復興が進みつつあるパプニカの街を破壊する裏の六大将軍のザングレイ、ブレーガン、ベグロム、ダブルドーラ。この破壊活動は勇者であるダイや仲間を誘き出す為の策なのは重々承知なのだが……
「生ぬるいよねぇ。表の六大将軍ならとっくに街を壊滅させてるよ」
「ダイを誘き寄せる為なんだろうけど不自然に見えるよな」
キルバーンの発言に思わず同意してしまう俺。
ガルヴァスは元々映画のオリジナルのボス。ガルヴァスはハドラーに下克上を叩き付けた後、裏の六大将軍を一気に攻めさせるのかと思えば四将軍で勇者を誘い出す。そこで倒す訳でも無く、残りの二将軍で勇者の仲間の魂を抜き取り、ダイを瘴気の満ちたベルナの森へ誘導。万全の体制を引いた状態での布陣で挑むのがガルヴァスの作戦なのだが……ハッキリ言って現在の戦いを見るとやる気が見えない。まるで勇者が現れても楽勝に倒せるから手を抜いていると言わんばかりの状態だ。
お、宮殿の方からダイとポップが走って来た。
「誰だ、お前達は!?何故、街を破壊する!」
「グオオオオッ!」
ダイの問いかけにザングレイは斧を振り翳しダイを斬り伏せようとする。しかし、ダイはアッサリと斧を避けて反撃しようとするがブレーガンが持っていた炎と氷の三節棍から火炎と冷気を放ってダイの攻撃を阻止する。更にベグロムがワイバーンに乗って空から奇襲を掛ける。
「表の六大将軍と違って連携が取れているね。こりゃあダイも苦戦するかな?」
「かもな……でも、個々の技量は裏の六大将軍は表よりも低い気がする」
キルバーンの言う通り裏の連中は見事なコンビネーションをしているのだが今一決め手に欠けている。それと個々の技量は裏の方が低いのだろう。だって、彼方ではポップがダブルドーラと互角の戦いをしてるし。
「宮殿の方にはデスカールとメネロが行ってる筈だけど……」
「うーん……イーリスの言う通り、決め手に欠けるね。ガルヴァス君も慎重が過ぎるよ。ハドラー君に啖呵を切った割には少々頼りないよ」
俺とキルバーンの視線は戦っているダイ達の上空。戦いを観戦しているガルヴァスに向けられている。ガルヴァスはニヤニヤとした表情でダイの戦いを見ている。
「なる程……ガルヴァス君はダイの戦力の確認をしているんだね。戦力の把握をしてから本格的に戦うつもりなんだろうね」
「一気に攻め落とした方が良い気がするんだけど……」
「中々やるではないか勇者ダイ!我が名はガルヴァス!魔王軍を率いる者だ!」
キルバーンとそんな話をしていたらガルヴァスが高笑いをして自己紹介を始めた。因みにお前はまだ率いる立場じゃないからな?気持ちが先走りし過ぎだろ。
「ガルヴァス?ハドラーの手下じゃないのか?」
「我々はガルヴァス様の忠実なる部下!」
「ハドラーが手こずるから、どんな奴かと思えばこんなガキとはな!」
「私はハドラーに成り代わり、魔王軍を率いる!手始めに貴様を倒させて貰うぞ!」
ポップの呟きにブレーガンとザングレイが答えた。更にガルヴァスはダイを指差して叫ぶ。
「そうはさせないぞ!」
「ふふふっ……我々ばかりに気を取られて良いのかな?」
「手筈は整いました」
「ダイの仲間の魂を捕らえてまいりました」
ダイの叫びにガルヴァスはチラリと宮殿の方に視線を向けた。宮殿の方で戦っていたデスカールとメネロが戻ってきた。デスカールの手には淡い光の球が輝いている。アレがマァムの魂か。
「くっくっくっ……これで勝ったも同然。皆の者、引き上げだ!」
「な、なんだ……尻尾を巻いて逃げて行くぜ?」
「ピーピピピィ!」
「何だろう……え、ゴメちゃん!?そんなっ!」
ガルヴァスの指示に去って行く裏の六大将軍達。ポップが唖然とする最中、何処からかゴメちゃんが飛んできてダイに何かを……って言うかダイはゴメちゃんの言ってる事が分かるのね。
恐らくゴメちゃんが言ったのはマァムが倒れた事を告げたのだろう。その証拠にダイは宮殿の方へ走り出してるし。ポップもその後を慌てて追っている。
「おやおや、ガルヴァス君も大口を叩いた割に退くのが早い。何か策があるのかな?」
「そうみたいだな。有利な状況だったのに退却ってのは不自然だし」
キルバーンが面白そうに呟く。俺は何も知らないフリをして戦いの観戦を……あ、ベグロムが反転してダイに迫って行く。
「死ねぇ、ダイ!」
「アバン流刀殺法、大地斬!」
「ギャァァァァァァァァァァッ!!」
ワイバーンに乗ったベグロムがダイを襲うがダイは大地斬で返り討ちにした。大地斬を食らったワイバーンは頭から真っ二つにされ、ベグロムは焦った様子で逃げて行った。アレがバランさんのポジションってのは釣り合ってねーよなぁ。流石、公式で六大将軍最弱設定。
さて、ここからが山場だな。俺はキルバーンと共に移動を開始した。今回って口出しは出来ても手出しが出来ないからもどかしいな。