◆◇sideポップ◆◇
フレイザードとイーリス。俺達は魔王軍の軍団長と魔軍司令補佐を相手に戦っていた。フレイザードは禁呪法で生み出された不死身のモンスター、イーリスは巧みな魔法の使い方で俺達と互角以上の戦いをしていた。イーリスの方の攻略はヒュンケルが鎧で魔法を弾いて防いでくれていたが、フレイザードの方はどうにもならなかった。フレイザードの弾岩爆花散は自身の体を砕いて溶岩と氷の礫を浴びせる技で、しかも、フレイザードを倒すには無数にある岩の中からコアを探し出して砕かなきゃならなくなった。ダイはアバン先生から学んだ空裂斬で倒そうとしたが、中々決まらずにフレイザードの岩を砕くだけの結果となってしまっていた。
ヒュンケルのアドバイスから空裂斬を会得したダイは空烈斬でフレイザードのコアを切断し、フレイザードは灼熱と極寒の体が合体している状態で苦しんでいた。
「ギ、ギャァァァァァァァァァァッ!か、体が維持出来ねぇ!このままじゃ消滅しちまう!」
「今だ!やれ、ポップ!」
フレイザードは耐えきれず、灼熱の半身と極寒の体が別々に分かれた。そのチャンスにヒュンケルが叫んだので俺は痛む体を起き上がらせて、構えた。
「よぉし、ベギラマッ!」
「させるかっ!」
俺がフレイザードの氷の半身に放ったベギラマをイーリスが受け止めた。
「その隙は逃がさん!ブラッディースクライドッ!」
「ギャァァァァァァァァァァッ!」
「あ、しまった!?」
俺とは反対の位置に居たヒュンケルがイーリスの隙を突いてフレイザードの極寒の体を砕いた。残るはフレイザードの灼熱の半身とイーリスだけだ。
「へっ……ざまぁ、見ろだ。今度こそ俺の呪文で……どわっ!?」
「させるかよ、バギ!」
俺が呪文を放とうとしたら、イーリスから放たれたバギで吹っ飛ばされてしまう。
「ならば俺が残りの半身も砕いてやろう!」
「や、止めろ!やめてくれ!」
「フレイザード!」
だが、その隙に再びヒュンケルがフレイザードの半身を砕こうとしたが、予想外の事が起きた。なんとイーリスはその身を挺してフレイザードを庇った。突然の事態にヒュンケルは剣を止められず、その剣はイーリスの体を貫いた……と思われた瞬間、ヒュンケルの方が吹っ飛ばされた。
「き、貴様は魔影参謀ミストバーン!ってやりすぎだ!?」
「…………」
「ぐ、が、がはっ!?」
イーリスを斬ろうとしたヒュンケルを突如現れた何者かが現れて防いだ。オッサンの叫びから現れた男が魔影参謀ミストバーンだと言う事が判明する。ミストバーンは掌底をヒュンケルに打ち放ち、吹き飛ばす。更に倒れたヒュンケルを何度も足蹴にしていた。表情は伺えないけどイーリスを傷つけようとしたヒュンケルを何度も蹴っていた。その仕草から怒っていると伝わってくる。
「あ、あの……ミストバーン?」
「ミストバーン!助けてくれ、頼む!この状態じゃイーリスを守れねぇ!このままじゃ死んでも死にきれねぇ、助けてくれよ!」
「………」
フレイザードが懇願すると、ヒュンケルを蹴っていたミストバーンは虚空を指差した。
思わず向いた視線の先の空間に、折りたたまれた黄金の鎧が出現した。
「これは我が魔影軍団最強の鎧。お前が炎の暗黒闘気……即ち魔炎気と自らを化す決意があるなら与えてやろう。お前が望むイーリスを守る力となろう」
ミストバーンの言葉に、その場の全員がフレイザードが難色を示すと思っていた。岩石生命体の身体を捨てて、魔炎気としてあの鎧に宿るという事は、フレイザードは鎧のモンスター、つまりミストバーンの部下になるという事だ。あの性格のフレイザードなら、断るだろうと思っていたのだが、フレイザードは覚悟を決めた顔になっていた。
「本当にソイツと一体化すりゃあ、奴等に勝てるんだな!」
「……敵はない」
フレイザードの問いに答えたミストバーンに、フレイザードはやってくれと頷いて、ミストバーンが手を掲げると、フレイザードの身体の岩から炎だけが離れ、残された岩がボロボロと崩れる。離れた炎は、上空に浮かんだ鎧に吸い込まれるように入っていき、それと共に折りたたまれた手足が伸びて、重い音と共に地面に降り立った。
「おお、力が……みなぎってくる……信じられないような、凄まじい力だ!」
鎧の体から溢れてくる炎が今のフレイザードの力を表すかの様で、今まで以上に強くなったフレイザードなのだと伝わってくる。しかも、そのタイミングでバダックの爺さんとゴメの奴が来てしまう。最悪のタイミングで来ちまいやがった!
◆◇sideイーリス◆◇
いやはや、失敗した。フレイザードのコアが斬られた所までは仕方ないとしても、出来たらフレイザードの体はそのままで連れて帰りたかった。ポップの呪文を防いでから逃げようかと思ってたのに、即座にフォローに入ったヒュンケルに氷の半身を砕かれてしまった。これ以上はさせないとポップをバギで吹っ飛ばして、全員フレイザードから距離を空けさせようとしたけど、ヒュンケルは俺のバギをものともせず突っ込んできた。このままじゃフレイザードが完全に砕かれてしまう。このタイミングでミストバーンが現れて助けるだろうと知ってはいたけど、俺の体は考える前に動いていた。気付けば俺はフレイザードを庇う様に立っていた。ヒュンケルの剣が俺の体に突き刺さる……その瞬間、ミストバーンが現れてヒュンケルを掌底でぶっ飛ばした。今のは流石に怖かった……目の前に剣が迫ってくるって超怖かった。このままアーマードフレイザードになるのかと思っていたが、ミストバーンはぶっ飛ばしたヒュンケルの体を何度も蹴っていた。あの、こんなシーン無かったよね?なんか過剰に攻撃を加えてるんだけど!?
俺が唖然としている間にフレイザードはミストバーンの手により、アーマードフレイザードになった。もっと悩むかと思ったフレイザードだけどフレイザードは即決でミストバーンに頼んでアーマードフレイザードになる決意を固めていた。そんなに思ってくれたなんてお姉ちゃん嬉しいよ。
確かに強くなったフレイザードだが空裂斬を習得したダイは完全版のアバンストラッシュを放つだろう。俺の仕事はそこからだ。今はミストバーンとゲレゲレと共に戦いを見るとしよう。