妖魔士団の研究所に来た俺はフレイザードの欠片を持って来ていた。手の中に持ったままってのが面倒臭くなって来たから肩に乗せたのだがこれは楽だ。
「なぁ、イーリスよ。やっぱザボエラのジジィは頼りたくねぇぞ」
「頼るのはザボエラの爺さんじゃなくて、息子にザムザってのがいるからソイツに頼るんだよ。ソイツは魔物や魔族の肉体を研究してるから、フレイザードの体も凄いのが選べるかもよ?」
俺の肩に乗せたフレイザードの欠片から不満が出る。フレイザードは元々プライドが高いし、どちらかと言えば武人側だ。だから策を弄するタイプのザボエラは頼りたくないんだろう。ザボエラが信用無いってのが一番の理由だろうけど。
妖魔士団は元々、魔物や魔族の研究をしていた。ダイとバランさんの戦いで竜の騎士の最終形態である竜魔人を見て、超魔生物の研究に移行する。つまり、この段階で研究した魔物や魔族の肉体があるかも知れない。その研究を加速させられるかも知れないフレイザードの憑依転生が出来るかも知れないなら協力してくれるかもと考えたんだ。
「お待ちしていましたよ、イーリス様。我が妖魔士団の研究に興味を持って頂けるとは光栄の極みです。キーッヒッヒッヒ!」
「今日はヨロシク、ザムザ」
「……おい、知り合いなのかよ」
ザムザの出迎えに俺は挨拶を返す。フレイザードからのツッコミが入ったが、実は俺とザムザは知った仲なのだ。それと言うのも、ミザルさんとザムザは研究者として先輩と後輩の立場にあるらしく、顔合わせと挨拶程度は以前に済ませていた。フレイザードの体の相談をしたいからとミザルさんに話を通して、ミザルさんからザムザに連絡してもらった。本当ならミザルさんにも同伴して欲しかったけど、勉強の為だと俺とフレイザードだけで行くようにと言われてしまった。まあ、バルジ島の時の事を考えれば影で監視されてるんだろうけど。
「ミザル殿から話は聞いております。フレイザード様の新たな肉体の相談だとか」
「うん。元の灼熱と極寒の体に戻す事も考えたんだけど、更なる強さを求めたくてね。それで魔物や魔族の研究をしているザムザに話を聞きたくてさ」
通された研究室はハッキリ言ってグロかった。解剖された魔物や魔族の肉体が吊るされていたり、ホワイトボードみたいな板に体の細部を描いた石板とかがあるから気分が悪くなりそう。
「キーッヒッヒッヒ。それならば我が妖魔士団で研究中の魔物の突然変異が役立つやも知れませんな」
「魔物の突然変異?」
お客さん用の椅子に腰掛けてザムザの説明を聞く。作中の説明には無かったけど、やっぱそんなのがあるんだな。
「環境や生まれ方にもよるのでしょうが、突然変異により、通常の個体よりも強い魔物が存在しております。この様な突然変異体を常に生まれさせられる様になれば魔王軍の戦力は凄まじいものとなりましょう。キーッヒッヒッヒ」
「その突然変異の進化の可能性は解析出来てるのか?」
熱く解説しているザムザだが、そのアテはあるのか?と聞いてみると明らかにザムザの顔色が曇った。ああ……研究中で難航してるんだな。するとザムザは立ち上がり、カーテンの奥に隠された部屋の扉を開けた。
「し、しかし……我が妖魔士団は突然変異の個体の捕獲に成功したのです!それがコイツ等です!」
「いや……言いたくないけど、継ぎ剥ぎの体じゃん……」
「明らかに解剖後の魔物じゃねぇか……」
ザムザはドヤ顔で突然変異の魔物の個体を見せつけてきた……部屋の壁に何体かの魔物が吊るされていた。フレイザードのツッコミの通り、吊るされた魔物達は切り刻まれてバラバラにされていた。正直、グロい……ヤバ、吐きそうになる。こんなんだから人間sideから見ると魔王軍って悪者扱いなんだよなぁ。いや、こんなの見せ付けられたら俺もそんな気分になるって。
「これ等は通常の個体よりも強かった連中でしてな。筋肉繊維や皮膚組織の研究に役立ちました。更に肉体に薬や呪術で強化を施しました」
「もう……説明はいいわ。帰る……」
吐きそうになって、もうアカン感じになった……俺は立ち上がり帰ろうとしたけどザムザは俺の腕を掴んで待ったを掛けた。
「お待ちを⋯まだ解剖していない個体があります。その個体は突然変異に加えて強さも凄まじい物だったと聞いておりましてな。肉体も妖魔士団研究中の技術も盛り込みました」
「それにフレイザードを憑依させろってか?」
「元が強い魔物で生身の肉体ってんなら俺は嬉しいもんだが……大丈夫かよ、イーリス」
ザムザお勧めの突然変異の改造魔物の肉体にフレイザードを憑依転生させるか悩む……いや、悩むって言うか、テンションと言うか、精神的に参ってるって言うか……フレイザードも心配してくるし。
多分だけど、この突然変異の肉体も超魔生物の開発の素体の一つだったんだろうな。あー……思考が定まらないや。
「んじゃ、この体で良いかフレイザード?もう、良いよな?これに決めてくれ……」
「イーリス、今の俺よりも弱って来てねーか?」
正直、放送コードに引っかかる光景を見ながらグロい説明を聞くのって精神的にキツい。もう早く帰りたいからフレイザードにこれで良いか聞くと呆れた様な心配をされた。よくよく思えばザムザって戦闘シーンはあったけど研究シーンは無かったな……マジでマッドだよ……精神衛生的にかなり悪いわ。
「気分が悪くなりましたかな?では、気付け薬を……」
「そのあからさまに怪しい紫色の液体を飲ませようとすんな……」
隙あらば実験しようとする姿勢は流石と言いたいが、そろそろキレるぞチクショウが。
取り敢えず、素体は後程、鬼岩城に送ってもらう事にして俺は妖魔士団の研究所を後にした。あー、気分悪りぃ……口からバブルスライムとか吐きそうな気分だわ。
◆◇◆◇
「ハドラー殿……いや、ハドラーよ!貴様の影武者として働くのも今日までだ。今日をもって影武者ではなく、私が魔軍司令となろう!そう、勇者ダイを倒してなっ!」
「貴様如きにダイを倒せるとは思えんな……豪魔軍師ガルヴァス!」
憂鬱な気分のまま鬼岩城に帰ったら面倒くさい奴がハドラーに喧嘩売ってた。バランさんの戦いの前にガルヴァス戦か……忘れてたわ。