転生したら大魔王の娘だった   作:残月

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せめて話は聞いて欲しい

 

 

 

 

竜の神殿でダイと対峙する俺とバランさん。鳩が豆鉄砲を食ったような顔してるわ。ま、そりゃそうか。竜の騎士しか入れない神殿に三人も居るんだから。

 

 

「お、お前は……魔軍司令補佐のイーリスに……」

「我が名はバラン……魔王軍超竜軍団長のバランだ。そして当代の竜の騎士だ!」

「俺の方は自己紹介はいらないな」

『この神殿に入ったと言うことはこの男と娘も竜の騎士だと言うのか?ありえない。同じ時代に竜の騎士が三人も揃うなど……』

 

 

ダイが俺の名を呟き、バランさんが自己紹介をした。竜水晶は壊れたラジオみたいに震えた様な音声を発してる。うん、あり得ない事態にバグってんな。

ダイの方も竜水晶の言葉が聞こえてないっぽいな。その視線はバランさんに集中している。

 

 

「聞いた筈だ……竜水晶から己が竜の騎士である事を!私はお前の力が欲しい……私の部下になれ!共に人間共を滅ぼすのだ!」

「バランさん。もっと段階を置いて話をしないとでしょ。ダイの方は明らかに理解が追い付いてないよ」

 

 

バランさんのいきなりの発言にダイは何を言われているのか分からないって顔をしている。俺の指摘にバランさんは少し思案してから言葉を続けようとしたが先にダイが叫んだ。

 

 

「だったら……大魔王バーンの方が悪いじゃないか!?竜の騎士が世界のバランスを保つ存在なら倒すのは大魔王バーンの方なんじゃないのか!」

「違うな、悪いのは人間だ。バーン様は世界の平和の為に人間を滅ぼそうとなさっているのだ」

「魔王軍が世界平和を叫ぶとか斬新だよなぁ。取り敢えず話だけでも聞いてくれないか?」

 

 

ダイとバランさんの会話に思った事を普通に口にしてしまった。ダイも冷静な状態じゃないし落ち着かせようとしたのだがダイは既に剣を抜いて逆手に構えている。

 

 

「俺は人間の味方だ!アバン先生の命を奪った魔王軍の手下になんかなるもんか!食らえ、アバンストラッシュ!」

「うおっ!?いきなりかよ!」

「むん!」

 

 

そう言ってダイは体を引き絞り、アバンストラッシュを放った。俺は思わず悲鳴を上げそうになったがバランさんが一歩前に出てアバンストラッシュをその身で受け止めた。

フレイザードとの戦いで空裂斬を会得したダイのアバンストラッシュは完全な物となりアーマードフレイザードやガルヴァスを一撃で倒す程の威力となったにも関わらずバランさんの鎧に僅かにヒビが入る程度のダメージにしかならなかった。庇って貰って思うのもなんだけど……規格外だよな、この人。バランさんはアバンストラッシュを意にも介さず、無造作にダイの右手を掴んだ。

 

 

「出来る事なら傷付けたくなかったが……お前がそう言う気持ちならば力付くでも連れて帰るぞ!」

「な、全然効いていない!?」

「バランさん、ちょっと落ち着いて……わっ!?」

 

 

バランさんの額に竜の紋章が浮かび上がり、それに共鳴してダイの額にも竜の紋章が浮かび上がり、俺の胸にも竜の紋章が浮かび上がった。改めてなんで胸に紋章が浮かび上がるんだろう、俺。そんな事を思っていたらバランさんから放たれた闘気が爆発して竜の神殿を破壊し始めた。俺は急いで神殿から脱出した。

 

 

「ぷはっ!」

「無事だったかイーリス。すまないな、私も冷静に事を運ぼうと思っていたのだがダイを前にしたら気が昂ってしまった様だ」

「あ、アイツは魔軍司令補佐イーリス!あんな奴まで一緒に来てたのかよ!?」

 

 

水面から顔を出したらバランさんに謝罪された。バランさんは竜の紋章を光らせながら水面の上に立っている。もうポップ達と遭遇してたのね。ダイは剣を杖の様にして立ち上がり、レオナはダイを支えていた。

 

 

