルとポップがフレイザードと戦い、マァムがクロコダインの治療をし、クロコダインは回復されると同時に獣王会心撃で残りのメタルハンターを破壊した。やられたな……分断したのにコンビネーションでメタルハンター二体をアッサリと倒しやがった。

 

 

「これでメタルハンターは片付けた……後はお前達だけだ」

「多勢に無勢とは思うが、勇者と元軍団長二人を相手に勝てると思ったか?」

 

 

ヒュンケルとクロコダインがギロッと俺達を睨む。うーむ、良い勝負になったかと思ったけど経験値的にもやっぱ不利だったな。俺もフレイザードも生誕から五年も経過してないし当然と言えば当然だが。

 

 

「ちっ……仕方ねぇな。こりゃ諦めるしか無さそうだ」

「な、なんだ……妙に神妙になりやがったぜ」

「パプニカの姫を解放すると言うのか」

「フレイザードが降伏するんだ……イーリス、お前も……」

 

 

フレイザードが呟き諦めた様に暴魔のメダルに手を添える。その仕草にダイ達も諦めたのかとホッと安堵している様に見えた。ヒュンケルが俺にも降伏勧告をしてくるが違うと思うぞ?

 

 

「勘違いするんじゃねーよ。俺は無傷での勝利を諦めただけだ。これから放つ技は俺にとっても痛い技なんでな、出来たら使いたくねーんだよ。おい、イーリス。預かっといてくれや」

「え?……うわっ!?」

 

 

フレイザードは暴魔のメダルを自身から剥がすと俺に投げ渡した。咄嗟に受け止めたけど重さと熱と冷たさに驚く。そりゃ灼熱と極寒の体に張り付いてたんだから温度差、凄まじいよね!つーか、メダルは捨てないのかよ!

 

 

「あのメダルをイーリスに返すのか」

「な、何なんだよ。あのメダルは……」

「あれは俺達を六大団長が一同に会した時の事だ……」

 

 

原作よりも驚き少な目なヒュンケルとクロコダイン。事情を知らないポップに解説が入る。解説が終わる頃に暴魔のメダルがフレイザードが命の次に大事な物だと理解された。でも、何で捨てなかったんだ?それがちょっと気にかかる。

 

 

「俺は生誕から一年も経過しちゃいない……だから俺は栄光を求めるのさ。そして、俺を真っ直ぐに認めてくれたのはイーリスだけだ。俺は捨てねぇ……未来も過去も俺は認められてぇんだ!」

「フレイザード……」

 

 

そっか……さっきの違和感はこれだったんだ。元々のフレイザードは勝利と栄光だけに執着した性格だったけど、俺との交流で変な話だが良い方向に矯正されたんだ。だから俺や父上が認めた証である暴魔のメダルを捨てなかった。自分を認めた俺だから自分の手柄だけじゃなく俺達の手柄と言い切ったんだ。思えば暴魔のメダルを炎から奪取した時も真っ先に俺に見せ付けたのも、それだったんだ。

なんか、モヤモヤする。モヤモヤと言うか、なんだろう……弟が思った以上に成長した事に驚いてる姉の心境と言うか……ちょっと、ジーンと来た。

 

でも、それと同時に罪悪感も湧いてくる。だって俺は俺の目的の為にフレイザードと一緒に戦っているんだから。

 

 

 

「行くぜ、弾岩爆花散!」

「邪魔になるから離れるぞ、ゲレゲレ」

「がうっ」

 

 

フレイザードの弾岩爆花散が発動したと同時に俺とゲレゲレは被害を受けない様に下がった。でも、俺の事を思ってるフレイザードを一時的に見捨てる様な真似をするのはツラいな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇sideハドラー◆◇

 

 

何故、俺は生きている。ヒュンケルとの戦いに敗れた俺は死んだ筈だ。それにバルジ島にいた筈なのに目覚めた時には鬼岩城に戻っていたのだ。それに気の所為か俺の顔の黒い模様が一回り大きくなった気がする……

 

 

「それは暗黒闘気の影響だ」

「ミストバーン……そうか、お前が俺をバルジ島から運んだのか。そして暗黒闘気で俺を蘇らせたのか」

 

 

振り返ればミストバーンが俺の傍に立っており、俺の復活の要因を説明した。俺の肉体は死してもバーン様やミストバーンの暗黒闘気で復活し、更なる力を与えられるのだと言う。まさかミストバーンはその為に俺の部下になっていたのか。

 

 

「ハドラーよ、お前の命は全知全能の大魔王バーン様の物だ。死する権利すら、お前には無い。何度でも蘇り、その命をバーン様の為に捧げるのだ」

「望むところよ」

 

 

ミストバーンから肉体の秘密と宣言を言い渡され、俺は奮起した。全てはバーン様の為だ……バルジ島での敗北もある、これ以上の失敗は……

 

 

「し、しまった……イーリスをバルジ島に残したままではないか!迎えに行かねば!」

 

 

イーリスの事を思い出し、焦る。バーン様のご息女を護衛があるとは言えど、バルジ島に放置していた事実に俺は焦る。イーリスに何かあれば、バルジ島での敗北以上にバーン様にお叱りを受ける可能性がある。急いでバルジ島に向かおうとした俺をミストバーンが手で制した。

 

 

「な、何のつもりだ!?」

「……イーリスの迎えは私の仕事だ」

 

 

そう言って姿を消すミストバーン。バルジ島にイーリスを迎えに行ったのか?俺が言うのもなんだが、影の男がお喋りになった上に過保護ではないか……

 

 

 

 


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