転生したら大魔王の娘だった   作:残月

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人間って勝手だよね

 

 

 

「やれやれ……せっかくイーリスとのデートだったのに、お供が出来ちゃうとは残念だよ。僕にしては珍しい自由時間なのに」

「テメェとお嬢を二人きりにさせる訳ねぇだろうが!それに新しい体の具合も確かめたいんでな」

「もう……喧嘩すんなよ、二人とも」

 

 

現在、俺とキルバーンとバズズはベンガーナの近くの森に来ていた。俺がバズズに魂を吹き込んだ後に紹介しようと鬼岩城の玉座の間に戻ったら、話し合いは終わっていたのだ。

ダイの正体の疑惑についてはキルバーンと俺が出向いて正体を確かめる事になったらしい。なんで俺が同伴したかと言えばキルバーンが俺を連れて行きたいと提案してハドラー、バランさん、ミストバーンが反対したが、キルバーンが意見を押し切ろうとした。結果、妥協案としてバズズとゲレゲレが護衛として一緒ならばと承諾されたのだ。と言うか、本人の意思も確認しようぜ?俺が口を挟む間もなく決まっちまったよ今回。

ちゅーか、街を襲わせてダイの正体を確かめようとする事をデートと抜かすな。

 

 

「酷いと思わないか、なあ?」

「グルル……」

 

 

俺は街を襲う予定のドラゴンの一匹の鼻先を撫でる。撫でられたドラゴンは気持ちよさそうにしていた。すると、それを見た他のドラゴンやヒドラは「俺も俺も!」と言わんばかりに俺に鼻先を突き付けてきたのだ。

 

 

「うわっと、落ち着けって……ほら、順番に……な?」

「グルル……」

「グゥ……」

 

「うーん、イーリスってモテモテだねぇ」

「傍目にはドラゴンに食われる一歩手前のお姫様って感じだがな」

 

 

俺が順番にドラゴンを撫でているとキルバーンとバズズがそんな事を言っていた。確かに絵面だけを見ればそう見えなくもないか。俺がドラゴンを撫でた事に嫉妬したのかゲレゲレも体を擦り寄せてきてるし。

 

 

「さ、お遊びの時間は終わりだ。キミ達はあの街に行って存分に暴れてくると良い。人間も沢山いるからお腹いっぱいになれると思うよ」

「グワァァァァァ!」

「ギャォォォォォォッ!」

 

 

キルバーンがパンパンと手を叩いてから指示を出すと、ドラゴン達は雄叫びを上げてベンガーナの街へと突撃して行った。

街で暴れたドラゴンを退治するにはダイはドラゴンの紋章を使わざるを得ない。その力を発動させればダイは紛れもなく竜の騎士である事が証明されるのだ。でも、その為には……

 

 

「…………」

「おや、あの街に居る人間達の事を気遣ってるのかい?それともダイやその仲間にドラゴン達が倒されてしまう事への悲しみかい?」

 

 

俺の心を読んだかの様にキルバーンが俺の顔を覗き込んでくる。分かってて聞いてやがるだろ、コイツ。正直、どっちもだよ。俺達の都合でドラゴン達を犠牲にしようとしてるし、その為に他人を傷付けようとしてるんだから。

 

 

「甘いって言いたいんだろうが……俺は割り切れない」

「そんな事はないさ。そのキミの甘さを、さっきのドラゴン達も感じ取ったんだろ?それは僕やミスト……更にはバーン様にもない魅力さ。そんな所が僕は大好きなんだよ、イーリス」

「おら、サッサッと行くぞ!」

「ガウッ!」

 

 

俯いた俺を励まそうとしたのか、キルバーンが俺の顎をクイっと指で上に向けるが、バズズが俺を抱き上げ肩に乗せて走り出す。後ろではゲレゲレがキルバーンに威嚇なのか吠えていた。一応言っておくが、ときめいたりしてないからな?

 

 

「やれやれ、仕方ないなぁ。お仕事お仕事」

 

 

そんな事を言いながらキルバーンは俺達の後を追ってきた。ここ最近思うけど、キルバーンって仕事は出来るけど真面目では無いんだよな。まあ、その辺りはミストバーンと対極だからバランスが良いんだろうな。

ぼんやりとそんな事を思いながらバズズの肩に担がれてベンガーナの街に到着。そこでは既にポップがドラゴン相手に奮戦していた。

 

 

「おや、勇者君の姿が無いな。逃げちゃったのかな?」

「そりゃないだろ。あのガキの事だ。力を蓄えているのか、機を見計らっているのか……」

 

 