「あの男も竜の騎士!?」

「アイツ等は魔王軍だ……魔王軍の超竜軍団長のバランと魔軍司令補佐のイーリス!」

「魔王軍にも竜の騎士が居るのかよ!?」

「そんな筈は……伝説によれば竜の騎士はこの世でただ一人と言われています。二人も存在する筈はありません!」

 

 

レオナの叫びにダイが答え、ポップはバランさんの額の紋章を見て悲鳴に近い叫びを上げた。しかしメルルがそれを否定する。

 

 

「そう……この私こそ、この時代のただ一人の真の竜の騎士だ!」

 

 

バランさんは俺の手を引いて俺を水中から引き上げる。俺の手を引きながらだと少し締まらない感じだけど仕方ないか。

 

 

「だったら……なんで竜の騎士が魔王軍に協力してるのよ!?」

「貴様等、人間には関係ない事だ。その子は連れて行かせてもらおう」

「ふざけんな、ダイはわたさねぇぞ!姫さん、ダイに回復呪文をしてやってくれ。コイツ等は俺が時間稼ぎをするぜ、ベタン!」

 

 

レオナの叫びにバランさんは吐き捨てる様に告げる。その様子にポップが叫ぶがバランさんは鼻で笑った。そしてポップのベタンで俺とバランさんの体に重圧がのし掛かる。うおっ、思ってた以上にキツい!

 

 

「これで奴等は動けない……姫さん、今のうちに……んなっ!?」

「うわぁ……平然と歩いてる」

 

 

ポップのベタンが全く効いていない訳じゃないんだろうけどバランさんは平然と歩みを進めてる。俺も闘気を発動させれば動けそうだけどさ。

 

 

「ド、ドラゴン数匹を仕留めた俺の最大呪文が足止めにもなってねぇ!?しかも増えやがった!」

「ドラゴンを束ねる軍団長がドラゴンよりも弱いと思ったか?」

「おい、動けねぇのかイーリス?ちっとキツいが動けない程じゃねぇだろ」

「まあ、少しキツいけど動けない程じゃないか」

 

 

驚愕するポップにバランさんが無慈悲に告げ、更に反対岸に居たバズズが飛んで来た。ベタンの範囲に入っても平然としているバズズにポップが可哀想になってきた。

 

 

「ひ、姫さん……急げ!」

「そ、そんな急に完全回復はしないわよ!」

「むん!」

「うわっと!」

 

 

ポップが焦ってレオナを急かすがいくらベホマでも一瞬では回復はしない。そんな二人を尻目にバランさんは闘気でベタンを弾き返した。その衝撃波に俺とバズズも吹き飛ばされそうになったが何とか耐えた。

 

 

「その子は貰っていくぞ」

「だ、ダメよ……ダイ君は渡さないわ!」

「アンタが竜の騎士だとしても同族だからって好き勝手にコイツの生き様を決めて良い訳がねぇだろ!」

 

 

バランさんが倒れたレオナやポップ達の前に立ち、ダイを連れていくと宣言するとレオナはダイを抱き締め、ポップは仲間は渡さないと意思を示した。

 

 

「好きにする権利ならある……その子の本当の名はディーノ。血の繋がった我が子だ」

「な……ダイ君の父親!?」

「そ、そんな事がなんで言えるんだよ!?同じ竜の騎士だからって親子だなんて確証は無いだろ!それに大体、ダイはデルムリン島で生きていたんだぜ!アンタと親子の筈がないだろうが!」

 

 

バランさんのカミングアウトにレオナは驚愕し、ポップが反論した。ダイは呆然としていて理解が追い付いていない様に見える。

 

 

「それが親子なんだよなぁ。バランさんとダイが離れ離れになっていた事には理由があるし、一人しかいない筈の竜の騎士が二人って事が何よりもの証拠ってね」

「だとしても……魔王軍の言う事なんか信じられるかよ!」

「それにアナタが父親だと言うならお母さんは?ダイ君のお母さんはどうしたの!?」

 

 

俺の発言にポップが杖を俺に突き付けて叫ぶ。レオナも当然の疑問を口にするが俺はハラハラしていた。だって、ダイの母親……つまりバランさんの奥さんの話題はバランさんにとって触れちゃいけないキーワードなんだもの。

 

 

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