◆◇sideダイ◆◇
赤ん坊の頃にじいちゃんに拾われてから俺は本当の親の事を知らずに生きていた。デルムリン島でじいちゃんと暮らしながら俺は勇者になる事を夢見て偽勇者と戦い、レオナと出会い、アバン先生に弟子入りして……アバン先生を失ってから俺は勇者としてポップと旅に出た。魔王軍と戦う道中でマァムが仲間に入り、クロコダインやヒュンケルと戦って二人は仲間になってくれた。
魔王軍との戦いで敵には敵の事情がある事はぼんやりと分かっていたけどアバン先生の仇であるハドラーや人々を苦しめている魔王軍に対して俺は勇者として戦っていた。
でも、この国に来てから助けたはずの人達に怯えられ怖がられていた。そして俺は人間じゃない事を知り、父親と名乗った魔王軍の竜騎将バランとの戦いが始まった。魔軍司令補佐のイーリスとも。二人は俺と同じ……竜の騎士なのだと言う。
俺は勇者として人間の為に戦ったけど人は俺を怖がった。
敵であるはずの魔王軍は俺を必要だと手を差し伸べた。
俺は二つの思いに挟まれながら魔王軍と戦う道を選んだけど……紋章の力を解放したらイーリスの想いを感じ取ってしまった。
戦え、戦いたくない、どうしたらいい、わからない、助けたい、逆らえない、逃げたい、逃げられない、生きたい、生きられない、楽になりたい、ツラい、良くしたい、思い通りにならない
こんな思いをイーリスは抱え込んでいた。こんな言葉がズッとイーリスの頭の中で再生していたのであれば紋章の力に振り回されて倒れてしまうのも無理はないと思う。
イーリスを抱き抱えて飛び去ったバランの背を思わず目で追ってしまう。アンタが俺の親だと言うならなんで俺よりもその子を優先するんだよ……
俺はイーリスの心の叫びを聞いてから闘志が湧かなかった。あんな思いをして悩んでいる子を敵だと思えなかった。そしてイーリスは魔王軍のモンスター達を家族の様に思っているのは心の叫びから感じていた。だとすれば俺が魔王軍と戦うのは彼女の家族を奪うと言う事……アバン先生とヒュンケルの様に怨み恨まれる関係になってしまう。
そんな思いから俺は戦えない……武器を手にする事が出来なかった。
俺が悩んでいる間にみんなはバランと戦う事を決めて、ポップは出て行ってしまった。そう……だよな。ポップはアバン先生の仇と戦うと俺と一緒にデルムリン島を出て、俺を勇者と信じてくれていたのに俺は戦えない。愛想を尽かされて当然だった。
でも、それは違った。ポップは俺の為に時間稼ぎの為にクロコダインやレオナと仲違いをするフリをして一人で戦いに出たんだ……バランの言葉にそれを気付かされて……俺の中で僅かにだけど闘志が再び湧き上がり俺はバランと戦った。
バランはクロコダインを傷つけてレオナにすらライデインを落とそうとした。それで俺は完全に吹っ切れてバランと戦おうと思ったら前に倒した筈のガルヴァスが復活して俺とバランに襲いかかって来た。
なんとか倒そうと思っていたらイーリスとバズズまで現れてしまった。
イーリスはガルヴァスと戦うと宣言し俺とバランさんの戦いを促した。俺はまだ震える手を抑えながらだけどバランと戦う。何合か斬り合った、その時だった。俺とバラン目掛けてガルヴァスの豪魔六芒槍が迫って来て俺とバランに直撃する……筈だった。
「間に……合っ……」
「イーリス!?」
「なんで……俺達を……」
イーリスは俺とバランを庇う様に立ち塞がり、その背中に豪魔六芒槍が突き刺さった。突然の事に驚いていると更に驚く事態になった。
イーリスの様子が豹変した。今までの豊かな表情からまるで凍りつく様な笑みと視線。でも、それ以上に心の叫び声が明らかに増した。
この声は竜の騎士の紋章から伝わってくる様で俺と同じ様にバランですら動揺してる。そんな中でイーリスはガルヴァスをアッサリと倒してしまった。まるで感情が消えて戦うだけの存在みたいに。
イーリスはその後も標的を俺達に切り替えたのか広範囲呪文で攻撃し始めた。ヒャドとバギの融合呪文なのか周囲の木々や城を破壊していくイーリスに俺は何もできず、バランは思案した顔から決意の表情に変わっていた。ポップやヒュンケルが敵を倒してから来てくれたけど今のイーリスは止まらない。ヒャドやバギ、ライデインを巧みに操りイーリスは俺達を追い詰めようとした、その時だった。
「どうすれば……」
「そこを退けヒュンケル。ここから先は……真の強者のみの戦いだ」
どうしようもない状況にバランはヒュンケルやポップを下がらせるとバランは俺を見た後にイーリスに視線を戻した。
「バラン……なんのつも……」
「イーリスよ……やはり竜魔人に近い状態になっている様だな。ならば止める手立てはただ一つ」
そう言ってバランは顔に装備していた物を外して構えた。
