テラン王国の城に居るであろうダイの下へと行こうと進軍を開始した俺達の行手を阻む様に崖の上から俺達を見下ろすポップ。
なんでポップが一人で来てるんだろう。俺が疑問に思っていると竜騎衆やバランさん、バズズが騒ぎ始める。
「なんだ、テメェは!?」
「見た所、魔法使いの様だが……」
「アレはディーノと共に居た魔法使いか……まさか一人で我々の足止めにきたのか?」
「片腹痛いですな、あんな未熟そうなのが来るとは」
「ほぅ……面白ぇじゃねぇか……」
ガルダンディー、ラーハルト、バランさん、ボラホーン、バズズの順にコメントを溢していく。しかし、本当にどうしたんだ?ダイの記憶は失われていないんだから、ポップが一人で足止めするよりも纏まって防御を重ねれば良いのに……まさか、ダイに何かあったのか?
◆◇sideポップ◆◇
超竜騎団のバラン、魔王軍司令補佐のイーリスの襲撃を受けた俺とダイと姫さんとクロコダインのオッサンは絶望感に打ちひしがれていた。
特にダイは肉親であるバランと禁呪法とはいえど、姉弟のイーリスという存在に戦う意志が弱くなってしまった。
今までの魔王軍は人間を滅ぼす事を重点に置いた分かりやすい『悪』だったから俺もダイも戦い続ける事が出来た。
でもバランやイーリスの心情を聞いた俺達は戦う決意が鈍ってしまった。特にダイは竜の騎士の紋章を介してバランとイーリスの意思が流れ込んだと言っていた。そのせいでダイは魔王軍と……いや、バランとイーリスと戦う闘志が湧かなくなってしまった。
テラン王国に匿われた俺達は王との謁見の後に貸し与えられた部屋に篭っていた。姫さんやクロコダインのオッサンもダイを気遣っていたが、俺は焦っていた。今まで俺達はダイに全てを任せていたと言っても良いくらいに頼り切っていた。そのダイが戦えなくなった事で俺達は絶望に浸っていた。
いつも逃げ出したり、弱音を吐いていた俺がこんな風に考えちまうなんてな……
「こりゃダメなのかもな……先頭で戦わなきゃならない勇者様がこんなんじゃ大魔王バーンどころかアバン先生の仇のハドラーにも勝てやしねぇよ。悪いが俺は一抜けさせて貰うぜ」
「な……何を言ってるのよポップ君!?」
俺の発言に真っ先に食ってかかってきたのは姫さんだった。ダイやクロコダインのオッサンは俺が何を言ったのか理解出来てなかったのか呆然としていた。
「言った通りの意味さ……勝てもしない戦いに挑んで死ぬなんざゴメンだね」
「ポップ、本気で言ってるのか!?」
やっと正気に戻ったクロコダインのオッサンが俺の肩に手を乗せて俺に正気なのかを問うが、正気だよ。だからこんな事は言いたくない。でもこんな言い方しなきゃダイの目は覚めないと思った。
「ダイは竜の騎士で父親は魔王軍の幹部と分かったんだ。向こうでなら暖かく迎えてくれるんじゃねーの?」
「最低ね……行くならさっさと此処から居なくなって!」
俺はダイの頭をひと撫でする。ダイは俺の言葉が聞こえているのか分からない様な顔付きで俺を見上げていた。しっかりしろよ、ダイ。お前は勇者なんだ。アバン先生の勇者の名を後を継ぐのはお前だろ?だったら俺なんかに発破を掛けられなくても立ち上がれよ。
直後、姫さんからのビンタで俺は部屋を出ていく。すれ違った占い師のメルルにも最低と言われたが、この役目は俺にしか出来ないと思っていた。
勇者が立ち上がれなくなったのなら再び立ち上がれる様に支えるのも、立ち直らせるのも仲間の役目。それは姫さんやクロコダインのオッサンに任せる。
立ち上がるまでの時間は……俺が稼ぐからよ。だから負けんなよダイ。