キルバーンとバズズの呟きに「今頃ダイは地面に激突してるだろうよ」と言いたかったがギリギリ我慢した。するとポップがトベルーラで空を舞いながらダイの大冒険発祥の呪文のベタンでドラゴンを纏めて五匹押し潰していた。そしてそれと同時に街で暴れていたヒドラにダイが立ち向かっていた。

 

 

「おお、なんだあの呪文は!?」

「流石は勇者の仲間。大呪文を扱うか」

「あっちでダイがヒドラと戦い始めたな」

 

 

初めて見たけど、凄いなベタン。広範囲に重量を掛けて対象を圧する。単純だが効果は絶大だな。ましてや相手はドラゴンだ。対象の自重があればある程に効果が増す呪文だな、アレは。一方でダイはヒドラ相手に苦戦していた。そりゃ一般兵士が使う剣じゃヒドラの皮膚は貫けないわな。オマケに街中だから派手に動き回れないし技の制限も出て来る。このハンデがある状態でどうする?

「僕はもう少し近くで見て来るよ」と言ってキルバーンは民家の屋根の上から飛び降りて近くの民家の壁の中にズブズブと沈んで行く。どうやってんだろう、アレ。ちょっとやってみたいんだけど。

 

その直後、ポップの呪文からギリギリ生き残った一匹のドラゴンが立ち上がると他の場所へと走って行く。つーか、一匹しか生き残らなかったのか。本来なら二匹だった筈だが、ポップの呪文のレベルも上がってるんだな。

 

この後だが、ダイが紋章の力を発動させヒドラの首を数本吹っ飛ばし、迫って来たドラゴンも倒してしまう。その凄まじい力に助けられた筈の街の人達からの視線は冷たく怯えたものだった。やっぱり嫌だな……この光景を実際に見るのは。正直、このシーンはダイの大冒険の中で特に嫌いな場面だった。人間の身勝手な部分が特に強調された所だったのだから。

 

 

「勝手だよねぇ、人間は。街と自分達を守ってくれたのに、キミの人間離れした戦いにビビっちゃてるんだ。本当に自分勝手さ、フフフ」

「そこだ!」

 

 

ダイは人々からの冷たい視線に狼狽していたが、一瞬の殺気を感じとり、装備していたドラゴンキラーを民家の壁に突き刺す。その壁から腕が生えて、突き刺したドラゴンキラーを掴んでキルバーンが姿を現した。中々凄い演出だな。

でも、キルバーンの言い分に今回は概ね同意してしまう。先程も……今までも思った事だが今回の一件もバランさんの過去も人間の身勝手な考えが招いた事なのだから。

 

 

「お見事、お見事。まさか僕に気付くなんてね」

「お前が超竜軍団の軍団長か!?」

 

 

笑いながら現れたキルバーンにダイが問い掛けるがそれは違うぞ。俺はそう思いながら屋根の上から光景を眺めていた。

 

 

「軍団長?まさか。僕はただの使い魔……と、お姫様のお守りさ」

「お守り……あ」

「ア、アイツは……魔軍司令補佐のイーリス!」

「よう……」

「会いたかったぜ、クソガキども!」

 

 

キルバーンが「お姫様」の辺りで俺に視線を送り、ダイとポップがその視線を追って俺を見つけてしまう。思わず手を振ってしまったが、その直後に隣に居たバズズが叫んだ。うわぁ……恨み骨髄。

 

 

「な、なんなんだ……あのシルバーデビルは通常の奴よりもデカイぜ。しかも俺達の事を恨んでるみたいだ」

「コイツの名はバズズ。元、フレイザードだよ。バズズはリベンジマッチをしたいみたいだけど……今日の所は引き上げるから安心してくれ」

「そういう事さ。ま、近い内に本物の軍団長が会いに行くから楽しみにしてると良い」

 

 

ポップがバズズを見て怯えていた様子だけど、俺が手で制しながら引き上げる事を告げるとキルバーンも同意してくれた。これでダイ達は占い師の……名前は忘れたけど婆さん達に導かれてテランに向かう筈だ。俺の仕事はこれで終わりだな。キルバーンが再び壁の中に戻っていったので、俺とバズズはゲレゲレを連れてルーラでその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イーリス、バーン様と話がついた。ダイとの戦いにキミも同伴してくれ」

「あ……はい」

 

 

鬼岩城に帰ろうと思ったらバランさんに呼び止められた。うーん、地上最大の親子喧嘩に俺も加わる事になるのか。と言うか、血縁からすればバランさんは俺も居た方が良いと思ったんだろうな……

 

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