◇◆sideレオナ◆◇
ダイ君と竜騎将バランを庇って負傷したイーリスは目覚めると豹変した。
先日あった時の様な私達と会話を取り持とうとする仕草や諌める様な雰囲気とはまるで違う。
イーリスの体から溢れた魔力が周囲を凍らせ、まるで全てを拒み生きる事すら許さないと言っているかの様に見えた。
「く、くくく……我が奥義を食らってその程度のダメージとは恐れ入りますな。だが、俺の力は……はひ?」
「これはマヒャドか!?」
「いかん、下がれ!」
ガルヴァスと名乗った魔族が再びイーリスに牙を剥こうとしたと同時にイーリスはガルヴァスに指先を向けてマヒャドを放った。バランやクロコダインが呪文の威力を察して皆に下がれと叫ぶ。それと同時にガルヴァスの体は一瞬で凍り付いた。
「速いっ!」
「あの一瞬で何発も蹴りを……」
「大抵のもんは氷付けになってりゃ脆いもんだが……それを差し引いても、お嬢の蹴りの威力が上がってやがるな」
「が、あ……あが……」
そしてイーリスはガルヴァスとの間合いを詰めると蹴りを放った。私には一撃に見えたが何発も蹴りを叩き込んだらしい。氷付けになっていたガルヴァスの体は粉々になった。
イーリスは頭だけになったガルヴァスをキャッチすると焦点の合っていない瞳でガルヴァスと視線を合わせてる。
「お、お待ちくださいイーリス様!俺はバーン様やハドラー殿の為に……いやいや、これからはイーリス様の為に……ひぎゃ!?」
「握力でガルヴァスの頭を握りつぶしただと」
「ひ、酷い……」
頭だけになったガルヴァスの命乞いにイーリスは無表情のままガルヴァスの頭を握りつぶした。その光景にクロコダインや私は目を背けてしまいそうになる。
「お、おい……お嬢。確かにソイツは気に食わない奴だったが……があっ!?」
「バズズ!イーリス、なんの真似だ!?」
歩み寄ろうとしたバズズをイーリスは裏拳で払い退けた。その行動にバランですら驚愕していた。それに対してイーリスは凍りつく様な笑みを浮かべていた。
違う……初めて会った時の親しみすら感じたあの子は魔族だけど友達にすらなれるかもしれないと思った。でも今の彼女は冷徹な魔族よりも冷たさを感じる。いえ、無機質とさえ思えた。
「おい、お嬢!?何すんだよ!」
「下がれバズズ……これはまさか……」
「なんだ……心がこんなにざわつくなんて……」
突如殴られた事を抗議しようとしたバズズだがバランに止められる。そのバランはイーリスの今の状態に心当たりがあるみたいね。
ダイ君は今のイーリスの力に反応しているのか額の紋章が輝き始めていた。バランも同様に額の紋章が呼応して浮かび上がっていた。
◇◆sideレオナend◆◇
◇◆sideバラン◆◇
私は呆然としていたと言える。私を庇ってガルヴァスの攻撃を受けたイーリスの姿とかつてのソアラの姿が重なった。
私とディーノがイーリスの体を支えると、この子は力無く私達に体を預けていた。
私は怒りに身を任せガルヴァスを始末しようと拳を握りしめた。だが、それと同時にイーリスは立ち上がり、魔力を解放した。その魔力が周囲を凍らせ今までにない雰囲気を発しているイーリスに私は嫌な予感を禁じ得なかった。
イーリスはガルヴァスをアッサリと始末するとバズズにすら牙を剥いた。
私の感じた嫌な予感は最悪の形で的中した。今のイーリスは目に映る者の全てが敵に見えているのだろう。
竜魔人になった竜の騎士が攻撃本能に支配され、敵対する者には情け容赦の無い攻撃をする本能のまま動く怪物のような存在と化してしまう。今のイーリスはその状態……いや、更に攻撃本能が刺激されている様に見える。まさか竜魔人としての力と魔族の本能が重なり合ってイーリスは力に心を塗りつぶされているのではないだろうか?
その証拠に私もディーノも額の紋章を介してイーリスの叫びが聞こえていた。彼女を早急に止めねば取り返しのつかない事態になりかねんな…-
◇◆sideバランend◆◇
◇◆sideキルバーン◆◇
「バーン様?肘掛けに穴が空いてるよ?ミストも、もう少し落ち着こうね」
「何……気にするなキルバーンよ」
「私は冷静だ」
バーン様はトントンと肘掛けに指を突き過ぎた所為で穴が空いてるし、ミストはバーン様に指摘されたから闇の衣を着直したけど、トントンと足踏みが止まらなくなっている。なんやかんやで似てる仕草してるんだよねバーン様とミストって。
二人がパニクってるから僕が冷静になれてるけど、どうしようかなー……この状況。