「どうする気だバラン!?今のお嬢にゃ何も効かねえぞ!」
「左様。如何にバラン殿と言えども今のイーリス様のお相手は……」
「お前達も下がっていろ。ディーノ……お前ももっと下がってろ」
その直後だったバランから凄まじい闘気と魔力が溢れ出すとその姿が変わって行く。魔族としての魔力・ドラゴンとしての爪や羽、鱗がその身に発生していた。俺はその姿に震えた。
「これぞ竜の騎士の最終戦闘形態……竜魔人だ」
「な、なんて威圧感なんだ……ハドラーなんかとは比べ物にならねぇ……」
「な、ああ……」
バランから竜魔人の事を教えられて震えが止まらない。さっきまでのバランはまだ手加減をしていたのだと痛感したから……
それはイーリスとバランの戦いを見ても明らかだった。
様々な呪文を駆使してバランに攻撃を仕掛けるイーリスにその全てを受け止めるバラン。その戦う姿は凄まじいとしか言いようが無く、その場の全員が驚いていた程だった。
「な、なんという戦いだ……」
「最早……俺達とは次元が違う……」
クロコダインやヒュンケルが呟く中、俺は悔しかった。あの戦いに加われない自分が。イーリスを止められない自分が。紋章の力を押さえ込み、戦えるバランに。
「これは竜の騎士が竜魔人になった時のみ使える呪文……名をドルオーラだ!!」
「ヒュウゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ……ハッ!」
バランが両手を合わせると竜の口の様になり、そこから放たれた呪文ドルオーラがイーリスを襲う。イーリスはマヒャドを展開したかと思ったらそれを一つの帯のように纏め上げた。その姿はまるで氷のスカイドラゴンのようだった。それをドルオーラにぶつけると凄まじい衝撃と爆音が周囲に響きわたった。
「まるで天変地異ではないか……」
「こんなのどうしたら……」
「でもよ……やるしかないんだよな」
「え、ポップ……!?」
「何をする気だ……お前はもう魔法力も尽き掛けているだろう!下がるんだ!」
クロコダインとレオナの呟きにポップが立ち上がりながら上空のイーリスとバランを見つめ、俺は驚き、ヒュンケルはそんなポップを止めた。
「イーリスがなんであんなになったかは知らねーけどよ。止めてやらなきゃ可哀想だろ。それにダイが戦えないなら俺達でなんとかするっきゃねーだろ」
「ポップ……俺が勇者として戦えないから……っ痛」
ポップの言葉に俺が勇者として戦えないからだと言ったらポップにデコピンされた。
「違うだろ。勇者とか竜の騎士だからじゃ無くて仲間だから……親友だから助け合うんだろうが。俺はもう魔法力も尽き掛けてるけどよ。最後の手段で……」
「何をする気だ!?やめろ、ポップ!」
「ポップゥゥゥゥゥッ!」
ポップは何かを決意した顔でトベルーラでイーリスとバランの戦いに割り込むように飛んでいった。ヒュンケルの止める声にもポップは行ってしまう。その姿に俺は物凄く嫌な予感を感じた。
早く止めなくちゃ!でも頭の中で響く声に邪魔をされ心が挫けそうになる。
「くそっ!」
俺は頭の中の声を振り払う様に地面に拳を叩きつけた。それと同時に頭の中で響いていた声が消え、拳が熱くなるのを感じた。
◆◇sideキルバーン◇◆
やっとの思いでアイナを拘束してバーン様の前に突き出した。ミストも闇の衣を脱いでアイナと戦って僕が縄で縛り上げてギリギリの戦いだったと思う。
逆を言えばミストが闇の衣を脱がなきゃ対処しきれないんだから怖いよネ。アイナを縛ってるこの縄は相手の動きを制限させる呪い付きの特級呪物なんだけど、それでも抵抗する力が凄い。
「アイナよ……其方の心配も分からんでもない。だが、過度な心配はイーリスの事を信じておらぬと同義」
「……くっ」
いや、バーン様がそれを言いますか?今は貫禄たっぷりだけど、焦りと動揺で玉座の肘掛けを壊した貴方が。アイナもそれにツッコミを入れないくらいに悔しがってるし。
「わかりました……ですが、いざとなったら……」
「うむ…‥それで良い。ほう、戦いにも動きがあった様だな」
いや、アイナの提案を飲まないでバーン様。即頷く辺り、貴方も現場に行きたいんですね?と思っていたが口には出せないなぁ、と考えていたら水晶に映し出されてる戦いに動きがあった。
バランのドルオーラと呼ばれる竜の騎士オリジナル呪文をイーリスはヒャド系の呪文を駆使して対応して互角の戦いになっている。
「あれは……マヒャドを独自の魔力運用で操作してるのかな?まるで龍みたいだねぇ……流石はバーン様の御息女で……」
「エンペラー……いや、フロスト……むぅ……」
あ、もう呪文の命名を考えてるんですね。ラグナスレイブの時もだけど張り切りすぎでしょ。