転生したら大魔王の娘だった   作:残月

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フレイザードの新しい肉体と名前

 

 

 

 

ガルヴァスの一件の翌日。俺は父上に呼び出されたのでバーンパレスに来ていた。俺の胸に発現した竜の紋章の事を報告した後に試しに紋章の力を使ってみせよと言われた。でも、俺はまだ紋章の力を自在に操れる訳じゃないんだけど……取り敢えずやってみるか。

 

 

「ハァァァァァァァァッ!」

「ミストバーンとキルバーンから報告を聞いたが、竜の騎士の力の目覚めは不完全らしいな」

 

 

俺は父上の前で闘気を高める。しかし、あの時に感じた紋章の力は感じ取れない。以前に比べれば闘気や魔力の質が上がったと自分自身感じるが、竜の騎士の紋章が発動した時と比べれば力が出ていない。やっぱ戦いの中で力を練り上げるか、他の紋章の力と共鳴して力を引き出すしかないのかな?そう言えばダイも戦いの中で成長してたんだし。

 

 

「不完全ながら竜の騎士としての力に目覚めたとしても発動に手間取るか……やはりバランに力を引き出させるのが一番か。それに気に掛かるのは勇者ダイ……奴の力に共鳴してイーリスの紋章が発動したと考えるのならダイは竜の騎士である可能性がある」

「ど、どうなんでしょう?俺の力も何が切っ掛けだったのか分からなかったので……」

 

 

父上の推測に俺は目を泳がせながら答える。父上は僅かな情報からダイが竜の騎士である可能性にたどり着いていた。

 

 

「そうであるならば……ハドラーは余にその報告もせぬまま黙っていたと言う事か……」

「あー……その辺りに関してはなんとも……ハドラーとしても、アバンの弟子であるダイ抹殺は自分の手でしたいから黙っていた可能性も否定は出来ないので」

 

 

父上はほぼ確信得てるみたいだな……すまん、ハドラー……フォロー出来そうにないわ……

 

 

「バランもダイの動向を探っている様だ。ハドラーにダイの事を問いただすのと裏切り者の軍団長の件がある。キルバーンにバーンの鍵を渡して鬼岩城の移動を命じてある。イーリスよ、そなたも鬼岩城へ戻るが良い」

「そうですね。フレイザードの体の事もあるので失礼します」

 

 

ああ、キルバーンにバーンの鍵を渡して鬼岩城の移動イベントの辺りか。早く鬼岩城に帰って移動イベント見ようっと。と言うか、ルーラって『思い描いた場所』に移動する呪文だから鬼岩城が移動してたら俺は移動後の何もない荒野に行って寂しい思いをする事になってしまう。下手すればヒュンケルとクロコダインと遭遇してしまうわ。

早く帰ってフレイザードの体を定着させてやりたいし。

 

 

「しかし、胸の位置に紋章か……新しい服の意匠も考えさせるか……」

 

 

帰り際に聞こえた父上の発言は聞かなかった事にしたいなぁ……

 

 

 

 

 

 

◆◇◆◇

 

 

 

 

「ええい、ならんと言っただろう!ダイは俺の手で抹殺してくれるわ!第一、ダイが竜の騎士である証拠が何処にある!?」

「アナタの言い訳も聞き飽きた……我が目で確認すれば良いだけの話」

「あ、お帰りイーリス。キミが帰ってくるのを待ってたんだよ」

「………」

 

 

鬼岩城に帰るとハドラーとバランさんが睨み合い、キルバーンが片手を上げて出迎えてくれた。ミストバーンは無口キャラに戻っていた。

 

 

「キミが帰ってこないと鬼岩城の移動が出来ないからね。イーリスも帰って来たし、取り急ぎ用を済ませるとしよう」

「あ、俺を待ってたんだ。なんか、ごめん」

 

 

キルバーンは懐からバーンの鍵を取り出して、玉座の後ろにある顔と言うかエンブレム?に鍵を突き刺して鬼岩城を起動させた。ゴゴゴッと鬼岩城が激しく揺れ動き、鎮座していた鬼岩城が海に向かって歩き始めた。

 

 

「さ、皆で仲良く世界旅行と洒落込もうじゃないか。次にダイと戦うのは誰にするのかも、ゆっくりしてから決めようじゃない」

「そんじゃ、その世界旅行の途中でフレイザードの新しい体を定着させるか。早めに肉体を得たいだろうし」

 

 

楽しそうに鬼岩城の移動と次のダイの相手を決める事を提案するキルバーン。俺は移動に時間が掛かるならフレイザードの体の事を早く済ませたかった。ザムザから例の素体も送られて来てるみたいだし。

そんな事を思ったと同時にバランさんとハドラーが俺を見た。

 

 

「イーリスよ。私がダイと戦う時にはキミにも来てほしい」

「イーリス、魔軍司令補佐として俺の仕事を手伝え!行ってはならん!」

 

 

自分がダイと戦う時には来てほしいと願うバランさんと、そうはさせまいと叫ぶハドラー。いや、どうしろってのよ……

 

 

