◆◇sideミストバーン◆◇
ハドラーを甦らせた後、私はバルジ島に戻ってきた。イーリスの迎えとフレイザードの様子を見に行く為に。イーリスとフレイザードならば勇者一行を倒せるかも知れないと思っていたが、経験値の差かイーリスとフレイザードは押され気味だった。フレイザードは弾岩爆花散を繰り出したがダイの技でコアを斬り裂かれ、半身を失う結果となった。ダイの実力を確かめる布石となるだろうから、そろそろ助けてやろうかと思ったら炎の側だけとなったフレイザードをイーリスが庇おうとした。このままではヒュンケルの剣に貫かれる!そう思った私はイーリスを庇い、ヒュンケルを突き飛ばした。
イーリスがバーン様の娘である事は貴様も知っているだろう!イーリスが怪我でもしたらどうする!
私はヒュンケルが予備のボディだと言う事も忘れて怒りを晴らすべく蹴り続けた。
「あ、あの……ミストバーン?」
「ミストバーン!助けてくれ、頼む!この状態じゃイーリスを守れねぇ!このままじゃ死んでも死にきれねぇ、助けてくれよ!」
「………」
そんな私の怒りを沈めたのはイーリスの困惑した様な声とフレイザードの叫び……そして中央塔に潜んでイーリスの様子を見ていたアイナの静かで深い殺気だった。
私はフレイザードの懇願に魔影軍団最強の鎧を与えてやる事にした。元々はダイの力を試す試金石のつもりだったがフレイザードの心境の変化に私は心を動かされた。ダイを倒せるならよし。敗北しても新たな肉体を再度授けても良いだろう。
炎の暗黒闘気となったフレイザードの魂を鎧に定着させ、戦わせる。私の背後ではイーリスがフレイザードの援護のつもりなのか呪文を放とうと杖を構えていた。
「やめておけ。フレイザードはお前の為に戦おうとしている。それに水を差すのは無粋だ」
「………わかった」
私は飛び出そうとしていたイーリスを手で制するとイーリスは渋々引き下がった。フレイザードは勇者一行を次々に制圧していくが、ダイはフレイザードの猛攻を避けながらカウンターでフレイザードのボディの鎧に傷を付けた。
そしてフレイザードの猛攻を潜り抜け、放たれたダイのアバンストラッシュはフレイザードの鎧を粉々に破壊した。その威力を肌で感じ取ったのかイーリスが震えていた。
「……素晴らしい」
敵ながら素晴らしい技の出来栄えに私は感嘆としてしまう。心・技・体の全てが練り上げられ放たれたアバンストラッシュは、魔影軍団最強の鎧をいとも簡単に打ち砕いた。ガラガラと地面に落ちていく鎧を眺めながら、私は今のダイの戦闘力は軍団長を上回るレベルとなっている事を確信した。だが、まだ足りない。この少年の強さをもっと測らねばバーン様の覇業の妨げとなりうるだろう。
私は砕かれ、欠片程の小ささになったフレイザードに歩み寄った。
◆◇sideミストバーンend◆◇
ミストバーンの手によりフレイザードがアーマードフレイザードになった。見た目も強そうになって楽勝ムードで勇者一行を蹴散らかしていくけど、ダイが相手になってから風向きが変わってきた。ダイはフレイザードの攻撃を紙一重で避けて、隙を見て一撃を与えてフレイザードの鎧を一部砕いた。フレイザードがやられそうなのを見て俺は思わず、援護にベギラマを放とうとしたけどミストバーンに止められる。
「やめておけ。フレイザードはお前の為に戦おうとしている。それに水を差すのは無粋だ」
「………わかった」
ミストバーンの有無を言わさぬ物言いに俺は尻込みしてしまう。この後の展開が俺の知っている通りならフレイザードは負けてしまう。今もダイの一撃にワナワナと震えているフレイザードを見ていると、不安しか込み上げて来ない。
「これで……このパワーと強度で負けたら……馬鹿だぜぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
「大地を斬り、海を斬り、空を斬り、そして全てを斬る……空烈斬が出来たんだ。きっと俺には全てが斬れる!」
フレイザードの渾身の一撃を避けようともせず、ダイは剣を逆手に構えて腰を落とした。あの体勢には見覚えがある。あり過ぎた……溢れ出ている闘気に俺はゾクっと体が震える感覚に襲われる。
「アバン……ストラッシュ!」
「ぐ……がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
「……素晴らしい」
ダイから放たれたアバンストラッシュによる閃光がアーマードフレイザードの鎧を斬り裂き、砕いた。なんちゅー威力だ。一撃でアーマードフレイザードの鎧を軽々と砕きやがった。でも、自身の技の威力に耐えきれなかったのかダイの鋼の剣も砕け散った。原作よりも寿命が早かったな。まあ、メタルハンターを斬ったりとかしてれば劣化も早いか。
「ミ、ミストバーン…‥テメェ、嘘吐きやがったな……何が最強の鎧だ……全然、弱いじゃねぇか……」
「あの鎧は紛れもなく我が軍団最強の鎧。破壊されたのは相手の技が勝っていただけの事」
粉々に砕かれた鎧と端切れみたいに炎の欠片が地面に落ちる。フレイザードのコアとなっている瞳の部分だけでミストバーンに抗議しているが、何処で喋ってんだろうと疑問が湧き上がると同時に俺は駆け出していた。このままだとミストバーンにフレイザードが踏み消されてしまう。
「頼む、もう一度チャンスを……ミストバーン!」
「………」
「待った。フレイザードは俺が預かる……良いだろ、ミストバーン?」
フレイザードの欠片の前で立ち止まったミストバーンに俺は声を掛けた。ミストバーンはチラリと俺を見てから、俺の頭を撫でた。いや、なんで撫でた?
