転生したら大魔王の娘だった   作:残月

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初戦闘になりました

 

 

 

キルバーンのルーラで初めてバーンパレスの外に出た俺。つーか、ルーラも初体験だった。なんか不思議な感覚だった。一瞬の浮遊感があった後に高速移動したんだもん。

 

 

「さ、着いたよ。此処が人間の町さ。中には入れないけどね」

「おおー……」

 

 

キルバーンに促されて人の町を遠くから眺める。流石に俺とキルバーンの容姿じゃ町の中には入れないから遠くから見てるだけだ。

ドラクエ世界だけど、初めて人を見た。あの世界観の人達が闊歩してるのを見てると少し嬉しい気分になってくる。

 

 

「やっぱりね。キミの心は魔族や竜の騎士よりも人間寄りだ。人の町を見て慈愛の瞳になるのが何よりもの証拠だ」

「あ、いや……初めて人を見たから……」

 

 

キルバーンの指摘にドキっとする。何かを見透かされた様な一言にバクバクと心臓の鼓動が早くなった気がする。

 

 

「隠さなくてもいいよ。僕はバーン様やミストに報告しようって訳じゃないんだから」

「そ、そうか……」

 

 

にこやかに告げるキルバーンに俺はコイツが何を考えているのか分からずに不安な気持ちにさせられる。

 

 

「でもね、僕は思ったのさ。キミが魔法が使えないのは緊張感が無いからだとね。キミが今までしてきたトレーニングはミザル君の魔法の授業とアイナの組手、そしてミストから闘気の使い方を学んでいるだけ。だからキミはキミ自身の才能を開花させられていない。実戦を経験した事がないからキミの中にある才能が燻っているのだとね」

 

 

そう言ってキルバーンは懐から小袋を取り出した。なんだろう……とてつもなく嫌な予感がする。

 

 

「戦場に殺気なく、戦場に危険がなければ、無味乾燥になり、成長もあり得ない。だからこそ……存分に殺気と危険を味わってもらおう」

「グルォォォォォォォォォォォッ!」

「グ、グリズリー!?」

 

 

キルバーンの持つ小袋から発せられた臭いに誘い出されたグリズリーが現れた。

 

 

「この小袋は獣の魔獣の理性を奪う臭い袋でね。今はグリズリーだけ出てきたけど、グリズリーの叫びと臭い袋の効果でもっと魔獣が出てくる。早く倒さなきゃね。しかも手間取ったり、キミが逃げたら人里に降りていくかもね」

「確信犯かよ……危なっ!」

 

 

キルバーンの説明に最初から、このつもりだったのだと気付く。俺がグリズリーを素早く倒さなければ、追加でモンスターが現れ、尚且つ俺が逃げれば近くの町をモンスター達が襲うという時間制限&撤退禁止となった。

考える時間も興奮したグリズリーが襲ってきた為に無いといえる。早く倒さなきゃ……グリズリーくらいドラクエの初期から中盤の敵だ。倒せない事もないだろう。

 

 

「この……やってや、ぐあっ!?」

「グルォォォォォォォォォォォッ!」

 

 

グリズリーの右爪を避け、闘気を込めた拳で殴りかかったがグリズリーの左爪のカウンターを食らってしまう。近くの木に叩き付けられ、一瞬意識が飛びかけた。

 

 

「痛っ……くぅ……」

「グルルルルルルルッ!」

 

 

転生してから修行はしてたけど、実戦。それも対魔獣は初めてだ。それに普通に考えれば人がクマと戦って無事で済む訳がない。体が恐怖で震えて動けなくなるし、痛みで動きも鈍くなる。何を簡単に倒せるとか勘違いしてたんだ俺は!

 

 

「おやおや、予想はしてたけど思ってたよりも動けなくなってるね。ま、この程度で死ぬならバーン様も納得してくださるだろう。竜の騎士の実験体は失敗作だったとね」

「……んだと……」

 

 

キルバーンの呆れと失笑に俺は怒りが沸いてきた。今のこの状況を作り上げた張本人が何言ってんだ。誰が失敗作だ。

 

 

「生き残ってもその強さじゃ魔王軍の下っぱ以下だよ。ミストもアイナも、ミザル君の見立てと育て方が悪かったのさ。まあ、女の子なんだし、慰み者くらいにはなれるんじゃない?」

「ふざけんな!」

 

 

俺はキルバーンの発言に自分の中の何かがキレた気がした。俺の才能の無さは認めるが俺を教えてくれていた人達を侮辱されたのは許せなかった。そして確かに俺は女の体にはなってるが中身は男だっての!女の体の生活に慣れて言う事じゃないとは思うが。