「えっと……父上にも話したんだけど、先にフレイザードを復活させてくるよ。その後でダイの動向を調べてから判断しよっか。それじゃ!」

 

 

俺は一気に捲し立ててから鬼岩城の謁見の間を後にする。問題の先送りとは思うけど、今はフレイザードの事が先だよな、うん。ザムザからフレイザードの新しい肉体が届いてアイナさんが運んでくれてる筈だし。一旦自分の部屋に戻ってから目だけになったフレイザードの欠片を回収してから急いで以前、ハドラーがフレイザードを生み出した時の部屋に向かった。

 

 

「いよいよ肉体を持てるってか……いいねぇ。これで勇者のガキにリベンジ出来るぜ!」

「次の出番はバランさんになりそうだけどな」

 

 

頭の上でフレイザードの欠片が喜んでいるが次のダイの相手はバランさんで決まりだろう。間違いなくダイにとっても俺にとってもターニングポイントになる所だ。だからこそフレイザードの復活を急がなきゃならない。

 

 

「お待ちしておりました、イーリス様。妖魔士団から届けられた魔族の素体は此方になります」

「これが……ありがとうアイナさん」

 

 

ベッドに寝かされているのはザムザの研究所で吊るされていた突然変異の魔物の一体だった。その改造された後が残る肉体だが、これこそがザムザが研究していた超魔生物のプロトタイプに該当する素体なのだ。

原作でも、ザムザはバランさんが竜魔人となった姿を見て、魔物や魔族を改造する研究をベースに超魔生物の研究にシフトした。つまり、目の前のコイツは超魔生物研究前の最高傑作となった素体って訳だ。

 

 

「早く、憑依させてくれよイーリス!」

「ハドラーやミストバーンみたいにヒョイヒョイと出来ないからね、俺は。ちょっと待ってくれ」

 

 

俺は頭の上に乗せていたフレイザードの欠片を素体の上に乗せてから魔力と暗黒闘気を発動させる。う……やっぱりキツいな、コレ……体にズシッと重さを感じた。

フレイザードの欠片と素体に魔力と暗黒闘気を染み込ませていく。すると心臓の位置にフレイザードの欠片がズブズブと沈んでいく。それと同時に素体の魔物の体にも変化が起きていた。銀色の体毛が少しずつ赤く染まっていく。まるでフレイザードの炎の部分の色に染まっていく様な感じに見えた。しかし、更に体毛が変化していく。最終的には紫色になって、見開いた瞳は赤く染まっていた。

 

 

「ククッ……まさに生まれ変わったって感じだな、こいつぁ……」

「気分はどうよ、フレイザード?」

 

 

目覚めて起き上がるフレイザード。おっと……目眩が……

 

 

「おっと……俺の為に無茶をさせちまったな、お嬢」

「おいおい、お嬢って……」

 

 

起き上がったフレイザードは俺を支える。目覚めたばかりの肉体なのに支えてくれた手は温かく感じた。ちゅーか、呼び方が変わってるんだけど?

 

 

「今の俺のマスターはハドラー様じゃなくて、イーリス……お前だ。だけどよ……今更、イーリス様やマスターって呼ぶのもシックリこねー。だったら、お嬢って呼ぶのが丁度良いだろ、ケケケッ」

「ったく……フレイザードらしいな」

 

 

フレイザードが笑みを溢した。良かった、取り敢えずは成功したらしいな。

 

 

「そう、それよ。名前も変えてくれや。今の俺は氷炎将軍フレイザードじゃねぇ。お嬢の側近になった証に新しい名前を頼む」

「名前……新しい名前……」

 

 

フレイザードに言われて悩む。新しい名前ねぇ……今のフレイザードの見た目って、ぶっちゃけ大猿なんだよな。ん?……って言うか、この見た目って、DQ IIのアイツだよな。ゲレゲレの事もあるし、伝統の名前を授けるとするか。

 

 

「よし……なら、お前の名前は『バズズ』だ」

「バズズ……ククッ……気に入ったぜ、お嬢!今から俺の名はバズズだ!」

 

 

良かった、気に入ってくれたみたいだな。バズズはDQ IIに出てくるシルバーデビルタイプの中ボスの名前だ。そもそもフレイザードの素体になったモンスターはデビルロードだったから体毛が変わってマジでバズズみたいになったな。体の継ぎ接ぎも漫画のバズズみたいになってるし。




『バズズ』

フレイザードの欠片を妖魔士団で超魔生物の研究対象にしていたデビルロードに憑依させた結果、生まれたモンスター。
見た目はシルバーデビル/デビルロードを紫色に染めた体毛をしている。
身長がクロコダイン並みに高く体格も良い。元がデビルロードなので羽による飛行も可能になった。



元ネタはDQ II、DQⅤ、ドラゴンクエストモンスターズ+に登場したバズズ。
DQ IIでは中ボスだがDQⅤでは魔界に出没するモンスターの一種に格下げされた。
ドラゴンクエストモンスターズ+ではDQ IIで死んだバズズが邪配合によって作られたシルバーデビルの肉体に憑りつき復活した形で登場。その肉体は主人公ロランに切り刻まれた傷跡が恨みの様に残っている。

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