「……好きにすると良い」
「ありがと、ミストバーン。ほら、行こうぜ、フレイザード」
「おお、助かるぜイーリス!」
「待て、逃すか……ぐはっ!?」
「待つのは貴方です。イーリス様を傷付けるのは許しませんよ」
ミストバーンがフレイザードを踏み消さなかった事に安堵してフレイザードの欠片を拾い上げた。炎の欠片なのに熱さが感じられず本当に弱りきっている状態なんだと思った。すると、ヒュンケルが俺達を逃すまいと一歩踏み出そうとした瞬間、吹っ飛ばされた。何が起きたのかと呆然としていると其処には鬼岩城に居る筈のアイナさんが片足を上げた状態から足を下ろす姿が。え、まさかヒュンケルを蹴り飛ばしたの!?全然動きが見えなかった……
「ア、アイナさん?なんで此処に?」
「あら、イーリス様のお迎えに来たんですよ。フレイザードの破片も回収させて頂きました」
アイナさんの発言に周囲を見渡すとアバンストラッシュで砕かれた鎧の破片が無くなっていた。そしてアイナさんの足元に大きな物を包んだような風呂敷がある。まさか、誰にも気付かれずフレイザードの岩と鎧の破片を回収したのか!?その事にその場の全員が戦慄していた。だって、この場の誰にも察知されずに広範囲に散らばった破片を回収するなんて実質不可能だろう。時を止めたか、クロックアップでもしたのか、この人。
「ね、ねぇヒュンケル……あの女性も魔王軍なの?」
「あの女性はアイナ。イーリス付きのメイドだ……実力者なのは知っていたが、この場の誰にも察知されずに現れるとは……」
力尽きたダイを支えているマァムがヒュンケルにアイナさんの事を聞いているが実力は推し量れていないのだろう。そりゃそうだ、だってミストバーンも驚いていたみたいだもん。
「そんじゃ、今回は痛み分けって所だな。因みにフレイザードが魔炎気になった段階で氷は溶け始めてる筈だ」
「な、本当か!?」
「信じるな爺さん!アイツのそんな話、信じられるかよ!」
俺は本当の事を話したのにバダック爺さんが驚き、反発したのはポップだった。なんか疑われてんなー、地底魔城のマグマ海水浴の場面に俺も居たから信用が無いっぽい。
「本当だよ。フレイザードのコアが破壊されて氷の半身が失われた段階で呪縛は解けた筈だ。これを教えるのは敵とは言えど強者には敬意を表するってのが師の教えなんでね」
ミストバーンやバランさんは父上の命令や主義に従うけど強者には敬意を表する。それは俺も従いたい事だから少しばかり真似してみた。
俺の解答に満足したのかミストバーンも小さく頷いていた。
「そんじゃ、俺達はこの辺で帰るよ。フレイザードの事もあるんでね」
「テメェ等……俺が復活したらリターンマッチを楽しみにしてやがれ!」
「………」
「失礼させて頂きます」
俺の手の中でフレイザードが叫ぶ。本当に目の部分だけでどうやって喋ってんだろうか。俺達はミストバーンに連れられてバルジ島から鬼岩城に戻った。本当なら魔弾銃とレオナ救出の流れも見ておきたかったけど、俺達がこの場に居ては駄目だろうから仕方ないわな。
さて、少し予定とはズレたけどフレイザードを生還させるっていう事には成功した。これで俺の目的の一つは達成出来た。この調子で頑張ろう。
俺自身の今後の目標の為にも……ね。