 

 

「グルォォォォォォォォォォォッ!」

「五月蝿い!」

 

 

そんな俺の気も知らずに、再び襲ってきたグリズリー。右爪を振り下ろしてきたので、それを左手で受け止めると腹に右拳を叩き込んでやった。

 

 

「グホッ!?」

「これで終いだ!」

 

 

腹を殴った事で前屈みになったグリズリーの頭が俺にとって丁度良い高さとなった。俺は右足に闘気を集中させハイキックを放ち、グリズリーの頭に叩き込む。

 

 

「グギャァァァァァァァァ!」

「ハァ……ハァ……やった……」

 

 

そのまま地面に伏して動かなくなったグリズリーに俺は自分がグリズリーを倒したのだと確信を得た。なんだろう、この気持ち。まるで自分の中にあった蓋が開いたかのような……高揚感があった。

 

 

「お見事、お見事。流石はバーン様の……」

「イオッ!」

 

 

拍手をしながら歩いてくるキルバーンに俺は振り向き様に左手を翳してイオを放った。今までの爆竹レベルの爆発ではなく光球が放たれ、キルバーンに着弾し爆発した。

 

 

「酷いなぁ。折角褒めたのに」

「褒められたのも、切っ掛けを作ったのにも感謝はするけど、やり方をもう少し考慮して欲しかったからな!」

 

 

ノーダメージで服の埃を払うキルバーン。思わずイオを放ったけど、コイツに魔法は厳禁なのを怒りで忘れてた。

 

 

「じゃ、もう帰ろうか。キミを連れ出したのがバーン様やミストにバレたみたいでね、相当怒ってるみたいだ」

「無許可だったのかよ。それはそうと他にモンスターが現れなくて良かっ……た……」

 

 

キルバーンの発言に少し呆れたものの、グリズリー以外のモンスターが現れなくて安心した。他にも出てたら危なかったし、町にもモンスターが行く所だったから……そこで俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◇sideキルバーン◆◇

 

 

 

まったく妙な娘だよねぇ……僕がイーリスに感じた感想はこんな物だ。

イーリスはバーン様が作り上げた擬似的な竜の騎士。しかし、その才能が開花しないのは何かしらの要因があるのだろうと考えていたのだが、僕からしてみたら過保護だから戦いの才能が開かないのだろうと考えた。箱入り娘のままじゃ成長しないのも仕方ないよね。だからこそ、僕はイーリスを誘って人里近くの森で戦わざるを得ない状況を作り上げた。

イーリスの思考はミストやミザル君から聞いていた通り、甘ちゃんの人間寄りだったから煽ったら簡単に乗ってきた。

 

戦いに不馴れな感じでグリズリーなんかに負けそうになってたけど、僕の挑発に触発されたのかイーリスは一気に攻勢に出て、あっという間にグリズリーを倒してしまった。しかも臭い袋に釣られて集まっていたモンスター達はイーリスの魔力と闘気にビビって逃げ出してしまった。正直予想外だね。眠ってる力が目覚めれば今の下っぱ魔族から中級くらいには強くなると思ってたけど、今のイーリスから放たれる闘気は上級魔族と変わらない波動を放ってる。眠れる獅子……いや、竜を目覚めさせちゃったかな?

 

そんな事を思っていたらイーリスからイオを放たれ食らってしまう。威力は上がったものの僕には大した事ないから痛みはないんだけど驚いた。魔法の運用もマトモになってるじゃないか。その後、緊張の糸が切れたのかイーリスはそのまま倒れそうになったのを受け止める。

 

 

「やれやれ、思ってた以上にお転婆な娘なんだね。それにしても死神の前で眠るとか、ある意味大物だよ」

 

 

イーリスを横抱きにした状態でルーラを唱えてバーンパレスに帰還した。バーン様やミストじゃないけど、この娘は見てて飽きないなぁ。僕は魔王軍での楽しみが増えたと笑みを禁じ得なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バーンパレスに戻るとミストとアイナが待っていた。ミストは僕の腕からイーリスを少々乱暴に取り上げるとそのままイーリスを部屋に運んでいく。死神の僕が言うのもなんだけど過保護すぎない?アイナなんか笑顔だったけど、なんか凄いオーラ出てたし。

 

 

『キルバーンよ、余の下へ来い。少々、話がある』

『………かしこまりました、バーン様』

 

 

ミストと入れ替わるようにバーン様の魔力による念話が来た。多分、イーリスに関する事なんだろうけど絶対、皆過保護だから!そんな事を思いつつ僕はバーン様の下へと急いだ。

 

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